19 / 71
19話.リーシャの主治医になったよ
しおりを挟む
私達はリビングに移動して話を再開させた。
腹の探り合いをする気は無い。
「正直に答えて下さい。私達は王女様が、虐待を受けてると思ってます。事実なら、医術師として見過ごす訳にはいきません」
憤慨したのは意外な事にお妃様だった。
「なんて事を言うの、あの娘は私達の宝です!虐待だなんて…そんな惨い事を、する訳がありません」
「何故、虐待していると思ったのか、理由を聞かせなさい」
今度は王弟が問いかけて来た、案外冷静な人なのかな?
「何故放置してるんですか?あの程度のケロイド、宮仕えなら簡単に治せたと思いますけど?」
「あの程度?」
王弟が眉間に皺をよせた。
「偶にいるんですよ。看病してる自分に酔いしれ、完治させずに大切な人を傷つける、奇矯な奴が」
「それは、どう言う…」
「誰が奇矯だ!私達が今まで何の努力もせずに、リーシャが苦しんでいるのを、傍観していたとでも言いたいのか!」
うっわ…この王子、王弟の言葉無視して横やり入れて来たよ。
「傍観も何も、事実でしょう?治せる物も治さず放置してるんですから」
「知った口を聞くな!帝国の聖女だって癒せなかったのだぞ!」
「へ~、やっぱ聖女様が癒せなかったって噂は、事実なんだ…」
王子はハッとして、一瞬気まずそうな顔をした。
勢い余って噂が真実だってばらすとか…だっさ!
冷静さを取り戻したのか、俯いちゃったわ。
「宮仕え達だって、真骨注いでリーシャの治療に当たって来たのだ。私だけならともかく、忠誠を誓った彼らを、愚弄して欲しくない」
「ほんとに忠誠誓ってんですか?私には真骨注いで、怠慢してるようにしか、見えないんですけど?」
「まだ言うか!たかが初級資格を取った位で、知ったような事を。口を慎め!」
「たかがって何?こっちだって真剣なんですけど!目の前に救える患者がいたら、ほっとける訳ないでしょうが!」
「お待ちなさい、今救えると…」
「いい加減な事を!リーシャを引き合いに出してまで、私の気を惹きたいのか!」
お妃様の言葉迄遮って、王子はドンっと、両拳をダイニングテーブルに叩き付け、かち割った!
お茶を出してたから、テーブルの上のティーセットが滑り落ち、見事に全部割れたよ!
ずっと我慢してたのに…
私の怒りが沸点を超えた、許せない!
「あんたね~!何、破壊してんのよ!そのテーブルも、ティーセットも、ご先祖様が大事にしてた奴なんだよ。せっかく淹れてくれたお茶まで零して、自分が何したか、分かってんのかボケッ!
人ん家に、侍女だの護衛だのってゾロゾロ連れて来て、でっかい顔してっけどさ!どんだけお金使わせる気なのよ?こちとら金の生る木持ってる暇人じゃないんだ、いい加減にしろっ!」
「はっ!とうとう本性を出したか。お前の浪費に比べたら、この程度痛くも痒くもないだろっ」
「何言ってんだよ、くそ王子!そりゃあんた達から見たら小銭程度かもしんないけどね、こちとらその小銭稼ぐのだって、必死なんだよ!」
「まるで自分が稼ぎ頭みたいな口の利き方じゃないか、僕が何も知らないとでも、思っていたか?それとも辺境伯が付いていると思っての狼藉か?」
「お爺様は関係ないでしょうがっ!」
「関係ないだと?態々リッデルに迄頼み込んで、学園へ通えるようにして貰っただろう」
「それこそ、あんたと何の関係も無いでしょーが!」
「大ありだろう!卒業まで大人しくしていれば、黙って娶ってやったのに。僕会いたさに待ち切れず、学園迄押しかけようなど!学び場は、お前の遊び場ではないのだぞ!」
「さっきから何言ってんの?頭湧いてんの?」
「お前こそいい加減にしろ!身寄りの無い従姉妹を、奴隷代わりにこき使うなど!鬼畜にも劣る蛮行、恥を知れ!」
今なんつった?クレアの事、奴隷呼ばわりしたよね?
も~う我慢ならない!腕の一本でも落とさないと、気が済まない!
マジックボックスから、愛刀を出そうとした私の腕を掴んだのは、お母様だった。
「そこまで!」
気が付けば、王弟夫妻も能面みたいな笑顔を張り付けて、固まってた。
「ティア…超えちゃいけない一線と言う物を理解しなさい。一族揃って城門に首を捧げるつもりか?」
「やり過ぎました、ごめんなさい…」
お母様に言われて、急激に頭が冷えた。
ここは素直に謝るしかない…悔しいけど正論だわ。
「王子、私達の耳にも王都での悪評は届いてる。それを確かめもせず間に受けて、私の娘を愚弄するのは止めて頂きたい」
「それは…感情を押さえられなかった、未熟さ故の失態、以後気を付けよう」
へ~ばかだと思ってたけど、ちゃんと反省出来るんだ。
深呼吸してから、うざ王子が語り出した。
「信じられない気持ちは分かるが、私は学園を卒業したら必ず迎えに来る。カルティア以外を妃にする気は一切無い。不安だと言うのなら、今この場で正式な婚約を結び、婚姻の日取りを決めても良い」
何処のカルティアさんの話だよ?あんたの婚姻なんて、殊更興味無いわぁ~勝手にやってくれ!
「王子、仮婚約の事を、ティアは知らない。話してないからな」
「え、お母様?仮婚約って何?」
「あ~…ははっ」
笑って胡麻化した!
「「話して無いのか?」」
固まってた王弟が復活して、うざ王子とハモった。
だから、何の話だよ!
「ねぇ…」
クレアが深刻な顔をしてる。
「身寄りの無い奴隷って誰の事?」
えっ???クレアの事だよね?
常に一緒にいる従姉妹って他にいないじゃん?侮辱されたと思ったんだけど違った???
「ティアと何時も一緒にいるの私だけど… 身寄りあるし… こき使われてないし… 誰の事言ってんの?」
珍しくクレアが饒舌だ!これは…うざ王子への抗議だ、変な言い掛かり付けるなって事かな?分かり難いよクレアさん…
「それは、きちんと確認もせず言葉が過ぎた…」
うざ王子がしどろもどろになってる、クレアの怒気にやられてやんの(笑)
「カルティア、リーシャを助ける事が出来るの?あの娘を救う手立てを、貴方は持っているの?教えて頂戴、あの娘は助かるの?」
いきなり両手握られたからビックリしたよ!
お妃様が縋るような目で見つめて来る…
クレアをチラッと見たけど、やっぱ…しかめっ面で頷いてる。
これは、何かあるんだろな~
「体内は…詳しく確認してないので、分かりませんが。頭部だけなら…気になる事もありますけど、直ぐにでも綺麗にしてあげたいと思ってます」
そう、左目がねぇ…無かった場合は義眼使えばいっかな?
「ぐえっ」
思案してたらお妃様に抱き締められたよ!
食堂でも思ったけど、この人見た目に寄らず怪力じゃね?苦しんだけど!!!
「貴方は女神だわ!」
女神じゃなくて亡霊になりそうです、離して欲しい。
「ルミア、離れなさい」
王弟が助けてくれなかったら、窒息してたかも!
見た目詐欺、恐るべし…
「カルティアよ、その言葉に嘘偽りは無いのか?私達は何度も失望して来た。戯言に付き合える程、寛容にはなれんぞ」
王弟の失望なんかに、興味無いんだわ。
「ねぇ…」
「何?クレア」
「カルテ見たい」
「そだね、今迄何してたのか、気になるよね!」
「聞いているのか?子供の遊びに…」
「カルテね、カルテが見たいのね、他には何が必要かしら」
王弟の言葉をぶった切って、お妃様が身を乗り出して来た。
面倒臭い奴ら相手にするより、ずっと話し易いな。
「出来れば明日の朝、体内の状態を確認させて欲しいです。それと、主治医からも話を聞きたいです」
「分かったわ、明日の朝ね、主治医は今連れて来るわね」
「待って下さい。こちらから伺ます、その時にカルテも見たいので」
「そうね、そうしましょう、付いてらっしゃい」
私達を逃がすまいとしてるかのように、医術師達が滞在してる部屋の前までやって来た。
歩くの早いな~そして、当然の様に王弟も、うざ王子も付いて来た。
突然の訪問に、驚く宮仕え達。
テーブルには、カルテが広げてあった。
王女様の今後を、話し合っていたんだって!
お妃様から話を聞いた彼らは訝しそうに私達を見たけど、医術師の初級資格書を見せたら、ちゃんと説明はしてくれた。
ちょっとここで、以前話してた初級では何故駄目なのか、説明を挟もう。
医術師や、薬術師にも階級がある。
初級から始まり中級・上級と来て、最高峰は特級と呼ばれる。
初級は何処の領地でも、資格取得の為の試験を受ける事が出来るし、実績は関係無い。
師匠に就いて、教えを請えば良いのだ。
その変わり、資格証明書を発行した領地でしか、術師として認められない。
他領で医療行為を行ったり、独自に開発した薬剤を持ち出す事は、禁じられてるのだ。
つまり領地外に出たければ中級以上の試験を受け、医術師若しくは薬術師としての免許を、国から取得しなければならないのだ。
当然だが実績も必要になる。
人の命を預かるのだから、当然と言えば…そうなのかもしんないけど?
やはり、王立学園の卒業生じゃなくてもよくない?って気持ちは拭えない。
だって私達は領地から出たいんじゃなくて、自分達の技術を、お爺様の領地で活かしたいだけなんだもの!
親戚なんだから、その辺大目に見てくれても、良さそうなもんだけどさ。
世の中そう甘くはないって事なのよ。
そして今、目の前に居る偉そうな医術師と、薬術師の階級は特級だ。
王族の主治医になるんだから、それなりの実績と経験がなけりゃ無理でしょ?
なのにだ、このカルテふざけてんの?
聖女様が癒せなかったので手術しました…それは分かる。
ケロイドが成長するので、手術続行は困難…て、まぁ何かあったんだろね?
予期せぬ事なんて、無いとは言い切れないし、一旦中止して立て直すのも、アリだろうけど…
問題はその後の治療についてだ!
ケロイドの成長って何?
そこ放置してどうすんだよ!
何故魔力暴走にばっか、拘ってんの?
症状全然違うじゃん。
根本正さなきゃ、悪化するの当たり前じゃないの?
ほんとに宮殿お抱えの、医術師なの?
基礎からやり直したら?
私はクレアの意見が聞きたくて横を見たけど、目を見開いて固まってるよ。
絶句してて、声も出せないんだね、分かるよ~。
クレアが何の質問もしないって事は、こいつらアホだって、思ってる証拠だわ。
こんなのに診て貰ってたんなら、あの状態になるのも頷ける。
とんだ穀潰しだよ!
一体今迄何を、学んだんだ?
私は呆れ果ててしまったので、お妃様にお願いをしてみる事にした。
「王女様が滞在中の間だけ、主治医の座を私とクレアに任せてください」
「分かりました。あの娘を助けてくれるのなら、何でも相談なさい。私に出来る事があるのなら、協力は惜しみません」
意外にあっさりだな…
もっとひと悶着あると覚悟してたんだけど?
「お待ちください妃殿下!この者達はまだ幼い…」
「黙りなさい」
宮仕え達も、一蹴か…
付いて来た割に一言も発さない王弟と王子は?
眉間に皺寄せてるだけだった…
お妃様って最強かも?
取り合えず話は付けた、これで心置きなく治療に専念出来る!
腹の探り合いをする気は無い。
「正直に答えて下さい。私達は王女様が、虐待を受けてると思ってます。事実なら、医術師として見過ごす訳にはいきません」
憤慨したのは意外な事にお妃様だった。
「なんて事を言うの、あの娘は私達の宝です!虐待だなんて…そんな惨い事を、する訳がありません」
「何故、虐待していると思ったのか、理由を聞かせなさい」
今度は王弟が問いかけて来た、案外冷静な人なのかな?
「何故放置してるんですか?あの程度のケロイド、宮仕えなら簡単に治せたと思いますけど?」
「あの程度?」
王弟が眉間に皺をよせた。
「偶にいるんですよ。看病してる自分に酔いしれ、完治させずに大切な人を傷つける、奇矯な奴が」
「それは、どう言う…」
「誰が奇矯だ!私達が今まで何の努力もせずに、リーシャが苦しんでいるのを、傍観していたとでも言いたいのか!」
うっわ…この王子、王弟の言葉無視して横やり入れて来たよ。
「傍観も何も、事実でしょう?治せる物も治さず放置してるんですから」
「知った口を聞くな!帝国の聖女だって癒せなかったのだぞ!」
「へ~、やっぱ聖女様が癒せなかったって噂は、事実なんだ…」
王子はハッとして、一瞬気まずそうな顔をした。
勢い余って噂が真実だってばらすとか…だっさ!
冷静さを取り戻したのか、俯いちゃったわ。
「宮仕え達だって、真骨注いでリーシャの治療に当たって来たのだ。私だけならともかく、忠誠を誓った彼らを、愚弄して欲しくない」
「ほんとに忠誠誓ってんですか?私には真骨注いで、怠慢してるようにしか、見えないんですけど?」
「まだ言うか!たかが初級資格を取った位で、知ったような事を。口を慎め!」
「たかがって何?こっちだって真剣なんですけど!目の前に救える患者がいたら、ほっとける訳ないでしょうが!」
「お待ちなさい、今救えると…」
「いい加減な事を!リーシャを引き合いに出してまで、私の気を惹きたいのか!」
お妃様の言葉迄遮って、王子はドンっと、両拳をダイニングテーブルに叩き付け、かち割った!
お茶を出してたから、テーブルの上のティーセットが滑り落ち、見事に全部割れたよ!
ずっと我慢してたのに…
私の怒りが沸点を超えた、許せない!
「あんたね~!何、破壊してんのよ!そのテーブルも、ティーセットも、ご先祖様が大事にしてた奴なんだよ。せっかく淹れてくれたお茶まで零して、自分が何したか、分かってんのかボケッ!
人ん家に、侍女だの護衛だのってゾロゾロ連れて来て、でっかい顔してっけどさ!どんだけお金使わせる気なのよ?こちとら金の生る木持ってる暇人じゃないんだ、いい加減にしろっ!」
「はっ!とうとう本性を出したか。お前の浪費に比べたら、この程度痛くも痒くもないだろっ」
「何言ってんだよ、くそ王子!そりゃあんた達から見たら小銭程度かもしんないけどね、こちとらその小銭稼ぐのだって、必死なんだよ!」
「まるで自分が稼ぎ頭みたいな口の利き方じゃないか、僕が何も知らないとでも、思っていたか?それとも辺境伯が付いていると思っての狼藉か?」
「お爺様は関係ないでしょうがっ!」
「関係ないだと?態々リッデルに迄頼み込んで、学園へ通えるようにして貰っただろう」
「それこそ、あんたと何の関係も無いでしょーが!」
「大ありだろう!卒業まで大人しくしていれば、黙って娶ってやったのに。僕会いたさに待ち切れず、学園迄押しかけようなど!学び場は、お前の遊び場ではないのだぞ!」
「さっきから何言ってんの?頭湧いてんの?」
「お前こそいい加減にしろ!身寄りの無い従姉妹を、奴隷代わりにこき使うなど!鬼畜にも劣る蛮行、恥を知れ!」
今なんつった?クレアの事、奴隷呼ばわりしたよね?
も~う我慢ならない!腕の一本でも落とさないと、気が済まない!
マジックボックスから、愛刀を出そうとした私の腕を掴んだのは、お母様だった。
「そこまで!」
気が付けば、王弟夫妻も能面みたいな笑顔を張り付けて、固まってた。
「ティア…超えちゃいけない一線と言う物を理解しなさい。一族揃って城門に首を捧げるつもりか?」
「やり過ぎました、ごめんなさい…」
お母様に言われて、急激に頭が冷えた。
ここは素直に謝るしかない…悔しいけど正論だわ。
「王子、私達の耳にも王都での悪評は届いてる。それを確かめもせず間に受けて、私の娘を愚弄するのは止めて頂きたい」
「それは…感情を押さえられなかった、未熟さ故の失態、以後気を付けよう」
へ~ばかだと思ってたけど、ちゃんと反省出来るんだ。
深呼吸してから、うざ王子が語り出した。
「信じられない気持ちは分かるが、私は学園を卒業したら必ず迎えに来る。カルティア以外を妃にする気は一切無い。不安だと言うのなら、今この場で正式な婚約を結び、婚姻の日取りを決めても良い」
何処のカルティアさんの話だよ?あんたの婚姻なんて、殊更興味無いわぁ~勝手にやってくれ!
「王子、仮婚約の事を、ティアは知らない。話してないからな」
「え、お母様?仮婚約って何?」
「あ~…ははっ」
笑って胡麻化した!
「「話して無いのか?」」
固まってた王弟が復活して、うざ王子とハモった。
だから、何の話だよ!
「ねぇ…」
クレアが深刻な顔をしてる。
「身寄りの無い奴隷って誰の事?」
えっ???クレアの事だよね?
常に一緒にいる従姉妹って他にいないじゃん?侮辱されたと思ったんだけど違った???
「ティアと何時も一緒にいるの私だけど… 身寄りあるし… こき使われてないし… 誰の事言ってんの?」
珍しくクレアが饒舌だ!これは…うざ王子への抗議だ、変な言い掛かり付けるなって事かな?分かり難いよクレアさん…
「それは、きちんと確認もせず言葉が過ぎた…」
うざ王子がしどろもどろになってる、クレアの怒気にやられてやんの(笑)
「カルティア、リーシャを助ける事が出来るの?あの娘を救う手立てを、貴方は持っているの?教えて頂戴、あの娘は助かるの?」
いきなり両手握られたからビックリしたよ!
お妃様が縋るような目で見つめて来る…
クレアをチラッと見たけど、やっぱ…しかめっ面で頷いてる。
これは、何かあるんだろな~
「体内は…詳しく確認してないので、分かりませんが。頭部だけなら…気になる事もありますけど、直ぐにでも綺麗にしてあげたいと思ってます」
そう、左目がねぇ…無かった場合は義眼使えばいっかな?
「ぐえっ」
思案してたらお妃様に抱き締められたよ!
食堂でも思ったけど、この人見た目に寄らず怪力じゃね?苦しんだけど!!!
「貴方は女神だわ!」
女神じゃなくて亡霊になりそうです、離して欲しい。
「ルミア、離れなさい」
王弟が助けてくれなかったら、窒息してたかも!
見た目詐欺、恐るべし…
「カルティアよ、その言葉に嘘偽りは無いのか?私達は何度も失望して来た。戯言に付き合える程、寛容にはなれんぞ」
王弟の失望なんかに、興味無いんだわ。
「ねぇ…」
「何?クレア」
「カルテ見たい」
「そだね、今迄何してたのか、気になるよね!」
「聞いているのか?子供の遊びに…」
「カルテね、カルテが見たいのね、他には何が必要かしら」
王弟の言葉をぶった切って、お妃様が身を乗り出して来た。
面倒臭い奴ら相手にするより、ずっと話し易いな。
「出来れば明日の朝、体内の状態を確認させて欲しいです。それと、主治医からも話を聞きたいです」
「分かったわ、明日の朝ね、主治医は今連れて来るわね」
「待って下さい。こちらから伺ます、その時にカルテも見たいので」
「そうね、そうしましょう、付いてらっしゃい」
私達を逃がすまいとしてるかのように、医術師達が滞在してる部屋の前までやって来た。
歩くの早いな~そして、当然の様に王弟も、うざ王子も付いて来た。
突然の訪問に、驚く宮仕え達。
テーブルには、カルテが広げてあった。
王女様の今後を、話し合っていたんだって!
お妃様から話を聞いた彼らは訝しそうに私達を見たけど、医術師の初級資格書を見せたら、ちゃんと説明はしてくれた。
ちょっとここで、以前話してた初級では何故駄目なのか、説明を挟もう。
医術師や、薬術師にも階級がある。
初級から始まり中級・上級と来て、最高峰は特級と呼ばれる。
初級は何処の領地でも、資格取得の為の試験を受ける事が出来るし、実績は関係無い。
師匠に就いて、教えを請えば良いのだ。
その変わり、資格証明書を発行した領地でしか、術師として認められない。
他領で医療行為を行ったり、独自に開発した薬剤を持ち出す事は、禁じられてるのだ。
つまり領地外に出たければ中級以上の試験を受け、医術師若しくは薬術師としての免許を、国から取得しなければならないのだ。
当然だが実績も必要になる。
人の命を預かるのだから、当然と言えば…そうなのかもしんないけど?
やはり、王立学園の卒業生じゃなくてもよくない?って気持ちは拭えない。
だって私達は領地から出たいんじゃなくて、自分達の技術を、お爺様の領地で活かしたいだけなんだもの!
親戚なんだから、その辺大目に見てくれても、良さそうなもんだけどさ。
世の中そう甘くはないって事なのよ。
そして今、目の前に居る偉そうな医術師と、薬術師の階級は特級だ。
王族の主治医になるんだから、それなりの実績と経験がなけりゃ無理でしょ?
なのにだ、このカルテふざけてんの?
聖女様が癒せなかったので手術しました…それは分かる。
ケロイドが成長するので、手術続行は困難…て、まぁ何かあったんだろね?
予期せぬ事なんて、無いとは言い切れないし、一旦中止して立て直すのも、アリだろうけど…
問題はその後の治療についてだ!
ケロイドの成長って何?
そこ放置してどうすんだよ!
何故魔力暴走にばっか、拘ってんの?
症状全然違うじゃん。
根本正さなきゃ、悪化するの当たり前じゃないの?
ほんとに宮殿お抱えの、医術師なの?
基礎からやり直したら?
私はクレアの意見が聞きたくて横を見たけど、目を見開いて固まってるよ。
絶句してて、声も出せないんだね、分かるよ~。
クレアが何の質問もしないって事は、こいつらアホだって、思ってる証拠だわ。
こんなのに診て貰ってたんなら、あの状態になるのも頷ける。
とんだ穀潰しだよ!
一体今迄何を、学んだんだ?
私は呆れ果ててしまったので、お妃様にお願いをしてみる事にした。
「王女様が滞在中の間だけ、主治医の座を私とクレアに任せてください」
「分かりました。あの娘を助けてくれるのなら、何でも相談なさい。私に出来る事があるのなら、協力は惜しみません」
意外にあっさりだな…
もっとひと悶着あると覚悟してたんだけど?
「お待ちください妃殿下!この者達はまだ幼い…」
「黙りなさい」
宮仕え達も、一蹴か…
付いて来た割に一言も発さない王弟と王子は?
眉間に皺寄せてるだけだった…
お妃様って最強かも?
取り合えず話は付けた、これで心置きなく治療に専念出来る!
10
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて
ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記
大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。
それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。
生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、
まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。
しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。
無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。
これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?
依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、
いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。
誰かこの悪循環、何とかして!
まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて
一年で死ぬなら
朝山みどり
恋愛
一族のお食事会の主な話題はクレアをばかにする事と同じ年のいとこを褒めることだった。
理不尽と思いながらもクレアはじっと下を向いていた。
そんなある日、体の不調が続いたクレアは医者に行った。
そこでクレアは心臓が弱っていて、余命一年とわかった。
一年、我慢しても一年。好きにしても一年。吹っ切れたクレアは・・・・・
D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが
米俵猫太朗
ファンタジー
ただのサッカーマニアである青年ショーキチはひょんな事から異世界へ転移してしまう。
その世界では女性だけが行うサッカーに似た球技「サッカードウ」が普及しており、折りしもエルフ女子がミノタウロス女子に蹂躙されようとしているところであった。
更衣室に乱入してしまった縁からエルフ女子代表を率いる事になった青年は、秘策「Tバック」と「トップレス」戦術を授け戦いに挑む。
果たしてエルフチームはミノタウロスチームに打ち勝ち、敗者に課される謎の儀式「センシャ」を回避できるのか!?
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー
紫電のチュウニー
ファンタジー
第四部第一章 新大陸開始中。 開始中(初投稿作品)
転生前も、転生後も 俺は不幸だった。
生まれる前は弱視。
生まれ変わり後は盲目。
そんな人生をメルザは救ってくれた。
あいつのためならば 俺はどんなことでもしよう。
あいつの傍にずっといて、この生涯を捧げたい。
苦楽を共にする多くの仲間たち。自分たちだけの領域。
オリジナルの世界観で描く 感動ストーリーをお届けします。
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!(改訂版)
IXA
ファンタジー
凡そ三十年前、この世界は一変した。
世界各地に次々と現れた天を突く蒼の塔、それとほぼ同時期に発見されたのが、『ダンジョン』と呼ばれる奇妙な空間だ。
不気味で異質、しかしながらダンジョン内で手に入る資源は欲望を刺激し、ダンジョン内で戦い続ける『探索者』と呼ばれる職業すら生まれた。そしていつしか人類は拒否感を拭いきれずも、ダンジョンに依存する生活へ移行していく。
そんなある日、ちっぽけな少女が探索者協会の扉を叩いた。
諸事情により金欠な彼女が探索者となった時、世界の流れは大きく変わっていくこととなる……
人との出会い、無数に折り重なる悪意、そして隠された真実と絶望。
夢見る少女の戦いの果て、ちっぽけな彼女は一体何を選ぶ?
絶望に、立ち向かえ。
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる