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1章 出会い
17話.頭部は問題ないよね?
しおりを挟むカルティアとクレアナは、調剤庫に居た。
リシャーナの為の薬剤を取りに来たのだ。
二人も又、怒りで腸が煮えくり返っている。
「あれ何!医術師は何をやってんの?」
うわ~!何時ものほほんとしてるクレアが、こんなに怒ってる姿って貴重だわ!
私の怒りが沈下し、冷静さを取り戻せたよ。
「同行者名簿には医術師と、薬術師の名前もあったよ」
私はお父様の執務室で見た名簿を思い出し、クレアに教えてあげた。
「は?は?はあ?怒・怒・怒」
みるみるクレアが、鬼の形相になってく。
あ…これ駄目な奴だ!
「ポチ!」
クレアから大きな魔力が放出された瞬間、ポチがそれを吸い込んだ。
危なかった~屋敷が吹っ飛ぶ所だったよ…
クレアの魔力は計り知れない。
コントロールも上手いから、本気で魔術を使ったら、ちっぽけな家の領地なんて更地になっちゃうと思う。
味方にいると鬼に金棒だが、敵にしたら駄目な奴の典型だ。
そんなクレアが、こうやって感情を爆発させるのは、二人きりの時だけ。
何とかしてくれると、私の事を信頼してくれてる証なのだ!フフン(ドヤ顔)
「ねぇ、王弟って虐待癖があんのかな?」
ちょっと冷静になったクレアに、疑問をぶつけてみる。
「私も思った!」
やっぱ考えた事は一緒か!
「事実確認しなきゃ!事と次第によっては武力行使もアリだよね?」
物騒な事を考えてる私に、クレアは同意してくれる。
「保護しなきゃ」
よし!行くぞ!戦場に向かう戦士の気分で食堂へ戻った。
「お待たせしました」
私達は香を焚きながら、王女殿下の傍に寄ろうとしたんだけど、なんか邪魔だな…
「マルコ、ちょっとどけてくれる?」
隣を陣取って幸せそうな顔を向けてちゃってるよ。
「姉上!明日はリーシャと、お外に行ける?」
「外はまだ無理だね~」
「そうなの?」
しょんぼりするマルコの頭を撫でながら、王女様に飲ませる薬の説明をしようとしたんだけど…
「この薬は…」
「それは何だ!香まで焚いて、リシャーナに何をするつもりだ!」
横から五月蠅い声に邪魔された。
誰?王子?確か名前…何だっけ?
キャンキャン騒いで説明聞く気なさそうだし、面倒臭いから結界張った。
ちゃんとこっちの様子見れるし、声だって届く様にしたから問題ないでしょ、そこで大人しく見てなさい。
こっちからは何も見えないし聞こえないけど、邪魔されず落ち着いて薬飲ませられるから問題ない。
「王女様、こちらのお香は呼吸を楽にする物です。効いて来る迄少し時間がかかるので、此処に置いときますね。」
私はクレアに持たせてたお香を受け取り、王女様の前に置く。
「こちらは頭痛や眩暈、吐き気と言った中毒症状を抑える薬です。臭くて苦いんですけど…直ぐに効き目が出るから、我慢して飲んでくださいね」
濃い緑色でペースト状になった薬を一匙分、スプーンに乗せて口の中に入れたら…
なんか…嫌そうにしてる!感覚が残ってるなら、良い傾向。
直ぐにクレアが王女様の口の中を水で洗い、少しずつ喉の奥に流し込んで行った。
凄~い!流石の魔力コントロールである。
小さな口の中で水を自在に操るのは、熟練した魔術師の証だ!
因みに私には出来ない芸当である。フフン(ドヤ顔)
薬ちゃんと飲んだね。
「ちょっと失礼します」
王女様の頬に手を添えて、魔力を流し状態を確認してみた。
見た目は酷いけど感覚も残ってるし、中は思ってた程悪くないみたい。
問題は左目か…欠損してるけど、核が残ってたら再生出来るし。
頭部だけなら直ぐ治せそうなもんだけど…
「姉上?」
思案してたら、マルコが心配そうに顔を覗き込んで来たので、抱き締めちゃう。
愛しい弟の初恋相手だ!助けてあげたいけど…
そもそも体内はどうなってんだ?
クレアを見たが、しかめっ面だ…これは前途多難ってやつ?
薬を水で流し込んだ時、魔力も一緒に流し込んで体内をさりげなく確認したんだろう。
クレアは出来る奴なのだ!
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