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第三章
十九話 狂剣
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剣は真っすぐ伸びだ細身の刀身に、左右に広がる鍔が付いたありふれた物だった。
「方位磁針が反応したの絶対にあれですよ!早速取りに行きましょう!」
弾む声で僕はよじ登ろうと石像に手を掛けた。
「カウルさん待って」
セイラさんは喜びいさむ僕の肩を掴むと、コンコン石造を叩きながら言いました。
「これだけ硬いと私でなければ抜けないと思う」
「私が取り行くから、カウルさんは安全の為辺りの警戒をして」
「分かりました。砂人形が見えたらすぐに知らせます」
「お願い……よ!」
セイラさんは石造の割れ目に手足をかけるとスルスルと上り、危なげ無く剣の刺さってる首元にたどり着きました。
「セイラさんその剣はどうですか?」
彼女は難しい顔で刺さってる剣を様々な角度から観察し、柄や刃を直に触れ、物を見極めようとしてました。
そして彼女が下した結論は。
「これは……確かに神域のアイテムかもしれない!」
何か確信を得たのかセイラさんは驚嘆の声を上げました。
「本当ですか!良かった~」
それを聞いた僕はほっと胸を撫でおろし、沸き上がる喜びを共有したい思いで彼女をを見上げました。
「これで目的は達成ですね」
「安心するのはまだ。辺りに何か怪しい動きはある?」
セイラさんの指示で、僕は石像に背向けキョロキョロ辺りを見回した。
「今の所砂人形の影はありません」
「分かった、今から剣を抜くよ。何かあったらすぐ声を上げて」
「はい。セイラさんお気を付けて」
そしてセイラさんは神妙な顔で剣の柄に手を掛けました。
カウルさんを気にかけながらスキルを使用した長時間の移動。
それは私の心身に多大な負荷を与えていた。
(あの剣が目的の物じゃなければ消耗した状態で、またカウルさんを守りながら探索
を続けなければならない)
(これ以上彼女を危険に晒す訳には……お願いこれで終わって……)
そう思いながら石像を上り、改めて足元の剣を品定めをした。
そして私の心は驚きの声と共に重荷が下りたように脱力した。
(やった、間違いなく『本物』だ!)
そう確信したのは、この変哲もない剣が過酷な環境に長時間晒されていたにも関わらず、すぐに使える程良好な状態あったからだ。
「セイラさん。その剣はどうですか?」
「確かにこれは神域のアイテムかもしれない」
「本当ですか!良かった~」
「これで目的は達成ですね」
下で警戒をしてくれてるカウルさんの声から喜びが伝わってくる。
「安心するのはまだ。辺りに何か怪しい動きはある?」
私の呼びかけにカウルさんは辺りをキョロキョロと見回す。
「今の所砂人形の影はありません」
「分かった、今から剣を抜くよ。何かあったらすぐ声を上げて」
「はい。セイラさん気を付けて」
(今の内に回収して早く帰還しないと……そしてリフル様を救いカウルさんを元の世界へ……)
私は柄を握りしめ、剣を左右に少しだけ揺らし隙間を確かめると、ズズッと石像から剣を引き抜いた。
「!?……」
その瞬間。下から圧縮した空気の塊が私の体にぶつかったような感覚がした。
そして視界は闇に染まっていた。
目的の剣を石像から引き抜いたセイラさん。
しかし彼女は刀身を見つめたまま、まるで石像とくっついたように動かなくなってしまった。
「……どうしたのセイラさん?きゃぁ!何?!」
訝しむ僕の周りに突然ブァ!っと砂塵が吹き荒れ、辺り一面がサンドカラーに覆われた。
「うぅ……前が見えない……」
ザァ……ザァ……。
「!!!」
響いた。聞こえた。砂同士が擦れるノイズ音が。
ザァ、ザァ。
ザァ、ザァ、ザァ、ザァ。
ザァ、ザァ、ザァ、ザァ、ザァ、ザァ、ザァザァ、ザァ、ザァ、ザァ、ザァ、ザァ、ザァ。
「嘘、やだ……こんなの」
砂色の靄に浮かぶ濁った大量の赤と人影。
「あぁ……あぁ!セ、セイラさん!!」
ザァ!ザァ!ザァ!ザァ!
僕の悲鳴を合図に、砂塵から砂人形達が濁流のように次々と押し寄せた。
「うわあぁ!!」
ザン!!!と突風が頭上を駆け抜けると、まるで背中に羽を生やしたようにセイラさんが目の前に舞い降りた。
いや……羽じゃない。砂だ。
襲い掛かってきた先頭が、目の前で真っ二つに裂けてた。
羽と勘違いした吹き上がる大量の砂は、砂人形の血しぶきに置き換わった。
セイラさんが護ってくれた。僕の騎士様。
でも彼女が力強く握るそれは……狂剣でした。
次回 【砂上の戦い】
「方位磁針が反応したの絶対にあれですよ!早速取りに行きましょう!」
弾む声で僕はよじ登ろうと石像に手を掛けた。
「カウルさん待って」
セイラさんは喜びいさむ僕の肩を掴むと、コンコン石造を叩きながら言いました。
「これだけ硬いと私でなければ抜けないと思う」
「私が取り行くから、カウルさんは安全の為辺りの警戒をして」
「分かりました。砂人形が見えたらすぐに知らせます」
「お願い……よ!」
セイラさんは石造の割れ目に手足をかけるとスルスルと上り、危なげ無く剣の刺さってる首元にたどり着きました。
「セイラさんその剣はどうですか?」
彼女は難しい顔で刺さってる剣を様々な角度から観察し、柄や刃を直に触れ、物を見極めようとしてました。
そして彼女が下した結論は。
「これは……確かに神域のアイテムかもしれない!」
何か確信を得たのかセイラさんは驚嘆の声を上げました。
「本当ですか!良かった~」
それを聞いた僕はほっと胸を撫でおろし、沸き上がる喜びを共有したい思いで彼女をを見上げました。
「これで目的は達成ですね」
「安心するのはまだ。辺りに何か怪しい動きはある?」
セイラさんの指示で、僕は石像に背向けキョロキョロ辺りを見回した。
「今の所砂人形の影はありません」
「分かった、今から剣を抜くよ。何かあったらすぐ声を上げて」
「はい。セイラさんお気を付けて」
そしてセイラさんは神妙な顔で剣の柄に手を掛けました。
カウルさんを気にかけながらスキルを使用した長時間の移動。
それは私の心身に多大な負荷を与えていた。
(あの剣が目的の物じゃなければ消耗した状態で、またカウルさんを守りながら探索
を続けなければならない)
(これ以上彼女を危険に晒す訳には……お願いこれで終わって……)
そう思いながら石像を上り、改めて足元の剣を品定めをした。
そして私の心は驚きの声と共に重荷が下りたように脱力した。
(やった、間違いなく『本物』だ!)
そう確信したのは、この変哲もない剣が過酷な環境に長時間晒されていたにも関わらず、すぐに使える程良好な状態あったからだ。
「セイラさん。その剣はどうですか?」
「確かにこれは神域のアイテムかもしれない」
「本当ですか!良かった~」
「これで目的は達成ですね」
下で警戒をしてくれてるカウルさんの声から喜びが伝わってくる。
「安心するのはまだ。辺りに何か怪しい動きはある?」
私の呼びかけにカウルさんは辺りをキョロキョロと見回す。
「今の所砂人形の影はありません」
「分かった、今から剣を抜くよ。何かあったらすぐ声を上げて」
「はい。セイラさん気を付けて」
(今の内に回収して早く帰還しないと……そしてリフル様を救いカウルさんを元の世界へ……)
私は柄を握りしめ、剣を左右に少しだけ揺らし隙間を確かめると、ズズッと石像から剣を引き抜いた。
「!?……」
その瞬間。下から圧縮した空気の塊が私の体にぶつかったような感覚がした。
そして視界は闇に染まっていた。
目的の剣を石像から引き抜いたセイラさん。
しかし彼女は刀身を見つめたまま、まるで石像とくっついたように動かなくなってしまった。
「……どうしたのセイラさん?きゃぁ!何?!」
訝しむ僕の周りに突然ブァ!っと砂塵が吹き荒れ、辺り一面がサンドカラーに覆われた。
「うぅ……前が見えない……」
ザァ……ザァ……。
「!!!」
響いた。聞こえた。砂同士が擦れるノイズ音が。
ザァ、ザァ。
ザァ、ザァ、ザァ、ザァ。
ザァ、ザァ、ザァ、ザァ、ザァ、ザァ、ザァザァ、ザァ、ザァ、ザァ、ザァ、ザァ、ザァ。
「嘘、やだ……こんなの」
砂色の靄に浮かぶ濁った大量の赤と人影。
「あぁ……あぁ!セ、セイラさん!!」
ザァ!ザァ!ザァ!ザァ!
僕の悲鳴を合図に、砂塵から砂人形達が濁流のように次々と押し寄せた。
「うわあぁ!!」
ザン!!!と突風が頭上を駆け抜けると、まるで背中に羽を生やしたようにセイラさんが目の前に舞い降りた。
いや……羽じゃない。砂だ。
襲い掛かってきた先頭が、目の前で真っ二つに裂けてた。
羽と勘違いした吹き上がる大量の砂は、砂人形の血しぶきに置き換わった。
セイラさんが護ってくれた。僕の騎士様。
でも彼女が力強く握るそれは……狂剣でした。
次回 【砂上の戦い】
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