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チッターの野望編
第10話 勇者パーティの新人研修、ザコ編
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× × ×
数時間後。俺たちはマルティナさんの教えてくれた通りに海へ出て、そこから船に乗って小さな島へ向かった。海岸からも見える程度の距離だったから、特に苦労もなく辿り着けて良かった。
「さて、じゃあ行こうか」
シロウさんは、宝具を背中に担いで内部へと進んでいった。ホーリーランスとホーリーロッドは船の中。二人は、マルティナさんに借りた槍と杖を持っての出発だ。
因みに、杖にはスキルの威力や効果を高める力がある。なくてもスキルを唱えられるけど、遠距離の攻撃スキルを多く覚えているモモコちゃんなら、あるに越した事は無い。
「おっ、早速それっぽい奴らがいるぜ」
視線の先には、見張りだろうか。何体かの魔物を従えた、怪しげな男の姿がある。
「アオヤ、レッスン2と行こうか」
「何教えてくれんですか~?」
「お前の戦闘を見る感じ、翻弄して攻撃を躱す『回避盾』が合ってるだろう。だから、俺が連中を遊撃出来るように……」
「コロスコロスコロス」
シロウさんの言葉を遮って出て行こうとするモモコちゃんだったが、シロウさんに捕まって、俺に身柄を預けられてしまった。
「着かず離れずの距離で攻撃を誘い出すんだ。やり方は、ここに来る途中に教えた通りだ。出来るか?」
「ちょっとわかんないけど、やってみます」
二人は、何の違和感も無く会話を再開した。慣れるの早すぎない?
「さて、問題はこっちのドラ猫だが」
「……なんですか」
ジトっとした目でシロウさんを見上げているが、注意されたから抑えているのか、これまでよりも大分マシな興奮度だった。
「お前、回復スキルは使えるのか?」
「使えますけど、フラケアしか覚えていません」
「なら、ヒーラーは無理だな。キータ、お前ライケア覚えてたよな」
「はい。後は、ポーションを何本かストックしてあります」
言って、鞄の中を確認すると、パワーポーションとヒールポーションが三つずつ。そして、緊急時の薬草が何枚か入っている。
「じゃあ、キータには斥候からヒールまで、少し範囲の広めなサポートを任せる。その代わり、しばらくは攻撃には参加しなくていい」
「なら、シロウさんは?」
「俺はリベロ的な、後ろ見ながらフォロー入って柔軟にやっていくわ。フェザケアくらいなら使えるしな」
「分かりました」
「いいか?モモコ。アオヤと息を合わせるんだぞ?アオヤが突破口を開いたら、一体ずつ片付けて行くんだ」
「……やってみます」
「うっし。じゃあ、頼むぜ。若者たちよ」
言うと、二人は草むらから出て行って、戦闘を始めた。
「いいんですか?シロウさん。いつもは、先手必勝、見敵必殺っとか言って、相手の頭から叩いてるじゃないですか。悠長に魔物の相手してたら、島中から応援を呼ばれてしまいますよ」
「それが狙いさ。ちょいとスパルタだが、今回は先の事を考えての実践訓練って感じだな」
「なるほど。見たところ低級の魔物みたいですし、悪魔と比べれば戦いやすい敵ですもんね」
「そゆこと。キータは、そっちの木の上から二人をサポートしてやってくれ」
「分かりました」
早速木の上に登って三人を見下ろすと、モモコちゃんは意外にもアオヤ君と協力をして魔物と戦っていた。後ろから襲い掛かってきそうな個体を射抜きつつ、予想通り次々に現れる魔物たちを相手にする彼らを観察する。
「スキル、『ギャザーボイス』」
ギャザーボイスは、敵の意識を集める声を発するスキルで、タンクが覚えるべき最も初歩的なスキルだ。コツさえ覚えれば誰でも習得出来る為、ここに来るまでにシロウさんが教えていたのだ。あれを使った戦闘を積んでいけば、上手な使い方や新しい敵の集め方を覚えていけるはずだ。
「モモコ、チャンスっぽくない?」
「グギギギ……。わ、分かってる」
「おぉ、我慢した」
思わず、呟いてしまった。なんか、あぁやって人が成長していくのを見るのは、感慨深いモノがあるな。後は、次の悪魔戦でもあぁやって我慢してくれる事を願うばかりだ。
やがて、敵の数は減っていき、場は落ち着きを見せた。どうやら、あの二人はかなり戦闘センスが高いらしい。柔軟な思考でシロウさんの教えを吸収し、そして実践する勇気が備わっている。
「ちょっと、上手くいきすぎだけどな」
「あれ、シロウさん。もういいんですか?」
「あぁ、あとは残党狩りだ。俺は、チッターが逃げる前に見つけ出して捕まえてくる。軌跡を残していくから、適当な頃に追って来てくれ」
そう言って、彼は一人でどこかへ走って行ってしまった。どうやら、倒した人間の持ち物から手掛かりを見つけたらしい。手には、どこかの鍵と何かの記されたメモを持っていた。
「了解です」
背中に答えて、木から降りると二人の元へ向かう。そこには、多くの屍の上で息を切らして、互いに肩を支え合う二人の姿があった。ライケアを掛けてポーションを渡すと、彼らをそれ飲んでからしゃがみ込んだ。
「疲れたっすよ~。でも、なんか思ったよりも上手くいったんでよかったっす」
「お疲れ、二人とも、よく出来てたと思うよ」
「私は、かなり消化不良ですけどね」
言って、彼女は転がった魔物の死体を蹴とばした。
数時間後。俺たちはマルティナさんの教えてくれた通りに海へ出て、そこから船に乗って小さな島へ向かった。海岸からも見える程度の距離だったから、特に苦労もなく辿り着けて良かった。
「さて、じゃあ行こうか」
シロウさんは、宝具を背中に担いで内部へと進んでいった。ホーリーランスとホーリーロッドは船の中。二人は、マルティナさんに借りた槍と杖を持っての出発だ。
因みに、杖にはスキルの威力や効果を高める力がある。なくてもスキルを唱えられるけど、遠距離の攻撃スキルを多く覚えているモモコちゃんなら、あるに越した事は無い。
「おっ、早速それっぽい奴らがいるぜ」
視線の先には、見張りだろうか。何体かの魔物を従えた、怪しげな男の姿がある。
「アオヤ、レッスン2と行こうか」
「何教えてくれんですか~?」
「お前の戦闘を見る感じ、翻弄して攻撃を躱す『回避盾』が合ってるだろう。だから、俺が連中を遊撃出来るように……」
「コロスコロスコロス」
シロウさんの言葉を遮って出て行こうとするモモコちゃんだったが、シロウさんに捕まって、俺に身柄を預けられてしまった。
「着かず離れずの距離で攻撃を誘い出すんだ。やり方は、ここに来る途中に教えた通りだ。出来るか?」
「ちょっとわかんないけど、やってみます」
二人は、何の違和感も無く会話を再開した。慣れるの早すぎない?
「さて、問題はこっちのドラ猫だが」
「……なんですか」
ジトっとした目でシロウさんを見上げているが、注意されたから抑えているのか、これまでよりも大分マシな興奮度だった。
「お前、回復スキルは使えるのか?」
「使えますけど、フラケアしか覚えていません」
「なら、ヒーラーは無理だな。キータ、お前ライケア覚えてたよな」
「はい。後は、ポーションを何本かストックしてあります」
言って、鞄の中を確認すると、パワーポーションとヒールポーションが三つずつ。そして、緊急時の薬草が何枚か入っている。
「じゃあ、キータには斥候からヒールまで、少し範囲の広めなサポートを任せる。その代わり、しばらくは攻撃には参加しなくていい」
「なら、シロウさんは?」
「俺はリベロ的な、後ろ見ながらフォロー入って柔軟にやっていくわ。フェザケアくらいなら使えるしな」
「分かりました」
「いいか?モモコ。アオヤと息を合わせるんだぞ?アオヤが突破口を開いたら、一体ずつ片付けて行くんだ」
「……やってみます」
「うっし。じゃあ、頼むぜ。若者たちよ」
言うと、二人は草むらから出て行って、戦闘を始めた。
「いいんですか?シロウさん。いつもは、先手必勝、見敵必殺っとか言って、相手の頭から叩いてるじゃないですか。悠長に魔物の相手してたら、島中から応援を呼ばれてしまいますよ」
「それが狙いさ。ちょいとスパルタだが、今回は先の事を考えての実践訓練って感じだな」
「なるほど。見たところ低級の魔物みたいですし、悪魔と比べれば戦いやすい敵ですもんね」
「そゆこと。キータは、そっちの木の上から二人をサポートしてやってくれ」
「分かりました」
早速木の上に登って三人を見下ろすと、モモコちゃんは意外にもアオヤ君と協力をして魔物と戦っていた。後ろから襲い掛かってきそうな個体を射抜きつつ、予想通り次々に現れる魔物たちを相手にする彼らを観察する。
「スキル、『ギャザーボイス』」
ギャザーボイスは、敵の意識を集める声を発するスキルで、タンクが覚えるべき最も初歩的なスキルだ。コツさえ覚えれば誰でも習得出来る為、ここに来るまでにシロウさんが教えていたのだ。あれを使った戦闘を積んでいけば、上手な使い方や新しい敵の集め方を覚えていけるはずだ。
「モモコ、チャンスっぽくない?」
「グギギギ……。わ、分かってる」
「おぉ、我慢した」
思わず、呟いてしまった。なんか、あぁやって人が成長していくのを見るのは、感慨深いモノがあるな。後は、次の悪魔戦でもあぁやって我慢してくれる事を願うばかりだ。
やがて、敵の数は減っていき、場は落ち着きを見せた。どうやら、あの二人はかなり戦闘センスが高いらしい。柔軟な思考でシロウさんの教えを吸収し、そして実践する勇気が備わっている。
「ちょっと、上手くいきすぎだけどな」
「あれ、シロウさん。もういいんですか?」
「あぁ、あとは残党狩りだ。俺は、チッターが逃げる前に見つけ出して捕まえてくる。軌跡を残していくから、適当な頃に追って来てくれ」
そう言って、彼は一人でどこかへ走って行ってしまった。どうやら、倒した人間の持ち物から手掛かりを見つけたらしい。手には、どこかの鍵と何かの記されたメモを持っていた。
「了解です」
背中に答えて、木から降りると二人の元へ向かう。そこには、多くの屍の上で息を切らして、互いに肩を支え合う二人の姿があった。ライケアを掛けてポーションを渡すと、彼らをそれ飲んでからしゃがみ込んだ。
「疲れたっすよ~。でも、なんか思ったよりも上手くいったんでよかったっす」
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