ブレイクソード

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第二話 晩御飯

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「そういえばお前のテントが見当たらないけど、まだ魔法空間にしまっているのか?」

喜屋武王の設営が終わったと思っていたが、テントが俺のだけしかなかった。

俺のを加えたら二つか。

「持ってないわよ」

oh,,,まじかよ。今日は二人で狭いテントの中で寝るっていうのかい!?

俺のジュニアがアダルトになっちまうぜ!

なんてな。俺はそこら辺の区別はついている。

焚火の前で、毛布に包まって寝る。

「そうか、ならお前がテントで寝ていいぞ。ていうか、新しいのが帰るまで俺は外で寝るからよ」

流石は主人公の俺。機転が利きまくり。

「あんたに申し訳ないから、私が外で寝るわ」

「いやいや、女性にそんなことできるわけないだろ」

間髪入れずにブランに言う。もし、俺だけがテントで寝ていたら、男どころか、主人公失格だ。ここはお前らのためにも、男を見せてやるぜ。

「そんなにいうなら、今日はテントで寝るわ。気遣ってくれてありがとね」

「くっっっっそ可愛いーーーー!!!!!」

{当然のことさ}

「あんたまた心の声と逆になってるわよ」

「仕方ないだろ。可愛いんだから!」ブランの顔を見てはっきりと、俺の意思が伝わるように喋る。

「何回もいうと価値が薄れるわよ」耳を赤くしながら、呆れたように言われた。

なるほど。言葉には価値があるのか。価値が上がるように、あまり言わないようにしよう。

心の中で俺は誓った。立派になるまではこの言葉をあまり使わないと。

「寝るところは決まったから、飯にするか」

熊の肉を見ながら、どう調理するか考える。

「熊の肉って臭いわよね」ブランが嫌な顔をしながら呟く。

匂いが気になるのか。

「スパイスステーキなんてどうだ?そうすれば匂いは気にならなくなると思う」ブランに提案をする。

「その案いいわね。手伝うことがあれば教えてね」

「今日は疲れてるだろ?俺に任せて休んでてくれ」

この言葉、言ってみたかったんだよな。かっこいいから。

「なんかブレイクに任せっきりで申し訳ないわね」

ブランが見るからに落ち込んでいる!

ブレイクはどうする?

1:フォローの言葉をかける

2:そっとしておく

3:ブランのことを責める

このコマンド次第で、好感度が大きく変わるな。

3は論外だな。1と2どっちにしようか。

乙女心を理解していない俺にとって1は厳しいが、2にすると後悔する気がする。

男を見せるかブレイク!

よし。1で行くぞ!

「そんな落ち込もとは無いって。さっきの熊との戦闘も、お前の魔法が無ければもっと苦戦していたし。あと、水が足りないんだけど、魔法で出せるか?」

この声掛けは完璧なはずだ。褒めているし、頼み事もしている。死角は無い!

「そうなのかな。そうよね。ブレイクが言うなら間違いないわね!水はどのくらいいるの?」

ブランは嬉しそうに指示を待っている。

ナイス俺。神プレー。お前らの目も変わっているだろ?

「そこの入れ物に満タンになるまで入れてくれ。明日まで持つはずだから」

ちゅくらいのバケツに指をさして指示をする。

一人旅でもいいと思っていたが、誰かと気ままに旅を挑戦するのも悪くはない。

向こうが魔法で水を作っている間に、俺は料理でもするか。

俺は魔法空間から、調理器具を取り出す。

どこにでもあるようなフライパンだが、俺らの旅の仲間だ、丁寧に使っていこう。

焚火の上にフライパンを乗せ、油を敷く。そして、魔法空間から、ニンニクやハーブなどを出して入れていく。

正直何が正解なのかは分からないが、美味しければいいだろう。

油に香りが移ったら、熊の肉を入れていく。大きさは俺の顔くらい。お前らは俺のことを想像することしかできないと思うから、巨大な肉だと思ってくれ。

肉を入れたら、焦げが付かないように、何回も回していく。

全体を焼いたら、少しだけ肉を休ませて、中まで火を通していく。

この工程を、中まで火が通るまで繰り返す。

辺りのは、はーびとニンニクの香り。そして、肉のいい香りが立ち込める。これだけで、白米かパンが食べれるくらいだ。

白米が食いたいな。ここら辺だと、たまに来る行商人から買うくらいしか方法が無いからな。この際、極東を目指すのもありかも知れないな。

なんて思っていると、香ばしい仁尾ぴがした。もう焼けているな。

「おーいブラン。肉が焼けたぞ食べに来い」

いまだに魔法を使っているブランに、飯の用意が出来たこと伝える。

「分かったわ。今行くわね」

とてとてこちらの方の来る。可愛い。

ブランの前に切り分けた肉と、パンを置く。

もう我慢できない。

「「いただきます」」

同時に言うと、パンの上に肉を乗せ、大きく口を開けて頬張る。

口の中に広がるパンチの効いたニンニクの匂い。それを包みこむかのような優しいハーブの香り。

極めつけは、嚙むたびに出てくる肉汁だ。これがパンに染みていて、とてもうまい。熊の肉特有の獣臭さも一切無い。

至高の一品に出来上がっている。

「上手いなこれ。ブランはどうだ?」食べながら、ブランに感想を求める。

「獣の匂いもしないし、とてもおいしいわよ」

口いっぱい入れている辺り、気に入っているのだろう。

「明日からは担当を決めて作業しないか?ブランもそのあたりを気にしてるし」

肉を頬張りながら、提案する。

「いいわね。しっかり分けられるなら、効率も上がるだろうから」

快く受け入れてくれた。

やっぱ、美味しいものを食べていると、話し合いもスムーズに進むな。

言い合いが無いのは寂しいが。

「ブラン。お前の魔法空間に、あの熊肉全部入るか?」

魔法空間は生まれながらに総量が決まっている。

俺の場合は一人旅するくらいなら困らないくらいの大きさだ。

「あのくらいなら余裕よ」

ブランが熊肉に手をかざすと、一瞬にして消えた。

「今ので全部入ったのか。凄いな。」

思わず口にしてしまう。ここまでの魔法は見たことが無い。

いつも見ているのはじわぁ~と消えていく感じだから、すぐに入るというのは珍しい。

「見た感じあんたのは小さそうだから。、今度から私のに入れることにしましょ」

「了解です」あんなもの見せられたら、頷くことしかできない。

おとなしく負けを認める。

これで負け癖着いたらどうしよう。背中に寒気が走る。

気を引き締めていかねば。俺にMの気はないんだ。

「あんたまた変なこと考えてるわね」

ジト目でこっちを見るな!俺が限界を迎える!

「きょ、きょ、今日はも、もう寝よう!」

目覚める前に逃げないと本当にやばい。

俺は外に置いてある毛布に包まる。

「お前ももう寝た方がいいぞ?な?」

「そこまで言うなら寝るわよ」あくびをしながら、テントに向かっていく。

「「お休み」」

この言葉を皮切りに、話し声が無くなった。

外にいるからだろうか。木々がざわめく音。虫が奏でる音がはっきりと聞こえる。

上を見れば、俺のことを照らしてくれる月が。いろいろな形を作れる星が見える。

綺麗だ。世界はこんなにも美しいものだったのか。

心の底からそう思う。明日も同じようなものが見れるといいな。

そう思いながら眠りにつく。
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