ゆきめ

くさの

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 一瞬のことでよくわからない、けれど私はその一瞬でも繋ぐことは許されないと思った。

「だめっ! 私の手は、とっても冷たいから、だから」
「なら、繋ごうよ」

 さっきよりも強引に、彼は手首から手を離して手のひらを合わせるようにして強く握った。

「い、」
「冷たいなら、あっためたげる」
「や、」
「ねえ、どうしてそんな泣きそうなの? ユキミ?」

 彼に負けじと必死にもがいてどうにかして彼の手から逃れようとした。

 貴方の体温で。
 貴方の温度で。

「いやだよ、コウタ。コウタは温かいから。温かい人だから。雪女ゆきめの私なんかが触れたら、私のほうが溶けちゃうよ、だから、嫌だよ」
「大丈夫だよ」

 彼が、私を抱き寄せた。
 じわり、じわりと、温度が体温が伝わってくる。
 手が震える。彼と触れ合っている、指のひとつひとつや神経のそれらすべて。

「やだ、消えたくない、消えたくないよ、」

 知られることは、どうでもいいんだ。
 どうでも良かった。

 溶けて、消えてしまうことが怖い。
 貴方の隣に、居られなくなる。

 そばに居たいだけ。

 一緒にいさせてくれたなら、それ以外はもう望まない。
 そばに。
 遠くで見てるだけで、なんて、偽善だ。
 隣に居たいよ、居たかったのは、誰でもない私だ。

「ユキミ、みてみ」

 声に、涙で濡れた瞳を彼に向ける。そこから、彼の視線をたどってみたのは。

「ね、あったかいでしょ?」

 今度は、へらんと笑ってそういった。

 じわりじわり、温かい。

 貴方の温度。


「コウタ!」
「うわっ」

 嬉しくって、けど怖くって。
 それでも、手を繋ぐより温かい。

 勢いに任せてというのは聞こえがいい。本当のところは、もう、涙なんて見られたくなかった。
 だから彼の胸に飛び込んだ。

 隠しようもないなら、いっそ、溶けてしまおうが構わない。
 もっとずっと、近くで。

 貴方の温度を感じていたかったんだ。
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