初恋はおさななじみと

香夜みなと

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初めてのキスは高校三年生のとき。灯の部屋でこれからのことを話しているときにどちらからともなくふれあったのが初めてだった。

「ん……ふぁ……」

「んっ……」

 あのときはぎこちないキスだったけれど、二回目のキスはとても気持ちが良い。灯の手が明里のフェイスラインから耳を包み込むように押さえると、逃がさないと言われているような気がして明里はぞくぞくとした。

「ねぇ、もっと口開いて」

 甘えるような灯の声に明里は自然と従ってしまう。かっこいいというよりかわいい系の灯にお願いされると断れないのは明里の性分だった。母性が働いてしまうというか、とにかく灯のお願いは聞いてあげなくてはと思ってしまうのだ。

「はぁ、ふっ……」

 灯の下が明里の腔内を執拗に舐め回すと、灯と明里の境目がどこにあるのかわからなくなりそうになる。意識が朦朧とし始めて、必死に空気を吸おうとした。

「大丈夫? 目が、とろんとしてる」

「ん……だいじょう、ぶ」

 離れた唇から銀糸が引いてそれがとてもいやらしく見えた。あの日のやり直しと言いつつ、二年半も離れていた間、お互いに変わっているところだってある。

「グロス、とれちゃったね。昔はしてなかったのに」

 高校生の頃は色つきのリップクリームぐらいしかしていなかったけれど、大学生になってからメイクを覚えた。あまり色を重ねるのは好きじゃなくて、グロスもほんのり色づくぐらいものものだったけれど、灯とのキスですべてとれてしまった。

 言葉でそう言われるとどれだけ激しいキスをしていたのだろうかと恥ずかしくなってくる。でも目を細めて微笑む灯の顔は明里の知らない顔をしていて、このドキドキがなんのドキドキだかわからなくなってきた。

「もう、心臓痛くて、死にそう」

 ただの比喩だ。心臓の音がうるさくてこのまま破裂してしまうのではないかと言うほど人生で一番ドキドキしている。

「えっ、それは困るよ。大丈夫?」

「と、灯っ!」

 それなのに、灯は困ると言いながら明里の胸の上に手を置いた。このドキドキが伝わってしまうのではないかと恥ずかしさで顔を隠すと、灯が笑った。

「ほんとだ、すごいバクバクしてるね」

「だ、から言ったのに……」

 すると灯が明里の手を取った。どこへ向かうのかと思っていると明里の手にどくんと波打つものが感じられた。

「僕も同じ。すっごいバクバクして死にそう」

 灯の顔を見てみると灯もどこか切なそうな表情を浮かべていた。熱に浮かされながらお互いがお互いにドキドキしていることを知ると少しだけ落ち着いた気分になった。

「ここから先は本当に明里しか知らないから、僕も緊張してるんだよ」

 太ももを撫でながら灯の手が明里のワンピースの裾をあげていく。大きな手がおなかに触れると、ピクリと体が動いた。その手が胸元まで届き下着のレースに触れると思わず声が出てしまった。

「んっ……」

「大丈夫だから」

 手を上げさせられ、ワンピースを脱がせられる。床に落ちる音が聞こえてこれからの行為に明里はぎゅっと目を瞑った。肌が外気にさらされて少しだけ寒い。

「これも脱がしていい?」

「う、うん……」

 寒さ対策ではいていたストッキングも丁寧に脱がされる。脱がす途中で足に触れる灯の手が明里をいやらしい気分にさせていく。

 下着だけの姿にさせられて、明里は心許なくなった。こんなことになるなんて思っていなかった。変な下着は着けていないはずだけれど灯の好みかどうかはわからない。灯に見せるのなら着たかった下着もあったな、なんて頭の中でぼんやりと考える。

「なに考えてるの? そんな余裕あったんだ」

「ひぁっ……」

 胸元にキスをされたと思うとチリとした痛みが広がった。もう一度、別の場所にもその痛みを感じると灯は満足そうな表情を浮かべた。

「これで、明里は僕のものだから。もうどこにも行っちゃダメだよ」

 下着のレース越しにやわやわと胸をもまれる。いつしか人差し指が下着の上から胸の頂を刺激してきていた。

「んっ……」

「はぁ、もう無理……我慢できない……」

 灯は明里の下着の前にあったホックを外すと肩紐からするりと抜き去った。開放された胸元を思わず明里は押さえてしまう。初めて見せるわけじゃないのに初めてのような気分になる。二年半というブランクで前より幻滅させてしまっていたらと思うと怖い。

「な~に、隠してるの。ダメだよ。見せて」

 腕を取り上げられ頭の上にひとまとめにされてしまう。抵抗してもびくともしない。さすがに灯も男性なんだということを思い知らされた。

「と、灯……」

「ん? らり?」

 気がつけば灯は明里の頂を口に含み、舌でコロコロと転がしていた。その感触がもどかしくて、もっとして欲しいと思っているとふいに刺激が襲ってくる。灯が甘噛みをしてきたのだ。

「いっ、あ、はぁ……」

「気持ちいい?」

「んっ……」

 空いている片方の手で固くなってきた頂をぐりぐりと押されると鳥肌が立ってきそうになる。

 それぐらい灯に触られることを気持ちよく感じていた。

「もっと明里に触れたい」

 そう言って灯は少しぶかぶかのカーディガンと、下に着ていたボーダーのシャツを脱いだ。ほどよく鍛えられた肉体が現れて明里は思わず見つめてしまう。

「そんなに見られるとちょっと恥ずかしいんだけど……」

「灯、筋肉ついた?」

「そりゃあね。結構ゼミでも荷物持ちとかさせられてさ。高校生の時に比べたら明里なんて余裕で持ち上げられるくらい」

 そう笑うとまた口づけられた。灯の肩に直に触れると体の力がふっと抜けていくような気がした。あのとき感じた灯の熱は今も変わっていない。

「あの頃から綺麗になったね、明里」

「きゅ、急にこんな時に言うなんてずるい……」

 優しい声色で言われて明里は視線をそらしてしまう。メイクもおしゃれも大学に入ってから覚えた。灯と一緒にいるときはどんな格好をしていても気にしなかったけれど、灯のいない場所に行ってから身だしなみも気になるようになった。大学にいる女の子たちはみんな可愛くて、おしゃれで、男の子と楽しそうに歩いている姿に憧れていた。いつかあんな風になれたらなと思って、違う美容院にも行ってみたりした。明里なりに可愛くなろうと努力をしていたのだ。

 それが灯に伝わっていたようで嬉しかった。今思えば灯にまだ振り向いて欲しいという思いもあったのかもしれない。

「ここも前より大きくなってるし、こっちも、どうかな?」

「えっ、ひっぁ……」

 ぐっと足を広げられると下着の中に手を入れてきた灯が直接、明里の柔らかい場所を刺激する。二年半前灯に触られて以来、自分でも触っていない場所だ。
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