がんばれ勇者くん

第二章

閑話2

「・・・。何で泣くの？」

先ほどの部屋で、先ほどと同じ格好をした子供は、呟いた。

「彼が生きている場所と、この世界とでは理が違うからだろうね。」

その声にびくっと反応した少年が入り口の扉を見ると、先ほど出て行った長身の青年が、机に近づいてきた。

「彼は今まで、誰かが調理したものしか食べてこなかったのだろう。狩りや釣りなども経験がないのかもしれないね。」

「・・・？確かあの世界のあの国では、狩りは珍しいものだったはずだけど、釣りはスポーツとしてなされていたんじゃないですか？
それに、肉や野菜だって、作っている人がいるのでしょう？」

「そうだね。」

子供を見ながら、青年は、いつもは険しいその目を優しく和ませてから答えた。

「だが、例え釣り上げた後に食べるとしても、彼の国での一般人の釣りは、あくまでスポ－ツだと思っている人が多いということは教えたはずだよ。漁は別だろうけどね。
だから、そこに殺すという観念は希薄なのだろう。
それにくわえ、彼は釣りをしたことがないようだ。
そして、食材は彼が見るとき・・・食卓に並んだときには、調理済みになっているからね。」

「変な国・・・。」

呟いた子供に、青年はおかしそうな視線を投げた。

「では、今からでも止めるかい？」

「・・・。意地悪・・・。」

いじけたように言う子供を見て、青年は楽しそうに小さく笑った。