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学園編

家族

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久しぶりの冒険!
今日は近くの森でレッドウルフの討伐。
なかなか見つからなくてどんどん奥に入っていくと、見たこともない洞窟があった。

「おかしい…こんなところに洞窟なんてなかったはず…」

幼い頃から何度も来ているこの森。
だからわかるけど…そういえば、森に入ってから生き物に全くあっていない…私が学校へ行っている間にこの森に何が…

目の前の洞窟を見据える。
意を決して中に入る。

「『ライト』」

ボワッと周りが明るくなる。
警戒しながらゆっくり進んでいく。

「これは…血?」

点々と血の跡が床についていた。
その血の跡を追って奥へ進んでいくと、ひらけた場所に出た。そこには…

「鳥?」

前世のダチョウほどの大きさの美しい紅色の鳥が横たわっていた。

「怪我をしているの?!」

体のいたるところに傷があり、翼は折れていた。
回復魔法をかけるために近づこうとすると鳥が眼を開けた。

『近づくな、人間!』

思わずビクッと身をすくませてしまったが、回復させないと死んでしまう。そう思って再び近づいた。

『近づくなと行っているだろう!』
「え、喋れるの?」

思わず。本当に思わず呟いてしまった。

『当たり前だ!私は何千年の時を生きる不死鳥ぞ!』
「せ、聖獣?!」

不死鳥はグッタリとしているが威嚇をやめなかった。

「怪我を…治させてください」
『断る!人間なんぞの力など…!』

不死鳥はそう怒鳴ると火の槍ファイアランスを複数作り出し攻撃してきた。
相当消費しているらしく、狙いが定まらないのか一本頰を掠っただけで全て壁にあたって消えた。

「治療をさせてください。このままだと死んでしまう!」
『何度言ったらわかる…!』

その時、私が来た道の方から声が反響して別の人間の声が聞こえてきた。

「ここに…が…を捕まえれば…が復活する…」
「殺せ…永遠の命…」

ガチャガチャと鎧の音が聞こえる…内容からしてこの不死鳥を狙ってる?

『もうこんなところまできよったか…』
「その怪我はあいつらが?」
『…不覚』

意外と近かったようで10人ほど男が入ってきた。

「なぁんだ?女?」
「見つけた!不死鳥だ!」
『グルルルルルル』
「不死鳥は生かしたままだぞ!どうせもうそんなに動けん!」
「了解!女は?」
「ふむ…」

男達はジロジロと気持ちが悪く見てきた。

「容姿も悪くない。女は犯して殺せ!」

男達はゲラゲラと下品に笑いながら剣を抜いた。

『おい。お前だけでも逃げろ』
「嫌ですよ。それに私、強いんで」

剣を抜き構える。人を切るのは初めて。でも大丈夫…一応不死鳥には結界を張っておく。

「ふっ」

一気に距離を詰めると一度に3人の首を切った。

「なっ!いつのまに!」
「くっ!殺せ!!」

男達はやけになって剣を振るうが空を切るだけ。

「魔法だ!魔法を使え!」
「なっ!」

バカか?!こんなところで魔法なんか使ったらこの部屋は崩れる!
しかし奴らは頭が悪いのか魔法を打ちまくる。その度に地が揺れる。

「まずい…」

残り二人。この二人はなかなかの腕前。

「でも、ルイほどじゃない!」

剣を交わし、首を切りとばす。

「はぁ…はぁはぁ」

息を整え、剣を鞘に戻した。

『人間…』
「怪我、治しますね」
『おい!』

制止の声を無視して完全回復パーフェクトヒールを使った。
みるみると傷が治っていき、あらかった不死鳥の息も整った。
一安心。息を吐くとゴゴゴゴゴ!と大きく地面が揺れた。

「まずい!崩れる!」
『チッ。掴まれ!』

不死鳥が自身の尾を差し出してきた。時間がない…慌てて掴むと不死鳥は特大のファイアボールで天井に穴を開け、空へと飛び立った。

「うわぁ!」

スピードを上げた不死鳥は森の木々より高く舞い上がり、洞窟が崩れ去るのを見届けたあとそっと地面に降り立った。

「ふぅ…ありがとうございます。助かりました」
『礼を言うのは私だ。感謝する』
「いえいえ」
『お主名は何という?』
「ノエルです。捨て子なので家名はもうありません」
『そうか…家族は欲しいか?』
「そうですね…欲しい…です。ルイ…私を拾ってくれた人の家族を見ていると羨ましく思います。家族のように扱ってくれても…やっぱり、遠慮しちゃいますし」
『そうか…では、私がそなたの家族となろう!』
「えぇ?!ど、どう言う…」
『契約だ。私はそなた…ノエルが気に入った!それに、私は永きを生きた…一人は寂しい…』

慈しむような瞳で見つめられた。

「家族に…なってくれるんですか…?」
『うむ。そなたが結婚して家族を得るまで…いや、得ても家族だ』

そういうと不死鳥は頭を私の頰に擦りつつけてきた。

『私の名はグレンダジェス。ノエルとの契約を今ここに神に宣言する』

そう不死鳥…グレンダジェスが言うと天から祝福するように光が降り注いだ。

『これからよろしく頼むぞ、ノエル』
「うん…よろしくね、グレンダジェス」

ぎゅっとグレンダジェスの首に抱きついた。

「グレンって呼んでもいい?」
『ふふふ、構わんぞ。というかその方がいい。本当の名は、契約者のみが知っていればいい』
「わかった。でも…」
『?』

ルイ達にどう説明しよう?まあいいか、そのまま伝えればいい。
その日、私は家族を得た。
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