ミッドナイトフレーバー

10.*

抱き上げられてふわりとベッドに下ろされる。改めてこうして向き合うとどこか変な気分になって思わず顔がにやけてしまう。
「なに笑ってんだ」
「いえ。なんか、不思議だなって思って。葉山さんのこと好きって言ってもいいんだって思ったら、なんだか嬉しくて」
　葉山さんの手がスウェットをまくし上げてお腹に触れる。ゴツゴツとした手が肌を滑っていくのがくすぐったくてもどかしい。慣れた手つきでスウェットを脱がされると上半身をさらけ出した状態になってしまう。
「……そういう余裕はすぐになくなるからな」
「え、んっ……」
　唇を塞がれるとすぐに葉山さんの舌先が私の唇をノックした。僅かに開けばそこから入り込んだ舌が私の呼吸を奪っていく。
「大体、俺があんなにシエスタに通ってたのもお前が働いてるからだったんだぞ。マスターに妬いてた」
「あっ、マスターとはそんなんじゃっ、ん……」
　鼻で息をしようとしてもいつもよりも激しく咥内を舐められ、その気持良さに顔が火照っていくのが自分でも分かった。
「そんなこと言ったら私だって山田さんと葉山さんのこと……」
「言っただろ。山田とはそんなんじゃないって」
「でも……」
「黙って。こんなことするのはお前だけだ。今日はもう、我慢しない」
「えっ、ン……」
　ギラつくような瞳に見つめられたかと思うと葉山さんの手が私の乳房を包み込んだ。初めてじゃないのに、乳首を爪先で弾かれるとまるで電流が走ったかのように背筋が痺れた。思いが通じ合うだけでこんなに感じ方が違うのだろうかと意識がもうろうとする。
「は、あ……」
「腰が動いてるな。こっちも弄ってやる」
　身じろいで少し腰を浮かせた好きを見逃さずにスウェットと下着を脱がされてしまった。緩い動作で足を開かされると指が茂みに触れる。湿ったそこを何度科撫でると自分でも濡れているのが分かり、足を閉じようとしてしまう。
「こら。足を広げて」
「は、恥ずかしい……です」
「まぁそういうのも可愛いが」
　ぐっと広げられ、全てを葉山さんに見せる形になってしまい顔を覆った。ふっと、葉山さんの笑う声が聞こえたかと思うと、下半身にぬるっとした感触があり、それが葉山さんの舌だとわかるまでに少し時間がかかった。
「やぁ、葉山さ……だめ、きたな……」
「彩乃に汚いところなんてない。ほら、力を抜いて」
「んぁっ……」
　彩乃、とふいに名前を呼ばれてさらに身体が敏感になってしまい、抵抗する気力すらもなくなってしまった。ただ葉山さんに翻弄されるだけだ。与えられる快感に我慢出来なくなって思わず自分の身体を抱き締める。
「ん、あっ、はやま、さっ……」
　じゅる、と大きな音が聞こえて、その刺激に耐えきれず身体がぶるりと震えた。下半身が痙攣しているのと体中が性感帯になったのかと思うぐらいに鳥肌が立つ。
「良い顔だ。もっと素直に感じて」
　自らの唇を拭うように葉山さんは唇を舐めた。その仕草にまた身体が熱くなるような気がして、うずくまる。
「こーら。まだこれからが本番だ」
　葉山さんがスウェットを脱ぎ捨てるとそこには赤く反り返った葉山さん自身がいた。こんなに大きかったのかと今更になって驚いてしまう。
「えっと、それ……？」
　思わず尋ねてしまう。しかし葉山さんは気にした様子もなく、ゴムを着けると私の太腿に擦り付けてきた。
「初めてじゃないだろ？　あぁ、でもいつもより興奮してるから大きいかもな」
　今までもじっくりと見たことがあるわけじゃないけれど、思わずみじろいでしまう大きさに息を飲んだ。けれど、擦り付けられる度にずくんと身体の奥深くが疼いていくのも分かった。
「大丈夫、もう何も怖くない。俺がずっと一緒にいる」
「葉山さん……」
「出来れば名前で呼んでくれると嬉しいんだが」
　頭を撫でられながら微笑まれて、葉山さんの下の名前を思い出す。
「和希さん……」
「んっ、いいね」
「あっ、んんっ……」
　名前を呼ぶと葉山さん……和希さんの先が私の中に入ってくる。押し上げられるような感覚に思わず身体を強ばらせてしまう。
「ほら、力ぬいて。深呼吸。すーはー」
「あっ、んっ……」
　ぎゅっと手繋がれて和希さんの声に合わせて深呼吸をする。さっきと同じように段々を身体が楽になってきて、力が抜ける。
「ん、良い子、だねっ」
「あっ――」
　和希さんの熱がぐっと奥に入ってきて、痛みよりもその熱さに溶けてしまうのではないかという錯覚に陥る。まるでこのまま一つになってしまうのではないかと、そう思うくらいに。
「は、あぁ、んっ……あつ、い」
「ん、そうだね。彩乃の中も十分熱い」
　耳元で囁かれると脳に直接語りかけられているような気分になり、もう何も考えられなくなってしまう。
「少しずつ動くよ」
「は、い……」
　ゆるり、ゆるりと腰を動かされる度に確かに和希さんの熱が私の中にあるのだと感じて、心も体も満たされていく。
「えへへ……」
「ん？　どうした？」
　最中に笑うなんておかしいと思うけれど、それぐらいに和希さんと一つになったことが嬉しくて思わず自分の下腹部を触ってしまう。
「ここに、和希さんのが入ってるんですね」
「……はぁ、そういうの、煽るだけ、だっ」
「あっ、んっ！」
　私の言葉に和希さんの頬が赤くなっていくのを見て、和希さんも気持良いと思って貰えてるなら嬉しいなとぼんやりと考える。
「今日は俺が満足するまで付き合ってもらうから、な」
「ん、あっ、はぁ、あっ……！」
　激しく腰を打ち付けられて何も考えられなくなってしまう。
　何度達したか分からない。
意識を失う前に見たのは窓の外に見える空が白んでいく景色だった。