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第二章
八話 魔女の森
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「……また知らない場所だ」
僕が意識を取り戻した場所は森の中にぽっかりと空いた草の絨毯の上でした。
追いかけて来たモンスターは勿論、ダンジョンの岩の壁も床も見当たりません。
「――そうだ!セイラさん!?」
僕ははっとし振り返ると、セイラさんは僕の隣で倒れてました。
「セイラさん大丈夫!?」
直ぐさま彼女の下へ駆け寄り、僕は意識の無い肩を揺さぶりました。
「うぅ、はぁ……はぁ……」
彼女は小さなうめき声を上げるとゆっくりと目を覚ましてくれました。
「……生きてる。あぁ、良かった」
大きな怪我も無い様子に、僕は心身に背負いこんだ荷が下りた様な安堵感に包まれました。
「僕達さっきまでダンジョンの中に居たはずなのに気が付いたら森の中に居たの」
「セイラさん何か知ってる?」
「森?……えぇ!」
僕に支えられながら体を起こしたセイラさんは辺りを見回すと驚きの表情を見せました。
「此処は……もしかして魔女の森!?」
彼女の口から古典的なファンタジー語が出てきました。
「セイラさんこの場所を知って――」
「※※※※※※※。※※※※※※※※!」
すると突然森の奥から人の声が聞こえました。
「え?何!?」
僕はビクっと体を振るわせながら顔を向けると、声の主が草木をかき分けながらのっそりと姿を現しました。
まず目に入ったのは先の折れたとんがり帽子でした。
また服装は首元がダブつき大きな胸元が見える黒のロングドレス着こなし、手には木製の杖を持ってました。
更にそれをすっぽりと覆う黒色のローブ。
顔つきはセイラさんとさほど変わらない成人女性のそれで、腰まで伸びたロングヘアに目元を覆う前髪の隙間から分厚い眼鏡が見えます。
そして一番目を引いたのは人間のそれよりもずっと長い耳でした。
(うわぁ、見た目も雰囲気も怪しすぎる……)
「※※?※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※」
(それに言語が分からないから、何を言ってるのかさっぱり分からない)
「カウルさん彼女は私の知り合いだ」
「え!知り合い!?じゃあ『魔女の森』の魔女ってやっぱり……」
警戒する僕にセイラさんは目前の魔女の紹介をしてくれました。
「彼女はこの森に住む魔女『ラミ』」
「そして試練のダンジョンの管理者でもある」
「私は彼女に対価を差し出し、試練に挑戦する権利と当面の衣食住を提供してもらってる」
「※※※※※※※※※※」
魔女はニヤニヤと笑みを浮かべながら此方に手を振ってました。
「うぅ~ん……」
(挨拶をしてるニュアンスは分かるけど何を言ってるのかさっぱりわからない)
「あのセイラさん」
「あの方……ラミさんが何を言ってるのか僕全く聞き取れない」
「え!本当かい?」
僕の発言に困惑するセイラさん。
「※※※※※※※※※※※※※」
するとラミさんが僕の元へ近寄ってきました
そしておもむろに自身の胸元に手を突っ込みました。
「え!ちょっといきなり何してるの!?」
驚く僕を後目にそこからある物を取り出し、僕の前に差し出しました。
それは中央に赤色の輝く石が埋め込まれたペンダントでした。
「※※※※※※※」
「えっと……」
「カウルさんラミは『受け取ってくれ』と言ってるよ」
「は、はい……」
僕は恐る恐るそれを受け取りました。
(このペンダント、ほんのり生暖かい)
「……どう、私の言葉が聞き取れるかい?」
「え!は、はい!分かります!」
驚きました。先ほどまでこの方が発してた異国の言葉がしっかり聞き取れました。
「どうして急に……もしかしてペンダントの力ですか?」
「そうさ。便利な魔道具だろ?」
「魔道具……魔法の力が宿ったアイテムですか?」
「ふふ、理解が速くて助かるよ」
「それはお近づきの印さ受け取ってくれ」
「……ありがとうございます」
「初めまして僕カウルって言います」
「よろしくねカウル君」
「よろしくお願いします。ラミさん」
僕は改めてこの世界の新たな住人と会話を交わしました。
「しかし何故だ?私はラミと同じ言語でカウルさんに話かけてたのに」
「そうなんですか?」
「ふふ、それはカウル君がセイラ君の所有物として『パス』が繋がってるからさ」
「そのおかげで自然な意思疎通が出来たんだろう」
僕とセイラさんの疑問にラミさんがあっさりと答えを出してくれました。
「しかし大体の子は言語補正のスキルが与えられるはずだが……カウル君の前の持ち主は他国の言語に疎かったのかね……」
「まぁ、良いや。ではこ改めて」
「お帰りセイラ君。そしておめでとう!」
ラミさんはパチパチと拍手を送りセイラさんを祝福しました。
次回 『魔女の導き』
僕が意識を取り戻した場所は森の中にぽっかりと空いた草の絨毯の上でした。
追いかけて来たモンスターは勿論、ダンジョンの岩の壁も床も見当たりません。
「――そうだ!セイラさん!?」
僕ははっとし振り返ると、セイラさんは僕の隣で倒れてました。
「セイラさん大丈夫!?」
直ぐさま彼女の下へ駆け寄り、僕は意識の無い肩を揺さぶりました。
「うぅ、はぁ……はぁ……」
彼女は小さなうめき声を上げるとゆっくりと目を覚ましてくれました。
「……生きてる。あぁ、良かった」
大きな怪我も無い様子に、僕は心身に背負いこんだ荷が下りた様な安堵感に包まれました。
「僕達さっきまでダンジョンの中に居たはずなのに気が付いたら森の中に居たの」
「セイラさん何か知ってる?」
「森?……えぇ!」
僕に支えられながら体を起こしたセイラさんは辺りを見回すと驚きの表情を見せました。
「此処は……もしかして魔女の森!?」
彼女の口から古典的なファンタジー語が出てきました。
「セイラさんこの場所を知って――」
「※※※※※※※。※※※※※※※※!」
すると突然森の奥から人の声が聞こえました。
「え?何!?」
僕はビクっと体を振るわせながら顔を向けると、声の主が草木をかき分けながらのっそりと姿を現しました。
まず目に入ったのは先の折れたとんがり帽子でした。
また服装は首元がダブつき大きな胸元が見える黒のロングドレス着こなし、手には木製の杖を持ってました。
更にそれをすっぽりと覆う黒色のローブ。
顔つきはセイラさんとさほど変わらない成人女性のそれで、腰まで伸びたロングヘアに目元を覆う前髪の隙間から分厚い眼鏡が見えます。
そして一番目を引いたのは人間のそれよりもずっと長い耳でした。
(うわぁ、見た目も雰囲気も怪しすぎる……)
「※※?※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※」
(それに言語が分からないから、何を言ってるのかさっぱり分からない)
「カウルさん彼女は私の知り合いだ」
「え!知り合い!?じゃあ『魔女の森』の魔女ってやっぱり……」
警戒する僕にセイラさんは目前の魔女の紹介をしてくれました。
「彼女はこの森に住む魔女『ラミ』」
「そして試練のダンジョンの管理者でもある」
「私は彼女に対価を差し出し、試練に挑戦する権利と当面の衣食住を提供してもらってる」
「※※※※※※※※※※」
魔女はニヤニヤと笑みを浮かべながら此方に手を振ってました。
「うぅ~ん……」
(挨拶をしてるニュアンスは分かるけど何を言ってるのかさっぱりわからない)
「あのセイラさん」
「あの方……ラミさんが何を言ってるのか僕全く聞き取れない」
「え!本当かい?」
僕の発言に困惑するセイラさん。
「※※※※※※※※※※※※※」
するとラミさんが僕の元へ近寄ってきました
そしておもむろに自身の胸元に手を突っ込みました。
「え!ちょっといきなり何してるの!?」
驚く僕を後目にそこからある物を取り出し、僕の前に差し出しました。
それは中央に赤色の輝く石が埋め込まれたペンダントでした。
「※※※※※※※」
「えっと……」
「カウルさんラミは『受け取ってくれ』と言ってるよ」
「は、はい……」
僕は恐る恐るそれを受け取りました。
(このペンダント、ほんのり生暖かい)
「……どう、私の言葉が聞き取れるかい?」
「え!は、はい!分かります!」
驚きました。先ほどまでこの方が発してた異国の言葉がしっかり聞き取れました。
「どうして急に……もしかしてペンダントの力ですか?」
「そうさ。便利な魔道具だろ?」
「魔道具……魔法の力が宿ったアイテムですか?」
「ふふ、理解が速くて助かるよ」
「それはお近づきの印さ受け取ってくれ」
「……ありがとうございます」
「初めまして僕カウルって言います」
「よろしくねカウル君」
「よろしくお願いします。ラミさん」
僕は改めてこの世界の新たな住人と会話を交わしました。
「しかし何故だ?私はラミと同じ言語でカウルさんに話かけてたのに」
「そうなんですか?」
「ふふ、それはカウル君がセイラ君の所有物として『パス』が繋がってるからさ」
「そのおかげで自然な意思疎通が出来たんだろう」
僕とセイラさんの疑問にラミさんがあっさりと答えを出してくれました。
「しかし大体の子は言語補正のスキルが与えられるはずだが……カウル君の前の持ち主は他国の言語に疎かったのかね……」
「まぁ、良いや。ではこ改めて」
「お帰りセイラ君。そしておめでとう!」
ラミさんはパチパチと拍手を送りセイラさんを祝福しました。
次回 『魔女の導き』
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