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判断と決断
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薄暗い室内に何十時間いるだろうか。統合幕僚長を務める川元は自身の腕時計に目を移し、心の中で溜息をついた。陸海空の代表が持ち回りで統幕長という職に就く中、川元は二年前に陸幕からの出向という形で三自衛隊を統括する立場に抜擢されていた。
自衛隊の高校と呼ばれる高等工科学校から防衛大学校。そして、幹部として現場を指揮していた時代には戦車乗りとして荒地を走り回っていた。暴れ馬を正確に指揮し、敵を撃滅。普通科部隊の突破口を開く役目。その日々を忙しく過ごし、気付けば自衛隊のトップとして今、飯を食っている。不思議な因果を感じつつ、国民に恥じない自衛隊の姿を作るべく彼は邁進していた。
しかし巨大生物の上陸という映画のような展開に困り切っているのが現実だった。巨大生物が神奈川に上陸してからは昼夜を問わず、官邸に出向くよう大山防衛大臣から電話が掛かってきていた。そして官邸から帰ってきた後は市ヶ谷か、朝霞の作戦指令室に入りびたりで、真面に太陽の光を浴びていなかった。
しかし事態が事態だけに文句は言えず、川元の身体には疲労が溜まっていた。官邸から帰り、今からまた市ヶ谷の会議室で打ち合わせがあった。薄暗い廊下を川元は体を引きずるように歩く。そして地下に設けられた会議室に入室した。
そして、彼が入室してくる姿を見た佐官が号令を掛ける。熱い議論が交わされていたようだったが、その号令に言葉はなくなり一同が起立した。川元はそれを手で制し、現在の状況を周囲に問い掛けた。
「はい。第七艦隊の救助活動の件についてですが、海保との共同により戦傷者の後送までスムーズにいっています。詳細につきましては、資料にあるように、海自の硫黄島基地をベースに、そこから米軍の輸送機がグアムのアンダーセン基地まで兵士を送っています。現在のペースを維持出来るならば、明後日までには全ての任務が終了するということです。尚、生物の動向についてですが、米海軍との共同部隊を編制。捜索を行っていますが行方は不明とのことです。」
最初に、海将補の階級をつけた迷彩服姿の中年男性がそう報告してきた。その内容に川元は安堵の表情を浮かべる。とりあえず米軍との問題は起こらないで済んだからだった。
「了解した。引き続き米軍兵士の救助、後送に全力を尽くしてくれ。そして生物の捜索。これには哨戒機の飛行時間を伸ばすなど、警戒監視を徹底してくれ。」
川元はそう返し、終わった案件の資料を右側に移し、次に出てきた案件を問い掛けた。
「はっ。神奈川県における災派の状況についてですが、放射能汚染地域及び倒壊地帯以外の安全区域におけるライフラインは全て復旧。これにより給水活動等の必要性がなくなった事から、既に一部の部隊を下がらせています。そのため武山の指揮所も規模を縮小させています。しかし未だ茅ヶ崎市における人命救助は完了しておらず、増員が必要と考えます。」
東部方面混成団長を務める一佐が報告をしつつ、進言してきた。確かに茅ヶ崎市における人命救助は急務だった。周囲は放射能で汚染されており、その任務は自衛隊でしか行えていなかった。消防や警察との共同で行えていれば、まだ現場の隊員に苦労を掛けないで済むのだが、汚染の頻度からして、自衛隊でしか活動が出来なった。
「給水等、必要性が薄まった箇所については即自か予備自にやらせればいいんじゃないか?」
「即自は既に召集済みで、安全区域にはなりますが消防と共同で瓦礫の撤去作業に従事しています。予備自はまだですが、部隊の編制完結まで一週間近くは掛かります。」
「出頭して、任務に就ける者から順に肩代わりさせればいいだろう。その肩代わりさせた人員をそのまま茅ヶ崎市に送れば問題は無い筈だ。」
「あぁ、そうだ。私は前、西部総監の幕僚をしたことがあったが、熊本地震から予備自は出頭してきたら順次任務に就いていいことになった。災派については一番効率的だと思うぞ。」
「しかし、招集したところで必要人員が召集に応じるかは未知数です。それよりは他方面隊から増援を送った方がいいかと。」
川元が返答に詰まっていると、一人の高級幹部が口を開いたのを皮切りに議論が交わされ始めた。国家の非常事態に召集される予備自衛官制度。確かに今回の事態においては有効だった。圧倒的に現職隊員の数が足りておらず川元はその案に賛成した。
「よし。予備自の案は良案だ。直ちに即自と予備自、全国的に召集を掛けてくれ。政府には話をしておく。そして他方面隊、西部と北部にも増援部隊を送るよう指示を頼む。」
川元はそう指示を出した。それを聞き、予備自の運用に関わる数人の佐官が一礼して退室していった。その姿を横目で見つつ、次の案件の資料を開いた。巨大生物が再度上陸した際の対応について。一番頭を悩ませる内容だった。会議を始めて一時間近く。ここから長くなるな。小さく溜息をつきながらも、川元は担当の佐官に問い掛ける。
「はい。あくまでも想定の範囲ですが、充分に有り得るため策定しました。」
まだ30代後半と思わしき二佐が資料を見つつ、そう口を開いた。
「現在、練馬に二個戦闘団。朝霞に一個戦闘団。そして富士学校に三個戦闘団を待機させています。生物が上陸した際、以上を上陸の阻止等の任務に就かせます。また海自等の捜索によって上陸の可能性が高いとされた場合においては、現在神奈川県で災派に当たっている部隊を避難誘導等に充てます。これは既に神奈川県知事や神奈川県警等に話を通し、了承を得ております。陸自の大まかな動きについては以上です。」
資料を置き、口を閉じる。それを見、続けるようにして今度は貫禄ある海将の階級をつけた男性が口を開いた。
「海自の動きについてですが、資料にあります通り第一護衛隊群を主力とし相模湾及び浦賀水道にて上陸阻止の防衛戦を展開する予定にあります。しかし現在、小笠原諸島における第七艦隊救助の任務に就いている艦もあるため、これを呉の第四護衛隊に引き継がせます。」
何も詰まることなく、海将は続けた。しかし、巨大生物の攻撃に遭った兵士らを救助した後に、その生物に今度は自分達が攻撃をする。隊員らの士気に影響はしないだろうか。川元はそこに疑問が残った。数人の佐官らも、小声で話を始める。しかし一人がそれを制し、会議室は元の静まりを取り戻した。
「では、最後に空自の対応を。」
場をリセットするように川元は短く告げる。それを聞き、担当の女性自衛官が口を開いた。
「はい。空自の対応について申しあげます。空自としましては入間基地に前線司令部を、そして後方の指揮所を百里基地に置きます。これに伴い、三沢のF2部隊を入間に移管。百里のF4も一部を入間に移し、対地装備で待機させます。また状況によっては成田空港及び羽田空港を空自の管理下に置けるよう調整を掛けています。」
空将補の階級章にウイングマークを付けた40代の女性自衛官は強気の口調で説明した。
「しかし、トマホークでも生物は倒せなかった。皆さん。それは周知していますよね。」
陸海空、三自衛隊の対応について説明が終わった事を確認した一人の男が唐突に話を出してきた。情報本部長の喜園空将だった。その内容に周囲は沈黙に包まれる。川元は議論が止まる事を恐れ、仲介的な立場に入ろうとしたが、喜園は構うことなく、
「今聞いた対応策を本当に実施なさるおつもりなら、部隊は壊滅。いや全滅します。それどころか東京は火の海になるでしょう。まず第一に、現場の隊員らに第七艦隊の惨状は説明するのですか?まぁ、まず無理でしょう。士気の低下どころじゃない。士の連中は逃げ出すかもしれない。」
誰しもがその内容に耳を塞ぎたくなった。しかしこれが現実。
間違ってはおらず直視しなければならないことだった。この会議室にいる幹部らは無論、自衛隊の中心的メンバー。彼らの一言で何万人もの隊員が動くことになる。
しかし今回は動くのみでは済まない事態だった。的確な作戦をたてなければ、隊員らを死に向かわせることになるからだ。それは第七艦隊が生物から攻撃を受けている映像や写真。それらを目の当たりにし、思うに至った。まるで死刑囚がいる床を開ける。そのボタンを自分達が押さないといけないような、そのような錯覚に彼らは陥っていた。
「ではどうしろというのだ!通常兵器しか持っていない俺達に、どうしろと!」
沈黙を破るように東部方面総監が口を開く。
「核物質を載せた航空機で沖合まで誘導する。上陸阻止には一番得策だ。無論、その航空機は遠くの島から飛ばし、奴の目の前を通過させる必要があるがな。情報本部が出した結論だ。」
感情を隠し切れない総監に対し、喜園は冷静な口調で返す。周囲はその意見に声を漏らした。
「しかし、日本は国際関係上、そんな事は出来ぞ。」
川元はそう反論した。数人の佐官が頷く。
「はい。分かっております。なので外務省ルートですが中露軍が協力してくれるとのことでした。核を持っていて一番手っ取り早い方法ですので。」
何の抵抗もなく喜園はそう続ける。大方の幹部はその内容に顔を顰めた。
「中露軍だって?信用できるのか?」
一佐の階級章をつけた防衛課長が思わず問い質す。周囲も同じ気持ちだった。今まで散々仮想敵国として訓練をしてきた相手国だけに相当の抵抗を覚えたのだった。
「信用も何も。仮にここで中露軍が変な動きをしたとして、世界大戦になりますよ。そんなことは誰も望んじゃいない。それとも、その他に何か策があるんですか?アメリカは国内情勢から、もう生物には関われない。と、なると近隣国で要請が出来る大国は中露ぐらいです。生物はいつ現れるか分かりませんし、仕方がないかと。」
喜園の意見も一理あった。しかし何としてでも中露の力は借りたくないと主張する幹部もいた。その延長線上として飯山らの調査室の話も出たが、実質現実的ではないとして蹴られ、結果、建前上は調査室が生物の弱点を模索しているが、それが間に合わず仕方なく中露に要請を出す。という形で会議は終了した。しかし川元には不安要素が多々あった。
本当に中露を信用していいものか。日本の安全保障に対して現場での一番の責任者。その立場の人間として、果たして今回の意見を官邸に進言してもいいのだろうか。葛藤はあったが、会議の結論として一致し、事務方は既に先の意見で作業を進めていた。それを考え、川元は官邸関係者に電話を掛けた。
「却下だ却下!」
小林環境大臣の怒声が内閣危機管理センター内で響き渡る。他の大臣らも険しい表情で防衛省職員を見つめていた。川元が官邸に連絡をした数分後に、関係閣僚会議が危機管理センター内で行われていた。その中で説明を担当した防衛省職員に、厳しい視線が送られていた。
「はい・・・。しかしながら中露に協力を要請する以外に手立てはないということでして。」
市ヶ谷から送られてきた書類に目を通しつつ、職員は続けた。
「放射能を有する物質を航空機に積んで、それで生物を誘導。本土上陸を阻止する、か。」
柿沼経産大臣は溜息混じりに呟く。しかしその口調には嫌味が込められているように思えた。
「日本の領空圏内に、他国軍の核を搭載した航空機を飛行させるつもりか?」
斎藤国交大臣が眉を顰め、問い質す。
「航空機の監視には空自の要撃機を飛ばします。」
「しかし!核を搭載した航空機を領空内に入れる!そうだろ。」
「はい。仰る通りです。」
防衛省職員の濁した言い回し。それを是正させるように斎藤は問い詰め、職員は渋々答えた。その反応に周囲からは声が漏れる。
「大体、この間の第七艦隊が起こした戦闘。あれで小笠原諸島近海の海洋汚染は一気に酷くなった。それで今度は核を持った航空機を生物の餌食にするなど。いくら奴が放射能を吸収してくれるとはいえ、これ以上環境汚染が酷くなる事態は避けたいものだ。」
小林は否定的な口調で防衛省職員に噛みついた。数人の閣僚がその意見に頷く。
「ですが、中国とは現在、東シナ海において日中共同の資源採掘計画の検討。ロシアとは北方四島の返還。これの前向きな姿勢が見えてきています。ここで両国に対して親密さをアピールするのも一つの手ではないかと思いますが。」
今まで口を閉ざしていた本山外務大臣が、唐突にそう話し出した。しかし、
「外交的には要請を出した方がいいかもしれん。中露大使からも、協力を惜しまない旨を直接官邸に伝えに来たぐらいだからな。しかしだ。内容が内容だ。自衛隊はどうした。なんのための自衛隊なんだ。なぁ!大山さん!」
柿沼はそう反論し、大山に話をふった。大山は虚を突かれる形になったが冷静な口調で、
「まぁ、そうなんだが、自衛隊の現有戦力では国民を守れないと、そう判断したんだろう。そうでもなければ中露に要請を出すなど口が裂けても言ってこない。一番抵抗感を覚えているのは彼らだよ。その気持ちを察してあげてください。」
返事になってないな。そう思ったが精一杯の回答だった。防衛大臣になってまだ一年も経っていなかったが、東日本大震災を始めとする彼らの活躍に心から尊敬していた。そのため大山は現場がやりたいようにさせる。その気持ちを何よりも大切にし、日々の業務をこなしていた。だからこそ出てきた言葉。周囲の反応が気になり目を泳がせる。
「意見がまとまったようだな。」
大山の発言から周囲は沈黙に包まれた。それを見た岡山は全体を見渡し短く口を開いた。
閣僚らは小さく頷く。
「私も実は気が進まない。しかし、我々の責務は国民の生命と財産。これを守ることにある。その実働任務を帯びている組織として自衛隊があるわけだが、その知識に精通している彼らが下した決断が、中露への要請だ。我が国の最後の砦でも対抗出来ないなら、国際社会、とりわけ隣国に助けを求めるのも一つの手段だろう。懸念材料はあるが、それをこれから私達の手で払拭し、守っていこう。」
岡山は統括の意味を込めてそう続けた。閣僚らはそれを聞き、静まり返っていたが、やがてセンター内は一人が手を叩いたことを皮切りに拍手の雨に包まれた。
「中露に支援要請?」
連隊本部に所属する一尉の呼び掛け。それを受け飯山と中村はプレハブの外に出て、市ヶ谷で決まった内容を告げられていた。しかし飯山は耳を疑っていた。それは彼の隣にいた中村も同様で、眉を歪めていた。
「じゃあ、俺達の仕事はなんになるんですか!」
中村は思わずそう叱咤する。
「市ヶ谷の方からは引き続き、生物の調査をするよう連絡が来ました。」
戦闘服に弾帯を巻き付けた風貌の一尉は、書類を二人に手渡し口を開く。受け取った書類には確かに、調査を続行するよう統幕長からの命令文が書かれていた。その書類を見、中村は溜息をつく。
「まぁ確かに、生物のデータも少なく、自分達の意見は現実味を帯びていないものが多すぎる。無理もないさ。」
飯山はそう一人ごち、プレハブの中に視線を移す。室内では教授らが顕微鏡や、研究器具とひたすら睨めっこをしていた。調査室が設置されてから三日が経っていたが、未だ推測でしかモノを言えない状況が続いていたのだ。いつ再び生物が上陸してくるか分からない中で、市ヶ谷が痺れを切らすのは仕方がなかった。
「場所はここで大丈夫なんですよね?」
周囲を見渡していた中村が、一尉に対して唐突に問い掛けた。所狭しと並ぶ戦闘車両、その整備に明け暮れる陸曹らの姿を見ての質問だった。
「まぁ、場所的には厳しいのは現状ですが、統幕からの命令なんで、ここにいてください。このプレハブをどかすか、明け渡してくれた所で、陸士連中の寝床になるか、武器整備のスペースになるかのどっちかなんで、大丈夫です。」
連隊本部の一尉は、険しい表情をしつつも、笑みを浮かべそう返答した。
「じゃあまた、何か動きがあったら教えてくれ。」
中村との会話が終わったのを見、飯山は一尉の肩を軽く叩き、短く言う。一尉はそれに対しお辞儀をし、隊舎に戻って行った。
「凄く親しそうでしたが、後輩ですか?」
小走りする彼の後ろ姿を見、中村はそう問い掛ける。
「彼がレンジャー訓練を受けてた時、俺が運幹だったってだけだよ。」
どこか遠くを見るような顔で飯山はそう答える。その眼は懐かしい記憶を蘇らせているようなものに、中村は思え、声にない声で静かに返事をした。
自衛隊の高校と呼ばれる高等工科学校から防衛大学校。そして、幹部として現場を指揮していた時代には戦車乗りとして荒地を走り回っていた。暴れ馬を正確に指揮し、敵を撃滅。普通科部隊の突破口を開く役目。その日々を忙しく過ごし、気付けば自衛隊のトップとして今、飯を食っている。不思議な因果を感じつつ、国民に恥じない自衛隊の姿を作るべく彼は邁進していた。
しかし巨大生物の上陸という映画のような展開に困り切っているのが現実だった。巨大生物が神奈川に上陸してからは昼夜を問わず、官邸に出向くよう大山防衛大臣から電話が掛かってきていた。そして官邸から帰ってきた後は市ヶ谷か、朝霞の作戦指令室に入りびたりで、真面に太陽の光を浴びていなかった。
しかし事態が事態だけに文句は言えず、川元の身体には疲労が溜まっていた。官邸から帰り、今からまた市ヶ谷の会議室で打ち合わせがあった。薄暗い廊下を川元は体を引きずるように歩く。そして地下に設けられた会議室に入室した。
そして、彼が入室してくる姿を見た佐官が号令を掛ける。熱い議論が交わされていたようだったが、その号令に言葉はなくなり一同が起立した。川元はそれを手で制し、現在の状況を周囲に問い掛けた。
「はい。第七艦隊の救助活動の件についてですが、海保との共同により戦傷者の後送までスムーズにいっています。詳細につきましては、資料にあるように、海自の硫黄島基地をベースに、そこから米軍の輸送機がグアムのアンダーセン基地まで兵士を送っています。現在のペースを維持出来るならば、明後日までには全ての任務が終了するということです。尚、生物の動向についてですが、米海軍との共同部隊を編制。捜索を行っていますが行方は不明とのことです。」
最初に、海将補の階級をつけた迷彩服姿の中年男性がそう報告してきた。その内容に川元は安堵の表情を浮かべる。とりあえず米軍との問題は起こらないで済んだからだった。
「了解した。引き続き米軍兵士の救助、後送に全力を尽くしてくれ。そして生物の捜索。これには哨戒機の飛行時間を伸ばすなど、警戒監視を徹底してくれ。」
川元はそう返し、終わった案件の資料を右側に移し、次に出てきた案件を問い掛けた。
「はっ。神奈川県における災派の状況についてですが、放射能汚染地域及び倒壊地帯以外の安全区域におけるライフラインは全て復旧。これにより給水活動等の必要性がなくなった事から、既に一部の部隊を下がらせています。そのため武山の指揮所も規模を縮小させています。しかし未だ茅ヶ崎市における人命救助は完了しておらず、増員が必要と考えます。」
東部方面混成団長を務める一佐が報告をしつつ、進言してきた。確かに茅ヶ崎市における人命救助は急務だった。周囲は放射能で汚染されており、その任務は自衛隊でしか行えていなかった。消防や警察との共同で行えていれば、まだ現場の隊員に苦労を掛けないで済むのだが、汚染の頻度からして、自衛隊でしか活動が出来なった。
「給水等、必要性が薄まった箇所については即自か予備自にやらせればいいんじゃないか?」
「即自は既に召集済みで、安全区域にはなりますが消防と共同で瓦礫の撤去作業に従事しています。予備自はまだですが、部隊の編制完結まで一週間近くは掛かります。」
「出頭して、任務に就ける者から順に肩代わりさせればいいだろう。その肩代わりさせた人員をそのまま茅ヶ崎市に送れば問題は無い筈だ。」
「あぁ、そうだ。私は前、西部総監の幕僚をしたことがあったが、熊本地震から予備自は出頭してきたら順次任務に就いていいことになった。災派については一番効率的だと思うぞ。」
「しかし、招集したところで必要人員が召集に応じるかは未知数です。それよりは他方面隊から増援を送った方がいいかと。」
川元が返答に詰まっていると、一人の高級幹部が口を開いたのを皮切りに議論が交わされ始めた。国家の非常事態に召集される予備自衛官制度。確かに今回の事態においては有効だった。圧倒的に現職隊員の数が足りておらず川元はその案に賛成した。
「よし。予備自の案は良案だ。直ちに即自と予備自、全国的に召集を掛けてくれ。政府には話をしておく。そして他方面隊、西部と北部にも増援部隊を送るよう指示を頼む。」
川元はそう指示を出した。それを聞き、予備自の運用に関わる数人の佐官が一礼して退室していった。その姿を横目で見つつ、次の案件の資料を開いた。巨大生物が再度上陸した際の対応について。一番頭を悩ませる内容だった。会議を始めて一時間近く。ここから長くなるな。小さく溜息をつきながらも、川元は担当の佐官に問い掛ける。
「はい。あくまでも想定の範囲ですが、充分に有り得るため策定しました。」
まだ30代後半と思わしき二佐が資料を見つつ、そう口を開いた。
「現在、練馬に二個戦闘団。朝霞に一個戦闘団。そして富士学校に三個戦闘団を待機させています。生物が上陸した際、以上を上陸の阻止等の任務に就かせます。また海自等の捜索によって上陸の可能性が高いとされた場合においては、現在神奈川県で災派に当たっている部隊を避難誘導等に充てます。これは既に神奈川県知事や神奈川県警等に話を通し、了承を得ております。陸自の大まかな動きについては以上です。」
資料を置き、口を閉じる。それを見、続けるようにして今度は貫禄ある海将の階級をつけた男性が口を開いた。
「海自の動きについてですが、資料にあります通り第一護衛隊群を主力とし相模湾及び浦賀水道にて上陸阻止の防衛戦を展開する予定にあります。しかし現在、小笠原諸島における第七艦隊救助の任務に就いている艦もあるため、これを呉の第四護衛隊に引き継がせます。」
何も詰まることなく、海将は続けた。しかし、巨大生物の攻撃に遭った兵士らを救助した後に、その生物に今度は自分達が攻撃をする。隊員らの士気に影響はしないだろうか。川元はそこに疑問が残った。数人の佐官らも、小声で話を始める。しかし一人がそれを制し、会議室は元の静まりを取り戻した。
「では、最後に空自の対応を。」
場をリセットするように川元は短く告げる。それを聞き、担当の女性自衛官が口を開いた。
「はい。空自の対応について申しあげます。空自としましては入間基地に前線司令部を、そして後方の指揮所を百里基地に置きます。これに伴い、三沢のF2部隊を入間に移管。百里のF4も一部を入間に移し、対地装備で待機させます。また状況によっては成田空港及び羽田空港を空自の管理下に置けるよう調整を掛けています。」
空将補の階級章にウイングマークを付けた40代の女性自衛官は強気の口調で説明した。
「しかし、トマホークでも生物は倒せなかった。皆さん。それは周知していますよね。」
陸海空、三自衛隊の対応について説明が終わった事を確認した一人の男が唐突に話を出してきた。情報本部長の喜園空将だった。その内容に周囲は沈黙に包まれる。川元は議論が止まる事を恐れ、仲介的な立場に入ろうとしたが、喜園は構うことなく、
「今聞いた対応策を本当に実施なさるおつもりなら、部隊は壊滅。いや全滅します。それどころか東京は火の海になるでしょう。まず第一に、現場の隊員らに第七艦隊の惨状は説明するのですか?まぁ、まず無理でしょう。士気の低下どころじゃない。士の連中は逃げ出すかもしれない。」
誰しもがその内容に耳を塞ぎたくなった。しかしこれが現実。
間違ってはおらず直視しなければならないことだった。この会議室にいる幹部らは無論、自衛隊の中心的メンバー。彼らの一言で何万人もの隊員が動くことになる。
しかし今回は動くのみでは済まない事態だった。的確な作戦をたてなければ、隊員らを死に向かわせることになるからだ。それは第七艦隊が生物から攻撃を受けている映像や写真。それらを目の当たりにし、思うに至った。まるで死刑囚がいる床を開ける。そのボタンを自分達が押さないといけないような、そのような錯覚に彼らは陥っていた。
「ではどうしろというのだ!通常兵器しか持っていない俺達に、どうしろと!」
沈黙を破るように東部方面総監が口を開く。
「核物質を載せた航空機で沖合まで誘導する。上陸阻止には一番得策だ。無論、その航空機は遠くの島から飛ばし、奴の目の前を通過させる必要があるがな。情報本部が出した結論だ。」
感情を隠し切れない総監に対し、喜園は冷静な口調で返す。周囲はその意見に声を漏らした。
「しかし、日本は国際関係上、そんな事は出来ぞ。」
川元はそう反論した。数人の佐官が頷く。
「はい。分かっております。なので外務省ルートですが中露軍が協力してくれるとのことでした。核を持っていて一番手っ取り早い方法ですので。」
何の抵抗もなく喜園はそう続ける。大方の幹部はその内容に顔を顰めた。
「中露軍だって?信用できるのか?」
一佐の階級章をつけた防衛課長が思わず問い質す。周囲も同じ気持ちだった。今まで散々仮想敵国として訓練をしてきた相手国だけに相当の抵抗を覚えたのだった。
「信用も何も。仮にここで中露軍が変な動きをしたとして、世界大戦になりますよ。そんなことは誰も望んじゃいない。それとも、その他に何か策があるんですか?アメリカは国内情勢から、もう生物には関われない。と、なると近隣国で要請が出来る大国は中露ぐらいです。生物はいつ現れるか分かりませんし、仕方がないかと。」
喜園の意見も一理あった。しかし何としてでも中露の力は借りたくないと主張する幹部もいた。その延長線上として飯山らの調査室の話も出たが、実質現実的ではないとして蹴られ、結果、建前上は調査室が生物の弱点を模索しているが、それが間に合わず仕方なく中露に要請を出す。という形で会議は終了した。しかし川元には不安要素が多々あった。
本当に中露を信用していいものか。日本の安全保障に対して現場での一番の責任者。その立場の人間として、果たして今回の意見を官邸に進言してもいいのだろうか。葛藤はあったが、会議の結論として一致し、事務方は既に先の意見で作業を進めていた。それを考え、川元は官邸関係者に電話を掛けた。
「却下だ却下!」
小林環境大臣の怒声が内閣危機管理センター内で響き渡る。他の大臣らも険しい表情で防衛省職員を見つめていた。川元が官邸に連絡をした数分後に、関係閣僚会議が危機管理センター内で行われていた。その中で説明を担当した防衛省職員に、厳しい視線が送られていた。
「はい・・・。しかしながら中露に協力を要請する以外に手立てはないということでして。」
市ヶ谷から送られてきた書類に目を通しつつ、職員は続けた。
「放射能を有する物質を航空機に積んで、それで生物を誘導。本土上陸を阻止する、か。」
柿沼経産大臣は溜息混じりに呟く。しかしその口調には嫌味が込められているように思えた。
「日本の領空圏内に、他国軍の核を搭載した航空機を飛行させるつもりか?」
斎藤国交大臣が眉を顰め、問い質す。
「航空機の監視には空自の要撃機を飛ばします。」
「しかし!核を搭載した航空機を領空内に入れる!そうだろ。」
「はい。仰る通りです。」
防衛省職員の濁した言い回し。それを是正させるように斎藤は問い詰め、職員は渋々答えた。その反応に周囲からは声が漏れる。
「大体、この間の第七艦隊が起こした戦闘。あれで小笠原諸島近海の海洋汚染は一気に酷くなった。それで今度は核を持った航空機を生物の餌食にするなど。いくら奴が放射能を吸収してくれるとはいえ、これ以上環境汚染が酷くなる事態は避けたいものだ。」
小林は否定的な口調で防衛省職員に噛みついた。数人の閣僚がその意見に頷く。
「ですが、中国とは現在、東シナ海において日中共同の資源採掘計画の検討。ロシアとは北方四島の返還。これの前向きな姿勢が見えてきています。ここで両国に対して親密さをアピールするのも一つの手ではないかと思いますが。」
今まで口を閉ざしていた本山外務大臣が、唐突にそう話し出した。しかし、
「外交的には要請を出した方がいいかもしれん。中露大使からも、協力を惜しまない旨を直接官邸に伝えに来たぐらいだからな。しかしだ。内容が内容だ。自衛隊はどうした。なんのための自衛隊なんだ。なぁ!大山さん!」
柿沼はそう反論し、大山に話をふった。大山は虚を突かれる形になったが冷静な口調で、
「まぁ、そうなんだが、自衛隊の現有戦力では国民を守れないと、そう判断したんだろう。そうでもなければ中露に要請を出すなど口が裂けても言ってこない。一番抵抗感を覚えているのは彼らだよ。その気持ちを察してあげてください。」
返事になってないな。そう思ったが精一杯の回答だった。防衛大臣になってまだ一年も経っていなかったが、東日本大震災を始めとする彼らの活躍に心から尊敬していた。そのため大山は現場がやりたいようにさせる。その気持ちを何よりも大切にし、日々の業務をこなしていた。だからこそ出てきた言葉。周囲の反応が気になり目を泳がせる。
「意見がまとまったようだな。」
大山の発言から周囲は沈黙に包まれた。それを見た岡山は全体を見渡し短く口を開いた。
閣僚らは小さく頷く。
「私も実は気が進まない。しかし、我々の責務は国民の生命と財産。これを守ることにある。その実働任務を帯びている組織として自衛隊があるわけだが、その知識に精通している彼らが下した決断が、中露への要請だ。我が国の最後の砦でも対抗出来ないなら、国際社会、とりわけ隣国に助けを求めるのも一つの手段だろう。懸念材料はあるが、それをこれから私達の手で払拭し、守っていこう。」
岡山は統括の意味を込めてそう続けた。閣僚らはそれを聞き、静まり返っていたが、やがてセンター内は一人が手を叩いたことを皮切りに拍手の雨に包まれた。
「中露に支援要請?」
連隊本部に所属する一尉の呼び掛け。それを受け飯山と中村はプレハブの外に出て、市ヶ谷で決まった内容を告げられていた。しかし飯山は耳を疑っていた。それは彼の隣にいた中村も同様で、眉を歪めていた。
「じゃあ、俺達の仕事はなんになるんですか!」
中村は思わずそう叱咤する。
「市ヶ谷の方からは引き続き、生物の調査をするよう連絡が来ました。」
戦闘服に弾帯を巻き付けた風貌の一尉は、書類を二人に手渡し口を開く。受け取った書類には確かに、調査を続行するよう統幕長からの命令文が書かれていた。その書類を見、中村は溜息をつく。
「まぁ確かに、生物のデータも少なく、自分達の意見は現実味を帯びていないものが多すぎる。無理もないさ。」
飯山はそう一人ごち、プレハブの中に視線を移す。室内では教授らが顕微鏡や、研究器具とひたすら睨めっこをしていた。調査室が設置されてから三日が経っていたが、未だ推測でしかモノを言えない状況が続いていたのだ。いつ再び生物が上陸してくるか分からない中で、市ヶ谷が痺れを切らすのは仕方がなかった。
「場所はここで大丈夫なんですよね?」
周囲を見渡していた中村が、一尉に対して唐突に問い掛けた。所狭しと並ぶ戦闘車両、その整備に明け暮れる陸曹らの姿を見ての質問だった。
「まぁ、場所的には厳しいのは現状ですが、統幕からの命令なんで、ここにいてください。このプレハブをどかすか、明け渡してくれた所で、陸士連中の寝床になるか、武器整備のスペースになるかのどっちかなんで、大丈夫です。」
連隊本部の一尉は、険しい表情をしつつも、笑みを浮かべそう返答した。
「じゃあまた、何か動きがあったら教えてくれ。」
中村との会話が終わったのを見、飯山は一尉の肩を軽く叩き、短く言う。一尉はそれに対しお辞儀をし、隊舎に戻って行った。
「凄く親しそうでしたが、後輩ですか?」
小走りする彼の後ろ姿を見、中村はそう問い掛ける。
「彼がレンジャー訓練を受けてた時、俺が運幹だったってだけだよ。」
どこか遠くを見るような顔で飯山はそう答える。その眼は懐かしい記憶を蘇らせているようなものに、中村は思え、声にない声で静かに返事をした。
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