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邪竜編
対決の後① ヴィンスレット視点
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初めて心から愛した恋人を戦場に送り込んで自分はまだ安全な場所に留まっていることに歯痒い思いだが、指揮する人間がいなければこの戦線は崩壊しかねない。
本来俺はここに来ることは許されなかった。それもそうだろう。次期クレイス公爵家の当主という立場は俺を動きにくくする。父上にももちろん反対された。しかし、もし、もしもノエルが破れ俺のいる場所まで邪竜が来た時、どうにかできる可能性があるのは国で唯一聖獣と契約する俺だけだった。それを言うと父上も渋々俺が戦場へ出向くことを許可した。
「報告します!邪竜は何故か攻撃を放たないようです。邪竜が通った跡は厄災に見舞われて多くの異常に見舞われるとのことでしたが、形を保ち飛行を続けるのが精一杯のようです!」
「なに?邪竜は不完全だと言うことか?」
「恐らくそうかと。肉片のようなものが体から落ちるのも確認しました。しかし、邪竜教は未だ勢いが衰えません。まだ押されてはいませんが、あの異常な力にいつ押し負けてもおかしくはない状況です」
「…全軍に通達を。すまない…後少し持たせてくれ。そのために回復薬や魔道具の使用制限はなしとする!怪我人はすぐに医療テントまで運べ。勝つぞ!」
「はっ!」
現状を好転させる手立ては正直ない。邪竜の復活がこんなにも早いとは思わなかった。いや、これは言い訳だな…ノエルを信じよう。今はそれしかない。あと俺にできることといえば…
「セロ『銀狼の咆哮』」
ーワオーーンー
セロの固有スキル『銀狼の咆哮』これは味方の能力値を上昇さるサポートスキルだ。セロとの相性にもよるが、これで戦線維持ができるといいんだが…
「報告です!現在地より北東にて、邪竜教の神官とノエル嬢が接敵し、交戦中でしたが、ルイ騎士団長が合流しそのまま神官を相手取り、ノエル嬢は邪竜へと向かったようです!そしてたった今入った報告では、ノエル嬢は接敵後なんらかの魔法によって邪竜が消滅しました!」
「邪竜が消滅?!それは本当か?」
「はい!」
「やったんだな…ノエル…確かお前は拡声魔法を持っていたな?今この戦場にいる全員に聞こえるようにできるか?」
「…少し無理をすることになりますが、やります!」
「ありがとう。邪竜が消滅したことを伝えてくれ。」
『邪竜消滅を確認!繰り返す。邪竜消滅を確認した!』
ここから戦場は少しだけ距離があると言うのに、大歓声が聞こえた。
「次は俺たちの番だ。続けて伝えてくれ」
「はい!」
『これより、掃討作戦を開始する!』
ノエルがやってくれた。邪竜という得体の知れない物への恐怖がなくなり、均衡状態だった戦場はノルシュタイン王国の有利へと変化していった。
本来俺はここに来ることは許されなかった。それもそうだろう。次期クレイス公爵家の当主という立場は俺を動きにくくする。父上にももちろん反対された。しかし、もし、もしもノエルが破れ俺のいる場所まで邪竜が来た時、どうにかできる可能性があるのは国で唯一聖獣と契約する俺だけだった。それを言うと父上も渋々俺が戦場へ出向くことを許可した。
「報告します!邪竜は何故か攻撃を放たないようです。邪竜が通った跡は厄災に見舞われて多くの異常に見舞われるとのことでしたが、形を保ち飛行を続けるのが精一杯のようです!」
「なに?邪竜は不完全だと言うことか?」
「恐らくそうかと。肉片のようなものが体から落ちるのも確認しました。しかし、邪竜教は未だ勢いが衰えません。まだ押されてはいませんが、あの異常な力にいつ押し負けてもおかしくはない状況です」
「…全軍に通達を。すまない…後少し持たせてくれ。そのために回復薬や魔道具の使用制限はなしとする!怪我人はすぐに医療テントまで運べ。勝つぞ!」
「はっ!」
現状を好転させる手立ては正直ない。邪竜の復活がこんなにも早いとは思わなかった。いや、これは言い訳だな…ノエルを信じよう。今はそれしかない。あと俺にできることといえば…
「セロ『銀狼の咆哮』」
ーワオーーンー
セロの固有スキル『銀狼の咆哮』これは味方の能力値を上昇さるサポートスキルだ。セロとの相性にもよるが、これで戦線維持ができるといいんだが…
「報告です!現在地より北東にて、邪竜教の神官とノエル嬢が接敵し、交戦中でしたが、ルイ騎士団長が合流しそのまま神官を相手取り、ノエル嬢は邪竜へと向かったようです!そしてたった今入った報告では、ノエル嬢は接敵後なんらかの魔法によって邪竜が消滅しました!」
「邪竜が消滅?!それは本当か?」
「はい!」
「やったんだな…ノエル…確かお前は拡声魔法を持っていたな?今この戦場にいる全員に聞こえるようにできるか?」
「…少し無理をすることになりますが、やります!」
「ありがとう。邪竜が消滅したことを伝えてくれ。」
『邪竜消滅を確認!繰り返す。邪竜消滅を確認した!』
ここから戦場は少しだけ距離があると言うのに、大歓声が聞こえた。
「次は俺たちの番だ。続けて伝えてくれ」
「はい!」
『これより、掃討作戦を開始する!』
ノエルがやってくれた。邪竜という得体の知れない物への恐怖がなくなり、均衡状態だった戦場はノルシュタイン王国の有利へと変化していった。
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