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23話.うざ王子の半分目玉ちゃん

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 私は、執務室に居る。
 お茶会が終わったから、魔物の報告に来たんだけど。
 お父様はずっと眉間を押さえて考え込んでる。
 もしかして寝てる?
 「お父様?起きてる?」
 「起きてるよ」
 フフフって笑ったけど、目が座ってる…
 そうだよね、魔物の集団行動なんて聞いた事無いもん!
 「モンステルの森で何が起きてるのかな?なんかね、変な気配を感じるの」
 「例えば、どんな感じなのかな?」
 「え~???どんなって言われてもなぁ…なんかこう…覗かれてる感じ?」
 上手く表現出来ない。
 そもそも覗かれてるって、どんな感じなのかすら分からん。
 「それはまた…難しいね」
 ほらね、お父様も分からんでしょ?
 「ねぇ、お母様は何処?」
 二人で悩んでても分からないから、お母様に聞いてみようかと思ったんだけど。
 「ああ、お義父様の所へ行ったよ。呼び出してみるかい?」
 「お爺様の所で何してるの?邪魔にならないかな?」
 「どうかな?メッセージでも飛ばしてみるかい?」
 お父様はそう言って、引き出しから便箋と封筒を取り出した。
 術式が刻まれたやつだ。
 私は魔物の事や変な視線の事、明日の午前中にお爺様に会いたい事を、したためた。
 封筒に宛名を書き、魔力を込めると、一瞬で消える!
 これ発明した人天才!
 お父様の執務を手伝いながら待ってたら、ピーちゃんの声がした。
 ピーちゃんとは、お母様の愛鳥?で、乗り物ドラゴンでもある。
 幼かった頃に、お爺様の乗り物ドラゴンを、欲しがり。
 それが余りにもしつこく、仕事にならないから、「自分で見つけなさい」って言ったら…
 その日の内に「小鳥さん見つけた~」と…
 尻尾を引き摺り連れて来たのが、ドラゴンだった事は、辺境伯領で有名な話だ。
 お母様は神獣を仔犬だと思い、ポチって名前を付けた位だ。
 本気でドラゴンを、小鳥だと思ってるのかもしんない。
 お爺様のドラゴンの事は、ちゅん太郎って名前を付けてるし…
 いや、可愛いから気持ちは分かるけど?
 チュンチュンとも、ピーピーとも鳴かんだろ…
 割と本気で、ネーミングセンスどうにかならんのか?って思う。

 お母様が、開口一番…信じられないって顔をしながら、聞いて来た。
 「マーカスが苦戦したって?」
 マーカスさんは火魔術の使い手。
 魔物相手に苦戦するような人じゃないんだ。
 手紙読んで、急いで帰って来てくれたんだ!嬉しい。
 「そうなの、お母様!聞きたい事が沢山あるの!」
 私は魔物の事や、気になる視線の事も身振り手振りで話したよ。
 うんうんて、相槌しながら聞いてくれた。
 実はお母様も変な視線を感じてたらしくて、お爺様の所に行って来たんだって!
 「お爺様はなんて?」
 「今は言えないが、警戒は怠るなと言ってた。それと明日の事だが、ルークの治療院で待ってると言ってたぞ」
 「やっぱ国絡みか~」
 「かもな…」
 お母様は、進展があったら教えると約束してくれた。
 「茶会はどうだった?楽しんで貰えたか?」
 「うん!途中から、うざ王子も参加してた!それでね、明日の検査で問題なければ学校へ行かせたいの、だめかな?」
 「「学校?」」
 お父様と、お母様が珍しくハモったわ!
 私は、声を取り戻すにはもう少し自信が必要な事、その為に沢山の友達が必要だと思ってる事なんかを伝えた。
 「魔物の件も視線の件も保留だからな…マルコが一緒なら大丈夫だと思うが、警戒しろと父様が言ってたし…」
 お母様が心配するのも無理ないか、でも諦めたくないな。
 「王弟殿下に相談してみるかい?マルコと一緒に、ティアが付き添ってあげるのはどうかな?クレアでも良いと思うけど」
 面倒臭がりのお父様が!王弟と話し合ってくれるの?
 ルーク叔父様はお茶淹れてくれたし、明日は嵐でも来るのか?
 「ルディも、ティアが一緒なら問題ないよね?」
 「そうだな…それならクレアの方が適任じゃないか?ティアは私に似て魔術得意じゃないだろ」
 そんな申し訳なさそうな顔して…私はお母様の子で良かったって思ってるよ!
 その後、お父様が王弟と話し合ったみたいだけど、意外とあっさり事は進んだって。
 付き添いは、クレアが快諾してくれた。

 夕食後…私はうざ王子の事を思い出してた。
 やっぱむかつくわ~
 王弟が許可したんだから、学校行かせてもいいじゃん!
 文句言わなきゃ死んじゃう病にでもかかってんの?
 そんな病知らんけど…
 茶会の時は、気持ち悪い位、笑顔振り撒いてたのに…二重人格なの?
 そもそも何しに来たのよ?
 薬草畑見に行くでもないし?
 ほんと…何しに来たんだろ???
 さっさと帰ればいいのに…
 いや待て!
 駄目だ、今帰られたら困るわ!
 「左目…なんて言えばくれるかな?何言っても文句言われそうだけど!寝込みでも襲う?バレたら即行で城門行きだな…」
 考えるだけ無駄か…
 「当たって砕けて来るか~」って事で、キラキラスマイルうざ王子様へ、会いに来た。
 部屋の前まで転移して、扉をノックしたら護衛が慌ててた。
 「お、オルテンシア伯爵令嬢が、お越しになりました」
 「何その報告…来ちゃまずかった?お風呂にでも入ってんの?」
 「え?」
 護衛がキョトンとしてる、私もキョトンとした。
 扉が開いて侍女さんかな?どうぞって言われたから入ったけど、お風呂じゃないじゃん!
 目の前のソファーで、ふんぞり返ってた。
 不信感凄いよ、そんな睨まなくても用事が済んだら帰るってば!
 お茶を出そうとしたので、すかさずお断りした。
 「王女様の欠損した左目作りたいので、うざ…王子様の左目半分下さい。ポーションここ置きます」
 私は目玉を入れる容器と、上級ポーションをテーブルの上に置いた。
 自己責任で頼むスタイルだ!
 これなら城門行きにはならんだろ。
 我ながら名案だ!と、思ったんだけど…
 なんで?空気が、変わった気がする。
 うざ王子は私を不審者から、不思議な物体でも見てる様な、表情になってた。
 暫く待ったが、ピクリとも動かないぞ~
 確かに痛いけど、一瞬だしそこまで悩むか?
 それとも通じなかった?
 面倒臭いなぁ…もっかい言うか。
 「王弟夫妻には頼み難いので、同じ血を分けた兄妹なら、遺伝情報貰えるかなって思ったんです。可愛い妹の為と思って、さっさと左の目玉半分ください」
 妹ってフレーズに反応した!
 「君は…君は本気なのか? 本気でリーシャを治せると、そう思っているのか?」
 今度は疑惑の目だよ。
 「遊びでこんな所まで来る程、暇人じゃないです。目玉ください、自分で出来ないなら、私が切り取ってもいいです。許可下さい」
 なんか何時もと様子が違うから、調子狂っちゃう。
 「分かった」
 うざ王子は低い声で、了承したかと思ったら、深呼吸して…
 え?
 私は予想外の行動に、動揺してしまった!
 こいつ!自分で左目を、全部抜き取ったよ!
 慌てて側に駆け寄って、腕を押さえ確認した。
 間一髪、視神経繋がってた~
 全部切れちゃってたら、手遅れになってたよ!
 沸々と、怒りが湧いて来る。
 「何やってんの!隻眼になりたいのか、ボケッ!!」
 「左…目が…っ欲しいと…言ったのは、君だ…ろう」
 「半分って言った!人の話ちゃんと聞きなさいよ!」
 私は目玉を半分切り取って、顔面にポーションぶち撒けてやったよ。
 左目が再生したのを確認してから、部屋を出て来た。
 そこはね、一応医術師だからさ、嫌な奴でも放置はしない。
 廊下を歩きながら、切り取った目玉を容器に入れた。
 よっしゃー!なんだか嬉しくなっちゃったので、クレアの部屋まで来たよ。
 「クレア~居る?」
 「ここ~」
 奥にある書庫で勉強中だったみたい。
 半分目玉を見せたら驚いてた。フフン(ドヤ顔)
 「凄っ!」
 私がさっきの出来事を話したら、余計に驚いてた。
 「王子バカなの?」
 クレアもそう思った?
 私もそう思うよ、自分から隻眼になるなんてね~
 「半分目玉ちゃん、半分こしよう♪」
 「無理」
 「なんで?」
 クレアなら喜んで、実験材料にすると思ったんだけど。
 「ポーションで再生…しないよね?」
 「しないね…」
 何故当たり前の事を聞くの?
 どうしたクレア、いつもと違うよ。
 再生出来たら、クローンが大量に生産されてしまう。
 考えただけで恐ろしい!
 そう…恐ろしいのだ…?
 「それ欲しくない」
 すっごい、しかめっ面してる…
 そうか、うざ王子のだから、嫌なんだ!
 「ティアに任せる」
 私に一任するって事か、なるほど、他にやりたい事もあるのね。
 「分かった!」
 私は自室に戻って来た。
 大量生産?
 何かがひっかかったけど…まぁいいや。
 私がうざ王子の部屋を出てった後、宮仕え達が阿鼻叫喚となってた事は、知らない。
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