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2章 帝国
第46話 バッジの話
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「え~なんでこっちには、美味しそうなお菓子がいっぱいあるの?」
転移で直接部屋に来た私達に、ここの侍女さん達がビックリしてるけど、気にしない。
「ティア達の部屋には、無かったのかい?」
目玉が険しい顔で、聞き返して来た。
「無かった~。変わりに大量の下剤を貰ったよ」
「「下剤?」」
私はさっきの出来事を、包み隠さず話したよ。
気にする程の事じゃないと思ったんだけど、目玉は無表情になっちゃった。
「ちょっと、なんで黙ってんの」
「いや…客人に下剤を盛る等、あってはならない事だろう…ここの者達は、どのような教育を受けているんだ?」
「やはり、彼女達にも護衛を付けるべきではないか?」
「そうだね、二人だけにしておくのは、好ましくなさそうだ」
「金魚、余計な事言わないで。只の嫌がらせでしょ、私の悪評が広まってんだよ。それよりさ、ちょっと体内確認させて」
私は、目玉の両手を掴んだ。
「おい、まさかルイの茶にも下剤が入ってるとか、言わないだろうな」
「あ~、お茶から微かに薬草の香りがすると思ったけど、私達より深刻だよ」
「「えっ」」
「酷い…」
私とクレアは、この部屋の侍女達を、睨みつけ問いかけた。
「ねぇ、この状況をどう説明してくれんのかな?他国の王族に薬盛るとか、歓迎パーティ前に不祥事でも起こせって、誰かに言われたの?それとも、この国の淑女はみ~んな、飲み物に薬剤を入れる訳?」
嫌な予感がしたから来てみたんだけど、まさか惚れ薬が入ってるとは思わなかったわ。
誰に対して効果を発揮するのかは、分からないけど…
人の心を踏みにじる、最低の行為に腸が煮えくり返った。
「黙ってないで何とか言ったらどうなの?私達は王族蔑ろにされて黙ってる程、優しくはないんだわ」
悪びれた顔もしてないって事は、首謀者が庇ってくれる自信があるからだよね。
なら、私達に暗殺者を送りつけて来た奴と、同一人物って可能性が高いって事か。
金魚の糞はプルプルと震えてる、きっと怒りを我慢してんだね。
「金魚、証拠残さなきゃ問題ないんだ、何事も…ね。女性を斬った事はないんでしょ?この先に必要な訓練だと思ってさ、今この場に居る奴等、全員切り刻んじゃっていいよ。始末は私達でするからさ」
私だって、上級免許を貰ったんだ。
クレア程じゃないけど、臓器形成だってそれなりに、出来る様になった。
ポチの中で、沢山練習したからね。
「生きてれば、虫の息でも良いのよ、いくらでも治してあげられる」
そこまで言ったのに、金魚は動かなかった。
証拠も無しに、証言だけでは騎士としての吟じが許さなかったんだろね、つくづく面倒臭い生き物だと思う。
私の言葉を聞いたせいか、クレアの殺気に耐えられなくなったのか、侍女達は崩れ落ちちゃった。
小心者なら、こんな大それた事しなきゃいいのに、馬鹿だよね。
目玉には、私が調合した薬剤を飲ませて中和させたから、問題ないんだけど…
腹の虫が収まらない。
薬を入れたって証拠を掴まなきゃ、このままじゃ私が難癖付けて、彼女達を傷つけようとした事にされちゃう。
「ちょっと証拠が欲しいからさ、こいつら尋問してもいい?」
「そうだね、薬を飲まされたとあっては、僕も落ち着かない。王族の名で許可するよ」
「良かった、心の中を覗く呪術は、準禁術扱いだからね。許可があれば安心して使えるわ」
倒れてる侍女達を起して、尋問する事にした。
録画用魔道具を発動させて、呪印を結ぶ。
「夢の内 絶望の内 光の内 闇の内
理想を見て現実を知り、朝日を浴びて月夜に眠る。
真正、無意識の泉に、その心を写し出せ!」
私に刻まれてる、誓いの刻印が赤く光出す。
目玉が私の額に触れる。
「ルイフォード・フォティア・マルス・ドメスティカは、王族の血において、この尋問を正当な権利と判断する」
審議中の赤い光が消えた。
おお~忘れがちだけど、やっぱ目玉って王族だったのね。
「それじゃ、始めます。貴方達が目…ルイフォード殿下に飲ませた薬剤は、何ですか」
「…皇女殿下から、お言葉を頂いた時に、心を奪われる惚れ薬です」
「誰の意思で、惚れ薬を飲ませたの」
「薬術師が、飲ませる様にと、持って来ました」
「薬術師は、誰の指示で薬を持って来たの」
「ユリアン皇妃様です」
「貴方達は、惚れ薬と知っていて、飲ませる事に躊躇いはあった?」
「ありません」
「何故?人の心を縛る行為なのに、人権の冒涜だとは、思わないの」
「弱小国家の王族に、人権等必要ありません」
殴っていいかな?
いや待て、魔道具使ってたんだわ、殴っちゃ駄目でしょ。
仕方ない、目玉の判断に任せるか。
「情状酌量の余地無ね、どうする?」
「証拠は残せたからね、この件は僕に預けて欲しい」
「分かった」
私は呪印を解いて、彼女達を見たよ。
「良かったね、今直ぐ裁かれる事はなさそうだよ。大人しくしてるなら、拘束はしないであげるけど、二度目は無いからね」
悔しそうな顔してっけど、ここで終わりにするつもりは無い。
好き勝手やってられるのも、今のうち、倍返しで済むと思うなよ。
私はこいつら全員の顔と素性を、頭に叩き込んだ。
今はまだ、動く時じゃないって事だから、じっと我慢の子なのである。
怒りを鎮める為に、お茶でも飲むか。
序にお茶菓子も、美味しく頂いてたら、皇子様が訪ねて来たよ。
明日から通う学園で、同じクラスになるらしい。
帝国に居る間は、何かとお世話になる方だ。
お茶を淹れようとしたんだけど、要らないって言われた。
お菓子にも手を付けないのは、警戒してんのかな?
私が傍に居る時は、そんな事気にしなくていいのにって思ったけど、他国の薬術師なんて怪し過ぎるか(笑)
「二人共、そろそろ部屋に戻って着替えた方が良くないか?女性は身支度に時間がかかるだろう、侍女が待っていると思うぞ」
金魚の糞は、目玉の側近ってだけあって、時間管理がしっかりしてんだよね~
「ここのお菓子を持って行くといい。パーティ会場では、飲み物以外は口に出来ないからね」
「え、ご馳走無いの?それだけが楽しみだったのに…」
「悲しみ」
皇子様に挨拶して、自分達の部屋に戻って来た。
金魚の糞が言った通り、王都から付いて来てた侍女さんが待っててくれたよ。
「待たせてしまって、ごめんなさい。私達ドレスなんて着た事無いの、大変だと思うけど、宜しくね」
なんか、恐縮させてしまったけど、流石です。
手早いし見違えたよ、自分で言うのもなんだが…
「貴族令嬢みたいじゃない?このドレスって、絶対お高いよね?汚さない様に気を付けないと…着飾ってくれて、ありがとう」
「お気に召して頂けたようで、何よりでございます」
「皮膚呼吸出来ない、苦しい」
クレアが白目になってる。
「化粧位で、呼吸困難にはならんだろ(笑)」
「そだね(笑)」
準備万端、暇だったから目玉を迎えに来たんだけど、まだ着替え中だったわ。
慌てて布で身体を隠したから、剥ぎ取って確認したけど、特に怪我とかはしてないみたい…
「どして、何で隠したの?もう着替え終わってるかと思ったのに、またトラブルでもあった?」
「…いや…何もないよ。先程迄、アルフレッド殿下と話をしていたからね、今から着替え始めた所だよ…その…。出来るなら、扉から入って来てはくれないだろうか…」
顔を真っ赤に染めて、上着で身体隠しちゃった、女子か!
「なんで~私の所は何時来たって良いのに。いちいち誰が来ました~って言われるの、面倒臭いんだもん」
「…そう…か…。オルテンシア伯爵邸では、どの部屋も扉が開いていたね。あれは…その。何か理由があるのかと、思っていたよ」
「ああ、魔物に襲われてたら、直ぐに分かるからね。扉開けて入る手間も省けるしって、お父様から聞いてるよ。今は襲われなくなったけど、昔はよくあったらしいから、習慣って奴?」
「そ…そうだったんだ。そんな深い理由があったんだね、勉強になったよ。あの…直ぐに着替えるから、その…隣の部屋で、待っていてくれないかな?」
「分かった」
「そんな恥ずかしがる事無いのにね」
「ね」
唐突だけど、待ってる間にバッジの話をしようか?
この世界では剣術(黄)・魔術(緑)・呪術(赤)・医術(白)・薬術(紫)の、上級以上の免許を取得した者に、バッジを付けるよう義務付けてる。
各国の長が与える物で、着ける場所も左耳と決まってんの。
それぞれ色分けされてるから、なんの免許持ちなのか、見たら分かる仕様になってる。
中級免許だと枠が銅・上級が銀・特級になると金になるから、そこでも区別できるよ。
初級は領主が発行する資格証明書のみでバッジは無いから、領地外に出たら無資格と同じ扱いになってしまう。
だから私とクレアは、免許取得に拘ってたのだ。
何度も言うが、あの理不尽な規定は無くしてくれって頼んだから、そのうち変わるだろうと期待してる。
中級免許取得者は、バッジは貰えるが着用義務は無いから、着けてる人はあんま見ない…
持ち歩いてんのかな?
着用義務が無いのは、術者を守る為。
心無い上級免許持ちから、嫌がらせを受けたりする事が多いらしい…
なんでやねん!同じ術者同士争っても、誰の得にもならんだろうに、よく分からんよね。
上級免許取得者は、多くは無いけど、少なくも無いよ。
それなりの人数が居る。
特級は、その国で上位数名位なのかな?
各国によって様々だけど、大体宮仕えになるレベルの人達に与えられる事が多い。
つまり、国一番の術者から、10番目?もっと…いるのかな50番目?
ここは国の戦力に係わって来る繊細な問題だから、公にはされてないのだ。
そん位のレベルに与えられる免許だから、当然実力が伴わなくなったら、降格する。
もひとつ、中級以上の免許取得に関しては、各国によって規定が異なって来る。
そこ統一して無いの、ヤバくねって思うの私だけ?
その国によっては、見栄で上級免許や特級免許を大量に発行してる国もあるみたいだよ。
見栄ってなんだよ…
だから、上級以上のバッジを付けてるからと言って、凄い人とは限らない。
呪術師なんていろいろと厄介な術を使ってくるから、警戒されたりするのかと思ってたけど、お陰様でそうでもなかった。
私達のバッジは、お飾りだと、思われてるらしい。
ちなみにクレアは二個、私は四個耳にぶら下げてる。
「待たせたね。ティア達は、あの後何もされていない?」
「されてないよ、何か気になる事でもあったの?」
「いや、何もなければ、気にしなくていいよ」
「そお?」
この時、目玉がとんでも無い事を考えてたのを、私は知らない。
転移で直接部屋に来た私達に、ここの侍女さん達がビックリしてるけど、気にしない。
「ティア達の部屋には、無かったのかい?」
目玉が険しい顔で、聞き返して来た。
「無かった~。変わりに大量の下剤を貰ったよ」
「「下剤?」」
私はさっきの出来事を、包み隠さず話したよ。
気にする程の事じゃないと思ったんだけど、目玉は無表情になっちゃった。
「ちょっと、なんで黙ってんの」
「いや…客人に下剤を盛る等、あってはならない事だろう…ここの者達は、どのような教育を受けているんだ?」
「やはり、彼女達にも護衛を付けるべきではないか?」
「そうだね、二人だけにしておくのは、好ましくなさそうだ」
「金魚、余計な事言わないで。只の嫌がらせでしょ、私の悪評が広まってんだよ。それよりさ、ちょっと体内確認させて」
私は、目玉の両手を掴んだ。
「おい、まさかルイの茶にも下剤が入ってるとか、言わないだろうな」
「あ~、お茶から微かに薬草の香りがすると思ったけど、私達より深刻だよ」
「「えっ」」
「酷い…」
私とクレアは、この部屋の侍女達を、睨みつけ問いかけた。
「ねぇ、この状況をどう説明してくれんのかな?他国の王族に薬盛るとか、歓迎パーティ前に不祥事でも起こせって、誰かに言われたの?それとも、この国の淑女はみ~んな、飲み物に薬剤を入れる訳?」
嫌な予感がしたから来てみたんだけど、まさか惚れ薬が入ってるとは思わなかったわ。
誰に対して効果を発揮するのかは、分からないけど…
人の心を踏みにじる、最低の行為に腸が煮えくり返った。
「黙ってないで何とか言ったらどうなの?私達は王族蔑ろにされて黙ってる程、優しくはないんだわ」
悪びれた顔もしてないって事は、首謀者が庇ってくれる自信があるからだよね。
なら、私達に暗殺者を送りつけて来た奴と、同一人物って可能性が高いって事か。
金魚の糞はプルプルと震えてる、きっと怒りを我慢してんだね。
「金魚、証拠残さなきゃ問題ないんだ、何事も…ね。女性を斬った事はないんでしょ?この先に必要な訓練だと思ってさ、今この場に居る奴等、全員切り刻んじゃっていいよ。始末は私達でするからさ」
私だって、上級免許を貰ったんだ。
クレア程じゃないけど、臓器形成だってそれなりに、出来る様になった。
ポチの中で、沢山練習したからね。
「生きてれば、虫の息でも良いのよ、いくらでも治してあげられる」
そこまで言ったのに、金魚は動かなかった。
証拠も無しに、証言だけでは騎士としての吟じが許さなかったんだろね、つくづく面倒臭い生き物だと思う。
私の言葉を聞いたせいか、クレアの殺気に耐えられなくなったのか、侍女達は崩れ落ちちゃった。
小心者なら、こんな大それた事しなきゃいいのに、馬鹿だよね。
目玉には、私が調合した薬剤を飲ませて中和させたから、問題ないんだけど…
腹の虫が収まらない。
薬を入れたって証拠を掴まなきゃ、このままじゃ私が難癖付けて、彼女達を傷つけようとした事にされちゃう。
「ちょっと証拠が欲しいからさ、こいつら尋問してもいい?」
「そうだね、薬を飲まされたとあっては、僕も落ち着かない。王族の名で許可するよ」
「良かった、心の中を覗く呪術は、準禁術扱いだからね。許可があれば安心して使えるわ」
倒れてる侍女達を起して、尋問する事にした。
録画用魔道具を発動させて、呪印を結ぶ。
「夢の内 絶望の内 光の内 闇の内
理想を見て現実を知り、朝日を浴びて月夜に眠る。
真正、無意識の泉に、その心を写し出せ!」
私に刻まれてる、誓いの刻印が赤く光出す。
目玉が私の額に触れる。
「ルイフォード・フォティア・マルス・ドメスティカは、王族の血において、この尋問を正当な権利と判断する」
審議中の赤い光が消えた。
おお~忘れがちだけど、やっぱ目玉って王族だったのね。
「それじゃ、始めます。貴方達が目…ルイフォード殿下に飲ませた薬剤は、何ですか」
「…皇女殿下から、お言葉を頂いた時に、心を奪われる惚れ薬です」
「誰の意思で、惚れ薬を飲ませたの」
「薬術師が、飲ませる様にと、持って来ました」
「薬術師は、誰の指示で薬を持って来たの」
「ユリアン皇妃様です」
「貴方達は、惚れ薬と知っていて、飲ませる事に躊躇いはあった?」
「ありません」
「何故?人の心を縛る行為なのに、人権の冒涜だとは、思わないの」
「弱小国家の王族に、人権等必要ありません」
殴っていいかな?
いや待て、魔道具使ってたんだわ、殴っちゃ駄目でしょ。
仕方ない、目玉の判断に任せるか。
「情状酌量の余地無ね、どうする?」
「証拠は残せたからね、この件は僕に預けて欲しい」
「分かった」
私は呪印を解いて、彼女達を見たよ。
「良かったね、今直ぐ裁かれる事はなさそうだよ。大人しくしてるなら、拘束はしないであげるけど、二度目は無いからね」
悔しそうな顔してっけど、ここで終わりにするつもりは無い。
好き勝手やってられるのも、今のうち、倍返しで済むと思うなよ。
私はこいつら全員の顔と素性を、頭に叩き込んだ。
今はまだ、動く時じゃないって事だから、じっと我慢の子なのである。
怒りを鎮める為に、お茶でも飲むか。
序にお茶菓子も、美味しく頂いてたら、皇子様が訪ねて来たよ。
明日から通う学園で、同じクラスになるらしい。
帝国に居る間は、何かとお世話になる方だ。
お茶を淹れようとしたんだけど、要らないって言われた。
お菓子にも手を付けないのは、警戒してんのかな?
私が傍に居る時は、そんな事気にしなくていいのにって思ったけど、他国の薬術師なんて怪し過ぎるか(笑)
「二人共、そろそろ部屋に戻って着替えた方が良くないか?女性は身支度に時間がかかるだろう、侍女が待っていると思うぞ」
金魚の糞は、目玉の側近ってだけあって、時間管理がしっかりしてんだよね~
「ここのお菓子を持って行くといい。パーティ会場では、飲み物以外は口に出来ないからね」
「え、ご馳走無いの?それだけが楽しみだったのに…」
「悲しみ」
皇子様に挨拶して、自分達の部屋に戻って来た。
金魚の糞が言った通り、王都から付いて来てた侍女さんが待っててくれたよ。
「待たせてしまって、ごめんなさい。私達ドレスなんて着た事無いの、大変だと思うけど、宜しくね」
なんか、恐縮させてしまったけど、流石です。
手早いし見違えたよ、自分で言うのもなんだが…
「貴族令嬢みたいじゃない?このドレスって、絶対お高いよね?汚さない様に気を付けないと…着飾ってくれて、ありがとう」
「お気に召して頂けたようで、何よりでございます」
「皮膚呼吸出来ない、苦しい」
クレアが白目になってる。
「化粧位で、呼吸困難にはならんだろ(笑)」
「そだね(笑)」
準備万端、暇だったから目玉を迎えに来たんだけど、まだ着替え中だったわ。
慌てて布で身体を隠したから、剥ぎ取って確認したけど、特に怪我とかはしてないみたい…
「どして、何で隠したの?もう着替え終わってるかと思ったのに、またトラブルでもあった?」
「…いや…何もないよ。先程迄、アルフレッド殿下と話をしていたからね、今から着替え始めた所だよ…その…。出来るなら、扉から入って来てはくれないだろうか…」
顔を真っ赤に染めて、上着で身体隠しちゃった、女子か!
「なんで~私の所は何時来たって良いのに。いちいち誰が来ました~って言われるの、面倒臭いんだもん」
「…そう…か…。オルテンシア伯爵邸では、どの部屋も扉が開いていたね。あれは…その。何か理由があるのかと、思っていたよ」
「ああ、魔物に襲われてたら、直ぐに分かるからね。扉開けて入る手間も省けるしって、お父様から聞いてるよ。今は襲われなくなったけど、昔はよくあったらしいから、習慣って奴?」
「そ…そうだったんだ。そんな深い理由があったんだね、勉強になったよ。あの…直ぐに着替えるから、その…隣の部屋で、待っていてくれないかな?」
「分かった」
「そんな恥ずかしがる事無いのにね」
「ね」
唐突だけど、待ってる間にバッジの話をしようか?
この世界では剣術(黄)・魔術(緑)・呪術(赤)・医術(白)・薬術(紫)の、上級以上の免許を取得した者に、バッジを付けるよう義務付けてる。
各国の長が与える物で、着ける場所も左耳と決まってんの。
それぞれ色分けされてるから、なんの免許持ちなのか、見たら分かる仕様になってる。
中級免許だと枠が銅・上級が銀・特級になると金になるから、そこでも区別できるよ。
初級は領主が発行する資格証明書のみでバッジは無いから、領地外に出たら無資格と同じ扱いになってしまう。
だから私とクレアは、免許取得に拘ってたのだ。
何度も言うが、あの理不尽な規定は無くしてくれって頼んだから、そのうち変わるだろうと期待してる。
中級免許取得者は、バッジは貰えるが着用義務は無いから、着けてる人はあんま見ない…
持ち歩いてんのかな?
着用義務が無いのは、術者を守る為。
心無い上級免許持ちから、嫌がらせを受けたりする事が多いらしい…
なんでやねん!同じ術者同士争っても、誰の得にもならんだろうに、よく分からんよね。
上級免許取得者は、多くは無いけど、少なくも無いよ。
それなりの人数が居る。
特級は、その国で上位数名位なのかな?
各国によって様々だけど、大体宮仕えになるレベルの人達に与えられる事が多い。
つまり、国一番の術者から、10番目?もっと…いるのかな50番目?
ここは国の戦力に係わって来る繊細な問題だから、公にはされてないのだ。
そん位のレベルに与えられる免許だから、当然実力が伴わなくなったら、降格する。
もひとつ、中級以上の免許取得に関しては、各国によって規定が異なって来る。
そこ統一して無いの、ヤバくねって思うの私だけ?
その国によっては、見栄で上級免許や特級免許を大量に発行してる国もあるみたいだよ。
見栄ってなんだよ…
だから、上級以上のバッジを付けてるからと言って、凄い人とは限らない。
呪術師なんていろいろと厄介な術を使ってくるから、警戒されたりするのかと思ってたけど、お陰様でそうでもなかった。
私達のバッジは、お飾りだと、思われてるらしい。
ちなみにクレアは二個、私は四個耳にぶら下げてる。
「待たせたね。ティア達は、あの後何もされていない?」
「されてないよ、何か気になる事でもあったの?」
「いや、何もなければ、気にしなくていいよ」
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