12 / 33
第二章
運動と衝撃2
しおりを挟む
「どうぞって・・・。こんなん使ったことないんっすけど・・・。」
「剣も持ったことのなんじゃ、何やっても無理なんじゃないの?」
気の毒に思ったのか、はたまた単に暇だからなのか、ディヤイアンは困っている誠二を見て言った。
「それは私が決める。誠二君、抜き方もわからないのか?」
「そんくらいわかるよ!」
エクーディアの言葉にカチンときた誠二は、剣の鞘を抜いて、少し迷ってディヤイアンのいる木陰まで行き、バックパックを下ろして鞘を彼女に渡した。
「刃は削ってあるよ。それに、エクーディアが怪我をする危険はないから。思いっきりやってみなよ。手を抜けば、エクーディアにばれて、怒られるよ?エクーディアって、怒らせるとめちゃくちゃ怖いから。気をつけてね。」
「ディヤイアン・・・。」
エクーディアはディヤイアンを見て、ため息をついてそう言った。それから、誠二をまっすぐ見て言った。
「まぁ、私も手加減をさせてもらうから、君の命に別状があるほどの怪我はさせないよ。その点は安心してほしい。擦り傷や切り傷などは、覚悟してほしいがな。
では、お好きにどうぞ。」
剣を下げたまま無表情で言うエクーディアの言葉にムッとした誠二は、迷いを捨ててディヤイアンの元から走り出した。
「・・・っやぁ!」
エクーディアの前に来ると、剣を両手で持ち、真上に振り上げてから、振り下ろした。
「遊んでいるのか?」
「のわっ!」
片足を残して横に避けたエクーディアに見事に引っかかり、走っていた誠二は、見事につんのめった。
「まぁ~だ、まだぁ!」
そのまま剣を重り代わりにして体を半回転した誠二は、エクーディアを見失い、しりもちをついた。
「あり?」
「反撃をしてきたのは褒めてあげよう。」
真後ろから声がして、ギョッとした誠二の頭の上に、ぱふっと剣の腹が当たった。
「両手で持たないで片手で持ってみなさい。そんなに重くはないはずだ。」
その言葉に小さく頷いて、右手に剣を持ち直した誠二はその場で半回転して、真後ろを向いた。が、エクーディアはすでに剣が届かない場所まで下がっていた。
その後何回剣を振り回してもエクーディアが捕まらないことに気が付いた誠二は、作戦を変えた。
今までは剣に気を取られすぎて注意力が散漫になっていたが、彼はサッカーの強豪高校のエースストライカーだ。全体を冷静に見渡す目と集中力を持っている。
「ギブアップか?」
剣先を下げて表情を引き締めた彼を見て、エクーディアはゆっくりと言った。
「・・・。」
突然自分に向かって走り出した誠二を見ていたエクーディアは、彼の目線が外れないことに気づき、よく見ていないとわからないほど微かに口角を上げた。
エクーディアに剣が触れるくらいまで接近した誠二は、スライディングをかけた。
飛んで避けたエクーディアの横を越した誠二は、今度は地面に左手をついてエクーディアの着地点だと見定めたあたりに蹴りを入れた。
しかしエクーディアは誠二の見定めた位置から離れたところに着地をしていた。
軽いステップでそこからも遠く離れてから、エクーディアはつぶやいた。
「さすがは、サッカーをやっているだけあって、足技が得意なようですね。でも・・・」
今度は誠二に聞こえるように言った。
「剣を使わないと、持っている意味がないぞ?」
「オレ、馬鹿だから。」
立ち上がって体制を整えた誠二は再びエクーディアに向かって走った。
「できることから、やろーと、思う!」
今度は回し蹴りの要領で、左足を体の周りで半回転させて太股を狙った誠二の足を、エクーディアの剣の腹が狙う。それを避けるためエクーディアの右手を左手で捕らえたが、左足がエクーディアの太股に当たる前にしっかりと握った左手を軸に倒された。
「・・・ってー・・・。」
背中から地面に叩き付けられた誠二が立ち上がった時には、エクーディアはすでに離れていた。
再び走り出した誠二は、今度は近づいてから右手に握った剣を突くふりをして、避けると当たりをつけた右側に凪いだ。
キンッ
金属がぶつかり合う高い音がしたが、すぐに誠二が競り負けて上半身を反り始めた。
「くっ・・・」
エクーディアは突然、一歩下がって力を抜き、それにつられて前に出た誠二の剣を、自分の剣を回すように絡め取った。
「あ、あれ?」
いつのまにか自分の手から抜け、少し離れたところに落ちた剣を呆然と見た誠二の頭に、エクーディアは再び剣の腹をぽんと置いた。
「剣も持ったことのなんじゃ、何やっても無理なんじゃないの?」
気の毒に思ったのか、はたまた単に暇だからなのか、ディヤイアンは困っている誠二を見て言った。
「それは私が決める。誠二君、抜き方もわからないのか?」
「そんくらいわかるよ!」
エクーディアの言葉にカチンときた誠二は、剣の鞘を抜いて、少し迷ってディヤイアンのいる木陰まで行き、バックパックを下ろして鞘を彼女に渡した。
「刃は削ってあるよ。それに、エクーディアが怪我をする危険はないから。思いっきりやってみなよ。手を抜けば、エクーディアにばれて、怒られるよ?エクーディアって、怒らせるとめちゃくちゃ怖いから。気をつけてね。」
「ディヤイアン・・・。」
エクーディアはディヤイアンを見て、ため息をついてそう言った。それから、誠二をまっすぐ見て言った。
「まぁ、私も手加減をさせてもらうから、君の命に別状があるほどの怪我はさせないよ。その点は安心してほしい。擦り傷や切り傷などは、覚悟してほしいがな。
では、お好きにどうぞ。」
剣を下げたまま無表情で言うエクーディアの言葉にムッとした誠二は、迷いを捨ててディヤイアンの元から走り出した。
「・・・っやぁ!」
エクーディアの前に来ると、剣を両手で持ち、真上に振り上げてから、振り下ろした。
「遊んでいるのか?」
「のわっ!」
片足を残して横に避けたエクーディアに見事に引っかかり、走っていた誠二は、見事につんのめった。
「まぁ~だ、まだぁ!」
そのまま剣を重り代わりにして体を半回転した誠二は、エクーディアを見失い、しりもちをついた。
「あり?」
「反撃をしてきたのは褒めてあげよう。」
真後ろから声がして、ギョッとした誠二の頭の上に、ぱふっと剣の腹が当たった。
「両手で持たないで片手で持ってみなさい。そんなに重くはないはずだ。」
その言葉に小さく頷いて、右手に剣を持ち直した誠二はその場で半回転して、真後ろを向いた。が、エクーディアはすでに剣が届かない場所まで下がっていた。
その後何回剣を振り回してもエクーディアが捕まらないことに気が付いた誠二は、作戦を変えた。
今までは剣に気を取られすぎて注意力が散漫になっていたが、彼はサッカーの強豪高校のエースストライカーだ。全体を冷静に見渡す目と集中力を持っている。
「ギブアップか?」
剣先を下げて表情を引き締めた彼を見て、エクーディアはゆっくりと言った。
「・・・。」
突然自分に向かって走り出した誠二を見ていたエクーディアは、彼の目線が外れないことに気づき、よく見ていないとわからないほど微かに口角を上げた。
エクーディアに剣が触れるくらいまで接近した誠二は、スライディングをかけた。
飛んで避けたエクーディアの横を越した誠二は、今度は地面に左手をついてエクーディアの着地点だと見定めたあたりに蹴りを入れた。
しかしエクーディアは誠二の見定めた位置から離れたところに着地をしていた。
軽いステップでそこからも遠く離れてから、エクーディアはつぶやいた。
「さすがは、サッカーをやっているだけあって、足技が得意なようですね。でも・・・」
今度は誠二に聞こえるように言った。
「剣を使わないと、持っている意味がないぞ?」
「オレ、馬鹿だから。」
立ち上がって体制を整えた誠二は再びエクーディアに向かって走った。
「できることから、やろーと、思う!」
今度は回し蹴りの要領で、左足を体の周りで半回転させて太股を狙った誠二の足を、エクーディアの剣の腹が狙う。それを避けるためエクーディアの右手を左手で捕らえたが、左足がエクーディアの太股に当たる前にしっかりと握った左手を軸に倒された。
「・・・ってー・・・。」
背中から地面に叩き付けられた誠二が立ち上がった時には、エクーディアはすでに離れていた。
再び走り出した誠二は、今度は近づいてから右手に握った剣を突くふりをして、避けると当たりをつけた右側に凪いだ。
キンッ
金属がぶつかり合う高い音がしたが、すぐに誠二が競り負けて上半身を反り始めた。
「くっ・・・」
エクーディアは突然、一歩下がって力を抜き、それにつられて前に出た誠二の剣を、自分の剣を回すように絡め取った。
「あ、あれ?」
いつのまにか自分の手から抜け、少し離れたところに落ちた剣を呆然と見た誠二の頭に、エクーディアは再び剣の腹をぽんと置いた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています



【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
最弱の俺が神の血を継いで世界を救う旅に出る(仮)
RYOアズ
ファンタジー
最弱の村人出身。力も魔法も使えないが、世界を救いたいという漠然とした願いを持つ。旅の中で手の甲に神紋が現れ、実は伝説の神「アルテオン」の化身だと判明。最終的に全能の力を覚醒させ、世界最強に。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる