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二人で手を繋ぎながら歩く道のりは少しだけ恥ずかしかった。会社を出るときも誰にも会いませんようにと思いながら、何人かの人と挨拶をしたが、暗かったせいか二人が手を繋いでいるのかまでは見られなかったようだ。
 前の時は酔っていたせいか宮川の家までの道のりは覚えていなかったけれど、マンションが見えてくると宮川の家だというのがすぐに分かった。
 恋人として初めて入る部屋に少しだけドキドキと胸が高鳴る。
「緊張してるんだ?」
「少しだけ……」
 あの日は流されてきてしまった。部屋に入るのに少しだけ戸惑っていたが、今はあの時と違う戸惑いがある。嬉しいような恥ずかしいような。それでも静かに宮川が手を引いてくれて亜美は安心して部屋の中へ入った。
「んっ……」
 ふいに後ろから抱き締められて唇を塞がれた。あの時と一緒だ。なのに抱き締められた腕も、キスも全てが優しくて気持ちが良い。気持ちが通じ合うだけでこんなにも感じ方が違うのかと思うとふわふわした気持ちになる。
「ん、はぁ……」
「俺とのキス、なれてきた?」
「ん、気持ち良い……」
 唇が離れるとお互いの唾液で光っている。それだけで欲情するには充分だった。二人で靴を脱いでベッドルームへ向かう。その間もキスをして、服を脱がせられてベッドに辿り着く頃にはお互いに下着姿になっていた。
 柔らかなベッドと少しだけひんやりとしたシーツに肌を埋めながら亜美はぼうっとした頭で宮川を見つめた。あの時は気づかなかったけれど、スーツの下は程よく筋肉がついていて、システムエンジニアに多いもやし体型ではない。
「あんまりじーっと見られるの、変な感じなんだけど」
「宮川って、ちゃんと鍛えてるんだね」
「まぁな。ずっと座りっぱなしで肩も腰も凝るから、ジムには通ってる」
 ベッドの上にいるのに普通の会話をしていることに違和感を覚えながらも、そういう関係が二人らしいのかもと亜美は微笑んだ。
「なんか、まだ知らない宮川がいっぱいいるんだなって思った」
「滉」
「え?」
「名前で呼ばれた方がいい」
 ふいっと視線を外されるとどこか拗ねたような表情を浮かべた。昔から知り合いの藤沢は宮川のことを滉と呼んでいるし、関係が進展したなら名前で呼んでも問題はない。
「滉……」
「ん、亜美……」
 名前を口にすると心臓がどくんと音をたてた。そうして宮川から「亜美」と名前を呼ばれれば亜美の心臓はドクドクと鼓動が早くなっていく。
「ん……あっ……」
 キスをされながら宮川の手が亜美の胸をブラジャーの上から包み込んだ。標準サイズの亜美の胸は宮川の手から少しだけはみ出るくらいだ。
「赤い下着、似合うって言ったの、覚えててくれたんだ」
「そういう、わけじゃっ……」
「似合ってる。キレイだ」
 宮川の唇が首筋を這う。それと同時に背中に回された手がホックを外して、開放感にふっと息を吐く。
「お前、着痩せするタイプか?」
「わ、かんないよ……」
「まぁ知ってるのが俺だけっていうのも、いいもんだな。ん……」
 宮川の唇と手が亜美の肌を這っていく。亜美の身体は全身が性感帯になってしまったのではと思うほどに触られるたびに反応してしまう。
「は、あっ……それ、いいっ……」
「ん……」
 胸の蕾を口に含んだ宮川は下で転がしたり甘く吸い付く。その感覚に亜美は鳥肌が立つような感覚に襲われて腕で目元を隠した。
「顔、隠すなよ」
「あ、だって……」
 手を取られると端正な宮川の顔が近づいてきて唇を塞がれる。やさしく唇をはむようなキスかと思えば、舌が入ってくると途端に食べられそうなほど激しくなる。その緩急に亜美は翻弄されて宮川の肩に手を伸ばしていた。
「ん、キス……気持ち良い……」
「知ってる。お前、キスしてるときが一番気持ち良さそうな顔してるもんな」
 自分でもこんなにキスが気持ち良いと思わなかった。でもそれは宮川とだからだと今なら分かる。
「でももっと気持ちいいこと、これからするんだよ」
「え、あっ……」
 宮川の手がお腹の上を這って下着の上から秘部を刺激する。キスと胸の愛撫だけで亜美の秘部は自分でも分かるぐらいに濡れていた。
「は……下着も、もうこんなにぐしょぐしょ……」
「や、あ……」
 足を開かれると下着の上から秘部を撫でられる。蕾をぐりぐりと押されると下半身にしびれが走りもっと快感が欲しくなる。
「はぁ……もうはいてる意味ないな」
 下着のクロッチを避けて宮川の指が遠慮無く亜美の秘部に入っていく。一本、二本と沈められると中の指が動く。
「あっ、それっ……んっ……」
「声が甘くなってきた……」
 楽しそうにそういった宮川は亜美の下着を脱がせると足を開かせていよいよ秘部への刺激を強くしていく。
「や、あっ、ダメ、そこっ……」
「ここか……」
 ぐに、と指を曲げられるとある一点を刺激されて、内股が痺れてくる。もっとと宮川の指を誘い込むのと同時に腰が動いてしまう。
「気持ちよかったら我慢しなくていいからな」
 耳元でそう囁かれて頭を撫でられると亜美は宮川から与えられる刺激にただ身を委ねるしかなかった。
「あ、んっ、いっ、あっ――……」
 声にならない声を上げながら亜美はビクンと身体を震わせて達してしまった。ひくひくと宮川の指を締め付けて、うっすらと瞼を開くと宮川が興奮を隠しきれない表情で亜美を見つめていた。
「上手にイケたな」
 そう言って宮川は亜美の秘部から指を抜くと、その指をそのまま舐めた。意地悪な行動に亜美は枕に顔を隠してしまう。
「なんだよ、恥ずかしがるようなことでもないだろ?」
「恥ずかしいよ!」
 自分で触ったことぐらいはあるけれど、舐められるなんて思ってもいない。きっと宮川は亜美がこうして恥ずかしがることを知りながらやっている。確信犯である分、質が悪い。
「じゃあ、私も……滉の、するから」
 なんとなくやられっぱなしは性に合わなくて亜美は起き上がると宮川がはいているボクサーパンツに手をかけた。
「え、ちょっ……」
「滉のだって、もうこんなになってる」
 ボクサーパンツの上からでも分かる染みを作っているそれを見て、亜美は少しだけ興奮した。パンツを下ろすと中から硬く反りたった熱が出てきて、一瞬目を見開いた。
「……無理にすることないけど」
「……する」
 言ってしまった手前、引き下がることなど出来ない。亜美は宮川の熱を包み込みながらゆっくりと手を上下させた。すると先端から先走りの液体が出てきて、すぐに手の動きはなめらかになっていく。
「ん、は、あぁ……それ、早い……」
「気持ち良くない?」
「いい、けど……ちょっと……」
 少しだけ優位に立ったような気がして亜美は宮川の熱をしごきながらキスをした。すると後頭部を押さえられて下を絡め取られてしまう。翻弄したいのに、結局される側になってしまう。キスに応えながらも亜美は宮川の熱を愛撫した。
「ん、はぁ……すごく、熱いね……」
「く、あ……まぁ、それがお前の中に入るんだけど、な……」
 刺激を我慢しながら宮川はまだ余裕な表情を見せる。それが何だか悔しくて亜美は身を屈めた。
「ん……」
「ちょ、何しっ……あっ……」
 宮川の熱の先端にキスをすると、そのまま熱を舐める。今までこんなことしたことがないのに、宮川のだと思うとしたくなってしまった。苦くて熱い。それなのにどこか愛おしい。
「は、それ、ホントヤバイから、もういいっ……」
「ほんほひ、ひひほ?」
 熱を口に含みながら上目使いで見上げれば宮川は悔しそうな表情を浮かべながらも余裕を取り繕うと笑みを浮かべている。そんな必死な様子が可愛くて、おかしくて、愛おしい。亜美はちゅっと音を立てて宮川の熱から離れていった。
「あ、はぁ……ほんと、こんな時まで意地張るなよ」
「意地悪してきたのそっちじゃない」
 そんな言葉の攻防戦とは裏腹に視線が合うと自然と笑い合ってしまう。触れるだけのキスをすると優しくベッドに寝かされる。
「俺の方が気持ち良くしてやりたいのに」
「やられっぱなしは嫌なの」
「減らず口だな」
 そう言うと宮川は亜美の足を開いて、秘部に触る。これからくる刺激に耐えようと覚悟を決めると亜美の視界から宮川が消えた。その変わり、すぐにその理由が分かる。
「え、あっ……ん……」
「ん、はぁ……」
 秘部に感じたのは宮川の舌だった。熱くぬるっとしたものが秘部を這う。膣の中まで舌が入ると中でうねうねと動き、今までとは違った刺激に亜美も驚いてしまう。
「や、あっ。そんなとこ……ダメだって……」
「ん……そうはいっても、舐めるとどんどん溢れてくる。はぁ……」
 宮川の鼻先が蕾にあたる。それだけでも恥ずかしいのに、宮川から与えられる刺激に感じてしまう自分を止められない。
「あ、いっ……んっ……!」
 またびくりと身体を震わせて達してしまった。初めての経験に身体の力が抜けていく。
「これでもう反撃出来ないだろ」
 手の甲で口元をぬぐった宮川を見て顔が一気に赤くなるのが分かった。何を競い合っているのか分からないけれど、恥ずかしいことだけは確かだ。
「~~バカ」
 もう何かをするまでの気力がなくベッドに身体を預けていると、ピリという音が聞こえてきた。宮川が口で避妊具の袋を開けている。その姿がとても色っぽく見えて、また亜美の心臓はどくどくと音を立ててしまう。
 ぴとりと宮川の熱が亜美の入り口に宛がわれる。ぬるりとした感触、そこから感じる熱さに思わず深呼吸をしてしまう。
「辛かったらちゃんと言えよ」
「ん、大丈夫……」
 ぐっと宮川の熱が押し込まれる。圧迫される感覚を、息を吐くことで受け入れながら、亜美は下腹部を思わず撫でた。
「は、なんか、そういうのされるとやらしい……」
「んっ、あっ……」
 宮川の先端が亜美の奥に当たる。コツンと突かれると亜美は下腹部の上に置いた手をぎゅっと握った。
「全部入った……。奥に当たってるの、わかるか?」
「ん……。はぁ……うん」
 亜美の体型が小さいわけでも、宮川の熱が特別大きいわけでもない。けれど、亜美の身体は奥の方まで宮川の熱を求めている。それが事実だった。
「落ち着くまで待とうと思ったけど、やっぱ無理……」
「ん、あっ……」
 少しずつ亜美の中に収まっていた宮川の熱が動き出す。かすかに聞こえてくる水音に二人の結合部が充分に潤っているのが分かった。それこそどちらの愛液かわからないくらいに熱くて溶けてしまいそうだ。
「お前のなかさ、暖かくて、ぴったりハマって……やっぱ相性がいいんだよ」
 前にも同じことを言われたなとぼんやり思い出す。今思えばお試しで相性がいいということはもっとポジティブな結果に捕らえても良かったのかもしれない。でもお互いの距離が近すぎて、はっきりとした言葉で関係を変えることが出来なかった。
「ん、はぁ……わたしも、気持ちい……」
「ん、俺も……」
 宮川が亜美の頬を包み込みながらキスをする。また、この気持ちの良いキスに翻弄されていると腰の動きがどんどん早くなっていく。
 上からも下からも与えられる刺激に何も考えられなくなっていた。ただ今はこの快感の波に溺れてしまいたいとそう思っていた。
「あっ、んっ、はぁ、あっ……」
「ん、くっ。あっ……」
 ぱちゅんと水音を肌のぶつかり合う音が時折聞こえてくる。ベッドの軋む音や宮川の吐息も全てが亜美を絶頂に導くには充分な刺激だった。
「あ、はぁ、あ……もう、あっ……」
「俺も、そろそろっ……」
 手を繋ぎ、キスをして身を委ねる。
 そんな簡単なことを信頼できる相手としていることに亜美の心は満たされていく。
「はっ、あっ、滉、大好きっ……」
「はっ、今言うなんて、反則……」
 その瞬間、亜美の身体が震えて宮川の熱を締めつけた。
「あ、くっ……」
 そのあと数回腰を打ち付けた宮川は小さく、震えるように息を吐いた。
 その時の宮川の顔が酷く欲情的で、また新たな一面を見つけてしまったと、幸福感に包まれながら目を閉じたのだった。
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