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現代編前編

現代編第6話 聖女の密談

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静まり帰った夜。
基地として提供された支所に一人の男性聖騎士が現れた。
警備の聖騎士は彼を見みるやビシッと背筋を伸ばし敬礼した。

「お疲れ様です『クルト』団長」
「ご苦労」

聖騎士に敬礼を返し彼は中へ入っていった。
照明器具に照らされた彼の姿は高貴で端正な顔立ちで他の聖騎士と比べ一回り大きな体格していた。
また装着してる鎧と背負ってる大剣は高度な魔法が付与された一級品であった。
二十代後半という若さながら護衛騎士団長の座まで登りつめた彼からは強者のオーラが放たれていた。
手に厳重な封印魔法が施された西瓜程の大きさの袋を抱えながら、クルトは目的の部屋に着くとドアをノックした。

「フレイヤ様只今帰還しました」
「どうぞ中へ入って下さい」
「は!」

クルトは中へ入ると椅子に座るフレイヤに対し背筋を正し敬礼する。

「ご苦労様ですクルト」
「さぁ座って今日の報告を聞かせて」

「は!」とクルトは着席し手に持った袋を一瞥すると、指揮していた別動隊の結果報告を始めた。

「反応を見る限り奴は此処周辺に潜伏してる事は間違いないと思われます」
「ただ辺境地に到着以降の反応は薄く、正確な位置を掴むには更に範囲を拡大して行う必要があると考えられます」

報告を聞いたフレイヤは小さく頷いた。

「分かりました」
「クルトは明日の探索部隊の指揮をお願いします」
「了解しました」
「それと引き続き騎士達の相互監視の徹底と……『彼女』の守護をお願いします」
「それと……」

フレイヤは少し言い淀み言葉を続けた。

「魔物が人間に化けて潜伏してる可能性の件、村の人々に漏れないように情報統制を徹底させて下さい」
「了解しました」
「よろしくお願いします……」

フレイヤはクルトから視線を外すとまるで腹に溜まった重りを吐き出す様にゆっくりとため息をついた。

(また私は皆に嘘をついてしまった)

「私は聖女として……いえ人としての道を外れようとしてるかもしれません」
「フレイヤ様どうかそのような事をおっしゃらないで下さい」
「これも村人を無碍に混乱させない為です」
「クルト……」
「奴に同情の余地が無いと言いません」
「ですが聖王宮を破壊し数名の聖女を再起不能にした行為が許されるはずがありません!」
「それに奴は始めから我らを謀ってました」
「始めから全てを打ち明けていれば別の道もあったはずなのに……」
「そう……ですね……」

(打ち明ける……己が魔物であった事実を聖女の私に……)
(その様な勇気誰もが持ってる訳ないのに……)

「……今日はもう遅いです少しも体を休め明日に備えて下さい」
「明日はよろしくお願いします」
「はいフレイヤ様失礼します」

クルトが部屋を出て辺りに静寂が流れる。

「…………」

(私は彼の見せた表層の部分しか見てなかった)
(多くの言葉を交わし……出来るなら彼を信頼し真実を告げてれば……)

フレイヤは遠い目をしながら夜空を見つめた。
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