ブレイクソード

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八十五話 新たな出会い

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「昨日のこと何も覚えていないな」宴会をした十所までは覚えているんだが、この宿にどうやって辿り着いたのかが全く分からない。救いなのは隣に男と女がいないってことだ。もしも居たら,,,想像したくないな。こんな話はやめやめ!俺の純潔がなくなっちゃう。



「今日も依頼を受けるか」窓を開けて外の茎を部屋の中に送り込む。朝焼けがまだ見える頃の空気は一番おいしくて、懐かしくなって泣きそうになる。こうして一日が始まることで生きてるって実感できる。



それよりも今日はどんな依頼が出ているのだろうか。二つ名はそんな高頻度で出てくるものじゃないし、出てたとしても早い者勝ちだから無くなってるかもしれない。こんな朝早くから依頼を受ける、冒険者の鑑なんて存在しないか。



「ってないんかい!!」掲示板の前に俺は立ち尽くすことしかできなかった。何も貼られてなかった。なんでだ?もうこの町はモンスターに襲われる心配はないのか?



「あ、ブレイクさん!」ぼーっと見ていると後ろから名前を呼ばれた。なんだと思って後ろを見ると、受付嬢が立っていた。朝早くから出勤してるなんて優秀な人材ですな。ぜひパラディはこの人たちにボーナスを与えてほしい。



「今日はギルドマスターが二日酔いなので依頼は受けられないですよ」え?なんて?二日酔いで受理ができない?舐めてるだろここのマスターは。先に代理人立ててから飲めよ。



「あ、そうすか,,,」俺はそう言い残してギルドから立ち去った。依頼の無いギルドはギルドじゃない。宴会場か何かだ。そう自分に言い聞かせて何とか怒りを抑える。じゃないと今すぐにでもパラディにのことを殴りそうだからだ。



終わった。今日することが無くなった。二つ名じゃなくても依頼は受けようと思っていたのに。完全にやる気そがれました。ここ数日は依頼なんて受け取らないで、うんこを製造する機械になろう。流石に人として終わってるか。それだけはやめておこう。



「まじでどうしよ。スタートダッシュ、思いっきりこけたんですけど」まだ人の通りが少ない大通りを歩く。ちらほらと人がいるが、出店の準備なんかをしている商人ばっかりだ。後は俺よりも早く起きた冒険者か死にかけになってる顔した徹夜冒険者が外に向かって歩いているくらいだ。



朝ごはんはここら辺で食べてもいいかもな。優雅に紅茶でも飲んで、パンを食べて美女を観察しよう。それか、どっかの冒険者と臨時でパーティーを組むのもいいかもしれない。今までは一人だったから、複数人でわいわいしたい。



ブランとアクセルと過ごした時間が恋しいな。こんな風になるから暇な時間は嫌なんだよな。外に出て、フリーハントでもすっかな。



「朝飯食って行くか」大剣を揺らしながらどの店の料理を食うか考える。がっつり行きたいから肉は欠かせないな。でも狩りもしたいから手ごろなのがいい。片手で持って食えるような感じの,,,



「おっ。おっちゃん、そのパン三つ買わせてくれ」適当にぶらぶら外に向かって歩いていると、ちょうどいいものが売っていた。パンの中に野菜とたっぷりの肉と香辛料が詰まった最高に頭が悪そうな見た目をしているのが。



「はいよ。三つで2400リルだ」



「はいよ」カウンターに言われたリルよりも少しだけ高い金額を出す。これをすると包装してくれるし、顔も覚えてもらえる。不味かったらそれまでなんだが、リピートしたいと思った時に便利だから俺は癖でやってしまう。



「これから狩りに行くのかい?」パンを丁寧に包んでいるおっちゃんが話しかけてきた。見た目はよぼよぼだが、手先は現役な様でてきぱきと動かし、形は崩れないようにしていた。



「あぁ、フリーハントだけどな」手先の器用さに感心しながら返事をする。コミュニケーションを取るのも大事な技術だ。まぁ、なくても困りはしないが、あった方がいい。



「それならこれを持って行きな」袋にパンと一緒に詰められていたのはスタミナポーションだった。



「これをくれるんだったら,,,」



「また足を運んでくれればいいよ」俺の言葉に被せるように言った。ポーションは高いから俺が出した金額とは全く見合っていないんだけど,,,



「そうするよ」この店にはなんだか世話になりそうな気がする。礼を言って俺はその場を後にした。パンを片手に俺は通りを歩いて外を目指す。



居住地になっているところは基本モンスターが出ないからな。ハントをするなら居住地になっていないところに行かないといけない。



「美味いな。このパン」袋から一つのパンを取り出して思いっきり頬張る。肉汁が溢れて、それを野菜たちが受け取り、香辛料が最後にパンチをかましてくる。



「残りはあとで食うか」魔法空間に余った二つを入れる。忘れないようにしないと腐った状態で出てくるから気をつけないとな。今日の計画を考えているといつの間にか外に出ていた。考え事を足ているとあっという間に時間が経つな。今日はどのくらいモンスターを倒せるかな。



外に出てから数十分で初モンスターと接敵した。見た目は人型だが、頭部は骨で形成され、腕は極端に肥大化していて鉄でできた棍棒を握っていた。周りには鎧なんかの装備が散らかっている。恐らく人間との戦闘が終わった後だろう。



「俺も挑ませてもらうかな」背中に担いだ大剣を抜け出し構える。歴戦の戦士に戦いを挑むってのは心が躍るな。



「蒼髪、邪魔」急に地面が近くなった。頭が痛い。誰かに踏み台にされたのか。急いで視線を上げると、骸骨に金髪の少女が槍一本で挑んでいくのが見えた。俺は女の子に踏み台にされたのか。嬉しいな。って違う違う。あのままじゃあの子がやられちゃう。加勢しないと。



「聞こえた?邪魔」加勢しようとしたらスキルで牽制された。こいつは自分の獲物ってか。でもな、黙ってみてても仕方ないし危なくなったら助けに入ろう。



なんでこんなに優しいかって?金髪にロリ属性なんて最高だからだよ!ブランに怒られるから狙っては無いけど、こんな儚い存在が目の前で消えたら悲しいだろ?そうならないように俺が見てておかないと。←変態です



こんなくだらないことして俺らの世界に介入してくんなよ!?俺はロリコンじゃないからな!?本当だぞ。神に誓ってもいいくらいだ。って神はいるんだ。もうちょっと小さいところにしておくか。パラディに口約束くらいだな。



それにしても戦い方が綺麗だな。槍で突いて、スキルを撃ち込み、それで出来た隙で魔法を撃ちこんでいる。モンスターの方も、綺麗にいなして攻撃のチャンスを狙っている。



キィン!ギィン!幾千にもなる金属と金属が激しくぶつかる音。先に負けたのはモンスターの武器の方だった。



「カカカ」骸骨は笑っているのかわからないが、歯をぶつけて音を出して首を振っていた。腕からは血が噴き出していて気味が悪い。



「カカカカ,,,」笑いが止まると腕が瞬く間に止血され、皮膚が硬質化した。爪は歪に曲がり、何本かは自分の手の平に突き刺さっていた。第二形態だな。少女はどんなふうに戦闘を展開していくのかな。



「展開、魔槍ヴァミリア」持っていた白い槍が赤い光に包まれていき、内側から変化していった。持ち手は赤く、握りやすくなり、先端は三つ又になり、その間を赤い稲妻が光輝いている。そして槍を囲むように赤い魔力の塊が浮遊している。魔力の塊にはそれぞれの役割があるようで、剣や盾、杖などの形態をとっていた。



「蒼髪、これは,,,秘密」言葉を探したが見つからなかったようで、そう残して第二形態の骸骨に向かって走った。恐らくは奥の手だから黙っててということだろう。言いません。絶対に。確信しています。



残像ができる程の速さの槍の突きに骸骨は押し負けている。それに加えて、魔力の塊が追撃をしてダメージを増やしている。よくできた能力だな。



「カカカ,,,」骸骨が不気味に笑うと辺りが黒い霧に覆われた。魔力の流れが変わったのを肌で感じる。恐らくは魔法で闇系統のものだろう。



少女は霧を警戒して、そこを避けるように攻撃を仕掛けに行った。中々に鋭い動きをするな。俺みたいに魔法研究でもしてたのかってくらいに。でも、それだと危ない。助けに入るか。



「邪魔するぜ」霧から出てくる鉤爪を蒼で叩きのめして間に入る。霧系統の魔法は霧での攻撃ではなくそこからの攻撃というパターンが多い。視覚を奪っているし、気も引きやすい。たくさん生成されれば分からなくなる。



「蒼髪,,,助かった」背を向けられて感謝を言われた。難しい感じのロリか。悪くない。ってそうじゃない。背中を任せてくれたってことだよな。なら全力で守るか。



「礼なら後さ。倒そうぜ?」大剣から短剣に持ち替える。この子の立ち回りはよくわからないから安定した動きができる装備にしておく。足りないところは蒼で補って、やばかったら俺が置いてきた転送石を砕いてもらうしかないな。



「そうする」深く姿勢を低くして渾身の突きのタイミングを狙い始めた。俺は完全にヘイトを貰う立ち回りをした方がいいな。ついでに補助もしておくか。



「骸骨!よそ見すんなよ!」蒼を地面に叩きつけて空気が舞い上がるようにする。こうすれば霧は一瞬だろうが晴れるし、視線は俺に向くはずだ。その瞬間を狙って一気に間合いを詰めて短剣でヒットアンドアウェイでこの子の一撃で終わらせよう。



「カカカ」骸骨は俺の攻撃を予想していたかのように笑い、口から霧を吐き出した。黒く重たい霧はあっという間に俺のことを囲み、窒息寸前まで持って行った。あっという間に意識が混濁していく。目の前が暗い。時間はまだ稼がないと。どれくらいだ?確証は?



全てが遅く感じる。恐らくこれが死ぬ間際に見える走馬灯というものだろう。何も見えなかった。俺の人生は希薄だったのか,,,



「バーバリアン・レッド」目の前に赤い稲妻が走った。荒々しく、通り道全てを焼き焦がすそれは俺の網膜に焼き付いた。



「カカ,,,カ」槍が突き刺さった骸骨は頭蓋骨を爆散させ、塵になった。そこに残されたのは荒々しい骨でできた鉤爪だった。なんとか助かったのか?



「蒼髪、大丈夫?」天使が俺の顔を覗いてきている。ここは天国かなにかか?俺、そんなに徳を積んだ人間だったかな。



「何とかな」上手く動かない体を起こそうとして盛大にこけた。見栄は張るもんじゃないな。回復するまで待つか。酸欠だったらすぐに治るだろうし、駄目でも魔法が使えるようになればすぐだ。



「そう,,,ギルドで、待ってる」片言で要件を言い、素材を拾い上げどこかに去ってしまった。



あの子にまた逢えるのか。最高だな!あ、名前聞くの忘れたな。見れば分かるかな。

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