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落ち着こうか——。
その声を聞いた瞬間に、なぜかわからないけれど、バクバクと壊れそうなほど鳴っていた心臓がストンと落ち着く。
国王陛下は、わたくしのことを怒っていない?
不思議だった。リオ・ナバ国王の顔には笑みのようなものさえ浮かんでいる。大声で怒鳴られても仕方がないのに、どうして穏やかなんだろう?
頭の中は大混乱だ。もしかしたらちゃんと伝わっていないのかもしれないと思った。だからもう一度震える声で言った。
「あの⋯⋯、その⋯⋯。わたくしは⋯⋯、わたくしは、⋯⋯偽者なんです! 偽者の花嫁なんです!」
冷たい大理石の床に両手を投げ出してひれ伏す。
すると、すぐに逞しい腕が伸びてきて、ぐいっと力強くひっぱりあげられてしまった。
「深呼吸をして——」
「え?」
「大きく息を吸おうか? そうすれば落ち着くだろう」
言われるままに大きく息を吸った。かなり落ち着いてきたけれど、国王の切れ長の目と視線がピタリと合うと、また心臓がドキドキと鳴り始めた。
今までのドキドキとは全然違って、感じたことがないような不思議な甘い鼓動だ⋯⋯。
「長旅で疲れているようだ——」
リオ・ナバ国王は、フウルの腕を優しく包み込むようにして支えてくれた。
じっと見下ろしてくる瞳は不思議なガラス細工のような色⋯⋯。その瞳がピタリとフウルの顔にとどまって数秒も離れない。
見つめられながら、たくさんの貴族たちが集まっている広間を横切り廊下へ。
廊下には色鮮やかな美しいタペストリーが並んでいた。
長い廊下を進んでいくと大きな部屋があって、天井には巨大なシャンデリアが眩しいほど輝いている。
大きなテーブルにはたくさんの料理。大きなチキンの丸焼きから湯気が立ち、色とりどりの果物——葡萄やオレンジがとてもみずみずしい。
「あ、あの⋯⋯、わたくしは偽者なんです⋯⋯」
「話はわかった。だが、とりあえず、晩餐としよう」
「晩餐?」
もしかして、処刑の前の最後の晩餐だろうか?
処刑の前に豪華な食事をだす風習の国があることをどこかで聞いたことがあった。もしかしたらそうなのかもしれない。きっとこれは最後の晩餐なんだ⋯⋯。
「王女はチキンはお好きか? それとも長旅で疲れた体には、甘いケーキの方が?」
国王が、大きなテーブルの向かい側に長い足を組んで座ってにこやかに微笑んだ。
じっとフウルを見つめてくる顔に怒りはない。
なんて優しい人なんだろう、自分の国を騙したわたくしに、処刑の前の最後の慈悲を示してくださっているのね——。
他国の国王の慈悲の心に感動して、大きな青い目に涙が滲んでいく。
その声を聞いた瞬間に、なぜかわからないけれど、バクバクと壊れそうなほど鳴っていた心臓がストンと落ち着く。
国王陛下は、わたくしのことを怒っていない?
不思議だった。リオ・ナバ国王の顔には笑みのようなものさえ浮かんでいる。大声で怒鳴られても仕方がないのに、どうして穏やかなんだろう?
頭の中は大混乱だ。もしかしたらちゃんと伝わっていないのかもしれないと思った。だからもう一度震える声で言った。
「あの⋯⋯、その⋯⋯。わたくしは⋯⋯、わたくしは、⋯⋯偽者なんです! 偽者の花嫁なんです!」
冷たい大理石の床に両手を投げ出してひれ伏す。
すると、すぐに逞しい腕が伸びてきて、ぐいっと力強くひっぱりあげられてしまった。
「深呼吸をして——」
「え?」
「大きく息を吸おうか? そうすれば落ち着くだろう」
言われるままに大きく息を吸った。かなり落ち着いてきたけれど、国王の切れ長の目と視線がピタリと合うと、また心臓がドキドキと鳴り始めた。
今までのドキドキとは全然違って、感じたことがないような不思議な甘い鼓動だ⋯⋯。
「長旅で疲れているようだ——」
リオ・ナバ国王は、フウルの腕を優しく包み込むようにして支えてくれた。
じっと見下ろしてくる瞳は不思議なガラス細工のような色⋯⋯。その瞳がピタリとフウルの顔にとどまって数秒も離れない。
見つめられながら、たくさんの貴族たちが集まっている広間を横切り廊下へ。
廊下には色鮮やかな美しいタペストリーが並んでいた。
長い廊下を進んでいくと大きな部屋があって、天井には巨大なシャンデリアが眩しいほど輝いている。
大きなテーブルにはたくさんの料理。大きなチキンの丸焼きから湯気が立ち、色とりどりの果物——葡萄やオレンジがとてもみずみずしい。
「あ、あの⋯⋯、わたくしは偽者なんです⋯⋯」
「話はわかった。だが、とりあえず、晩餐としよう」
「晩餐?」
もしかして、処刑の前の最後の晩餐だろうか?
処刑の前に豪華な食事をだす風習の国があることをどこかで聞いたことがあった。もしかしたらそうなのかもしれない。きっとこれは最後の晩餐なんだ⋯⋯。
「王女はチキンはお好きか? それとも長旅で疲れた体には、甘いケーキの方が?」
国王が、大きなテーブルの向かい側に長い足を組んで座ってにこやかに微笑んだ。
じっとフウルを見つめてくる顔に怒りはない。
なんて優しい人なんだろう、自分の国を騙したわたくしに、処刑の前の最後の慈悲を示してくださっているのね——。
他国の国王の慈悲の心に感動して、大きな青い目に涙が滲んでいく。
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