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「へ、ヘンリエッタ⋯⋯、このケーキ⋯⋯」
「どうしました、義姉上? せっかくわたくしが作らせたケーキなのに、お口に合わなかったとは残念ですわ!」
 ヘンリエッタが大きく笑った。アンブレラを差し掛けている従者たちもクスクスと笑った。
 そのとき、空がみるみる明るくなり始めた。
 ヘンリエッタの笑い声に合わせるように黒い雨雲が消え去っていく。中庭にふたたび明るい日差しが戻ってくる。
 これがヘンリエッタが持っている『ギフト』の力だ。
 農作物に欠かせない太陽を呼び込むこの能力は素晴らしく、他国も欲しがる素晴らしい『ギフト』の力なのだ。
「さすがでございます、我らが晴れ王女!」
「ヘンリエッタ様、万歳!」
「万歳!」
「ヘンリエッタさまの『ギフト』こそ、我が国の宝だ!」
 人々の声を聞きながら、フウルは青く晴れ渡った空を見上げた。
 木々に残った雨粒が日差しにキラキラと光っている。
 まるで義妹が持っている『ギフト』を象徴しているかのような美しい光景だった。
 ——きっとラドリア国の人たちも、このヘンリエッタの能力を欲しがっているんだわ。それなのに雨降り王女のわたくしが、偽者のオメガ花嫁として嫁ぐなんて、そんなことが許されるはずがないわ。どうしよう⋯⋯。どうしよう⋯⋯。
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