40 / 57
40話.ゴーレムを顕現させたい
しおりを挟む
戦場を見下ろしたら、案の定西の国と揉み合いしてる。
カバジェロ発見!
私は目玉に言い聞かせる。
「いい、絶対ポチから降りないでよ、分かった?」
「ティアに言われた通り、戦場がどのような状況なのか、しっかりこの眼に焼き付けるよ」
目玉が頷いたのを確認して、ポチから飛び降りた。
そしてカバジェロの前に立つ。
戦場に突然大型の、それもドラゴン級の魔力を持った獣が現れた事で、敵陣は大混乱のようだ。
ポチの咆哮は大地を揺るがし、風を巻き起こす。
天災ってやつだ、敵陣営が木の葉の様に、吹き飛ばされてく。
「ティア嬢!突然目の前に降って来るとワ…貴方はやはり、僕の女神っグヘッ」
私は鳩尾に一発くらわした。
流石腐っても辺境伯軍の一員、不意を突いた渾身の一撃だったけど、たいしたダメージを与えられなかった。
「見事な一撃、癖になりそウ」
超絶悔しいんですけど!
敵を裁きながら、前髪をかき上げウットリしてる姿が、余計ムカつく
腹立つな…
「宝石を元の状態に戻して!こいつらは、私が倒しておくから、宜しく~」
そう言って、首根っこを掴んで、天高く放り投げた。
「ま、待ってェェェェェ…」
なんか悲鳴が聞こえたけど?
ポチがちゃんと受け止めてくれたから、大丈夫だね。
カバジェロのスキルは再生だ。
宝石なんて再生出来るか知らんけど、他に直せそうな人、思いつかなかったんだもの。
前に目玉が壊したティーセットとテーブルは、こいつが直してくれた。
そしてここは、戦場のど真ん中!
突如目の前に現れた小娘に、敵さんは騒然となるよね~
「見縊られては困るなぁ、本気で相手して貰うよ」
私は愛刀を取り出して、暴れまくった。
ついでに魔術の練習もしとく?
「森羅万象、この世界に干渉する者達に告ぐ。我が魔力を対価とし、その偉大なる力を貸し与えよ。開け!『土の門』」
淡いオレンジ色の術式が浮かび上がった。
フフン(ドヤ顔) 私は愛刀を振り回しながらでも、術式を発動出来る位には、成長したのだ。
遠目には…
お爺様のゴーレムが暴れてるわね、私も出してみるかな。
「荘厳なる大地の支配者よ 今こそ顕現する時 闇に染まりし物を蹴散らせ!『ゴーレム』」
戦場に大きな亀裂が入る…
「あっ!」
味方も敵も関係なく、落ちてったわ!
やってしまった、やっぱ難しいなぁ。
まぁ、いっか~
ポチが落ちた人を吸い上げてくれてる。
よ~し!
気を取り直して、もっかい詠唱する。
また亀裂が入っただけ、なんで~
やっぱ戦場だから、集中力に欠けてるんかな?
三度目の正直には、ならなかった…
「ティア、領地を穴だらけにするでない」
お爺様が、見かねてこっちにやって来たわ。
「だって~ゴーレム出したいんだもの」
「フッハッハッハ~ 穴を掘りたいなら、国境の向こうにしてくれ」
「は~い、行って来ます」
私は、国境の向こうに奈落を作りまくったよ。
結局ゴーレムは、一度も顕現してくんなかった…がっくし。
敵さんが撤退したけど、今日はここで野営するって。
「ティア、丁度良かったわい。来たついでじゃ、物資を調達してくれんかの?」
「は~い、お爺様」
皆、暫く辺境伯領に戻れてないんだって。
私は、必要な物をマジックボックスから出してあげた。
木箱2個分では収まり切れない量の、食材やら薬剤やらが出て来るけど、誰も気にしない。
どうして誰も気にしないのかって?
実は辺境伯家の物資庫と、マジックボックスを繋げてんのだ。
あっちの物資庫が空にならない限り、無尽蔵に持って来れるんだよ。
そんな事をやってたら、カバジェロが降りて来た。
「いや~宝石の再生は初めてですガ、美しい物を愛でると、気持ちも癒されますネ」
なんかウットリしてる。
こいつ変人だけど、出来る奴なのだ。
変人はほっといて、お爺様に挨拶してからポチに飛び乗って、次はミラ伯母様の所に来た。
さっき再生して貰った宝石を渡して、魔力を入れて貰う。
薬草の話をしながら片手間にやってるけど、これ凄い難しんだよ、魔力もいっぱい使うしね。
伯母様を疲れさせちゃう前にお別れして、今度はルーク叔父様の所に戻って来た。
次はなんだ!って警戒されたけど、宝石見せたら安心して魔力入れてくれた。
お妃様、結構持ち歩いてたんだね…
叔父様が疲れた~って言うから、屋敷に戻って来た。
残りはお父様に託す。
え~やった事無いよ?って言いながら、ちゃんと魔力入れてる辺り、やっぱオルテンシアなんだなぁって思った。
私にはこの血を引き継げなかったようだ…
夕食前には、全ての宝石に魔力を入れる事が出来た。
目玉は驚き過ぎて、もう言葉も出ないらしい。
ちゃんと持ち主に返してねって言って渡したら、今度は申し訳なさそうに、別の宝石を持って部屋に来た。
砕けた宝石が再生しただけでも驚きだったけど、魔力石になった事で、王弟夫妻は驚愕してたって。
魔力石にどんな力が宿ったかまでは、分からない。
鑑定スキルでもあれば別だけど…
そこまで頼む時間が、今日は無かった。
「これは、その…リーシャの宝石なのだ。火傷で着飾れなくなっても、侍女達が常に持ち歩いていた様で…頼む!厚かましい事を言うが、魔力を入れて貰いたい」
ペコっと頭を下げて、宝石箱を差し出されたけど…
「私に渡されても困るんだけど…」
「そうだな…すまない。無理を言った」
しょんぼりして、戻ろうとした目玉の腕を掴んだ。
「クレアに聞いてみよう。私は破壊する自身しかないけど、クレアなら魔力入れられるよ」
「そうなのか?」
二人でクレアの部屋に来たら、何やら取り込み中だったけど、片手間で魔力入れてくれた。
「終わった」
想像通り、宝石箱の中の宝石を、全部魔力石にしてくれた。
「ありがとう。クレアの魔力コントロールも素晴らしいな、礼は必ずする、待っていてくれ」
「要らない」
そう言ってクレアは又、何かに没頭し始めた。
やっぱ凄いなぁ…
私だってオルテンシアなのに、何だか悲しくなって来たよ。
部屋へ戻る途中、大事にリーシャの宝石箱を持ち、嬉しそうに歩いてる目玉の肩を掴んだ。
「目玉!あんたは宝石持ってないの?もしかして、お妃様が破壊した宝石の中に、あんたのもあったの?」
「ブローチや、カフスなら持って来ているが…」
突然の問いかけに驚きつつも答えてくれたけど、何故か言い淀む。
「持ってるなら貸して!私も練習する」
「そうか、宝石箱をリーシャに返したら、僕の宝石を持って部屋を訪ねるよ」
「いや、一緒に行くわ」
「分かった。けど、宝石は返さなくて良いからね」
「え?返すよ、借りた物はちゃんと返すから、安心して」
目玉は首を横に振った。
本当は、クレアにあげるつもりだったらしい。
宝石に魔力を入れられる魔術師って希少なんだって。
だから依頼料って凄くお高いみたいでさ、目玉はそこまでお小遣い持ってないから、宝石で代用しようと考えてたみたい。
それを私が奪ってしまった訳だ。
また王都での悪評が増えるねって言ったら、そんな噂は立たないって笑ってた。
今回お妃様が破壊した宝石の中には王弟のも入ってたらしくて、一個でも魔力石になればお釣が来る位の価値があったんだと。
宝石ってそんなお安いの?って聞いたら、そんな訳ないだろう!って語られてしまった…
ですよね~
目玉に借りたこの宝石さんは、壊しちゃいけないと思うから、ポチの中で練習したよ。
何度も、何度も失敗しながらね。
これを、片手間で出来る様になるまで、頑張った!
誰にも褒めて貰えないのが悲しいけど…
出来る様になったのは、素直に嬉しい!
宝石貸してくれた目玉に感謝だな。
明日は早朝にここを立つって言ってたから、寝る前に渡しに行った。
「目玉~起きてる?」
転移で扉の前に来たら、相変わらず護衛が驚いてる。
「お…オルテンシア伯爵令嬢がいらっしゃいました」
結局最後まで、慣れてはくれなかったのね(笑)
「あんた達とも明日でお別れだね。ドアの前で突っ立ってる姿が見れなくなるのは、ちょっと寂しいわ」
「あ、ありがとうございます。伯爵邸での訓練、決して無駄には致しません。王都へ戻っても精進致します」
扉が開いたので、借りた宝石を渡そうと思ったんだけど、クレアと山分けして欲しいって言われた。
道中不安だから、あんたの為にやったんだって言ったら、滅茶苦茶喜んでくれたから、私も嬉しくなったよ。
頑張った甲斐があった。
今朝の出来事は王弟にも、お父様にも報告済みだけど、日程の変更はしないんだって。
容疑者?魔物だったけど、捕まえたし、取り除いた呪詛も封印して王弟に渡してある。
襲われた目玉も元気だから、問題無いって判断したみたい。
明日マルコ泣くだろなって思ったら、ちょっと憂鬱になったけど、仕方ないよね。
初恋は失恋する物だっ!て、誰かが言ってた気がする。
翌朝、案の定マルコは大泣きしたけど…
それ以上に、リーシャのが凄かった!
鼓膜破れるかと思ったわ。
それだけじゃなかったよ。
ポチが居なかったら、多分、焼け野原になってた。
火属性が凄いのは知ってたけど、あの状態で王都迄帰るのは無理だわ。
いや~なだめるの大変だった。
王都が嫌だってより、学校に通えなくなるのが嫌だったみたい。
だから、エリザベスに転移術式を刻んであげた。
うちのポータル限定だけどね、これで何処からでも帰って来れるよ。
戻る時は、送ってってあげなくちゃならないけど。
王都に着いたら、あっちのポータルとも繋がる様に、術式を刻みに行かなきゃならなくなった。
こうでもしなきゃ、帰ってくれそうになかったんだもの。
今更だけどあの魔力量を見たら、リーシャが洗脳されなくて、本当に良かったって思う。
そして目玉が狙われたって事は身分云々もだけど、もっと違う理由もあるんだろなって思った。
王弟は必ず礼をするって帰ってったけど、お父様は勘弁してくれって呟いてたのを、私は知ってる。
別に礼が欲しくてやった訳じゃないけどね。
ちなみに、滞在費はちゃっかり貰ってた(笑)
越冬用の食料がだいぶ減っちゃったんだよ、王弟一行に食事を出してたからさ。
術式刻みに王都へ行った時にでも、買って来ようと思ってる。
「リーシャ、そろそろ帰らないと、晩餐の時間に間に合わないよ?」
私達は今、ピーちゃんと絶叫ごっこをしてる。
大空をクルクルと回転しながら、飛んでるドラゴンの背中でリーシャに話しかけたけど…
多分聞いてないな。
仕方ないからピーちゃんに頼んで、リーシャを落として貰った。
「ぎゃはははははは~~~~~」
「わ~い」
一応王女様なのよ?
あなた…
そんなんで、王都に帰って生きてけるか、お姉ちゃんは心配だよ。
落ちて来たマルコとリーシャをポチで受け止めて、宿泊先へ送り届けるのが、最近の日課であった。
領主館前では、目玉が出迎えてくれてる。
「いつもすまない。一緒に晩餐でも…」
「遠慮するわ、また明日ね~」
私は即効、断るよ。
当たり前じゃん、お貴族様は嫌いなのだ。
「リーシャ~また明日あそぼ~ね~」
「おやすみなさい、マルコ様、お姉さま」
マルコはブンブン手を振って、リーシャもそれに応えてる。
あれから転移する魔物も、集団行動する魔物にも出くわしてない。
たまにお爺様の所へ邪魔しに行くけど、私の日常に大きな変化は無かった。
カバジェロ発見!
私は目玉に言い聞かせる。
「いい、絶対ポチから降りないでよ、分かった?」
「ティアに言われた通り、戦場がどのような状況なのか、しっかりこの眼に焼き付けるよ」
目玉が頷いたのを確認して、ポチから飛び降りた。
そしてカバジェロの前に立つ。
戦場に突然大型の、それもドラゴン級の魔力を持った獣が現れた事で、敵陣は大混乱のようだ。
ポチの咆哮は大地を揺るがし、風を巻き起こす。
天災ってやつだ、敵陣営が木の葉の様に、吹き飛ばされてく。
「ティア嬢!突然目の前に降って来るとワ…貴方はやはり、僕の女神っグヘッ」
私は鳩尾に一発くらわした。
流石腐っても辺境伯軍の一員、不意を突いた渾身の一撃だったけど、たいしたダメージを与えられなかった。
「見事な一撃、癖になりそウ」
超絶悔しいんですけど!
敵を裁きながら、前髪をかき上げウットリしてる姿が、余計ムカつく
腹立つな…
「宝石を元の状態に戻して!こいつらは、私が倒しておくから、宜しく~」
そう言って、首根っこを掴んで、天高く放り投げた。
「ま、待ってェェェェェ…」
なんか悲鳴が聞こえたけど?
ポチがちゃんと受け止めてくれたから、大丈夫だね。
カバジェロのスキルは再生だ。
宝石なんて再生出来るか知らんけど、他に直せそうな人、思いつかなかったんだもの。
前に目玉が壊したティーセットとテーブルは、こいつが直してくれた。
そしてここは、戦場のど真ん中!
突如目の前に現れた小娘に、敵さんは騒然となるよね~
「見縊られては困るなぁ、本気で相手して貰うよ」
私は愛刀を取り出して、暴れまくった。
ついでに魔術の練習もしとく?
「森羅万象、この世界に干渉する者達に告ぐ。我が魔力を対価とし、その偉大なる力を貸し与えよ。開け!『土の門』」
淡いオレンジ色の術式が浮かび上がった。
フフン(ドヤ顔) 私は愛刀を振り回しながらでも、術式を発動出来る位には、成長したのだ。
遠目には…
お爺様のゴーレムが暴れてるわね、私も出してみるかな。
「荘厳なる大地の支配者よ 今こそ顕現する時 闇に染まりし物を蹴散らせ!『ゴーレム』」
戦場に大きな亀裂が入る…
「あっ!」
味方も敵も関係なく、落ちてったわ!
やってしまった、やっぱ難しいなぁ。
まぁ、いっか~
ポチが落ちた人を吸い上げてくれてる。
よ~し!
気を取り直して、もっかい詠唱する。
また亀裂が入っただけ、なんで~
やっぱ戦場だから、集中力に欠けてるんかな?
三度目の正直には、ならなかった…
「ティア、領地を穴だらけにするでない」
お爺様が、見かねてこっちにやって来たわ。
「だって~ゴーレム出したいんだもの」
「フッハッハッハ~ 穴を掘りたいなら、国境の向こうにしてくれ」
「は~い、行って来ます」
私は、国境の向こうに奈落を作りまくったよ。
結局ゴーレムは、一度も顕現してくんなかった…がっくし。
敵さんが撤退したけど、今日はここで野営するって。
「ティア、丁度良かったわい。来たついでじゃ、物資を調達してくれんかの?」
「は~い、お爺様」
皆、暫く辺境伯領に戻れてないんだって。
私は、必要な物をマジックボックスから出してあげた。
木箱2個分では収まり切れない量の、食材やら薬剤やらが出て来るけど、誰も気にしない。
どうして誰も気にしないのかって?
実は辺境伯家の物資庫と、マジックボックスを繋げてんのだ。
あっちの物資庫が空にならない限り、無尽蔵に持って来れるんだよ。
そんな事をやってたら、カバジェロが降りて来た。
「いや~宝石の再生は初めてですガ、美しい物を愛でると、気持ちも癒されますネ」
なんかウットリしてる。
こいつ変人だけど、出来る奴なのだ。
変人はほっといて、お爺様に挨拶してからポチに飛び乗って、次はミラ伯母様の所に来た。
さっき再生して貰った宝石を渡して、魔力を入れて貰う。
薬草の話をしながら片手間にやってるけど、これ凄い難しんだよ、魔力もいっぱい使うしね。
伯母様を疲れさせちゃう前にお別れして、今度はルーク叔父様の所に戻って来た。
次はなんだ!って警戒されたけど、宝石見せたら安心して魔力入れてくれた。
お妃様、結構持ち歩いてたんだね…
叔父様が疲れた~って言うから、屋敷に戻って来た。
残りはお父様に託す。
え~やった事無いよ?って言いながら、ちゃんと魔力入れてる辺り、やっぱオルテンシアなんだなぁって思った。
私にはこの血を引き継げなかったようだ…
夕食前には、全ての宝石に魔力を入れる事が出来た。
目玉は驚き過ぎて、もう言葉も出ないらしい。
ちゃんと持ち主に返してねって言って渡したら、今度は申し訳なさそうに、別の宝石を持って部屋に来た。
砕けた宝石が再生しただけでも驚きだったけど、魔力石になった事で、王弟夫妻は驚愕してたって。
魔力石にどんな力が宿ったかまでは、分からない。
鑑定スキルでもあれば別だけど…
そこまで頼む時間が、今日は無かった。
「これは、その…リーシャの宝石なのだ。火傷で着飾れなくなっても、侍女達が常に持ち歩いていた様で…頼む!厚かましい事を言うが、魔力を入れて貰いたい」
ペコっと頭を下げて、宝石箱を差し出されたけど…
「私に渡されても困るんだけど…」
「そうだな…すまない。無理を言った」
しょんぼりして、戻ろうとした目玉の腕を掴んだ。
「クレアに聞いてみよう。私は破壊する自身しかないけど、クレアなら魔力入れられるよ」
「そうなのか?」
二人でクレアの部屋に来たら、何やら取り込み中だったけど、片手間で魔力入れてくれた。
「終わった」
想像通り、宝石箱の中の宝石を、全部魔力石にしてくれた。
「ありがとう。クレアの魔力コントロールも素晴らしいな、礼は必ずする、待っていてくれ」
「要らない」
そう言ってクレアは又、何かに没頭し始めた。
やっぱ凄いなぁ…
私だってオルテンシアなのに、何だか悲しくなって来たよ。
部屋へ戻る途中、大事にリーシャの宝石箱を持ち、嬉しそうに歩いてる目玉の肩を掴んだ。
「目玉!あんたは宝石持ってないの?もしかして、お妃様が破壊した宝石の中に、あんたのもあったの?」
「ブローチや、カフスなら持って来ているが…」
突然の問いかけに驚きつつも答えてくれたけど、何故か言い淀む。
「持ってるなら貸して!私も練習する」
「そうか、宝石箱をリーシャに返したら、僕の宝石を持って部屋を訪ねるよ」
「いや、一緒に行くわ」
「分かった。けど、宝石は返さなくて良いからね」
「え?返すよ、借りた物はちゃんと返すから、安心して」
目玉は首を横に振った。
本当は、クレアにあげるつもりだったらしい。
宝石に魔力を入れられる魔術師って希少なんだって。
だから依頼料って凄くお高いみたいでさ、目玉はそこまでお小遣い持ってないから、宝石で代用しようと考えてたみたい。
それを私が奪ってしまった訳だ。
また王都での悪評が増えるねって言ったら、そんな噂は立たないって笑ってた。
今回お妃様が破壊した宝石の中には王弟のも入ってたらしくて、一個でも魔力石になればお釣が来る位の価値があったんだと。
宝石ってそんなお安いの?って聞いたら、そんな訳ないだろう!って語られてしまった…
ですよね~
目玉に借りたこの宝石さんは、壊しちゃいけないと思うから、ポチの中で練習したよ。
何度も、何度も失敗しながらね。
これを、片手間で出来る様になるまで、頑張った!
誰にも褒めて貰えないのが悲しいけど…
出来る様になったのは、素直に嬉しい!
宝石貸してくれた目玉に感謝だな。
明日は早朝にここを立つって言ってたから、寝る前に渡しに行った。
「目玉~起きてる?」
転移で扉の前に来たら、相変わらず護衛が驚いてる。
「お…オルテンシア伯爵令嬢がいらっしゃいました」
結局最後まで、慣れてはくれなかったのね(笑)
「あんた達とも明日でお別れだね。ドアの前で突っ立ってる姿が見れなくなるのは、ちょっと寂しいわ」
「あ、ありがとうございます。伯爵邸での訓練、決して無駄には致しません。王都へ戻っても精進致します」
扉が開いたので、借りた宝石を渡そうと思ったんだけど、クレアと山分けして欲しいって言われた。
道中不安だから、あんたの為にやったんだって言ったら、滅茶苦茶喜んでくれたから、私も嬉しくなったよ。
頑張った甲斐があった。
今朝の出来事は王弟にも、お父様にも報告済みだけど、日程の変更はしないんだって。
容疑者?魔物だったけど、捕まえたし、取り除いた呪詛も封印して王弟に渡してある。
襲われた目玉も元気だから、問題無いって判断したみたい。
明日マルコ泣くだろなって思ったら、ちょっと憂鬱になったけど、仕方ないよね。
初恋は失恋する物だっ!て、誰かが言ってた気がする。
翌朝、案の定マルコは大泣きしたけど…
それ以上に、リーシャのが凄かった!
鼓膜破れるかと思ったわ。
それだけじゃなかったよ。
ポチが居なかったら、多分、焼け野原になってた。
火属性が凄いのは知ってたけど、あの状態で王都迄帰るのは無理だわ。
いや~なだめるの大変だった。
王都が嫌だってより、学校に通えなくなるのが嫌だったみたい。
だから、エリザベスに転移術式を刻んであげた。
うちのポータル限定だけどね、これで何処からでも帰って来れるよ。
戻る時は、送ってってあげなくちゃならないけど。
王都に着いたら、あっちのポータルとも繋がる様に、術式を刻みに行かなきゃならなくなった。
こうでもしなきゃ、帰ってくれそうになかったんだもの。
今更だけどあの魔力量を見たら、リーシャが洗脳されなくて、本当に良かったって思う。
そして目玉が狙われたって事は身分云々もだけど、もっと違う理由もあるんだろなって思った。
王弟は必ず礼をするって帰ってったけど、お父様は勘弁してくれって呟いてたのを、私は知ってる。
別に礼が欲しくてやった訳じゃないけどね。
ちなみに、滞在費はちゃっかり貰ってた(笑)
越冬用の食料がだいぶ減っちゃったんだよ、王弟一行に食事を出してたからさ。
術式刻みに王都へ行った時にでも、買って来ようと思ってる。
「リーシャ、そろそろ帰らないと、晩餐の時間に間に合わないよ?」
私達は今、ピーちゃんと絶叫ごっこをしてる。
大空をクルクルと回転しながら、飛んでるドラゴンの背中でリーシャに話しかけたけど…
多分聞いてないな。
仕方ないからピーちゃんに頼んで、リーシャを落として貰った。
「ぎゃはははははは~~~~~」
「わ~い」
一応王女様なのよ?
あなた…
そんなんで、王都に帰って生きてけるか、お姉ちゃんは心配だよ。
落ちて来たマルコとリーシャをポチで受け止めて、宿泊先へ送り届けるのが、最近の日課であった。
領主館前では、目玉が出迎えてくれてる。
「いつもすまない。一緒に晩餐でも…」
「遠慮するわ、また明日ね~」
私は即効、断るよ。
当たり前じゃん、お貴族様は嫌いなのだ。
「リーシャ~また明日あそぼ~ね~」
「おやすみなさい、マルコ様、お姉さま」
マルコはブンブン手を振って、リーシャもそれに応えてる。
あれから転移する魔物も、集団行動する魔物にも出くわしてない。
たまにお爺様の所へ邪魔しに行くけど、私の日常に大きな変化は無かった。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
ドアマットヒロインはごめん被るので、元凶を蹴落とすことにした
月白ヤトヒコ
ファンタジー
お母様が亡くなった。
それから程なくして――――
お父様が屋敷に見知らぬ母子を連れて来た。
「はじめまして! あなたが、あたしのおねえちゃんになるの?」
にっこりとわたくしを見やるその瞳と髪は、お父様とそっくりな色をしている。
「わ~、おねえちゃんキレイなブローチしてるのね! いいなぁ」
そう、新しい妹? が、言った瞬間・・・
頭の中を、凄まじい情報が巡った。
これ、なんでも奪って行く異母妹と家族に虐げられるドアマット主人公の話じゃね?
ドアマットヒロイン……物語の主人公としての、奪われる人生の、最初の一手。
だから、わたしは・・・よし、とりあえず馬鹿なことを言い出したこのアホをぶん殴っておこう。
ドアマットヒロインはごめん被るので、これからビシバシ躾けてやるか。
ついでに、「政略に使うための駒として娘を必要とし、そのついでに母親を、娘の世話係としてただで扱き使える女として連れて来たものかと」
そう言って、ヒロインのクズ親父と異母妹の母親との間に亀裂を入れることにする。
フハハハハハハハ! これで、異母妹の母親とこの男が仲良くわたしを虐げることはないだろう。ドアマットフラグを一つ折ってやったわっ!
うん? ドアマットヒロインを拾って溺愛するヒーローはどうなったかって?
そんなの知らん。
設定はふわっと。
【短編】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ、赤ちゃんが生まれる。
誕生を祝いに、領地から父の辺境伯が訪ねてくるのを心待ちにしているアリシア。
でも、夫と赤髪メイドのメリッサが口づけを交わしているのを見てしまう。
「なぜ、メリッサもお腹に赤ちゃんがいるの!?」
アリシアは夫の愛を疑う。
小説家になろう様にも投稿しています。
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
異世界召喚されたけどヤバい国だったので逃げ出したら、イケメン騎士様に溺愛されました
平山和人
恋愛
平凡なOLの清水恭子は異世界に集団召喚されたが、見るからに怪しい匂いがプンプンしていた。
騎士団長のカイトの出引きで国を脱出することになったが、追っ手に追われる逃亡生活が始まった。
そうした生活を続けていくうちに二人は相思相愛の関係となり、やがて結婚を誓い合うのであった。
問い・その極悪令嬢は本当に有罪だったのか。
風和ふわ
ファンタジー
三日前、とある女子生徒が通称「極悪令嬢」のアース・クリスタに毒殺されようとした。
噂によると、極悪令嬢アースはその女生徒の美貌と才能を妬んで毒殺を企んだらしい。
そこで、極悪令嬢を退学させるか否か、生徒会で決定することになった。
生徒会のほぼ全員が極悪令嬢の有罪を疑わなかった。しかし──
「ちょっといいかな。これらの証拠にはどれも矛盾があるように見えるんだけど」
一人だけ。生徒会長のウラヌスだけが、そう主張した。
そこで生徒会は改めて証拠を見直し、今回の毒殺事件についてウラヌスを中心として話し合っていく──。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
何かと「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢は
だましだまし
ファンタジー
何でもかんでも「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢にその取り巻きの侯爵令息。
私、男爵令嬢ライラの従妹で親友の子爵令嬢ルフィナはそんな二人にしょうちゅう絡まれ楽しい学園生活は段々とつまらなくなっていった。
そのまま卒業と思いきや…?
「ひどいわ」ばっかり言ってるからよ(笑)
全10話+エピローグとなります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる