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「・・・翔?!なんで僕の姿をしているの?!」
「さぁ?」
「さぁって・・・。」
今まで労わるような、優しい口調で話していた翔は、拓海が自分を認識してくれたことによってほっとしたらしく、自分が拓海の姿をしていることはあまり問題にしていないようだった。
「自分の姿が変わっているんだよ?!本当にわかってるの?!少しは慌てなよ!!!」
拓海の言葉に頷いてから、翔は拓海の姿でにこにこと笑いながらのほほんと答えた。
「起きて変だと気づいたから、すぐに鏡で確認した。だから、自分の姿についてはわかっている。今慌てていないのは、拓海が俺の代りに心配をしてくれてるから、それが嬉しくて。堪能しなきゃ勿体な・・・。」
ばきっ!
拓海は無言で自分の姿の翔を殴った。
「・・・拓海、言い忘れてたけど、俺の予想が正しかったら・・・。」
殴られた頭をさすりながら、床に正座をした翔は上目遣いで言った。
「この俺が入ってる体、お前のだよ?」
「・・・は?」
「だから、俺が拓海で、拓海が俺。今の拓海の姿は俺だよ?俺が拓海の姿をしているみたいに。」
「・・・。」
昨夜に引き続き、二発目の爆弾投下に、拓海は再びフリーズした。
そんな拓海に翔は、ベッドの横にある自分の机の上に置いていた手鏡を拓海に渡した。
それを恐る恐る受け取り、若干躊躇しつつ覗き込んだ拓海は、一瞬立ちくらみを起こしかけた。ベッドに座っているにもかかわらず。
そこには、毎日見慣れているルームメイトの情けない顔が写っていた。拓海は思わず左の頬をつねってみた。鏡の中の翔も同じ行動をした。ちなみに頬は痛かった。
「・・・。」
「おーい、拓海。戻ってこーい。」
自分の左頬をつねり続ける拓海の手を下ろさせ、翔は少し赤くなった頬をさすってやりながら苦笑いをしている。
「・・・。ねぇ・・・。」
地獄の底から響いてくるような低い拓海の声を聞き、翔は思わずさすっていた手を戻した。
「・・・なんで、こんなことになってるの?」
「俺も知らない。朝、目覚めたらこうなっていた。」
自分の目を見てきっぱりという翔に、拓海はつかみかかった。
「知らないじゃないでしょう!僕に心当たりが無いんだから、原因は翔としか考えられない!」
拓海はきっぱりとそう言い切った。
「だから、わからないんだよ。俺にも心当たりは無い。」
肩を落として、捨てられた子犬のように情けない顔で自分を見上げる自分の姿を見て、拓海は悪寒が走った。
「その顔は止めて!僕の顔でそんな情けない顔をしないで!!」
「そんなこと言われてもなぁ・・・。」
表情を勤めて苦笑いにしながら翔は答えた。これ以上話がややこしくなるのは避けたかった。
「・・・そういえば・・・。」
苦笑いの表情なら許せるらしく、拓海は腕を組んで考え出した。
「昨日・・・というか夜寝る前に、僕たち変な話をしてたよね?」
「俺と拓海が入れ変わったら面白いって、あのことか?」
頷いた拓海は、額に青筋を出しながら翔に詰めよった。
「まさか、あんな話をしたからこうなった訳じゃないよね?」
「それはないだろ?あんな想像なら毎日・・・。」
不用意な言葉を発した翔は、再び拓海に殴られた。
「さぁ?」
「さぁって・・・。」
今まで労わるような、優しい口調で話していた翔は、拓海が自分を認識してくれたことによってほっとしたらしく、自分が拓海の姿をしていることはあまり問題にしていないようだった。
「自分の姿が変わっているんだよ?!本当にわかってるの?!少しは慌てなよ!!!」
拓海の言葉に頷いてから、翔は拓海の姿でにこにこと笑いながらのほほんと答えた。
「起きて変だと気づいたから、すぐに鏡で確認した。だから、自分の姿についてはわかっている。今慌てていないのは、拓海が俺の代りに心配をしてくれてるから、それが嬉しくて。堪能しなきゃ勿体な・・・。」
ばきっ!
拓海は無言で自分の姿の翔を殴った。
「・・・拓海、言い忘れてたけど、俺の予想が正しかったら・・・。」
殴られた頭をさすりながら、床に正座をした翔は上目遣いで言った。
「この俺が入ってる体、お前のだよ?」
「・・・は?」
「だから、俺が拓海で、拓海が俺。今の拓海の姿は俺だよ?俺が拓海の姿をしているみたいに。」
「・・・。」
昨夜に引き続き、二発目の爆弾投下に、拓海は再びフリーズした。
そんな拓海に翔は、ベッドの横にある自分の机の上に置いていた手鏡を拓海に渡した。
それを恐る恐る受け取り、若干躊躇しつつ覗き込んだ拓海は、一瞬立ちくらみを起こしかけた。ベッドに座っているにもかかわらず。
そこには、毎日見慣れているルームメイトの情けない顔が写っていた。拓海は思わず左の頬をつねってみた。鏡の中の翔も同じ行動をした。ちなみに頬は痛かった。
「・・・。」
「おーい、拓海。戻ってこーい。」
自分の左頬をつねり続ける拓海の手を下ろさせ、翔は少し赤くなった頬をさすってやりながら苦笑いをしている。
「・・・。ねぇ・・・。」
地獄の底から響いてくるような低い拓海の声を聞き、翔は思わずさすっていた手を戻した。
「・・・なんで、こんなことになってるの?」
「俺も知らない。朝、目覚めたらこうなっていた。」
自分の目を見てきっぱりという翔に、拓海はつかみかかった。
「知らないじゃないでしょう!僕に心当たりが無いんだから、原因は翔としか考えられない!」
拓海はきっぱりとそう言い切った。
「だから、わからないんだよ。俺にも心当たりは無い。」
肩を落として、捨てられた子犬のように情けない顔で自分を見上げる自分の姿を見て、拓海は悪寒が走った。
「その顔は止めて!僕の顔でそんな情けない顔をしないで!!」
「そんなこと言われてもなぁ・・・。」
表情を勤めて苦笑いにしながら翔は答えた。これ以上話がややこしくなるのは避けたかった。
「・・・そういえば・・・。」
苦笑いの表情なら許せるらしく、拓海は腕を組んで考え出した。
「昨日・・・というか夜寝る前に、僕たち変な話をしてたよね?」
「俺と拓海が入れ変わったら面白いって、あのことか?」
頷いた拓海は、額に青筋を出しながら翔に詰めよった。
「まさか、あんな話をしたからこうなった訳じゃないよね?」
「それはないだろ?あんな想像なら毎日・・・。」
不用意な言葉を発した翔は、再び拓海に殴られた。
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