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2章 帝国
第47話 歓迎じゃないパーティ
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皇子様が迎えに来てくれたから、皆で会場へ向かったよ。
でっかい扉が開いてたから、中に入ったんだけど、凄い人!
「オルテンシアの領民より、多そうだね」
「うん、人凄い」
「私、こんな沢山人が居るパーティに出たの、初めてだわ」
「うん、初めて」
「初めてなのですか?」
皇子様がビックリして私達を見たよ。
「うちは北のド田舎だからね、王都に出たのは最近なんだわ」
「そうでしたか…人酔いするようでしたら、遠慮無く教えて下さい」
「ありがとね」
「分かった」
「ティア、クレア。分かっているとは思うけれど、大人しくしていてね。僕達の傍を、離れてはいけないよ」
「「うん、分かった」」
目玉が笑顔を向けてくれたけど、どこか引っ掛かる。
金魚の糞も仏頂面してるし、どしたんだろ。
帯剣許されなかったからかな?
私のマジックボックスで預かってるから、何時でも取り出せるのに…
「凄いごちそう!」
クレアが私の袖をクイクイって摘まんで、料理に視線を向けた。
「何あれ!山、山なの?どやって取り分けるの?」
テーブルには、見た事も無い料理が天井に届きそうな位、綺麗に盛り付けられてた。
私達のはしゃぎ声が聞こえた人達から嘲笑されたけど、なんかそんなのどうでもいいや。
「あの料理は飾りですから、取り分ける事はないのです」
「え、偽物?」
皇子様の言葉に、クレアがビックリしてるけど、私もビックリしてる。
だって、凄く美味しそうな匂いだし、食べられそうなんだもの。
「味付けは、してあると思います。私も食した事がありませんので、ハッキリとはお答え出来ませんが…」
「そうなの?え、だって、私達も食べちゃ駄目って聞いてるけど…それなら、あの料理は、誰が食べるの?宮仕え達が食べるの」
「誰にも食べられる事はありませんよ。皇族が出す料理に、使用人が手を出そうものなら、その場で処刑されてしまいますからね。パーティが終わりましたら、全て捨ててしまうのです」
「嘘でしょ、だったら何の為に作ってるの?捨てるだけの為なら、料理なんて出さなくてよくない?」
「豪華な料理を、富の象徴として見せるのが、最近の流行なのです」
「「マジか」」
私は、帝国にいる貧民街の人々を思い出してた。
富の象徴ってなんだよ…意味が分からん。
その時オーケストラの演奏が聞こえて来て、大階段の上から皇帝夫妻を筆頭に、皇族達が次々と姿を現した。
「あれ?あ…」
目玉に、口を塞がれたよ。
なんで?
皇族の顔や家系図は、帝国へ来てからマナーとして教わってたから、覚えてる。
皇太子殿下夫妻が欠席なのは知ってるけど…
その皇太子殿下の息子である皇子様がここに居るのに、皇位継承権の低い他の皇族があそこから出て来るのがおかしいって事位、私にも分かるんだわ。
常識から言ったら、国賓である目玉も、あそこから出て来るんじゃないのか?
それなのに、こんな入り口の傍で立ってるのは、どゆ事?
皇帝がパーティの開催を告げたけど、目玉の紹介は無かったよ。
「ティア、言いたい事は分かるけれど、今は大人しくしていようね」
目玉が、耳元で呟いた。
成る程、二人の様子がおかしかったのは、最初から知ってたんだ。
さっき皇子様と話してたって言ってたから、その時に聞いたのかもね。
帝国の貴族連中が、皇帝に挨拶を始めた。
私達が居るのは入り口付近で、皇族が居るのはホールの一番奥。
つまり、このパーティに招待された人達の中で、挨拶すら許されない身分だと判断されたって事だ。
皇妃がこっちに、嫌な笑顔を向けて来た。
目が合った訳じゃないから、居場所が分かってて挑発したんだろね。
「ふ~ん…そゆ扱いなんだ、だったらこっちだって、大人しくする必要ないよね」
「うん、喧嘩売ったのあっち」
私達が動こうとしたけど、目玉と金魚に止められた。
首を左右に振って「耐えろ」って、目で訴えて来る…
けどね、私達は野生児なんだわ、売られた喧嘩は買う主義なんだよ。
オルテンシアでは、そう教育されてんの、それでも我慢しろっての?
「国賓に対して、この様な扱いをする事、どうか穏便にして頂けないでしょうか。私の力及ばず、大変心苦しく思っています」
皇子様が、肩身の狭い思いをしてる事は、暗殺者からの情報で知ってたよ。
でもさ、悪いけど、無理だわ。
こんな茶番に付き合う程、私は穏やかじゃないんだよ。
帝国に来たら、ポチには姿を消すように伝えてある。
神獣なんて見せたら、絶対差し出せって言うに決まってるし、逆らえないって目玉が言ってたからね。
でもさ、姿は見えなくても、ちゃんと側に居るんだよ。
私はさっきの下剤に、のし付けて返してあげた。
人に薬盛るとか、有り得ないんだわ。
盛られた人がどんだけ苦しむのか、自分の身体で思い知れ!
皇妃の顔が歪みだした…
急いで戻ろうとしたみたいだけど、動かなきゃ我慢出来たのかもしんないね、物凄い音と悪臭を放って汚物を撒き散らしたわ。
即効性あるし用量守ってないからね、脱水症状起こすだろうけど、薬術師が助けてくれるんじゃね?
知らんけど。
ついでにポチがやってくれた。
汚物を、皇帝達の頭から掛かる様にしてって、頼んだのよ。
私は、見て来たから知ってるの。
スラム街では、汚物がきちんと処理されてない事を…
皇妃一人のだけじゃ、あそこまで汚れないからね。
一時だろうけどスラム街も綺麗になるし、仕返しも出来て、一石二鳥じゃね?
お陰様で?貴族達も巻き込まれてたんだけど、彼らも同罪だったんだね。
だってさ、ポチは人を見分ける能力があるんだもの、善人に悪さはしないのだ。
汚物まみれになった連中はパニック起こしてるし、パーティは中止だな(笑)
しれっと料理もいただいたし、堂々と帰れるよね。
クレアが結界で守ってくれてたから、料理は汚れていないのだ。
持ち去った事がバレない様に、騒ぎでテーブルをひっくり返しておいたから、大丈夫でしょう。
これは序章だ、目玉の顔に泥塗っておいて、この程度で済むと思うなよ。
「こ…これは一体何事ですか。すみません、ルイフォード殿下、パーティは中止のようです。お部屋までお送り致します」
「その様ですね。私達の事は気になさらず、会場内の確認をして来て下さい」
「では、お言葉に甘えて…気を付けてお戻り下さい」
「「皇子様、又明日」」
「また明日。ごきげんよう」
私達は皇子様に挨拶して、目玉の部屋に来たよ。
さっき貰った料理を、皆で堪能するのだ。
「お腹空いてたんだ~。お菓子じゃ物足りないもんね、皆で食べよう」
「美味しいね」
「ほら、あんた達も沢山食べて、大きくおなり」
私は、上の空になってる目玉と金魚の糞に、特大チキンを丸ごと皿に乗せてあげた。
「大丈夫だって、私の出す料理に毒なんて入れてないから、安心しなよ」
「そんな心配はしていないよ…その…さっきの騒ぎは…」
きっと目玉は、私が犯人だって気付いてるんだろうけど、言えないよね。
何処で、誰が聞いてるか、分からないんだもの。
「ビックリしたね~脱水症状起こしてないと良いね~あ、優秀な薬術師が居るみたいだから、心配ないか。なんせ惚れ薬作っちゃう様な、非人道的な事を平気でする術師なんだもの」
私は、気の毒そうに言ってみた。
「ここの連中は、安心出来ない」
クレアの言う通りだ。
私達は留学中皇宮に滞在する予定だったけど、あんな対応されるなら、ここが安全とは思えないよね。
「王弟にに頼んで、寮に入れて貰おうよ、きっと許可出るよ」
「うん…そうだね。ここは安全じゃないから、ティア達は寮に入れる様、手続きをしておくね」
「なんで私達だけ?一緒に入ろうよ」
「僕は…アルフレッド皇子と親しくなりたいから、ここに残るよ」
なんで?
王弟から、何か言われてるのかな?
だったら無理強い出来ないか…
「………分かった。変な事されたら、ちゃんと報告してよ」
「うん。約束する」
さて、次はどんな嫌がらせをしてやろうかしら?
意地悪な事を考えるのって、案外難しいよね、思いつかないわ。
考え込んでたら、お呼び出しがかかったぞ。
パーティ会場とは違う、広いホールに集められてるけど、何が始まるんだろ。
「呪術師来た」
クレアが見てる方に視線を向けて見た。
「金枠だ。へ~帝国って厳しいのかと思ってたけど、設定、滅茶苦茶低くない?」
「そこなんだね、ティアが気になる所って」
目玉が笑ってる。
「何か可笑しかった?」
「お前さ、少しは警戒しろよ。呪術師が来たって事は、尋問が始まるって事だろ」
「「へ~」」
「へ~!じゃないだろ、クレアナは兎も角、カルティアは呪術師だろ。さっきルイの部屋で、やってたじゃないか」
「「確かに」」
「ハルト、ティアを刺激してはいけないよ。僕達は帝国へ来たばかりなのだからね」
「そうだった、すまん。対応が余りにも酷過ぎて…」
「うん、我慢させているのは、分かっている」
「金魚の糞、案ずるな。私だって王様から上級免許貰ったんだ。他国の呪術師に、負けるつもりは無い」
「そうだぞ、ティアは負けない」
「クレア迄、ティアを煽ってはいけないよ」
「「フフン(ドヤ顔)」」
「………」
最早、何を言っても無駄だと思われた事を、私は気付いて無かった。
ここの連中は、目玉を国賓として扱う気は無いらしい。
椅子もテーブルも無い、飲み物すら出さないとは、絶対嫌がらせだろ。
しかも他国の王族相手に尋問するとか、とことん舐め腐ってる。
だったら受けて立つさ、二度と刃向えない様にしてやる。
入って来た呪術師達は三人だ、この距離からでも分かる、私より格下だって事が。
お爺様が言ってたんだよ、力量ってもんは、肌で感じる事が出来るって。
それが出来る様になって、初めて一人前の術師として認められるんだ。
呪術師になりたての頃は、全く分からなかったんだけど、今ならちゃんと理解出来る。
帝国の呪術師達が、一人ずつ尋問を始めた。
「お手並み拝見させて貰うかって思ったけど…お話にならんな」
「遅いね」
「あれは、態とか?まさかとは思うが、数日このホールに閉じ込めておく気じゃないよな?」
「その可能性は、否定出来ないね。それに…この位置からだと、僕達の順番は一番最後になるようだから、犯人として突き出される可能性もあるだろうね」
「カルティア、手紙持って無いか?通信用魔道具は、妨害されて使えないんだ。王都へ報告したい」
「あ?報告してどうする。助けが来る迄待つ気なの?私は御免だわ、こんな下らない事に、付き合う必要なんて無いよね」
「おい、待て…」
「ハルト、ティアの好きにさせてあげよう」
「しかし…」
「帝国へ入ってから、ずっと我慢を強いて来たからね、ここら辺が限界なんだよ」
「……分かった。お前が言うなら、俺は従うだけだ」
「仲良し」
「「ははっ」」
でっかい扉が開いてたから、中に入ったんだけど、凄い人!
「オルテンシアの領民より、多そうだね」
「うん、人凄い」
「私、こんな沢山人が居るパーティに出たの、初めてだわ」
「うん、初めて」
「初めてなのですか?」
皇子様がビックリして私達を見たよ。
「うちは北のド田舎だからね、王都に出たのは最近なんだわ」
「そうでしたか…人酔いするようでしたら、遠慮無く教えて下さい」
「ありがとね」
「分かった」
「ティア、クレア。分かっているとは思うけれど、大人しくしていてね。僕達の傍を、離れてはいけないよ」
「「うん、分かった」」
目玉が笑顔を向けてくれたけど、どこか引っ掛かる。
金魚の糞も仏頂面してるし、どしたんだろ。
帯剣許されなかったからかな?
私のマジックボックスで預かってるから、何時でも取り出せるのに…
「凄いごちそう!」
クレアが私の袖をクイクイって摘まんで、料理に視線を向けた。
「何あれ!山、山なの?どやって取り分けるの?」
テーブルには、見た事も無い料理が天井に届きそうな位、綺麗に盛り付けられてた。
私達のはしゃぎ声が聞こえた人達から嘲笑されたけど、なんかそんなのどうでもいいや。
「あの料理は飾りですから、取り分ける事はないのです」
「え、偽物?」
皇子様の言葉に、クレアがビックリしてるけど、私もビックリしてる。
だって、凄く美味しそうな匂いだし、食べられそうなんだもの。
「味付けは、してあると思います。私も食した事がありませんので、ハッキリとはお答え出来ませんが…」
「そうなの?え、だって、私達も食べちゃ駄目って聞いてるけど…それなら、あの料理は、誰が食べるの?宮仕え達が食べるの」
「誰にも食べられる事はありませんよ。皇族が出す料理に、使用人が手を出そうものなら、その場で処刑されてしまいますからね。パーティが終わりましたら、全て捨ててしまうのです」
「嘘でしょ、だったら何の為に作ってるの?捨てるだけの為なら、料理なんて出さなくてよくない?」
「豪華な料理を、富の象徴として見せるのが、最近の流行なのです」
「「マジか」」
私は、帝国にいる貧民街の人々を思い出してた。
富の象徴ってなんだよ…意味が分からん。
その時オーケストラの演奏が聞こえて来て、大階段の上から皇帝夫妻を筆頭に、皇族達が次々と姿を現した。
「あれ?あ…」
目玉に、口を塞がれたよ。
なんで?
皇族の顔や家系図は、帝国へ来てからマナーとして教わってたから、覚えてる。
皇太子殿下夫妻が欠席なのは知ってるけど…
その皇太子殿下の息子である皇子様がここに居るのに、皇位継承権の低い他の皇族があそこから出て来るのがおかしいって事位、私にも分かるんだわ。
常識から言ったら、国賓である目玉も、あそこから出て来るんじゃないのか?
それなのに、こんな入り口の傍で立ってるのは、どゆ事?
皇帝がパーティの開催を告げたけど、目玉の紹介は無かったよ。
「ティア、言いたい事は分かるけれど、今は大人しくしていようね」
目玉が、耳元で呟いた。
成る程、二人の様子がおかしかったのは、最初から知ってたんだ。
さっき皇子様と話してたって言ってたから、その時に聞いたのかもね。
帝国の貴族連中が、皇帝に挨拶を始めた。
私達が居るのは入り口付近で、皇族が居るのはホールの一番奥。
つまり、このパーティに招待された人達の中で、挨拶すら許されない身分だと判断されたって事だ。
皇妃がこっちに、嫌な笑顔を向けて来た。
目が合った訳じゃないから、居場所が分かってて挑発したんだろね。
「ふ~ん…そゆ扱いなんだ、だったらこっちだって、大人しくする必要ないよね」
「うん、喧嘩売ったのあっち」
私達が動こうとしたけど、目玉と金魚に止められた。
首を左右に振って「耐えろ」って、目で訴えて来る…
けどね、私達は野生児なんだわ、売られた喧嘩は買う主義なんだよ。
オルテンシアでは、そう教育されてんの、それでも我慢しろっての?
「国賓に対して、この様な扱いをする事、どうか穏便にして頂けないでしょうか。私の力及ばず、大変心苦しく思っています」
皇子様が、肩身の狭い思いをしてる事は、暗殺者からの情報で知ってたよ。
でもさ、悪いけど、無理だわ。
こんな茶番に付き合う程、私は穏やかじゃないんだよ。
帝国に来たら、ポチには姿を消すように伝えてある。
神獣なんて見せたら、絶対差し出せって言うに決まってるし、逆らえないって目玉が言ってたからね。
でもさ、姿は見えなくても、ちゃんと側に居るんだよ。
私はさっきの下剤に、のし付けて返してあげた。
人に薬盛るとか、有り得ないんだわ。
盛られた人がどんだけ苦しむのか、自分の身体で思い知れ!
皇妃の顔が歪みだした…
急いで戻ろうとしたみたいだけど、動かなきゃ我慢出来たのかもしんないね、物凄い音と悪臭を放って汚物を撒き散らしたわ。
即効性あるし用量守ってないからね、脱水症状起こすだろうけど、薬術師が助けてくれるんじゃね?
知らんけど。
ついでにポチがやってくれた。
汚物を、皇帝達の頭から掛かる様にしてって、頼んだのよ。
私は、見て来たから知ってるの。
スラム街では、汚物がきちんと処理されてない事を…
皇妃一人のだけじゃ、あそこまで汚れないからね。
一時だろうけどスラム街も綺麗になるし、仕返しも出来て、一石二鳥じゃね?
お陰様で?貴族達も巻き込まれてたんだけど、彼らも同罪だったんだね。
だってさ、ポチは人を見分ける能力があるんだもの、善人に悪さはしないのだ。
汚物まみれになった連中はパニック起こしてるし、パーティは中止だな(笑)
しれっと料理もいただいたし、堂々と帰れるよね。
クレアが結界で守ってくれてたから、料理は汚れていないのだ。
持ち去った事がバレない様に、騒ぎでテーブルをひっくり返しておいたから、大丈夫でしょう。
これは序章だ、目玉の顔に泥塗っておいて、この程度で済むと思うなよ。
「こ…これは一体何事ですか。すみません、ルイフォード殿下、パーティは中止のようです。お部屋までお送り致します」
「その様ですね。私達の事は気になさらず、会場内の確認をして来て下さい」
「では、お言葉に甘えて…気を付けてお戻り下さい」
「「皇子様、又明日」」
「また明日。ごきげんよう」
私達は皇子様に挨拶して、目玉の部屋に来たよ。
さっき貰った料理を、皆で堪能するのだ。
「お腹空いてたんだ~。お菓子じゃ物足りないもんね、皆で食べよう」
「美味しいね」
「ほら、あんた達も沢山食べて、大きくおなり」
私は、上の空になってる目玉と金魚の糞に、特大チキンを丸ごと皿に乗せてあげた。
「大丈夫だって、私の出す料理に毒なんて入れてないから、安心しなよ」
「そんな心配はしていないよ…その…さっきの騒ぎは…」
きっと目玉は、私が犯人だって気付いてるんだろうけど、言えないよね。
何処で、誰が聞いてるか、分からないんだもの。
「ビックリしたね~脱水症状起こしてないと良いね~あ、優秀な薬術師が居るみたいだから、心配ないか。なんせ惚れ薬作っちゃう様な、非人道的な事を平気でする術師なんだもの」
私は、気の毒そうに言ってみた。
「ここの連中は、安心出来ない」
クレアの言う通りだ。
私達は留学中皇宮に滞在する予定だったけど、あんな対応されるなら、ここが安全とは思えないよね。
「王弟にに頼んで、寮に入れて貰おうよ、きっと許可出るよ」
「うん…そうだね。ここは安全じゃないから、ティア達は寮に入れる様、手続きをしておくね」
「なんで私達だけ?一緒に入ろうよ」
「僕は…アルフレッド皇子と親しくなりたいから、ここに残るよ」
なんで?
王弟から、何か言われてるのかな?
だったら無理強い出来ないか…
「………分かった。変な事されたら、ちゃんと報告してよ」
「うん。約束する」
さて、次はどんな嫌がらせをしてやろうかしら?
意地悪な事を考えるのって、案外難しいよね、思いつかないわ。
考え込んでたら、お呼び出しがかかったぞ。
パーティ会場とは違う、広いホールに集められてるけど、何が始まるんだろ。
「呪術師来た」
クレアが見てる方に視線を向けて見た。
「金枠だ。へ~帝国って厳しいのかと思ってたけど、設定、滅茶苦茶低くない?」
「そこなんだね、ティアが気になる所って」
目玉が笑ってる。
「何か可笑しかった?」
「お前さ、少しは警戒しろよ。呪術師が来たって事は、尋問が始まるって事だろ」
「「へ~」」
「へ~!じゃないだろ、クレアナは兎も角、カルティアは呪術師だろ。さっきルイの部屋で、やってたじゃないか」
「「確かに」」
「ハルト、ティアを刺激してはいけないよ。僕達は帝国へ来たばかりなのだからね」
「そうだった、すまん。対応が余りにも酷過ぎて…」
「うん、我慢させているのは、分かっている」
「金魚の糞、案ずるな。私だって王様から上級免許貰ったんだ。他国の呪術師に、負けるつもりは無い」
「そうだぞ、ティアは負けない」
「クレア迄、ティアを煽ってはいけないよ」
「「フフン(ドヤ顔)」」
「………」
最早、何を言っても無駄だと思われた事を、私は気付いて無かった。
ここの連中は、目玉を国賓として扱う気は無いらしい。
椅子もテーブルも無い、飲み物すら出さないとは、絶対嫌がらせだろ。
しかも他国の王族相手に尋問するとか、とことん舐め腐ってる。
だったら受けて立つさ、二度と刃向えない様にしてやる。
入って来た呪術師達は三人だ、この距離からでも分かる、私より格下だって事が。
お爺様が言ってたんだよ、力量ってもんは、肌で感じる事が出来るって。
それが出来る様になって、初めて一人前の術師として認められるんだ。
呪術師になりたての頃は、全く分からなかったんだけど、今ならちゃんと理解出来る。
帝国の呪術師達が、一人ずつ尋問を始めた。
「お手並み拝見させて貰うかって思ったけど…お話にならんな」
「遅いね」
「あれは、態とか?まさかとは思うが、数日このホールに閉じ込めておく気じゃないよな?」
「その可能性は、否定出来ないね。それに…この位置からだと、僕達の順番は一番最後になるようだから、犯人として突き出される可能性もあるだろうね」
「カルティア、手紙持って無いか?通信用魔道具は、妨害されて使えないんだ。王都へ報告したい」
「あ?報告してどうする。助けが来る迄待つ気なの?私は御免だわ、こんな下らない事に、付き合う必要なんて無いよね」
「おい、待て…」
「ハルト、ティアの好きにさせてあげよう」
「しかし…」
「帝国へ入ってから、ずっと我慢を強いて来たからね、ここら辺が限界なんだよ」
「……分かった。お前が言うなら、俺は従うだけだ」
「仲良し」
「「ははっ」」
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