超人だと思われているけれど、実は凡人以下の私は、異世界で無双する。

紫(ゆかり)

文字の大きさ
上 下
32 / 84
1章 出会い

32話.王子の収集癖

しおりを挟む
 王女様は、休日明けから学校行ったよ。
 お友達から、手術頑張ったねって言われて、嬉しかったって!
 それは良かったんだけど、一つ問題が出来た。
 実はね、何時までもクレアを学校に付き合わせる訳に行かないので、手乗りサイズのハニワちゃんを預けてたの。
 呪詛が爆発する気配を感じたら、王女様毎封印して、私の所へ戻って来る様術式を刻んでる。
 これで領地が消える心配は無くなったんだけど、常にべったりと王女様にくっついてるもんだからね。
 情が湧いたらしく「エリザベス」なんて、ハニワ如きに高貴な名前まで付けて、ドレス着せて着飾ってる。
 お妃様が…
 そう、気に入ってしまったのよ。
 ハニワだよ?
 粘土だよ?
 意思なんて、ある訳ないっしょ!
 そんなのにドレス着せても意味なくね?って思ってたら、王女様もエリザベスを溺愛してた。
 私は罪悪感でいっぱいだよ。
 あれはね、呪詛に反応して側にいるだけで、王女様に懐いてる訳じゃないの。
 しかも次の手術が終わって、呪詛が王女様から消えたら、ハニワもお役御免なのよ。
 術式は消えて土に帰っちゃう。
 私は何時もの如く別室に籠って、頭を抱えてたら…
 足音が近付き、扉の前で止まる。
 「またか!」
 最近多いんだよね、私の部屋を訪ねて来る事が…
 ノックもしないで引き返す時もあれば、小一時間悩んでから、声をかけて来る時もある。
 基本我が家の、部屋の扉は開放されてる。
 お好きにど~ぞってスタイルなんだけど、入り口でウロウロされるのは、正直良い気分ではない。
 私は何時も続き部屋にいるから、廊下は見えないんだけど、足音や気配で分かるのよ。
 今日はどんだけ躊躇うのかな?って思ってたら、意外と決断は早かった。
 「失礼する」
 「なんすか?」
 部屋に入って来るなり、棚に並んでる物に気付いた。
 そこには半分目玉から作り出した、ガラス容器に入ったサンプルが並べてある。
 視神経から硝子体だけの物や、黄斑部だけの物、水晶体迄。
 核になった中心窩を作ってからも、虹彩を変える研究を続けてたのよ。
 お陰様で、色とりどりの虹彩を持つ目玉も、沢山あるのだ。
 「見事だな…机の上にあるのは、リーシャの眼球か?」
 そうなのだ、今更だけど完成したのだ。
 見ても良いか?って聞かれたから渡したよ。
 嬉しそうに目玉を眺めてる姿を見てると、普通に妹思いのお兄ちゃんなんだよね~
 「王女様は今ので満足なんだって、目玉差し替える気ないみたい」
 私は「がっかりだよ」と、本音を零す。
 「それは申し訳ない。リーシャを説得して来るから、待っていてくれ」
 「説得しなくていいよ。あんたと一緒の目玉が良いって言うんだもの、本人の希望を優先してあげようよ」
 王女様の気持ちが理解出来ない程、私は鬼じゃないもん。
 「そうか…ありがとう。心遣いに感謝する」
 「ちょうど処分しようと思ってたから、ちょっと付き合ってくんない?一応王族の肉体だから、媒体にされると問題になるし。見届けてよ」
 躊躇い王子は、暫くサンプルを眺めてから、問いかけて来た。
 「私の半分目玉は、後世の役に立つだろうか?」
 後世?
 王女様の役には立ったよ?
 「研究資料は残したからね。私が上級医術師になったら、他領でも隻眼の人はいなくなるよ」
 躊躇いは嬉しそうに目玉を抱えて、何度も感謝するって言ってくれた。
 でも、目玉を離そうとしない…
 処分する気ないの?って思ったから、一応聞いてみた。
 「それ…欲しかったらあげるよ?」
 元はあんたのだし。
 躊躇い王子から、効果音が聞こえてきそうな位の、笑顔を向けられたよ!
 「良いのか?ありがたく受け取ろう」
 やっぱ欲しかったんだ、滅茶苦茶嬉しそうなんだけど…
 前回のケロイドも、処分せずに持ち帰ると言ってたし、収集癖でもあんのか?
 そのまま帰ろうとしたので、他のサンプルをどうするか聞いたら、やっぱ持ち帰るって。
 沢山あるから、マジック袋に入れて渡したけど…

 何しに来たんだ?

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

契約結婚のはずが、気づけば王族すら跪いていました

言諮 アイ
ファンタジー
――名ばかりの妻のはずだった。 貧乏貴族の娘であるリリアは、家の借金を返すため、冷酷と名高い辺境伯アレクシスと契約結婚を結ぶことに。 「ただの形式だけの結婚だ。お互い干渉せず、適当にやってくれ」 それが彼の第一声だった。愛の欠片もない契約。そう、リリアはただの「飾り」のはずだった。 だが、彼女には誰もが知らぬ “ある力” があった。 それは、神代より伝わる失われた魔法【王威の審判】。 それは“本来、王にのみ宿る力”であり、王族すら彼女の前に跪く絶対的な力――。 気づけばリリアは貴族社会を塗り替え、辺境伯すら翻弄し、王すら頭を垂れる存在へ。 「これは……一体どういうことだ?」 「さあ? ただの契約結婚のはずでしたけど?」 いつしか契約は意味を失い、冷酷な辺境伯は彼女を「真の妻」として求め始める。 ――これは、一人の少女が世界を変え、気づけばすべてを手に入れていた物語。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

処理中です...