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2章 帝国
第49話 傲慢皇子と皇女
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皇宮に来た翌日早朝、私は目玉の部屋に居た。
「どうしよう…すっかり忘れてたよ。大聖堂に持ってく花が無い、今から採りに行ってもいいかな?」
部屋の中を右往左往してる私に、目玉が問いかけてくる。
「採りにって、何処へ?」
「森!どんな花が咲いてるか知らんけど?ここの神様には、禁忌になってる花とかあんのかな」
「何を焦っているんだ?花なら買って来たぞ」
金魚が綺麗な花束をくれた。
「わぁ、ありがとう。あんたって本当に気が利くね、助かったわ」
「ティア、クレア。今日は学園の初日だから、遅刻しないようにね」
「「ありがと、行って来るね」」
私とクレアは大聖堂に来て、信じてない神様に祈りを捧げ、花束を近くにいる聖職者に渡してから学園に向かう。
何故祈りを捧げに行くのかって?
情報収集の為なのだよ、聖女様とやらがいるからね。
私達は、魔術の第二形態を開放させる事に成功したのだ。
知っての通り、クレアは水を氷に変えられ、私は植物を操れるようになったよ。
まだまだ完成度は低いんだけどね、そこは伸びしろがあると思う事にする。
植物なら、切り花でも良い。
祈りを捧げてる間に、ちょっとだけ魔力を流し込む、ちょっとだけね?
普段使ってる持ち物に、その人の魔力が付く事は当たり前の世界だが、付き過ぎると魔力を使って何かすると思われるのも常識。
だから、持って来て祈りを捧げてる時に、魔力付いたよって程度に流すのだ。
魔力の付いた花束は、傍に居る人の声や、音を拾ってくれる。
魔力が少ないから、音を拾う範囲も狭いし、持続時間も短い。
花束が何処に飾られるかは、運次第。
それこそ神頼みってやつ?
聖女の部屋に、飾られますようにって、祈っておこうか。
拾った音は、魔道具を通して聞く事が出来る。
何時、何処で誰が話してるか分かんない声を、ずっと聴いてるの。
その役割は、目玉に押し付けた。
凄~く抵抗されたけど、魔力石使ってるから、王族が身に着けてる方が違和感ないでしょ?
なして嫌がるのって聞いたら、躊躇いつつも耳に着けてくれた。
骨伝導式になってるから、他人に音が漏れる事は無い。
この耳飾りは、クレアの発明品なのだよ。フフン(ドヤ顔)
あ、宝石は、王弟から貰ったよ。
魔道具の研究したいって言ったら、いっぱいくれた。
だからいろんな魔道具作って、お披露目してねって、置いて来た。
さ~て、初日のお花は、何処に飾られるのかな?
楽しみ。
学園に来たら、門前に綺麗な女の子が居た。
「おはようございます。えっと、ルイーズ様ですか?」
「ごきげんよう、オルテンシア伯爵、エルピーダ伯爵。ルイーズ・ベルフールと申します。どうぞお見知りおきを」
彼女はアルフレッド皇子様の婚約者で、ベルフルール侯爵の娘さんだ。
今日はここで待ち合わせてたのだ、敷地がとっても広いから、迷子になるんだって。
「ありがとう、宜しくね。私はカルティア、ティアって呼んで」
「クレアだよ」
「ありがとうございます、ティア様、クレア様。私の事は、イズとお呼び下さいませ」
イズから学園の事を、いろいろ教えて貰ったよ。
教員室の前で目玉達とも合流、そこからは皇子様の案内で、学園長のお部屋にやって来た。
この学園は朝から昼食を挟んで午後も授業があるけど、留学生は単位とか関係ないので、朝礼に出れば出席扱いになるんだって。
無断欠席しなければ良いのだ。
受けたい授業があれば勝手に行って、勝手に受けて来いってスタンスらしい。
好都合ではないか!フフン(ドヤ顔)
目玉はクソ真面目に選択科目を選んでたけど、私達は適当だ。
一通り説明を受けた所で、次は校内を案内して貰った。
午前中かけて全部回れなかったとは…大国の学園恐るべし。
お腹が空いたし、食堂で昼食を摂ってたら、変な人達が来た。
ユリアン第二皇妃(私に暗殺者を送って来てた奴)の息子、エイドリアン皇子と、その妹のアビゲイル皇女だ。
どうやら汚物の臭いは、消えたらしい…
やっぱ優秀な薬術師が、付いてるんだな、消臭効果抜群ではないか。
「アルフレッド、ルイーズどけろ!」
え、いきなり何?
空いてる席に座ればいいじゃん。
「皆様、また後で、失礼…」
皇子様達が立ち上がろうとしたから、止めた。
「待って、食事中に席を移動した数だけ嫁に行くって、私達のお婆様が言ってたの。お行儀が悪いって」
「どの口が言う」
「「あはははは」」
クレアと二人で笑ってたら、エイドリアン皇子がギロリと睨んだけど、なんだよ!
「お前は何様だ?俺が、誰か知っていての狼藉なら、許さんぞ」
「我が国、マルス・ドメスティカの重鎮に、何か御用でしょうか?エイドリアン皇子殿下」
今度は目玉に視線を向けて、鼻で笑ってる。
「お前がルイフォードか?弱小国家の王族が、俺に口答えをするとは、良い度胸だな」
「あら?もしかして…ルイに婚約を破棄された、カルティアかしら?誰の許しを得て、皇族席に着いているの、汚らわしいですわね。身の程を弁えなさい」
「婚約破棄?汚らわしい?それは一体誰…」
「………」
目玉の声音が変わったのより、クレアの怒気のが不味いと思って、咄嗟に声が出た。
「あんたゆんべ、えんこつっぱねた人だべ~?きりょう良しば、わやなって、なまらやばかったっけさ。がおってねか?」
※訳・昨夜汚物まみれになった人だね?美しい顔が台無しになって、体調悪くなってませんか?
「せばここどかすっから、おっちゃんこして、食ってけばいっしょ」
※訳・それでは私達が席を変わります、ここに座って食べてってね♪なんちゃって~てへっ
目玉も、金魚も呆気に取られてるから、きっと通じてないんだろね(笑)
今のは北国の方言ってやつだよ、最近は使ってる人あんまいない。
お年寄りたちの会話は、私達でも何喋ってるか、分かんない時がある。
きっと、今の言葉を理解出来たのは、クレアだけじゃないかな?
無言で、私と一緒に、隣のテーブルへ移ったよ。
良かった、固唾を下げてくれて。
食べかけの食事は、水魔術で移動してた。
お皿一杯あったからね、こう見えてクレアは大食漢なのだよ、私はそうでもないけどね。
それを見てた傲慢皇子は、クレアに興味が移ったらしくて、隣に座って来た。
「せっかく席を譲ってあげたのに、なんでこっち来るの?」
私の問いかけは聞こえなかったらしい、クレアに話しかけてた。
「お前は誰だ?名を名乗れ」
「そんな問いかけに、答えるクレアじゃないよ」
「なんだと?」
「………」
ほらね、そっぽ向かれてる。
「初めまして、私はカルティア・オルテンシア。その子は従姉妹のクレアナ・エルピーダ、内気だからあんま喋らないの。で、あんたは誰?」
わざとらしく聞いてやったら、ムッとした顔してたけど、自己紹介してくれた。
「聞いていなかったのか?俺はこの国の皇子だ。中等科の三年で、生徒会長をしている。クレアナ、生徒会に入れ」
「何よいきなり、入る訳ないじゃん」
「カルティア、お前には聞いていない。余計な口を聞くな」
「断る!ティアに優しくない人、大嫌い」
「………そうか」
クレアに嫌われて、黙っちゃった(笑)
さっきまでの威勢は何処行ったんだろ、お出かけしたのかな?
しおらしくなっちゃって、何なんだこの男は、二重人格?
王族とか、皇族って、皆こんな感じなのかね…
皇女様は、私が立ち上がった瞬間、押し退ける様にして目玉の隣に座ってた。
目玉の、あの恐ろしい表情を見て気にならないとか、強者だと思ったよ。
そして昼食後は、この二人も加わって学園内を回った…なんでよ!
「皇子様達は学園長から案内役頼まれてたけど、あんた達は授業出なくていいの?サボりじゃね」
「まぁ、なんと醜い言葉使い。耳が汚れますわ」
あ…皇女様とは、仲良く出来ないタイプなのね、残念。
「マナー出来てなくて、ごめんね。私達の事は気にしなくていいよ、山から下りて来た、猿だとでも思ってて」
「猿じゃなくて、ゴリラだろ」
「ちょっと金魚の糞、聞こえてるぞ。あんなに賢くて優しい動物と、私達を一緒にしないで、大猩猩に失礼だわ」
「そうだ、失礼だ」
「アッハッハッハ。可笑しな奴等だな、怒り方が違うだろ。そもそも普通の令嬢は、自身を猿に例えないだろ」
傲慢皇子が、腹を抱えて笑ってる。
「笑う所じゃなくね?」
その後は普通に案内して貰って、お茶の時間に突入したんだけど、相変わらず主導権は傲慢皇子が握ってる。
飲み物も、席順も全部自分で決めないと、気が済まないタイプらしい…
そして、どうやらクレアを気に入ったようだ。
「クレアナ、この茶は旨いだろう、東の商人から取り寄せている物だ」
「抹茶でしょ、知ってるよ。練り切りと一緒に飲みたいよね、洋菓子には合わないわ」
「何故、カルティアが答える。俺は、クレアナに聞いているんだぞ」
「クレア無口だもん」
「クレアナ、観劇は好きか?今流行りの…」
「観劇って、劇場でやる奴?何時間も椅子に座ってるんだよね、無理だわ」
「カルティアには聞いていないと、何度言えば分かる。少し黙っていろ」
「クレアの事なら何でも教えてあげるのに、私を敵に回していいの?」
「いや………それは…」
また黙っちゃった、変な奴。
傲慢はほっといて、気になったのは、お上品なアルフレッド皇子様達なんだよね…
ずっと無言で私達の後ろを、使用人みたいにして付いて来るの。
今も離れたテーブルに着いてて、こっちの様子を伺ってるだけだし。
帝都へ来る前に、暗殺者からある程度の状況は聞いてたけど、想像以上に酷い扱いだわ。
それに、朝からずっと気になってたんだけど、お上品皇子様がおかしい。
生き物の気配が、感じられないの。
初対面の時とは、別人みたい、てか人形みたい。
何かのスキルなのかな?
だったら、詮索するのは失礼だよね。
目玉?
目玉はね、金魚の糞と一緒に、滅茶苦茶怖い顔して皇女様の話聞いてるわ(笑)
どうやら彼女は、目玉が気に入った様だ。
留学生活初日が終わって、やっと解放された~
部屋に戻って、ポチを抱きしめお茶を飲む。
ちょっとここで、頭の中を整理しようか。
帝国の皇帝は、現在55歳、三人の妃が居る。
皇后55歳、第一皇妃50歳、第二皇妃38歳。
皇后との間には息子が一人、現在病気療養中になっている、皇太子殿下35歳だ。
第一皇妃との間には娘が二人居たが、帝国は男子にしか皇位継承権を認めていないので、嫁に行って皇族席から抜けてる。
そしてユリアン第二皇妃にはエイドリアン皇子15歳と、アビゲイル皇女13歳が居る。
私達と同学年の、アルフレッド皇子は、皇太子殿下の息子だ。
つまり、アルフレッド皇子が産まれなければ、時期皇帝は、エイドリアンになる筈だった。
ややこしいな…
皇太子殿下は、復帰出来ないって、言われてるからね。
ユリアン第二皇妃は、エイドリアン皇子を時期皇帝にしようと、今でも企んでる。
そして、何故私に暗殺者を送って来てたのかは、よく分からない。
それはさて置き、この宮殿はユリアン皇妃に牛耳られていた。
なんで?
皇后は全くの無関心で、皇太子妃は政務に忙しくて、姿を現さないらしい。
お陰で、アルフレッド皇子様は、肩身の狭い思いで過ごしてる。
あの人形みたいなスキルは、身を守る為の物かもしらん。
お家騒動なんて、よくある話だもんね。
大変だなって思う。
そう言えば…皇太子殿下って療養中になってるけど、何時からなんだろ?
誰が面倒を見てるのかな…
皇太子妃は、何処で政務をしてんの?
皇太子殿下の分もお仕事してるらしいから、顔を出さないのは仕方ないのかね?
第一皇妃は、何処行ったんだろ、噂も聞かないな…
一番権限が無い、ユリアン第二皇妃を野放しにしてんのは、何で?
この皇宮の宮仕え達は、何を考えてんだろ。
学園での態度を見てたら、傲慢とお上品の関係も、複雑そうだよね…
「どうしよう…すっかり忘れてたよ。大聖堂に持ってく花が無い、今から採りに行ってもいいかな?」
部屋の中を右往左往してる私に、目玉が問いかけてくる。
「採りにって、何処へ?」
「森!どんな花が咲いてるか知らんけど?ここの神様には、禁忌になってる花とかあんのかな」
「何を焦っているんだ?花なら買って来たぞ」
金魚が綺麗な花束をくれた。
「わぁ、ありがとう。あんたって本当に気が利くね、助かったわ」
「ティア、クレア。今日は学園の初日だから、遅刻しないようにね」
「「ありがと、行って来るね」」
私とクレアは大聖堂に来て、信じてない神様に祈りを捧げ、花束を近くにいる聖職者に渡してから学園に向かう。
何故祈りを捧げに行くのかって?
情報収集の為なのだよ、聖女様とやらがいるからね。
私達は、魔術の第二形態を開放させる事に成功したのだ。
知っての通り、クレアは水を氷に変えられ、私は植物を操れるようになったよ。
まだまだ完成度は低いんだけどね、そこは伸びしろがあると思う事にする。
植物なら、切り花でも良い。
祈りを捧げてる間に、ちょっとだけ魔力を流し込む、ちょっとだけね?
普段使ってる持ち物に、その人の魔力が付く事は当たり前の世界だが、付き過ぎると魔力を使って何かすると思われるのも常識。
だから、持って来て祈りを捧げてる時に、魔力付いたよって程度に流すのだ。
魔力の付いた花束は、傍に居る人の声や、音を拾ってくれる。
魔力が少ないから、音を拾う範囲も狭いし、持続時間も短い。
花束が何処に飾られるかは、運次第。
それこそ神頼みってやつ?
聖女の部屋に、飾られますようにって、祈っておこうか。
拾った音は、魔道具を通して聞く事が出来る。
何時、何処で誰が話してるか分かんない声を、ずっと聴いてるの。
その役割は、目玉に押し付けた。
凄~く抵抗されたけど、魔力石使ってるから、王族が身に着けてる方が違和感ないでしょ?
なして嫌がるのって聞いたら、躊躇いつつも耳に着けてくれた。
骨伝導式になってるから、他人に音が漏れる事は無い。
この耳飾りは、クレアの発明品なのだよ。フフン(ドヤ顔)
あ、宝石は、王弟から貰ったよ。
魔道具の研究したいって言ったら、いっぱいくれた。
だからいろんな魔道具作って、お披露目してねって、置いて来た。
さ~て、初日のお花は、何処に飾られるのかな?
楽しみ。
学園に来たら、門前に綺麗な女の子が居た。
「おはようございます。えっと、ルイーズ様ですか?」
「ごきげんよう、オルテンシア伯爵、エルピーダ伯爵。ルイーズ・ベルフールと申します。どうぞお見知りおきを」
彼女はアルフレッド皇子様の婚約者で、ベルフルール侯爵の娘さんだ。
今日はここで待ち合わせてたのだ、敷地がとっても広いから、迷子になるんだって。
「ありがとう、宜しくね。私はカルティア、ティアって呼んで」
「クレアだよ」
「ありがとうございます、ティア様、クレア様。私の事は、イズとお呼び下さいませ」
イズから学園の事を、いろいろ教えて貰ったよ。
教員室の前で目玉達とも合流、そこからは皇子様の案内で、学園長のお部屋にやって来た。
この学園は朝から昼食を挟んで午後も授業があるけど、留学生は単位とか関係ないので、朝礼に出れば出席扱いになるんだって。
無断欠席しなければ良いのだ。
受けたい授業があれば勝手に行って、勝手に受けて来いってスタンスらしい。
好都合ではないか!フフン(ドヤ顔)
目玉はクソ真面目に選択科目を選んでたけど、私達は適当だ。
一通り説明を受けた所で、次は校内を案内して貰った。
午前中かけて全部回れなかったとは…大国の学園恐るべし。
お腹が空いたし、食堂で昼食を摂ってたら、変な人達が来た。
ユリアン第二皇妃(私に暗殺者を送って来てた奴)の息子、エイドリアン皇子と、その妹のアビゲイル皇女だ。
どうやら汚物の臭いは、消えたらしい…
やっぱ優秀な薬術師が、付いてるんだな、消臭効果抜群ではないか。
「アルフレッド、ルイーズどけろ!」
え、いきなり何?
空いてる席に座ればいいじゃん。
「皆様、また後で、失礼…」
皇子様達が立ち上がろうとしたから、止めた。
「待って、食事中に席を移動した数だけ嫁に行くって、私達のお婆様が言ってたの。お行儀が悪いって」
「どの口が言う」
「「あはははは」」
クレアと二人で笑ってたら、エイドリアン皇子がギロリと睨んだけど、なんだよ!
「お前は何様だ?俺が、誰か知っていての狼藉なら、許さんぞ」
「我が国、マルス・ドメスティカの重鎮に、何か御用でしょうか?エイドリアン皇子殿下」
今度は目玉に視線を向けて、鼻で笑ってる。
「お前がルイフォードか?弱小国家の王族が、俺に口答えをするとは、良い度胸だな」
「あら?もしかして…ルイに婚約を破棄された、カルティアかしら?誰の許しを得て、皇族席に着いているの、汚らわしいですわね。身の程を弁えなさい」
「婚約破棄?汚らわしい?それは一体誰…」
「………」
目玉の声音が変わったのより、クレアの怒気のが不味いと思って、咄嗟に声が出た。
「あんたゆんべ、えんこつっぱねた人だべ~?きりょう良しば、わやなって、なまらやばかったっけさ。がおってねか?」
※訳・昨夜汚物まみれになった人だね?美しい顔が台無しになって、体調悪くなってませんか?
「せばここどかすっから、おっちゃんこして、食ってけばいっしょ」
※訳・それでは私達が席を変わります、ここに座って食べてってね♪なんちゃって~てへっ
目玉も、金魚も呆気に取られてるから、きっと通じてないんだろね(笑)
今のは北国の方言ってやつだよ、最近は使ってる人あんまいない。
お年寄りたちの会話は、私達でも何喋ってるか、分かんない時がある。
きっと、今の言葉を理解出来たのは、クレアだけじゃないかな?
無言で、私と一緒に、隣のテーブルへ移ったよ。
良かった、固唾を下げてくれて。
食べかけの食事は、水魔術で移動してた。
お皿一杯あったからね、こう見えてクレアは大食漢なのだよ、私はそうでもないけどね。
それを見てた傲慢皇子は、クレアに興味が移ったらしくて、隣に座って来た。
「せっかく席を譲ってあげたのに、なんでこっち来るの?」
私の問いかけは聞こえなかったらしい、クレアに話しかけてた。
「お前は誰だ?名を名乗れ」
「そんな問いかけに、答えるクレアじゃないよ」
「なんだと?」
「………」
ほらね、そっぽ向かれてる。
「初めまして、私はカルティア・オルテンシア。その子は従姉妹のクレアナ・エルピーダ、内気だからあんま喋らないの。で、あんたは誰?」
わざとらしく聞いてやったら、ムッとした顔してたけど、自己紹介してくれた。
「聞いていなかったのか?俺はこの国の皇子だ。中等科の三年で、生徒会長をしている。クレアナ、生徒会に入れ」
「何よいきなり、入る訳ないじゃん」
「カルティア、お前には聞いていない。余計な口を聞くな」
「断る!ティアに優しくない人、大嫌い」
「………そうか」
クレアに嫌われて、黙っちゃった(笑)
さっきまでの威勢は何処行ったんだろ、お出かけしたのかな?
しおらしくなっちゃって、何なんだこの男は、二重人格?
王族とか、皇族って、皆こんな感じなのかね…
皇女様は、私が立ち上がった瞬間、押し退ける様にして目玉の隣に座ってた。
目玉の、あの恐ろしい表情を見て気にならないとか、強者だと思ったよ。
そして昼食後は、この二人も加わって学園内を回った…なんでよ!
「皇子様達は学園長から案内役頼まれてたけど、あんた達は授業出なくていいの?サボりじゃね」
「まぁ、なんと醜い言葉使い。耳が汚れますわ」
あ…皇女様とは、仲良く出来ないタイプなのね、残念。
「マナー出来てなくて、ごめんね。私達の事は気にしなくていいよ、山から下りて来た、猿だとでも思ってて」
「猿じゃなくて、ゴリラだろ」
「ちょっと金魚の糞、聞こえてるぞ。あんなに賢くて優しい動物と、私達を一緒にしないで、大猩猩に失礼だわ」
「そうだ、失礼だ」
「アッハッハッハ。可笑しな奴等だな、怒り方が違うだろ。そもそも普通の令嬢は、自身を猿に例えないだろ」
傲慢皇子が、腹を抱えて笑ってる。
「笑う所じゃなくね?」
その後は普通に案内して貰って、お茶の時間に突入したんだけど、相変わらず主導権は傲慢皇子が握ってる。
飲み物も、席順も全部自分で決めないと、気が済まないタイプらしい…
そして、どうやらクレアを気に入ったようだ。
「クレアナ、この茶は旨いだろう、東の商人から取り寄せている物だ」
「抹茶でしょ、知ってるよ。練り切りと一緒に飲みたいよね、洋菓子には合わないわ」
「何故、カルティアが答える。俺は、クレアナに聞いているんだぞ」
「クレア無口だもん」
「クレアナ、観劇は好きか?今流行りの…」
「観劇って、劇場でやる奴?何時間も椅子に座ってるんだよね、無理だわ」
「カルティアには聞いていないと、何度言えば分かる。少し黙っていろ」
「クレアの事なら何でも教えてあげるのに、私を敵に回していいの?」
「いや………それは…」
また黙っちゃった、変な奴。
傲慢はほっといて、気になったのは、お上品なアルフレッド皇子様達なんだよね…
ずっと無言で私達の後ろを、使用人みたいにして付いて来るの。
今も離れたテーブルに着いてて、こっちの様子を伺ってるだけだし。
帝都へ来る前に、暗殺者からある程度の状況は聞いてたけど、想像以上に酷い扱いだわ。
それに、朝からずっと気になってたんだけど、お上品皇子様がおかしい。
生き物の気配が、感じられないの。
初対面の時とは、別人みたい、てか人形みたい。
何かのスキルなのかな?
だったら、詮索するのは失礼だよね。
目玉?
目玉はね、金魚の糞と一緒に、滅茶苦茶怖い顔して皇女様の話聞いてるわ(笑)
どうやら彼女は、目玉が気に入った様だ。
留学生活初日が終わって、やっと解放された~
部屋に戻って、ポチを抱きしめお茶を飲む。
ちょっとここで、頭の中を整理しようか。
帝国の皇帝は、現在55歳、三人の妃が居る。
皇后55歳、第一皇妃50歳、第二皇妃38歳。
皇后との間には息子が一人、現在病気療養中になっている、皇太子殿下35歳だ。
第一皇妃との間には娘が二人居たが、帝国は男子にしか皇位継承権を認めていないので、嫁に行って皇族席から抜けてる。
そしてユリアン第二皇妃にはエイドリアン皇子15歳と、アビゲイル皇女13歳が居る。
私達と同学年の、アルフレッド皇子は、皇太子殿下の息子だ。
つまり、アルフレッド皇子が産まれなければ、時期皇帝は、エイドリアンになる筈だった。
ややこしいな…
皇太子殿下は、復帰出来ないって、言われてるからね。
ユリアン第二皇妃は、エイドリアン皇子を時期皇帝にしようと、今でも企んでる。
そして、何故私に暗殺者を送って来てたのかは、よく分からない。
それはさて置き、この宮殿はユリアン皇妃に牛耳られていた。
なんで?
皇后は全くの無関心で、皇太子妃は政務に忙しくて、姿を現さないらしい。
お陰で、アルフレッド皇子様は、肩身の狭い思いで過ごしてる。
あの人形みたいなスキルは、身を守る為の物かもしらん。
お家騒動なんて、よくある話だもんね。
大変だなって思う。
そう言えば…皇太子殿下って療養中になってるけど、何時からなんだろ?
誰が面倒を見てるのかな…
皇太子妃は、何処で政務をしてんの?
皇太子殿下の分もお仕事してるらしいから、顔を出さないのは仕方ないのかね?
第一皇妃は、何処行ったんだろ、噂も聞かないな…
一番権限が無い、ユリアン第二皇妃を野放しにしてんのは、何で?
この皇宮の宮仕え達は、何を考えてんだろ。
学園での態度を見てたら、傲慢とお上品の関係も、複雑そうだよね…
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修学旅行中のバスが異世界に転落!?
単身目覚めた少年は「友との再会・元世界へ帰る道」をさがす旅に歩み出すが……
構想8年・執筆3年超の長編ファンタジー!
※1話5分程度。
※各章トップに表紙イラストを挿入しています(自作低クオリティ笑)。
〜以下、あらすじ〜
市立南町中学校3年生は卒業前の『思い出作り』を楽しみにしつつ修学旅行出発の日を迎えた。
しかし、賀川篤樹(かがわあつき)が乗る3年2組の観光バスが交通事故に遭い数十mの崖から転落してしまう。
車外に投げ出された篤樹は事故現場の崖下ではなく見たことも無い森に囲まれた草原で意識を取り戻した。
助けを求めて叫ぶ篤樹の前に現れたのは『腐れトロル』と呼ばれる怪物。明らかな殺意をもって追いかけて来る腐れトロルから逃れるために森の中へと駆け込んだ篤樹……しかしついに追い詰められ絶対絶命のピンチを迎えた時、エシャーと名乗る少女に助けられる。
特徴的な尖った耳を持つエシャーは『ルエルフ』と呼ばれるエルフ亜種族の少女であり、彼女達の村は外界と隔絶された別空間に存在する事を教えられる。
『ルー』と呼ばれる古代魔法と『カギジュ』と呼ばれる人造魔法、そして『サーガ』と呼ばれる魔物が存在する異世界に迷い込んだことを知った篤樹は、エシャーと共にルエルフ村を出ることに。
外界で出会った『王室文化法暦省』のエリート職員エルグレド、エルフ族の女性レイラという心強い協力者に助けられ、篤樹は元の世界に戻るための道を探す旅を始める。
中学3年生の自分が持っている知識や常識・情報では理解出来ない異世界の旅の中、ここに『飛ばされて来た』のは自分一人だけではない事を知った篤樹は、他の同級生達との再会に期待を寄せるが……
不易流行の本格長編王道ファンタジー作品!
筆者推奨の作品イメージ歌<乃木坂46『夜明けまで強がらなくていい』2019>を聴きながら映像化イメージを膨らませつつお読み下さい!
※本作品は「小説家になろう」「エブリスタ」「カクヨム」にも投稿しています。各サイト読者様の励ましを糧についに完結です。
※少年少女文庫・児童文学を念頭に置いた年齢制限不要な表現・描写の異世界転移ファンタジー作品です。
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