魅了転生 純正聖女と堕落の魔物

現代編前編

現代編第３話 降臨

カーン！カーン！カーン！

静寂の夜に響く緊急招集の合図を聞いた俺は直ぐに家を飛び出した。

（非戦闘用の鐘だが……何事だ！？）

松明を片手に俺は揺らめく不安を抱えながら鐘を鳴らしてる支所の下へ向かった。

「なぁ！この方達は！？」

目の前に広がる光景に俺の目は釘付けとなった。
其処には一個小隊に及ぶ人数の銀甲冑を纏った騎士達が支所を取り囲んでいた。

「ジン！こっちだ！」

声の方を振り向くと、先に到着し困惑と焦りを混ぜた表情を浮かべるイサムが手招きしていた。

ズワァ！
（うぅ！？）

騎士達が一斉に俺を注視した。
全身で体感する歴戦の猛者達が放つ威圧に身体が震え思わず足が下がってしまった。

「ジン早く来てくれ！みんな待ってんだ！」
「あ、あぁ……」

キョロキョロと視線を泳がせながらイサムに続いて中へ入った。


「驚いた……あの甲冑……首都の聖騎士達だよな？」
「あぁそうだ」
「なんであんな大勢の聖騎士が此処に？」
「分からん……が中はもっとすごいぞ」
「え？」

冷や汗が滲んだ背中の後を追い、イサムは応接室の扉を開いた。

「村長ジンが来ました」

其処には曲がり始めた腰を更に折り曲げ体をちじこせる村長が居た。

「村長お疲れさまです。これはどういう事な……なぁ！……」

視線を奥に向けそのお姿を見た瞬間、まるで雷が全身を貫いた様な衝撃が走り体が硬直してしまった。

（嘘……だろ！な、何で！？）

村長と対面する聖騎士達の中心にそのお方は居た。

輝く髪を靡かせた容姿端麗な女性。
上質な白布のロンググローブに、首、胸元、腰に金と灰色の装飾が施されたドレス。
見る者に水源から湧き出る清水を想起させる清楚な印象を与え、思わず手を合わせ拝みたくなる様な気持ちにさせる。
山と森しかない辺境の地で生きる者が直接お会い出来る機会等まず無い雲の存在。

「そんな……なんで！？……」

俺は震える声でそのお方を指し示す言葉を口にした。

「王国の……『聖女』様」