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幼馴染と家で
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side紘
「うわ、汚い」
「しょうがないだろ?俺一人なんだし」
「一人なのにこんなの汚れてるのが意味わかんないの」
金曜日の夕方。部活を終えた柚羽はオレの家に寄って行く。両親が平日家を空けがちなので週末やオレの両親が帰宅する前に掃除を手伝ってもらうのだ。
「ほら、柚羽ってうちのハウスキーパーみたいな感じじゃん?」
「ほんとに。次から1000円ね」
「幼馴染割で」
「じゃあ900円」
「オレらの関係100円かよ」
柚羽はキッチンやダイニングを中心に掃除をする。オレは溜まった洗濯物や出しっぱなしのものが多いリビングを片付ける。
柚羽は生ゴミや匂いの強いものなんかも平気な顔をして片付ける。オレには到底できない。再三やっているからか手際がいい。
オレも洗濯機は回したし、リビングのものが片付いたのでテレビをつけた。
「ちょっと、終わったの?」
「終わったって」
「あっそ」
柚羽は掃除を続ける。まだ終わっていないようだ。まぁ、それでも始めてから2時間もすれば終わる。
ソファでテレビを見ているとテレビの近くで柚羽は洗濯物を干したりアイロンをかけ始めた。
「見えない。邪魔なんだけど」
「じゃあ自分でやる?」
「それはいいや」
柚羽は洗濯物を小分けにして持ってくる。一回で持ってくればいいのに。そして毎度どこに干そうとか聞いてくる。
柚羽がニ度目の洗濯物を干しに行った時、柚羽の携帯が鳴る。
「柚羽ー!携帯鳴ってるぞ」
「わかったー」
駆け足でダイニングテーブルに置かれた鞄の中から携帯を取り出して電話に出る。
「もしもし?三枝くん?」
電話に出ると柚羽は廊下に出て行った。
「三枝?」
凄くモヤっとした。電話の相手が三枝だってわかった時のあの嬉しそうな顔がなんとも腹ただしい。声も少し作っているような気がする。
5分ほどしたら戻ってきた。
「何の電話?」
「んー?なんでもない」
「なんでもないことないだろ」
「ほんとになんでもないよ?ヒロに関係ない話だし」
思わず聞いてしまった。柚羽も普段こんなこと聞かれないからか凄く驚いた顔をしていたし、少し嫌そうな顔をしていた。オレは引き下がるしかなかった。
「ま、そうか」
時刻は19:00頃になった。普段はこの辺りで柚羽が夕食を作ってくれるのだが。
「ごめん。ご飯適当に食べて、私帰るから」
「は?適当にってなんだよ」
「高校生なんだから自分でできるでしょ?」
ぐうの音も出ないが、嫌な予感がした。だからオレは柚羽を引き止めたかった。
「なんで帰るんだよ」
「なんでって私にも用事くらいあるし、今日は元々帰る予定だったし?」
「用事ってなんだよ」
問いを重ねられて柚羽は大層嫌そうな顔をするが引き下がるわけにはいかない。だって、さっきの電話の先は。
「三枝となんかあんのか?」
思わず口にしたのは三枝の名前だった。柚羽はそれにビクッとしたがすぐに笑顔になり機嫌がいいように見えた。
「電話聞いてたんだ」
「内容までは知らないけどな」
なんでそんな嬉しそうなんだよ。
その機嫌の良さそうな様子がひどく胸に突き刺さった。気になるが聞いてしまえばこの傷が抉れてしまうようなそんな葛藤をしながら次の言葉を待った。
「さっきの電話の話の続きをするために掛け直したくて」
心臓の鼓動が早い。視界が揺れているような。三半規管がおかしいのか?だけどひどく冷静で話がよく聞こえる。
「掃除してるって言ったら三枝くんが遠慮して切ってくれたからさ」
柚羽の機嫌はどんどん良くなっているように見える。対してオレの指先が冷えていくよう。
「今かければいいじゃん」
「それもそうなんだけど、準備もあるから」
「準備?」
オレの提案も即座に否定され、柚羽はあっさりと内容について口にした。
「明日三枝くんと出掛けるからね。電話もゆっくりしたいし」
「へ、へぇ、そうなんだ」
脳の活動が止まっているように思える。いや、むしろタイヤのように早く回りすぎて止まっているように感じているのかもしれない。
三枝となんで出掛けるんだよ。それって二人なのか?他の奴の名前も出せよ。どこいくんだよ。何時から何時まで?
そんな疑問が浮かんでは消えた。
オレでもこんなこと細かに聞く権利がないことは理解している。だからこそ歯がゆい。
「だから今日のところは帰るよ。おばさんたちによろしくね」
「あ、あぁ、そっちこそ三枝に恥かかせんなよ」
「何様のつもり?」
「ふふっ」と笑いながらいつもなら怒って返してくるはずのところを返してくる。すでに手に持っている荷物を持って「じゃあね」と出て行った。
「なんだよあいつ。何様って…幼馴染様だっての…」
その日の夜食は冷食を温めてみたが何も喉を通らず、眠りにつくこともできなかった。
現実逃避をしようとしても休日に柚羽と三枝が出掛けるという事実が頭にこびりついて離れなかった。
徹夜で迎えた翌朝、窓からとてもおめかしをした柚羽が歩いて行くのを見た。おそらく駅に向かっているのだろう。
とてもしんどい。今までかかったどんな病よりも辛かった。
ゲームしても、漫画読んでも上の空で結構眠ることもできなくてその日の部活も休んだ。
「うわ、汚い」
「しょうがないだろ?俺一人なんだし」
「一人なのにこんなの汚れてるのが意味わかんないの」
金曜日の夕方。部活を終えた柚羽はオレの家に寄って行く。両親が平日家を空けがちなので週末やオレの両親が帰宅する前に掃除を手伝ってもらうのだ。
「ほら、柚羽ってうちのハウスキーパーみたいな感じじゃん?」
「ほんとに。次から1000円ね」
「幼馴染割で」
「じゃあ900円」
「オレらの関係100円かよ」
柚羽はキッチンやダイニングを中心に掃除をする。オレは溜まった洗濯物や出しっぱなしのものが多いリビングを片付ける。
柚羽は生ゴミや匂いの強いものなんかも平気な顔をして片付ける。オレには到底できない。再三やっているからか手際がいい。
オレも洗濯機は回したし、リビングのものが片付いたのでテレビをつけた。
「ちょっと、終わったの?」
「終わったって」
「あっそ」
柚羽は掃除を続ける。まだ終わっていないようだ。まぁ、それでも始めてから2時間もすれば終わる。
ソファでテレビを見ているとテレビの近くで柚羽は洗濯物を干したりアイロンをかけ始めた。
「見えない。邪魔なんだけど」
「じゃあ自分でやる?」
「それはいいや」
柚羽は洗濯物を小分けにして持ってくる。一回で持ってくればいいのに。そして毎度どこに干そうとか聞いてくる。
柚羽がニ度目の洗濯物を干しに行った時、柚羽の携帯が鳴る。
「柚羽ー!携帯鳴ってるぞ」
「わかったー」
駆け足でダイニングテーブルに置かれた鞄の中から携帯を取り出して電話に出る。
「もしもし?三枝くん?」
電話に出ると柚羽は廊下に出て行った。
「三枝?」
凄くモヤっとした。電話の相手が三枝だってわかった時のあの嬉しそうな顔がなんとも腹ただしい。声も少し作っているような気がする。
5分ほどしたら戻ってきた。
「何の電話?」
「んー?なんでもない」
「なんでもないことないだろ」
「ほんとになんでもないよ?ヒロに関係ない話だし」
思わず聞いてしまった。柚羽も普段こんなこと聞かれないからか凄く驚いた顔をしていたし、少し嫌そうな顔をしていた。オレは引き下がるしかなかった。
「ま、そうか」
時刻は19:00頃になった。普段はこの辺りで柚羽が夕食を作ってくれるのだが。
「ごめん。ご飯適当に食べて、私帰るから」
「は?適当にってなんだよ」
「高校生なんだから自分でできるでしょ?」
ぐうの音も出ないが、嫌な予感がした。だからオレは柚羽を引き止めたかった。
「なんで帰るんだよ」
「なんでって私にも用事くらいあるし、今日は元々帰る予定だったし?」
「用事ってなんだよ」
問いを重ねられて柚羽は大層嫌そうな顔をするが引き下がるわけにはいかない。だって、さっきの電話の先は。
「三枝となんかあんのか?」
思わず口にしたのは三枝の名前だった。柚羽はそれにビクッとしたがすぐに笑顔になり機嫌がいいように見えた。
「電話聞いてたんだ」
「内容までは知らないけどな」
なんでそんな嬉しそうなんだよ。
その機嫌の良さそうな様子がひどく胸に突き刺さった。気になるが聞いてしまえばこの傷が抉れてしまうようなそんな葛藤をしながら次の言葉を待った。
「さっきの電話の話の続きをするために掛け直したくて」
心臓の鼓動が早い。視界が揺れているような。三半規管がおかしいのか?だけどひどく冷静で話がよく聞こえる。
「掃除してるって言ったら三枝くんが遠慮して切ってくれたからさ」
柚羽の機嫌はどんどん良くなっているように見える。対してオレの指先が冷えていくよう。
「今かければいいじゃん」
「それもそうなんだけど、準備もあるから」
「準備?」
オレの提案も即座に否定され、柚羽はあっさりと内容について口にした。
「明日三枝くんと出掛けるからね。電話もゆっくりしたいし」
「へ、へぇ、そうなんだ」
脳の活動が止まっているように思える。いや、むしろタイヤのように早く回りすぎて止まっているように感じているのかもしれない。
三枝となんで出掛けるんだよ。それって二人なのか?他の奴の名前も出せよ。どこいくんだよ。何時から何時まで?
そんな疑問が浮かんでは消えた。
オレでもこんなこと細かに聞く権利がないことは理解している。だからこそ歯がゆい。
「だから今日のところは帰るよ。おばさんたちによろしくね」
「あ、あぁ、そっちこそ三枝に恥かかせんなよ」
「何様のつもり?」
「ふふっ」と笑いながらいつもなら怒って返してくるはずのところを返してくる。すでに手に持っている荷物を持って「じゃあね」と出て行った。
「なんだよあいつ。何様って…幼馴染様だっての…」
その日の夜食は冷食を温めてみたが何も喉を通らず、眠りにつくこともできなかった。
現実逃避をしようとしても休日に柚羽と三枝が出掛けるという事実が頭にこびりついて離れなかった。
徹夜で迎えた翌朝、窓からとてもおめかしをした柚羽が歩いて行くのを見た。おそらく駅に向かっているのだろう。
とてもしんどい。今までかかったどんな病よりも辛かった。
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