がんばれ勇者くん

うさのり

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第二章

運動と衝撃2

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「どうぞって・・・。こんなん使ったことないんっすけど・・・。」

「剣も持ったことのなんじゃ、何やっても無理なんじゃないの?」

気の毒に思ったのか、はたまた単に暇だからなのか、ディヤイアンは困っている誠二を見て言った。

「それは私が決める。誠二君、抜き方もわからないのか?」

「そんくらいわかるよ!」

エクーディアの言葉にカチンときた誠二は、剣の鞘を抜いて、少し迷ってディヤイアンのいる木陰まで行き、バックパックを下ろして鞘を彼女に渡した。

「刃は削ってあるよ。それに、エクーディアが怪我をする危険はないから。思いっきりやってみなよ。手を抜けば、エクーディアにばれて、怒られるよ?エクーディアって、怒らせるとめちゃくちゃ怖いから。気をつけてね。」

「ディヤイアン・・・。」

エクーディアはディヤイアンを見て、ため息をついてそう言った。それから、誠二をまっすぐ見て言った。

「まぁ、私も手加減をさせてもらうから、君の命に別状があるほどの怪我はさせないよ。その点は安心してほしい。擦り傷や切り傷などは、覚悟してほしいがな。
では、お好きにどうぞ。」

剣を下げたまま無表情で言うエクーディアの言葉にムッとした誠二は、迷いを捨ててディヤイアンの元から走り出した。

「・・・っやぁ!」

エクーディアの前に来ると、剣を両手で持ち、真上に振り上げてから、振り下ろした。

「遊んでいるのか?」

「のわっ!」

片足を残して横に避けたエクーディアに見事に引っかかり、走っていた誠二は、見事につんのめった。

「まぁ~だ、まだぁ!」

そのまま剣を重り代わりにして体を半回転した誠二は、エクーディアを見失い、しりもちをついた。

「あり?」

「反撃をしてきたのは褒めてあげよう。」

真後ろから声がして、ギョッとした誠二の頭の上に、ぱふっと剣の腹が当たった。

「両手で持たないで片手で持ってみなさい。そんなに重くはないはずだ。」

その言葉に小さく頷いて、右手に剣を持ち直した誠二はその場で半回転して、真後ろを向いた。が、エクーディアはすでに剣が届かない場所まで下がっていた。


その後何回剣を振り回してもエクーディアが捕まらないことに気が付いた誠二は、作戦を変えた。
今までは剣に気を取られすぎて注意力が散漫になっていたが、彼はサッカーの強豪高校のエースストライカーだ。全体を冷静に見渡す目と集中力を持っている。

「ギブアップか?」

剣先を下げて表情を引き締めた彼を見て、エクーディアはゆっくりと言った。

「・・・。」

突然自分に向かって走り出した誠二を見ていたエクーディアは、彼の目線が外れないことに気づき、よく見ていないとわからないほど微かに口角を上げた。
エクーディアに剣が触れるくらいまで接近した誠二は、スライディングをかけた。
飛んで避けたエクーディアの横を越した誠二は、今度は地面に左手をついてエクーディアの着地点だと見定めたあたりに蹴りを入れた。
しかしエクーディアは誠二の見定めた位置から離れたところに着地をしていた。
軽いステップでそこからも遠く離れてから、エクーディアはつぶやいた。

「さすがは、サッカーをやっているだけあって、足技が得意なようですね。でも・・・」

今度は誠二に聞こえるように言った。

「剣を使わないと、持っている意味がないぞ?」

「オレ、馬鹿だから。」

立ち上がって体制を整えた誠二は再びエクーディアに向かって走った。

「できることから、やろーと、思う!」

今度は回し蹴りの要領で、左足を体の周りで半回転させて太股を狙った誠二の足を、エクーディアの剣の腹が狙う。それを避けるためエクーディアの右手を左手で捕らえたが、左足がエクーディアの太股に当たる前にしっかりと握った左手を軸に倒された。

「・・・ってー・・・。」

背中から地面に叩き付けられた誠二が立ち上がった時には、エクーディアはすでに離れていた。
再び走り出した誠二は、今度は近づいてから右手に握った剣を突くふりをして、避けると当たりをつけた右側に凪いだ。
キンッ
金属がぶつかり合う高い音がしたが、すぐに誠二が競り負けて上半身を反り始めた。

「くっ・・・」

エクーディアは突然、一歩下がって力を抜き、それにつられて前に出た誠二の剣を、自分の剣を回すように絡め取った。

「あ、あれ?」

いつのまにか自分の手から抜け、少し離れたところに落ちた剣を呆然と見た誠二の頭に、エクーディアは再び剣の腹をぽんと置いた。
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