願い

うさのり

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何時だっただろうか
寮の談話室で仲間たちといつもの馬鹿騒ぎをしていたときだと思う。
緑稜学園高等部の七不思議が話題に上がった。
その時、あいつはあまり興味がなさそうにしていた。
後輩の深井が楽しそうに、嬉しそうに話すのを、頬杖をつきながら聞いていた。
俺の横で・・・

・・・

「・・・。明日でここともお別れだな。」
須崎克典は、荷物の詰まったダンボールへ荷物を移しながら、少し寂しそうに呟いた。
「あぁ・・・。」
窓からグラウンドのほうを見ていた早瀬晃は一つ頷いて大きく伸びをした。
「まぁ、どうせ大学でも同じ部屋だろ?」
そんなそっけない早瀬の言葉に、須藤は苦笑いをした。

緑稜学園は、幼等部から大学まである学園で、文武両道を掲げている。東京の外れに、中等部、高等部、大学が集まる広大なキャンパスがある。また、幼等部と初等部は、都心にある。
学園内の購買部は、一番近い集落の売店に比べ、品揃が豊富なので、生活に困ることはない。ないものを買いたいときは、一週間前までに購買部の担当者に頼めば、入荷してくれる。
最寄の駅からは、バスで三十分以上かかるので、中高生は寮に入ることが入学条件になっている。また、それぞれの部活には専用の寮が用意されている。
須藤克典と早瀬晃は、この学園の高等部に在籍しており、サッカー部に所属している。

彼らは明日、この緑稜学園高等部を卒業する。
三年生は、そのほとんどが緑稜学園の大学に入るが、在校生と言えども、一般入試と同じように受験がある。
二人とも、もちろん合格しており、体育学部への入学が決まっていた。

「・・・でも、やっぱり離れがたいよな・・・。」
窓から外を見ていた早瀬が、不思議そうに振り返ると、須崎がにやりと笑った。
「この部屋は、三年間お世話になっただろう?」
「・・・?」
頷いた早瀬は、小さく首をかしげて続きを促した。
「俺たちの愛の巣だったからな。ここにいると、早瀬の可愛い喘ぎ声がまざまざと、よみがえ・・・。」
「何バカ言ってんだよ、お前は!!!!!」
早瀬は、遠慮なく須藤の頭を殴った。

この二人は、いわゆる恋人同士だ。
このことはサッカー部員でも、一部の人間しか知らない。

「早瀬、そろそろ荷造りをしたほうがいいんじゃないか?」
「ん?あぁ・・・。」
気を取り直して、外に見えるサッカーグラウンドを眺めながら、早瀬は生返事をした。
「早瀬?」
「・・・っんでもねーよ。俺、風呂入ってくる。」
早瀬は引越しのための荷造りをまったくしないまま、着替えを持って部屋を出て行った。
須崎は、その後姿を少し不信そうに見ていたが、何も言わすに自分の作業を続けた。
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