上 下
40 / 44
第3章 空白を求める

36

しおりを挟む
「ん……」

目覚めた直後の、ふわふわとした心地。この世界に来てから、この感覚が強くなった気がする。

「……リア様、お目覚めになられましたか…?」

はその問いにすぐに応えようとしたが…噛みそうなので黙っておく。

昨日は確か……長老さんに……

でも、あの時に眠れたのは、少しだけありがたく思える。

「ん……おはようございます、長老さん……」
「おはようございます。朝食を準備してありますので、こちらへ…」
「えっと……はい」

なんだか昨日よりも扱いが仰々しい。

「あの…」
「はい。如何致しましたか?」
「えっと…昨日よりも扱いが…なんというか、全然違うんですけど……どうかしたんですか?」
「昨日は申し訳ありませんでした…どのことに関しては、朝食の席で説明させていただきます」

本当に、どうしたのだろう…


部屋の見た目も、昨日と変わらない。けれど、なぜか雰囲気が違うように見えてしまう。
手元にある食事も、昨日より少し豪華だ。
具体的に言えば、肉がある。
エルフって、肉食べない気が…

「それでは、リア様の扱いと、それに関して、この村のことを説明させていただきますね」
「はい…」
「それについて、まずはこの集落の宗教状況から説明しましょう」
「この村にも宗教があるのですか?」
「勿論です。この村の宗教は、地之大神教…通称、地神教。この村は、その中心地なんです」
「地神教…ですか」

聞いたことない…
名前からして、大地…自然関係の神様かな…

「地之大神様は、大地、それに伴う森などの陸地の自然の神様です。エルフが信仰するのも納得でしょう?」
「そう…ですね…」

お父さん達は宗教とかやってなかった気がするんだけどなぁ…

「不思議そうな顔をしていらっしゃいますね…では、ここで重要なことを」
「…? なんですか?」
「…地神教上、あなた方ハイエルフは、神の使い。つまり、この世界で最も神に近い存在として崇められています。」

私はうわぁ…と顔を顰めた。
つまり、僕がハイエルフだとバレた場合、この村のみんなに崇められることになる。

「そして、リア様がハイエルフであることを、この村のエルフに公開いたしました」
「え…えっと……ええ!? 本当ですか!?」
「ええ、本当です」

思わず頭を抱えた。つまり、私が今外に出ると、みんな土下座するとか、何か極端な行動を…

「なんで公表したんですか! これじゃ私が外に出られないじゃないですか!」
「いえ、外に出てもらっても構いませんよ?」

長老さんはにこやかにそう言った。

って、どうなるかわかってそう言ってるよね……

「ちなみに私の立場、長老ですが…一応は、ハイエルフ族と対等な立場となっています……が、リア様は唯一の生き残りということですので、このような態度になります」
「いいですから……普通にしてください……」
「ありがとうございます。この言葉遣いも結構疲れますから…」

…長老さんもあの言葉遣いは疲れるらしい …
って、そうじゃなくて…

「なんで生き残りっていうだけでそんな扱いが上になるのですか…」
「それは、神の血を引くものが途絶えそうなのですよ? 丁重に、保護する以外ありませんでしょう? しかも、当事者は6歳の少女。まあ、年齢に見合わず聡明のようですが、それでもまだ子供ですからね…」
「それは…」

やっぱり、6歳っていうのはおかしいかな…残念ながら年齢を偽る魔法はないんだよなぁ…

「そして、リア様の魔力量は異常です」
「えっ…わかるのですか!?」
「その様子だと正しいみたいですが…基本的に魔力を持つものは体表から少しずつ魔力が漏れ出ているのです。もっとも、魔力を体内で生成する量よりも圧倒的に少ないので、体内魔力が減少したりはしませんが…」
「はぁ…」
「しかし、体内での生成量と、表面から漏れ出る魔力の量は、比例しているというこの村での研究結果があります」
「っ…」

つまりそれは、私の魔力を見て、魔力量を分析された…?

「昨日のうちにサジェに見てもらいましてね…と言っていました」
「……へ?」
「つまり、リア様の魔力量は恐ろしい量になるということです」

それって、怖がられるのだろうか…危険だと判断されるのだろうか……

「それって…まずいことなんでしょうか…」
「いやいや、素晴らしいことですよ!」
「…へ?」

素晴らしいこと?

「ハイエルフ族で、魔力がとてつもない量。それだけ神に愛されているということです。失礼ですが、レベルはいくつなのですか?」
「えっと…」

そういえば久し振りに見るなぁ、冒険者カード。


…また、レベルが上がっていた。そんな狩ってないのだけれど…

––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––
名前 リア・ルイシェル
種族 ハイ・エルフ
職業 冒険者
年齢 6
Level 102

HP 155/155
MP 69785400/69785400

筋力 G
魔力 SS
体力 F
敏捷 B
幸運 SS

スキル
魔力回復強化 詠唱破棄 魔力回復増加

固有スキル
感覚強化

大罪スキル
憤怒(解放)

称号
異世界転生者(完全融合体) 魔法創造者 憤怒 破壊の主 運命の理から外れた者 人智を超えし者
––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––

「…102…ですね」
「そのレベルでその魔力量…本当に素晴らしい…」
「そうですか…」

魔力量が異常なのは、隠しておきたかったけれど…

扱いがマイナスの方にいかないなら、それでいいかな…

「あ、ちなみにリア様」
「何ですか?」
「この村の者は、リア様を敬いますが、過剰な反応はしたりしませんよ?」
「…どういうことですか?」
「別に外で歩いてくださっても、この村の者は挨拶くらいしかしませんよ?」

えっと…

そういう大事なことは…

「最初に言ってくださいよ!」


…心配して損した…
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

エーリュシオンでお取りよせ?

ミスター愛妻
ファンタジー
 ある男が寿命を迎え死んだ。  と、輪廻のまえに信心していた聖天様に呼び出された。    話とは、解脱できないので六道輪廻に入ることになるが、『名をはばかる方』の御指図で、異世界に転移できるというのだ。    TSと引き換えに不老不死、絶対不可侵の加護の上に、『お取り寄せ能力』という変な能力までいただいた主人公。  納得して転移した異世界は……    のんびりと憧れの『心静かな日々』を送るはずが……    気が付けば異世界で通販生活、まんざらでもない日々だが……『心静かな日々』はどうなるのか……こんなことでは聖天様に怒られそう……  本作は作者が別の表題で公開していた物を、追加修正させていただいたものです。その為に作品名もそぐわなくなり、今回『エーリュシオンでお取りよせ?』といたしました。    作者の前作である『惑星エラムシリーズ』を踏まえておりますので、かなり似たようなところがあります。  前作はストーリーを重視しておりますが、これについては単なる異世界漫遊記、主人公はのほほんと日々を送る予定? です。    なにも考えず、筆に任せて書いております上に、作者は文章力も皆無です、句読点さえ定かではありません、作者、とてもメンタルが弱いのでそのあたりのご批判はご勘弁くださいね。    本作は随所に意味の無い蘊蓄や説明があります。かなりのヒンシュクを受けましたが、そのあたりの部分は読み飛ばしていただければ幸いです。  表紙はゲルダ・ヴィークナー 手で刺繍したフリル付のカーバディーンドレス   パブリックドメインの物です。   

ざまあ~が終ったその後で BY王子 (俺たちの戦いはこれからだ)

mizumori
ファンタジー
転移したのはざまあ~された後にあぽ~んした王子のなか、神様ひどくない「君が気の毒だから」って転移させてくれたんだよね、今の俺も気の毒だと思う。どうせなら村人Aがよかったよ。 王子はこの世界でどのようにして幸せを掴むのか? 元28歳、財閥の御曹司の古代と中世の入り混じった異世界での物語り。 これはピカレスク小説、主人公が悪漢です。苦手な方はご注意ください。

とある元令嬢の選択

こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。 幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。

死んだと思ったら異世界に

トワイライト
ファンタジー
18歳の時、世界初のVRMMOゲーム『ユグドラシルオンライン』を始めた事がきっかけで二つの世界を救った主人公、五十嵐祐也は一緒にゲームをプレイした仲間達と幸せな日々を過ごし…そして死んだ。 祐也は家族や親戚に看取られ、走馬灯の様に流れる人生を振り替える。 だが、死んだはず祐也は草原で目を覚ました。 そして自分の姿を確認するとソコにはユグドラシルオンラインでの装備をつけている自分の姿があった。 その後、なんと体は若返り、ゲーム時代のステータス、装備、アイテム等を引き継いだ状態で異世界に来たことが判明する。 20年間プレイし続けたゲームのステータスや道具などを持った状態で異世界に来てしまった祐也は異世界で何をするのか。 「取り敢えず、この世界を楽しもうか」 この作品は自分が以前に書いたユグドラシルオンラインの続編です。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

断罪される1か月前に前世の記憶が蘇りました。

みちこ
ファンタジー
両親が亡くなり、家の存続と弟を立派に育てることを決意するけど、ストレスとプレッシャーが原因で高熱が出たことが切っ掛けで、自分が前世で好きだった小説の悪役令嬢に転生したと気が付くけど、小説とは色々と違うことに混乱する。 主人公は断罪から逃れることは出来るのか?

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

処理中です...