ブレイクソード

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三十五話 派閥

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暖かい日差しと共に目を覚ました。昼くらいまで寝ていたんだろうな。太陽が真上まで昇っている。

さて、この黒龍はどうしようか。俺の魔法空間に入らないし、持って行ったとしても、ボロボロだから、使い道も無いだろう。



よし、ここに放置しよう。自然の物は自然に還るのが一番だ。ありがとな、黒龍。礼をして、その場を後にする。



この後どうしようかな。グロリア王国も行きたいけど、道が分からんからな。適当にふらつくか。適当に歩いていると、遠くから声が聞こえてきた。



「ブレイクさん!!生きていますか!!返事をしてください!!」フェインの声が聞こえる。それに、別の人間の声や、馬の足音も聞こえる。迎えに来てくれたんだな。



「ここに居るぞ~~!!」腹の奥から、大きな声を出す。ぐっすり寝たから元気だ。



「動かないで待っていてください!」返事が返ってきた。やっと目的地にたどり着ける。嬉しいよ、本当に。



少ししてやってきたのは総勢数百名の兵団だった。ここまでして俺のことを探しに来てくれるなんて、思いもしなかった。来ても三人くらいだと思っていたからな。



「黒龍の死体とかって保存してますか?貴重なサンプルになるので、欲しいのですが」フェインは俺を連れてきた馬に乗せて、そんなことを聞いてきた。



「あぁ、魔法空間に入らないから置いてきた。場所は分かるから、連れて行こうか?」一度行ったりしたところは戻れるんだよな。



「是非、お願いします。この人数は黒龍を運ぶために連れてきたんです」後ろの兵たちを見ながら教えてくれた。



「なるほどな。俺のことをどこまで信じてんだよ。倒せるって言ったけどよ」ここまで人を信じていけるのは才能だな。



「ブレイクさんなら、やれると思ったので」フフッと笑う彼女を見て、顔が赤くなる。か、可愛い!って俺にはブランがいるんだ。浮気はしないぞ。



「この辺で倒したはずなんだが」戦闘の跡が色濃く残る場所まで来て、辺りを見渡す。



「団長!こちらに黒龍の死体がありました!!」一人の兵士が見つけたようだ。優秀なんだな。俺ほどじゃないが。



「もっとボロボロなのを想像していたが、原形を結構留めているな。流石はブレイクさんですね」フェインは死体を見て、俺のことを褒めてくれる。まじで、俺のこと誘ってんじゃないかって思ってしまうよ。



どうやって運ぶかと思っていたら、台車のようなものを出し始めた。その上にのせて、馬に引かせるんだな。考えているな。



黒龍の死体は数百人の力によって台車に乗せられて、ドナドナしている途中だ。俺のライバルが、あんな姿になるなんて。



「ブレイクさん、申し訳ないんですが、王国まで護衛を頼めますか?ここに居るのは、戦闘要員じゃないので」上目遣いで頼んできた。断れる奴いる!?いねぇよなぁ!!



「喜んで!!」胸をドンと叩いて、引き受けた。最近はずっと誰かを守っているな。自由には遠いな。



パカラパカラと音を立てながら、道を進んでいく。道があるってのもなんかいいな。いつも道なき道を歩いていたからな。



「リズレットはどうなんだ?」王国に向かう途中で気になることを何個か質問した。



「リズレット様は、王宮に戻られました」無事なのか。それは良かった。



「王国を守るのは栄光兵団だけなのか?」これは気になっていた。仮に王女候補を護衛するのにも関わらず、人が少なすぎる。



「違います。リズレット様を守るのがこの栄光兵団です。王国に事情があるのでこれ以上は言えません」だから、護衛する人数も居ないのか。



考えてみれば、少数精鋭でもないのに森の中に居るのは危険すぎる。王国に何かあるのだろう。俺の知ったことではないが。



「では、こちらからも質問させてもらいますね。こちらの手配書。あなたですよね?」そう言われて向けられた、一枚の紙。そこには俺の顔が写っていた。



そうです。指名手配書です。呑気にしてたけど、俺犯罪者だった。ブランは違うらしいけど。



「俺で間違いない」はっきりと肯定する。ここで、変にこじれるのも嫌だからな。



俺の言葉で、辺りの空気が一変する。引き絞られた弓のような緊張感。息をするのもきついな。周りの兵士たちも、つらそうにしている。



「ここで殺すか?」魔法空間から、剣を取り出して構える。ここに居るのは、戦闘要員じゃないらしいからな、苦戦はしないだろう。とはいえ数百人がいる。時間がかかりそうだ。



「そういうので見せたのではありません。あなたも私たちと同じではないかと思ったので見せました」フェインが、両手を上げて、弁明を始めた。



「グロリア王国には二つの派閥があり、今の鎖国状態を維持するという考えを持っているのが保守派。外交を活発化させるという考えの革命派の二つがあるんです」



「それで、俺と何の関係があるんだ?」関連性が全く見えてこない。



「保守派には、革命派であるリズレット様を疎ましく思っている気ぞ気たちがいるんです」拳を震わせながら、教えてくれる。事情は大体わかった。



「分かった。もう言わなくていい。殺せばいいのは誰だ?」単刀直入にフェインに聞く。



「王国にリストがあります。それよりもなんで,,,」驚いた顔で何かを聞きたそうにしていたが、俺が遮った。



「そういう宿命を背負ってるんだよ。それが邪魔されそうでね。お前もそうだろ?」笑いながら、フェインに声をかける。



「そうですね。私にもあります」そう言って、鎧で覆われた胸をコンコンと叩いた。



「これで俺は貴族殺し,,,か。あいつの家が無いといいな」ある一人の男の顔が浮かぶ。もしアイツの家族を殺したら、ifが出来上がっちまうんだろうな。



「アイツとは誰のことを指しているんですか?」フェインに独り言を聞かれていた。恥ずかしい。



「いや、なんでもない。それよりも手伝った方がいいんじゃないか?待機しとくからさ」後ろで、黒龍の死体を落としそうになっている兵士たちを指す。



「そうですね。行ってきます」フェインはそういうと、馬から降りて、走っていった。オーバー家、リストに入っていないといいんだが。



アイツは過去のことは多く語らなかったからな。多分嫌いだろ。知らんが。ま、オーバー家であの見た目なら、嫌われていただろ。



そんなことを思いながら、王国へと向かった。

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