超人だと思われているけれど、実は凡人以下の私は、異世界で無双する。

紫(ゆかり)

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1章 出会い

11話.オルテンシア伯爵の兄妹

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 今日もポチと魔物討伐してから、お土産配りにやって来た。
 「ミラ伯母様~~~!自称行方不明伯父様からのお土産を持って来たよ~!」
 私は大声で畑仕事をしてる伯母様に声をかけた。
 「お~!ありがとね~ちょっと待ってて!今行くから~」
 伯母様は、手をブンブン降って答えてくれたので、先に家の中で待つ事にした。
 勝手知ったる他人の我が家、である…他人じゃないけど。
 お父様は、五人兄弟の四番目だ。
 一番上の兄は世界を旅してる自称行方不明だが、こうして特産品を送って来てくれる。
 ミラ伯母様は二番目で、初級薬術師で、私の師匠だ。
 駆け落ちしま~すって、農夫の旦那様と結婚したけど、割と近くで薬草畑を作ってる。
 仲良し夫婦だ子供も二人いて、家族で畑仕事をしてた。
 「待たせたね…お?珍しい薬草じゃないか!」
 ミラ伯母様は目敏い。
 私もだけど、薬草の事になるとおしゃべりが止まらなくなる。
 今回は旅先で見つけた、この国では手に入らない、貴重な苗を送ってくれたのだ。
 「これさ!成長が滅茶苦茶早いんだって!見て!」
 私は自称行方不明からの説明書を渡した。
 「へ~独特な臭いだけど、味は悪くないね」
 あ!食べた…
 「え~私も食べたい!我慢してたのに~」
 ごめんごめんって笑ってたけど、私が食べちゃったら植える物が無くなるから我慢した。
 それからはどんな薬が出来るだとか、あんなのが作りたいとか、話に花が咲いて。
 気が付いたら結構な時間が過ぎちゃってたみたい。
 「ティア、のんびりしてていいのか?今日は偉い人が来るんだろ?」
 心配そうに声をかけてくれたのは、伯母様の旦那様、マーカスさんだ!
 「忘れてた!ルーク叔父様の所にも行かなきゃだったわ!クレアと待ち合わせてるの!また来るね」
 私は慌てて支度する、偉い人の事はどうでもいいけど、クレアを待たせるのは嫌だ。
 「気を付けてな」
 マーカスさんは私の頭をグリグリ撫でまわす。
 厳つい顔してるけど、とっても優しい人なんだ。
 「あんた、誰の心配してんのさ!お遣いついでに、魔物討伐して来るような娘だよ?」
 ミラ伯母様はケラケラ笑ってる。
 「ティアは年頃の娘だ!変な虫が付いたらどうする?」
 「ありがとね~変な虫に気を付けて帰るよ~」
 私は手を振って挨拶してから、叔父様の家に急いだ。
 ルーク叔父様は三番目で、奥様と治療院をやってるんだけど…
 診察してるより、研究に没頭してる事のが、多い気がする。
 初級医術師で、私とクレアの師匠だ!
 師匠何人いるんだよって?四人かな?
 「お土産持って来たよ~、クレアは居る?」
 研究室の窓越しに、叔父様が見えたので、そのまま声をかけた。
 「おまえな~、何時も玄関から入って来いと言ってるだろ、プライバシーの侵害だぞ?」
 転移を乱用するなって言われたけど、聞いてない。
 クレアはまだ来てなさそう…
 床には自称行方不明が送って来る、世界中の医術書が乱雑に積みあがってて、足の踏み場を探すのが大変だ。
 私は本を避けて、お土産を置いてから木箱に腰かけた。
 お土産の中に新しい本を見つけたので、ペラペラめくりながら声をかける。
 「ねえ知ってた?王女様ってまだ体が不自由なんだって!一体何したらそんな大火傷すんのかな?」
 叔父様は顕微鏡を覗いてたけど、やめて振り向いた。
 「王都で騒ぎになってた、魔力暴走の話か?」
 「あ~?…他領じゃ暴動まで起きたって奴?唯の噂にそんな振り回されるもんなの?」
 うちもだけど、お爺様ん所の領民だって、他人事だったよ。
 護符が足りないならって、余ってるの神殿に返してくれる人までいた位。
 お陰様で大量に在庫を抱えてた魔力暴走用の護符が、ぼった来るような値段でも飛ぶように売れた。
 うちの事貧乏貴族ってバカにするだけあって、他領のお貴族様は皆お金持ちだったよ。
 そんで儲かったお金で、老朽化してた神殿を建て替えられて、お父様がご機嫌になってた。
 なんでかって?神殿は他の建物と違っていろいろあるのだよ。
 先立つ物が無くて後回しになってたのさ。
 公共事業に出すお金は、幾らあっても足りないからね。
 ……この本なかなか面白いな、借りてくか。
 「人は、見えない物に恐怖を感じる生き物だからな…聖女でも治せなかったとなりゃ、パニックにもなるだろ」
 「え~っ!二度目の魔力暴走なんて話、いろんな本見たけど何処にもそんな記述なかったよ?もっとこう…別の何かじゃない?」
 私は魔物から採れた、でっかい魔晶石を思い出した。
 「あ~…。僕も調べたんだけど、幼児期の魔力暴走とは違うと思うぞ?」
 「なんだと思ってんの?魔物と関係ある?」
 「それは、分からん…ただ。兄さんから変な話を聞いたんだ、西の国で生物を使った怪しい実験をしてるとか?なんとか?」
 「何それ!!」
 「詳しくは知らんけど、実験が事実なら物騒な事するよな~」
 叔父様は、読んだら返せよって言って、また顕微鏡を覗きだした。
 本の事しっかり見られてた…
 「待って!それって、王女様と関わりあったら、国際問題じゃない?」
 「何が国際問題?」
 クレアが戻って来た。
 「お帰り~叔母様元気だった?」
 クレアのお母様はばちっこ末っ子だ、自称行方不明のお土産を持ってくついでに、里帰りしてたの。
 「うん元気。相変わらずだった」
 相変わらずと言う事は、コバエ集り虫の愚痴をこぼしてたのか…
 「西の国で生物を使った怪しい実験してるらしいよ、それで王女様が被害受けてたら、大変じゃない?って話」
 「何それ!!」
 叔父様が突然笑い出した。
 「やっぱお前たち似てるな~」
 「「何処が~???」」
 突拍子もない言葉に興味津々である!
 「そお言う所だよ」
 叔父様はクツクツ笑いながら顕微鏡を覗きこむ。
 「全然わかんない」
 性格なんて真逆だし?何処が似てるのか教えて欲しいよ。
 「何見てるの?」
 クレアは顕微鏡の中が気になったようだ、叔父様を押し退けて覗き込んでる。
 やっぱ全然似てないじゃん!興味を持つ所違うじゃん!て、思った。
 「お前たちもう帰れよ、晩飯食べ損ねるぞ」
 叔父様は私達が邪魔になったようだ…
 「え~」
 グイっと叔父様に押し退けられてクレアはご立腹だ。
 これ以上此処にいても、有益な情報は貰えなさそうなので、帰る事にした。
 叔父様は手だけ振って、顕微鏡から目を離さなかった。
 「ねぇ…顕微鏡に何あったの?」
 私は今更気になったので、クレアに聞いてみる。
 「なんか、面白いの!」
 目をキラキラさせて教えてくれたけど…それ答えになってないよね?
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