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第二章
運動と衝撃4
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その後、ディヤイアンがお茶をしようと持ちかけて誠二がそれに賛成したことから、即席のお茶会になった。
エクーディアが淹れてくれた、アップルティのように甘い橙色のお茶と、彼らが持っていた薄いパンに、青い野菜と香辛料の効いた鶏肉のようなものをはさんだサンドイッチを食べて、もっぱら誠二の学校の話をしながら半時ほど休憩を取り、その後は本当に休み無しで、姫がいるという山の麓に広がる森を目指して歩き出した。
森を目指して歩いている間に、ディヤイアンはこの世界の話をしてくれた。
この世界は「ファルシナ」と呼ばれている。
「地球」では機械文明が発達しているが、この世界では魔法文明が発達したという。
地球上にある機械などの文明の利器、たとえば飛行機や電話やテレビなどの代わりに、この世界では魔法を使うことで似たようなことを成し遂げている。
たとえば飛行機、電車、車などの移動手段の代わりに、空間移動の魔法があり、パイロットや運転手の変わりに空間移動を扱う魔法使いがいるという。
また、魔法使いではない人でも、基本的な魔法は必ず使えるという。もちろんエクーディアも基本的な魔法は覚えているらしい。
ディヤイアンは、医療関係の魔法を専門にしていて、国内でもディヤイアン以上に治療魔法が使える魔法使いはいないと、エクーディアが後からこっそり教えてくれた。
「へー。なんかすごいんだね~。」
一通りの説明をされ、誠二は目を点にした。
「そんなんじゃ、オレこの世界で生きてけいなぁ・・・。」
「なんで?」
ディヤイアンが少し首をかしげて聞いた。
「だって、オレ、魔法なんて使えないし、特技はサッカーくらいだし・・・。」
「そんなことないよ。」
おかしそうに言うディヤイアンを見て、誠二はちょっとむっとした顔をした。
「異世界から来た人は、この世界では必ず魔法が使えるんだよ?」
「まじぃ!」
目をきらきらと輝かせ、ディヤイアンの腕をつかんだ誠二に、ディヤイアンはたまりかねたように吹き出し、楽しそうに笑った。
「本当だけど、すぐには無理だよ。勉強してもらわないとね。たぶん学校の勉強より、ずーっと難しいよ。」
「えぇ・・・?まじぃ?」
情けない誠二の声に、二人は声を上げて笑った。
・・・
ぐきゅるるるるる・・・・・
森に分け入ってしばらくすると、誠二の腹が盛大に悲鳴をあげた。
日は傾いていたが、空はまだ青い。
顔を赤くした誠二は、それ以前から空腹を感じていたが、二人の歩くペースについて行くのに必死で、声をかけられなかった。
「あぁ、ごめん!地球人には、あれだけじゃ足りなかったよね」
ディヤイアンはすまなそうな顔をした。その後をエクーディアが引き継いだ。
「・・・私は一日二食だし、ディヤイアンは一日一食も食べない。
だから、昼食のことを忘れていた。すまない。」
エクーディア曰く、この世界の住人は一日一~二食が普通で、食事の量もあまり必要としないという。
口から入れる食料のほかに、大地から力を補充できるかららしいが、成人前の子供や魔法使い以外の人たちはそれでは足りないので、食事を取るらしい。
魔法使いは食料がなくても生きていけるが、嗜好品にうるさくなるらしい。現にディヤイアンはお茶道楽だという。
その説明の間、ディヤイアンは額に手を当てて目を閉じ、口の中でもごもごと何かを言っていた。
(えーっと・・・。やっぱり時間かかるのかなぁ?)
ちょっと切なくなり、誠二はこっそりとため息をついた。
しばらくして、ディヤイアンはふと顔を上げた。
「来たか?」
エクーディアが囁くように聞くと、僅かに頷いたディヤイアンは、誠二を振り向いた。
「誠二君、ごめん。少し下がって隠れててほしいんだけど。」
「え・・・?あ、う、うん。わかった。」
よくわからなかったが、二人の気迫に飲まれて、誠二は大人しく少し離れた木陰に隠れた。
すると、前方からドドドドド・・・という地響きが聞こえた。
エクーディアが淹れてくれた、アップルティのように甘い橙色のお茶と、彼らが持っていた薄いパンに、青い野菜と香辛料の効いた鶏肉のようなものをはさんだサンドイッチを食べて、もっぱら誠二の学校の話をしながら半時ほど休憩を取り、その後は本当に休み無しで、姫がいるという山の麓に広がる森を目指して歩き出した。
森を目指して歩いている間に、ディヤイアンはこの世界の話をしてくれた。
この世界は「ファルシナ」と呼ばれている。
「地球」では機械文明が発達しているが、この世界では魔法文明が発達したという。
地球上にある機械などの文明の利器、たとえば飛行機や電話やテレビなどの代わりに、この世界では魔法を使うことで似たようなことを成し遂げている。
たとえば飛行機、電車、車などの移動手段の代わりに、空間移動の魔法があり、パイロットや運転手の変わりに空間移動を扱う魔法使いがいるという。
また、魔法使いではない人でも、基本的な魔法は必ず使えるという。もちろんエクーディアも基本的な魔法は覚えているらしい。
ディヤイアンは、医療関係の魔法を専門にしていて、国内でもディヤイアン以上に治療魔法が使える魔法使いはいないと、エクーディアが後からこっそり教えてくれた。
「へー。なんかすごいんだね~。」
一通りの説明をされ、誠二は目を点にした。
「そんなんじゃ、オレこの世界で生きてけいなぁ・・・。」
「なんで?」
ディヤイアンが少し首をかしげて聞いた。
「だって、オレ、魔法なんて使えないし、特技はサッカーくらいだし・・・。」
「そんなことないよ。」
おかしそうに言うディヤイアンを見て、誠二はちょっとむっとした顔をした。
「異世界から来た人は、この世界では必ず魔法が使えるんだよ?」
「まじぃ!」
目をきらきらと輝かせ、ディヤイアンの腕をつかんだ誠二に、ディヤイアンはたまりかねたように吹き出し、楽しそうに笑った。
「本当だけど、すぐには無理だよ。勉強してもらわないとね。たぶん学校の勉強より、ずーっと難しいよ。」
「えぇ・・・?まじぃ?」
情けない誠二の声に、二人は声を上げて笑った。
・・・
ぐきゅるるるるる・・・・・
森に分け入ってしばらくすると、誠二の腹が盛大に悲鳴をあげた。
日は傾いていたが、空はまだ青い。
顔を赤くした誠二は、それ以前から空腹を感じていたが、二人の歩くペースについて行くのに必死で、声をかけられなかった。
「あぁ、ごめん!地球人には、あれだけじゃ足りなかったよね」
ディヤイアンはすまなそうな顔をした。その後をエクーディアが引き継いだ。
「・・・私は一日二食だし、ディヤイアンは一日一食も食べない。
だから、昼食のことを忘れていた。すまない。」
エクーディア曰く、この世界の住人は一日一~二食が普通で、食事の量もあまり必要としないという。
口から入れる食料のほかに、大地から力を補充できるかららしいが、成人前の子供や魔法使い以外の人たちはそれでは足りないので、食事を取るらしい。
魔法使いは食料がなくても生きていけるが、嗜好品にうるさくなるらしい。現にディヤイアンはお茶道楽だという。
その説明の間、ディヤイアンは額に手を当てて目を閉じ、口の中でもごもごと何かを言っていた。
(えーっと・・・。やっぱり時間かかるのかなぁ?)
ちょっと切なくなり、誠二はこっそりとため息をついた。
しばらくして、ディヤイアンはふと顔を上げた。
「来たか?」
エクーディアが囁くように聞くと、僅かに頷いたディヤイアンは、誠二を振り向いた。
「誠二君、ごめん。少し下がって隠れててほしいんだけど。」
「え・・・?あ、う、うん。わかった。」
よくわからなかったが、二人の気迫に飲まれて、誠二は大人しく少し離れた木陰に隠れた。
すると、前方からドドドドド・・・という地響きが聞こえた。
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