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第2章 平穏を求める

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「う、うあぁぁ……」

や、やっと終わった…かなりの量の仕事で…今は朝の5時。僕は住んでいるところが冒険者ギルドなので、夜まで仕事を続けることができた。というか、続けさせられた。
ほぼ貫徹だよ…この六歳の体には徹夜はかなりきついらしく、先程から何度か眠りかけてしまっている。

なぜか、勇者とは全く関係ない書類がかなり紛れていたけれど…
まあ、全部終わったことだし、部屋に戻って寝よう…

僕はいつも使っている部屋に戻り、水浴びもせずにベッドに飛び込み、そのまま寝てしまった。



「……ちゃん。…ァちゃん……リアちゃん!」
「へわっ!?」
「ああ、やっと起きた…もうお昼だよ…そろそろ起きないと…」

慌てて起き上がり、窓の外を見ると、既に太陽が高く昇っていた。
起こしてくれたのは颯人さんだった。

「えっと、その…ごめん、なさい…」
「…まあ、昨日遅くまで仕事していたんでしょ? それなら、仕方がないよ…」
「えっと……あ、ありがとう…」
「うん」

やっぱり、タメ口は慣れない…
こんな遅くに起きたことにショックを受け(仕方ないかもしれないけれど、今は戦時下なのだから…)しょんぼりとしていると、『くるぅ…』とどこからか可愛らしい音が…

「っっ!…」
「あ…ふふっ…お腹空いたんだ。じゃあ、酒場に何か食べに行こ? 今お昼だからお昼ご飯になっちゃうけれど」
「……うん」

とてつもなく、恥ずかしかった。



酒場での昼食はオムレツの定食(的なもの)を食べることにした。起きたばかりだし。
定食ってのは、オムレツにパンとかスープとかが付いて来るので僕がそう呼んでいるだけだ。まあ、一巳さん達もそんな感じに呼んでいたけれど。

「リアちゃん、今日この後暇?」
「へ? えっと…」

あの大量の仕事も終わったし、受けている依頼もないから…

「今日は、暇だよー」
「そう? よかったー…じゃあ、今日一緒に街で買い物とかしない? 買うものは物騒なものばっかりだけどさ、息抜きも兼ねて、ね」
「わかった…私も何か買おうかな…」
「うーん…服とかどう?」
「えっと…それは…」

服屋には嫌な思い出が…それに、服はあまり着ないから…

「今は、いいかなぁ…」
「うーん…じゃあ、冒険者用品とか、見に行こうよ。武器とかも。この後のことを考えて、ね」
「うん、わかった」

僕は急いでオムレツを食べて、出かける準備をした。

先ずは、街にある雑貨屋さん、そして、その後に武器屋さん、最後に一巳さんが見つけたというカフェに行くらしい。

というか、カフェなんてあったんだなぁ…観光とか、する暇なかったし。今だって溜め込んでいたお金がどんどんと減っていっているんだけど…

雑貨屋さんでは、野宿の時などに使う小物や、生活用品を購入した。勇者達はこれまで帝国の城にあったものを使っていたみたいなので、何も物が無いのだ。しかも、お金もない。仕方なくお金を借りて、一巳さんなどの戦闘ができる人たちが依頼をこなしてお金を稼いでいるらしい。

「ボクは何もできないからね…なんだか申し訳ないよ…」

と、颯人さんは少し気に病んでいた。僕が「みんなを癒す係でしょ?」って冗談めかして言ったら、笑ってはくれた。影がさした感じは消えなかったけれど、何も言わないよりはマシだろう…あまり、人を励ますとか、そういうことがわからないからなぁ…

その後の武器屋さんでは、颯人さんの護身用の武器を購入。颯人さんは魔術系のスキルらしいが、攻撃の方面はてんでだめらしく、ショートソードを選んでいた。
僕が今使っている杖を買った武器屋さんを紹介しようと思ったけれど、僕たちが行った店のもので満足していたようなのでやめておいた。

買い物(あまり買っていない。こんなものなのかな)が終わり、カフェに向かった。そこはあまり人がいない裏通りに面していて、やはり店の外観も少し暗い感じだった。
が、中に入って見ると、外から見た感じのイメージとは大きく違った、明るい感じのおしゃれなカフェだった。あまり部屋の装飾とか分からなけれど、よく女の子が来そうな感じの、少し華やかな内装だ。

「うん、一巳が言ってた通りの感じだね…結構いい感じ~」
「そう、だね…」

僕は元男なのでこういうのに慣れない…というわけでもなく。リアの記憶が混ざっているので、TSモノによくある女の子ぽさに対する忌避感などは無い。まあ、行きすぎたものは嫌だけれど。

なんと、そこのカフェでは『パフェ』が食べられたのだ! 前世の頃からの好物なので、素直に喜んだ。僕も颯人さんも夢中で食べた。

この世界ではラノベでよくあるように甘いものが貴重なのだ。そんな世界で、こんなものが食べられるなんて、思ってもいなかった。

その他ケーキ(色々と種類があって、驚いた!)も食べて、お腹に結構溜まって来たところで、店を出た。代金は…かなり高かったので僕が払っておきました。颯人さんが所持金が足りないとわかった瞬間、少し潤んだ目で僕を見つめて「お金、貸してくれないかな…?」って言ってきたときには少しドキッとしてしまった…

普通、それを言うのは逆なんだろうけど…

そうして、楽しい楽しいお出かけは終わった。


終わったが、この後もう一度出かけることにした。お金を使いすぎたので、何かしらの討伐依頼をこなすことにしたのだ。
僕が受けた依頼はオークの討伐依頼。また同じ場所に帝国兵がいたら、始末しちゃおっかなあって感じで受けた。

依頼をこなすのにかかった時間は2時間弱。オークはいたけど、人はいなかった。冒険者の一人も。

考えてみて、この街から冒険者がどんどんいなくなっていっていることを実感した。このオークの討伐依頼は、実入りがいいのでかなり人気だったはず。だと言うのに、こんな遅くの時間でも受けることができた。

そして、僕も参戦する可能性は高いことに気付き、これまでやったことのなかった、武器の手入れをすることにした。



一巳さん達が討伐依頼(結構な数)を終えて帰って来たのは、僕がそろそろ寝ようかな…と思っていた頃だった。

暇だったので眠ってしまいたいと言う思いを振り切って、颯人さんと一緒に出迎えた。

「一巳さん、おかえりなさい」
「おかえりー」
「おう、ただいま、颯人、リア」

一巳さんは今日稼いだお金から借金返済分を抜いてから、勇者達全員にお金を渡していった。金額はみんな同じのようだ。戦闘組から不満が出るかもと思ったけれど、残っていた勇者が全員女子だったみたいで…みんな満足そうにしていた。

「あ、そうだ、リア」
「へ? なんですか?」
「このあと少しだけ話があるから、残ってくれないか」
「あ、はい。わかりましたー」

戦争に関しての話かなぁ…はあ…もう少しゆったりと暮らしたいよ…勇者達などいなくて、この街の人たちに恩がなければ僕はとっくにこの街から逃げ出していただろうなぁ…エルフなせいか人間に対して仲間意識を持てないから…まあ、目の前でバタバタと殺されていくのを見るのはもっと嫌だけど。

酒場の隅っこで座って待っていると、こっちに一巳さんがやってきて、正面に座った。
そして、開口一番に「すまない」と頭を下げてきた!?

「い、いや、どうしたんですか!?」
「それがな…」

一巳さんの説明によると、この街にいる冒険者の数が思ったよりも少なく、場合によっては僕が参戦する必要もあるらしい。まあ、覚悟していたからいいのだけれど…僕がそう一巳さんに伝えると、驚きながら、「ありがとう」とお礼を言ってきた。

別に、お礼を言われることでも無いのだけれど…勇者達の方がよっぽど勇敢なのだから。
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