132 / 330
テクニカとの邂逅
第132話 強がり怖がりガトーショコラ
しおりを挟む
「肩凝ったなぁ」
白い光を放つタブレット端末を前に僕は欠伸をかみ殺す。
首を回せばパキパキと関節が鳴り、伸びをすれば凝り固まっていたであろう血流が流れる感じがしてため息が出る。
ダマル率いる女性陣3人は、テクニカ内部で使える道具を捜索するローラー作戦に駆り出され、僕は1人マオリィネの話を聞くため玉匣に残されていた。そのついでで、御貴族様が目覚めるまで暇だろうからと、ダマルに在庫品の数量チェックを押し付けられたのである。
しかし、僕が作業の半分を終えてもなお、彼女はまだ寝台で眠っている。ファティマ曰く、自分達がフェアリーと対話している間も一切目を覚まさなかったらしい。
――まぁ、無理もないか。
今まで玉匣に居た現代人の皆は、何度も翡翠の戦闘を目撃しており、あまつさえミクスチャとの戦闘まで経験している。
だが、マオリィネは違う。いくら戦場に慣れた騎士でも、初めて目にする化物同士の戦いには、相当なショックを受けても何の不思議もないのだ。
そんな彼女に、自分が何をしてやれるだろう。そもそもダマルやシューニャが僕に何を求めて、この状況を作り出したのかさえも未だに曖昧である。
考えても仕方がないと思考を振り払い、僕は玉匣の荷物室に頭を突っ込みながら、また1つずつ使えそうな物を調べていく。そこでふと、ロガージョの巣で見つけたプラスチック爆薬が目についた。
「……そういえば、ガトリング砲のこと忘れてたな」
工具を持ち込んで装備すると言い放っていたダマルだが、今こそその時ではないのだろうか。それこそ自分と同じように骸骨が忘れていなければの話だが。
800年前の時点から主力武装である突撃銃は扱いやすかったものの、対マキナ戦闘ではパンチ力に欠けることが指摘されていた。しかも、玉泉重工はカラーフラインダストリ製と比べて装甲厚を重視するきらいがあるため、黒鋼相手では少々頼りないのだ。
だが、先の黒鋼を見てもわかる通り、ガトリング砲の火力ならば頑丈なマキナとて容易に貫ける。しかも、弾薬は敵が抱えてきてくれたこともあって、多少なりとも余裕がある。重量装備であることから機動力は低下してしまうが、相手の動ける範囲が限定される地下空間における待ち伏せで使うならば、非常に有効な手段と言えた。
何より背面ユニットに連結するガトリング砲は、右腕が使えないというハンディが関係ないため現時点の補強と言う意味では非常に心強い。
後でダマルに伝えて、明日にでも取りに行く算段をするべきだろう。そう思って僕がうんうん頷いて居れば、ようやく背後から小さな声が聞こえた。
「あれ、私……?」
「お、眠り姫のお目覚めかい」
荷物室から頭を出してみれば、身体を起こしたマオリィネが不思議そうに周囲を見回していた。
精神への急激な負荷で眠ったからか、どうやら少々混乱があったらしい。
「キョウイチ、ごめんなさい私、どれくらい眠って……皆は?」
「何、そう大した時間でもないよ。皆はダマル主導でテクニカ内部を物色中ってとこかな」
「そう……やっぱり、夢じゃないのね」
「夢なら僕もよかったんだけどね。右腕が駄目になったから」
額に手を当てるマオリィネに対し、僕は苦笑しながらタブレット端末を座席へ放り投げ、代わりに普段はアポロニアが管理している食器類からマグカップと小さな布袋を1枚と、最後に珈琲に似た何かの粉末を持ち出した。
この珈琲っぽいものセットは、ハイスラーから買ったものである。というのも、夜鳴鳥亭で飲んだ珈琲は、本来のそれとは異なる代替品に違いはないのだが、現代でこれ以上に似た飲料に出会えるとも思えず、個人的な嗜好品として楽しむこととしたのだ。
抽出の仕方も簡単であり、所謂コーヒーバッグと呼ばれる布袋に粉末を詰め込んで湯に浸すだけだ。インスタントコーヒーが無い現代でここまで簡単に飲めるとは思っておらず、元々それなりに珈琲を飲む機会が多かった自分としては非常に有難いアイテムとなっている。
そしてシャルトルズのウォータータンクには給湯機能があるため、直ぐに淹れられるというのも非常に大きな利点だった。
こちらの不審な動きを、マオリィネは前髪をかきあげながら一瞥すると、あら、と不思議そうな声を出す。
「珈琲? ハイスラーに感化されたの?」
「元々それなりに好きだったんだよ。無いと死ぬって程じゃないが、あるなら酒よりもいい」
「それってもしかして嫌味かしら? これでも、果実酒は地元の名産なのだけれど」
琥珀色の目にジッと睨まれ、いやいやと僕は手を振った。
「いや、僕ぁ体質的にアルコールが苦手でね。果実酒の方がいいかい?」
「ううん、珈琲、いただくわ。ありがと」
ドリップを終えたマグを手渡そうとすれば、彼女は寝台の上では行儀が悪いと降りてきて、僕に並ぶようにして座席に腰かけた。
何度飲んでも過去の珈琲とは異なる味なのだが、これはこれで悪くないものだと思う。しかしマオリィネは湯気の上がるそれに視線を落とすばかりで飲もうとはしなかった。
猫舌が原因かとも思ったが、どうにも口から零れた疑問が理由らしい。
「……ねぇキョウイチ、マキナって何なの?」
「何って、あれは兵器だ。カタパルトやバリスタと同じ、道具だよ」
「じゃあ誰かが操っているということ? さっきのあれも」
「うーん……正確には操っていた、かな。さっきの黒鋼は多分、あの地下へ許可なく侵入したもの全てを攻撃する命令を受けていたんだと思う。その命令者は、何百年も前に居なくなってるだろうけどね」
最後に下された命令が正確になんだったのかはわからないが、無人機に任せられる自立行動の種類などたかが知れている。それこそ指揮官機が居れば、多少は複雑な命令も下せるだろうが、そもそも人間が居ないのでは話にならない。
「じゃあ、オブシディアン・ナイトもそうなのかしら」
マオリィネは神妙な面持ちでそんなことを口にする。
何が言いたいのかわからずに僕は首を傾げたが、彼女の白く細い手が僅かに震えていたので、どうにも精神的な負荷はこの部分に起因するのではないかと当たりを付けた。
「さっきのマキナ……そっくりだったのよ」
同じ黒鋼なら見た目に大差はない、と言いかけて口を噤んだ。
これが敵に関する報告や感想であればその返答で問題ないだろうが、彼女はデブリーフィングをしているわけではない。誰かの心を察する能力が低い自覚はあるが、流石にそれくらいはわかる。
強く握りしめられるマグが震えて珈琲に波紋が立ち、マオリィネは空いた片手で自分の肩を掻き抱いた。
「オブシディアン・ナイトは王国を守る最強の盾。でも、それがもしさっきのマキナのように、私たちに牙を剥いたとしたら……そう思うと怖くなったのよ。オブシディアン・ナイトが受けている命令って何? テイムドメイルがテイマーに従う理由って何なの? 裏切らないっていう保証はある?」
何故か少しだけ高い声を震わせながら、それでもなお恐怖という感情を押し殺そうと彼女は薄く微笑んでいた。
現代の知識においてリビングメイルとは生きている存在だと思われている。だが、その内実は800年前に作られた道具に過ぎず、むしろ問題にすべきは使い方が理解できていない事の方だ。
マオリィネからしてみれば真剣な話だったのだろうが、中身を知る僕はブギーマンを恐れる子供のような振舞についつい笑ってしまった。
「なんだ、そんなことかい」
「そ、そんなことって何よ! そりゃ貴方のように化物みたいな力を持っていれば怖くないかもしれないけどね!」
「化物とはまた心外だなぁ……」
これでもただの兵士だと苦笑すれば、マオリィネは今はそうじゃないと琥珀色の目でこちらを睨み、直ぐにまた視線をマグへと落とした。
「私は怖い……さっきみたいにオブシディアン・ナイトと戦うようなことになったら絶対に殺されるわ。そう思ったら怖くて、でも騎士が背を向けるなんて無様な真似できるわけないじゃない。それこそ貴方にはわからないでしょうけれど」
僕は呆気に取られていた。
マオリィネは自らの発言内容を恥ずべきことだと思っているのだろうし、それが現代の騎士だと言われれば分からなくもない。
戦争に置いて死を美化することは珍しくない。それは民衆に厭戦ムードを起こさせないためのプロパガンダであり、兵士の士気を落とさないための方便でもある。時に作戦のミスを有耶無耶にし、時に戦死した将兵を英雄として奉ることで人心を掌握し、戦場と言う狂気を霞ませる。
前哨基地の戦いで、マオリィネは部隊を指揮していた。その手腕がどうであったかは別にして、少なくとも周辺を取り囲む将兵たちを鼓舞する姿は見事なものだったと思う。
特にマキナ姿である自分に対して恐れず言葉を交わしてきたことを思えば、司令官として恐れを制御できているものだと考えていたのだが。
「王家に忠誠を捧げて戦場に誉を求めるべき貴族が、騎士が、隊長が怖がりなんておかしいでしょう? けれど、私は戦争も化物も嫌い。何を言われても、死ぬのが逃げ出したいくらい怖いのよ!」
貴族という立場がプライドや建前を強制するのは疑いようもない。責任とはそういう物だ。
今までのマオリィネの振舞は実年齢以上にしっかりしていた。自らを正しく御して、自らの立場を全うしていると。だが、目の前で髪を振り乱しながら駄々をこねる彼女こそ自然体であるなら、シューニャ達と何が違うと言うのだろう。
そして何より、戦場における責任を持ちながらも死に対してハッキリ恐ろしいと口にできることに、僕は正直に感心したのだ。
「いいじゃないか、逃げたって」
驚いたように顔を上げるマオリィネの頭を僕は自然と撫でていた。
ダマルが彼女を外様だと言った理由がようやくわかった。なんせ僕自身が、無意識にそうするべきだと考えていたのだから。
屋根の上でマオリィネが相談してきたのはシューニャの言う通り、玉匣の長という立場の自分からどうにかして信頼を得たかったのだろう。対する僕はビジネスパートナーとして、秘密の共有という意味での信用を確認したに過ぎない。
他人を疑うことをやめられるほど楽天家になりたいとは思わないが、秘密を知られてなお疑い続けるような臆病さは、時に人を泣かせるものだといい加減理解しなければならないだろう。
「僕は職業軍人だった。生きるために戦場に身を置くことを自ら選んだ愚か者だ。マキナに乗っていたって人は簡単に死ぬし、殺されてしまえば強いも弱いもない。もちろん兵士だから覚悟はしていたけれど、それを恐れないなんてことは僕にもなかったよ」
怖がって突き放していたのは自分の方だ。ならば、マオリィネの恐れを笑うことなどできるはずもない。
だが、自分の言葉が余程意外だったのか、彼女は大きな釣り目を丸くしていた。
「キョウイチ、が……?」
「僕に騎士だの貴族だのっていう身分のしがらみはわからない。だが、死ぬのが怖いことなんて当り前のことだ。それが理由で騎士を辞めれば、殉死が誉れとか叫ぶ連中は蔑むだろうが、少なくとも僕はマオの決断を否定しないし――安っぽい言い方だけど、君の味方で居るよ」
マオリィネの琥珀色の目を見ながら告げたそれは、僕なりの殺し合いに対する心構えだった。
僕は国のため、家族のためと叫びながら死んでいく者を冒涜するつもりはない。だが、殉死を美化することで誰かにそれを強要する連中は別だ。往々にしてそういう連中は自らが矢面に立たされた時には掌を返す。自分自身は覚悟を持たないまま死を美化する無責任な連中のために、彼女が苦しむのは間違っている。
我ながら臭い台詞に苦笑が滲んだが、目の前のマオリィネは薄く頬を染めたかと思うと、パッと顔を背けてしまった。
「な、何よ急に……」
「いやその、何、と言われると困るんだが」
思ったままを口にしただけに過ぎない以上、説明もできないため僕は困って頬を掻いた。ついでに臭い台詞だったので、あまり掘り返さないでほしいとも思う。
落ち着かない様子でマオリィネはしばらく身体をそわそわさせていたが、やがて少し冷めてきた珈琲を一気に煽って小さく息をつくと、改めてこちらに向き直った。
「正直……適当にあしらわれると思ってた。でも、意外と優しいのね」
「そうかい?」
マオリィネはようやく少し安心してくれたのだろう。先ほどまでの怯えるようなこわばりが取れて、自然な表情になっていたように思う。
しかし、優しいという表現はどうだろう。シューニャ達にも時々言われているが、その度に自分では疑問視してしまう言葉だ。
誰かの心の機微を読み取るのが苦手な自分としては、言葉を聞いた通りに解釈して自分の意見を言っているに過ぎない。むしろ他人のことをしっかりと考えているという意味で、本当に優しいのはダマルではないかと思う。
おかげで僕は、腕を組んで唸っていたのだが、それをマオリィネは口に手を当てながら貴族らしい上品さでクスクスと笑った。
「まさか頭を撫でられるなんて思わなかったけど」
「それはすまない! その、悪い癖だな――なんというか、ついつい……」
「ね、もう1回撫でてくれない?」
彼女の言葉に、僕は相当の阿呆面を晒したことだろう。
このところ、ファティマやアポロニアはよく撫でろと言ってくる。シューニャ曰くは種族的にスキンシップを好むとも聞いていたので、そういうものと理解して触れ合っているが、まさか貴族であるマオリィネがそんなことを言いだすとは思いもよらなかったのだ。
「あ、あぁ構わないけど……不快じゃないか?」
「不快だったらこんなこと言うわけないでしょ。それにね、味方で居るって言ってくれたこと、結構嬉しかったんだから」
面と向かって返されると恥ずかしい言葉だと改めて思う。表現の種類が貧弱なことが原因だろうが、もう少し言い方がなかったかと問いたい。
とはいえ、嬉しいと言ってくれることは満更でもない自分も居て、我ながらなんとも現金なものだと苦笑した。
少し照れながらマオリィネの頭に手を伸ばせば、彼女は僅かに身を捩りながらも素直に撫でられるままになる。サラサラとした彼女の髪をしばらく撫でながら、僕はちらと表情を伺い見ていた。
すると彼女はこちらの視線に気づいてか少しだけ動揺したように瞳を揺らし、それでも琥珀色のそれで僕を見返してくる。ダマルが最初に呼称したクールビューティのクール部分は既にどこかへ霧散しているものの、美人であることに変わりはなく、僅かに心臓が跳ねた。
「……たとえオブシディアン・ナイトが敵になっても、貴方は私を守ってくれる?」
「マオ自身が敵にならない限りは、約束しよう」
「そ、そう……ありがと」
感謝されるというのは違う気もしたが、敢えて反論するようなこともしなかった。
彼女の居場所が玉匣の中で作れたかどうかはわからない。しかし、少なくともマオリィネの表情から影が消えたような気がするので、ダマルに呆れられるようなことはないだろう。
自然と見えた彼女の笑みに対して微笑み返せば、なんとなく心が通った気がして嬉しくなったのも、勘違いではないと思いたい。
「ごっしゅじーん、今帰った――ッス……よ?」
ただ、まさか後部ハッチがいきなり開け放たれるとは、思いもよらなかったが。
白い光を放つタブレット端末を前に僕は欠伸をかみ殺す。
首を回せばパキパキと関節が鳴り、伸びをすれば凝り固まっていたであろう血流が流れる感じがしてため息が出る。
ダマル率いる女性陣3人は、テクニカ内部で使える道具を捜索するローラー作戦に駆り出され、僕は1人マオリィネの話を聞くため玉匣に残されていた。そのついでで、御貴族様が目覚めるまで暇だろうからと、ダマルに在庫品の数量チェックを押し付けられたのである。
しかし、僕が作業の半分を終えてもなお、彼女はまだ寝台で眠っている。ファティマ曰く、自分達がフェアリーと対話している間も一切目を覚まさなかったらしい。
――まぁ、無理もないか。
今まで玉匣に居た現代人の皆は、何度も翡翠の戦闘を目撃しており、あまつさえミクスチャとの戦闘まで経験している。
だが、マオリィネは違う。いくら戦場に慣れた騎士でも、初めて目にする化物同士の戦いには、相当なショックを受けても何の不思議もないのだ。
そんな彼女に、自分が何をしてやれるだろう。そもそもダマルやシューニャが僕に何を求めて、この状況を作り出したのかさえも未だに曖昧である。
考えても仕方がないと思考を振り払い、僕は玉匣の荷物室に頭を突っ込みながら、また1つずつ使えそうな物を調べていく。そこでふと、ロガージョの巣で見つけたプラスチック爆薬が目についた。
「……そういえば、ガトリング砲のこと忘れてたな」
工具を持ち込んで装備すると言い放っていたダマルだが、今こそその時ではないのだろうか。それこそ自分と同じように骸骨が忘れていなければの話だが。
800年前の時点から主力武装である突撃銃は扱いやすかったものの、対マキナ戦闘ではパンチ力に欠けることが指摘されていた。しかも、玉泉重工はカラーフラインダストリ製と比べて装甲厚を重視するきらいがあるため、黒鋼相手では少々頼りないのだ。
だが、先の黒鋼を見てもわかる通り、ガトリング砲の火力ならば頑丈なマキナとて容易に貫ける。しかも、弾薬は敵が抱えてきてくれたこともあって、多少なりとも余裕がある。重量装備であることから機動力は低下してしまうが、相手の動ける範囲が限定される地下空間における待ち伏せで使うならば、非常に有効な手段と言えた。
何より背面ユニットに連結するガトリング砲は、右腕が使えないというハンディが関係ないため現時点の補強と言う意味では非常に心強い。
後でダマルに伝えて、明日にでも取りに行く算段をするべきだろう。そう思って僕がうんうん頷いて居れば、ようやく背後から小さな声が聞こえた。
「あれ、私……?」
「お、眠り姫のお目覚めかい」
荷物室から頭を出してみれば、身体を起こしたマオリィネが不思議そうに周囲を見回していた。
精神への急激な負荷で眠ったからか、どうやら少々混乱があったらしい。
「キョウイチ、ごめんなさい私、どれくらい眠って……皆は?」
「何、そう大した時間でもないよ。皆はダマル主導でテクニカ内部を物色中ってとこかな」
「そう……やっぱり、夢じゃないのね」
「夢なら僕もよかったんだけどね。右腕が駄目になったから」
額に手を当てるマオリィネに対し、僕は苦笑しながらタブレット端末を座席へ放り投げ、代わりに普段はアポロニアが管理している食器類からマグカップと小さな布袋を1枚と、最後に珈琲に似た何かの粉末を持ち出した。
この珈琲っぽいものセットは、ハイスラーから買ったものである。というのも、夜鳴鳥亭で飲んだ珈琲は、本来のそれとは異なる代替品に違いはないのだが、現代でこれ以上に似た飲料に出会えるとも思えず、個人的な嗜好品として楽しむこととしたのだ。
抽出の仕方も簡単であり、所謂コーヒーバッグと呼ばれる布袋に粉末を詰め込んで湯に浸すだけだ。インスタントコーヒーが無い現代でここまで簡単に飲めるとは思っておらず、元々それなりに珈琲を飲む機会が多かった自分としては非常に有難いアイテムとなっている。
そしてシャルトルズのウォータータンクには給湯機能があるため、直ぐに淹れられるというのも非常に大きな利点だった。
こちらの不審な動きを、マオリィネは前髪をかきあげながら一瞥すると、あら、と不思議そうな声を出す。
「珈琲? ハイスラーに感化されたの?」
「元々それなりに好きだったんだよ。無いと死ぬって程じゃないが、あるなら酒よりもいい」
「それってもしかして嫌味かしら? これでも、果実酒は地元の名産なのだけれど」
琥珀色の目にジッと睨まれ、いやいやと僕は手を振った。
「いや、僕ぁ体質的にアルコールが苦手でね。果実酒の方がいいかい?」
「ううん、珈琲、いただくわ。ありがと」
ドリップを終えたマグを手渡そうとすれば、彼女は寝台の上では行儀が悪いと降りてきて、僕に並ぶようにして座席に腰かけた。
何度飲んでも過去の珈琲とは異なる味なのだが、これはこれで悪くないものだと思う。しかしマオリィネは湯気の上がるそれに視線を落とすばかりで飲もうとはしなかった。
猫舌が原因かとも思ったが、どうにも口から零れた疑問が理由らしい。
「……ねぇキョウイチ、マキナって何なの?」
「何って、あれは兵器だ。カタパルトやバリスタと同じ、道具だよ」
「じゃあ誰かが操っているということ? さっきのあれも」
「うーん……正確には操っていた、かな。さっきの黒鋼は多分、あの地下へ許可なく侵入したもの全てを攻撃する命令を受けていたんだと思う。その命令者は、何百年も前に居なくなってるだろうけどね」
最後に下された命令が正確になんだったのかはわからないが、無人機に任せられる自立行動の種類などたかが知れている。それこそ指揮官機が居れば、多少は複雑な命令も下せるだろうが、そもそも人間が居ないのでは話にならない。
「じゃあ、オブシディアン・ナイトもそうなのかしら」
マオリィネは神妙な面持ちでそんなことを口にする。
何が言いたいのかわからずに僕は首を傾げたが、彼女の白く細い手が僅かに震えていたので、どうにも精神的な負荷はこの部分に起因するのではないかと当たりを付けた。
「さっきのマキナ……そっくりだったのよ」
同じ黒鋼なら見た目に大差はない、と言いかけて口を噤んだ。
これが敵に関する報告や感想であればその返答で問題ないだろうが、彼女はデブリーフィングをしているわけではない。誰かの心を察する能力が低い自覚はあるが、流石にそれくらいはわかる。
強く握りしめられるマグが震えて珈琲に波紋が立ち、マオリィネは空いた片手で自分の肩を掻き抱いた。
「オブシディアン・ナイトは王国を守る最強の盾。でも、それがもしさっきのマキナのように、私たちに牙を剥いたとしたら……そう思うと怖くなったのよ。オブシディアン・ナイトが受けている命令って何? テイムドメイルがテイマーに従う理由って何なの? 裏切らないっていう保証はある?」
何故か少しだけ高い声を震わせながら、それでもなお恐怖という感情を押し殺そうと彼女は薄く微笑んでいた。
現代の知識においてリビングメイルとは生きている存在だと思われている。だが、その内実は800年前に作られた道具に過ぎず、むしろ問題にすべきは使い方が理解できていない事の方だ。
マオリィネからしてみれば真剣な話だったのだろうが、中身を知る僕はブギーマンを恐れる子供のような振舞についつい笑ってしまった。
「なんだ、そんなことかい」
「そ、そんなことって何よ! そりゃ貴方のように化物みたいな力を持っていれば怖くないかもしれないけどね!」
「化物とはまた心外だなぁ……」
これでもただの兵士だと苦笑すれば、マオリィネは今はそうじゃないと琥珀色の目でこちらを睨み、直ぐにまた視線をマグへと落とした。
「私は怖い……さっきみたいにオブシディアン・ナイトと戦うようなことになったら絶対に殺されるわ。そう思ったら怖くて、でも騎士が背を向けるなんて無様な真似できるわけないじゃない。それこそ貴方にはわからないでしょうけれど」
僕は呆気に取られていた。
マオリィネは自らの発言内容を恥ずべきことだと思っているのだろうし、それが現代の騎士だと言われれば分からなくもない。
戦争に置いて死を美化することは珍しくない。それは民衆に厭戦ムードを起こさせないためのプロパガンダであり、兵士の士気を落とさないための方便でもある。時に作戦のミスを有耶無耶にし、時に戦死した将兵を英雄として奉ることで人心を掌握し、戦場と言う狂気を霞ませる。
前哨基地の戦いで、マオリィネは部隊を指揮していた。その手腕がどうであったかは別にして、少なくとも周辺を取り囲む将兵たちを鼓舞する姿は見事なものだったと思う。
特にマキナ姿である自分に対して恐れず言葉を交わしてきたことを思えば、司令官として恐れを制御できているものだと考えていたのだが。
「王家に忠誠を捧げて戦場に誉を求めるべき貴族が、騎士が、隊長が怖がりなんておかしいでしょう? けれど、私は戦争も化物も嫌い。何を言われても、死ぬのが逃げ出したいくらい怖いのよ!」
貴族という立場がプライドや建前を強制するのは疑いようもない。責任とはそういう物だ。
今までのマオリィネの振舞は実年齢以上にしっかりしていた。自らを正しく御して、自らの立場を全うしていると。だが、目の前で髪を振り乱しながら駄々をこねる彼女こそ自然体であるなら、シューニャ達と何が違うと言うのだろう。
そして何より、戦場における責任を持ちながらも死に対してハッキリ恐ろしいと口にできることに、僕は正直に感心したのだ。
「いいじゃないか、逃げたって」
驚いたように顔を上げるマオリィネの頭を僕は自然と撫でていた。
ダマルが彼女を外様だと言った理由がようやくわかった。なんせ僕自身が、無意識にそうするべきだと考えていたのだから。
屋根の上でマオリィネが相談してきたのはシューニャの言う通り、玉匣の長という立場の自分からどうにかして信頼を得たかったのだろう。対する僕はビジネスパートナーとして、秘密の共有という意味での信用を確認したに過ぎない。
他人を疑うことをやめられるほど楽天家になりたいとは思わないが、秘密を知られてなお疑い続けるような臆病さは、時に人を泣かせるものだといい加減理解しなければならないだろう。
「僕は職業軍人だった。生きるために戦場に身を置くことを自ら選んだ愚か者だ。マキナに乗っていたって人は簡単に死ぬし、殺されてしまえば強いも弱いもない。もちろん兵士だから覚悟はしていたけれど、それを恐れないなんてことは僕にもなかったよ」
怖がって突き放していたのは自分の方だ。ならば、マオリィネの恐れを笑うことなどできるはずもない。
だが、自分の言葉が余程意外だったのか、彼女は大きな釣り目を丸くしていた。
「キョウイチ、が……?」
「僕に騎士だの貴族だのっていう身分のしがらみはわからない。だが、死ぬのが怖いことなんて当り前のことだ。それが理由で騎士を辞めれば、殉死が誉れとか叫ぶ連中は蔑むだろうが、少なくとも僕はマオの決断を否定しないし――安っぽい言い方だけど、君の味方で居るよ」
マオリィネの琥珀色の目を見ながら告げたそれは、僕なりの殺し合いに対する心構えだった。
僕は国のため、家族のためと叫びながら死んでいく者を冒涜するつもりはない。だが、殉死を美化することで誰かにそれを強要する連中は別だ。往々にしてそういう連中は自らが矢面に立たされた時には掌を返す。自分自身は覚悟を持たないまま死を美化する無責任な連中のために、彼女が苦しむのは間違っている。
我ながら臭い台詞に苦笑が滲んだが、目の前のマオリィネは薄く頬を染めたかと思うと、パッと顔を背けてしまった。
「な、何よ急に……」
「いやその、何、と言われると困るんだが」
思ったままを口にしただけに過ぎない以上、説明もできないため僕は困って頬を掻いた。ついでに臭い台詞だったので、あまり掘り返さないでほしいとも思う。
落ち着かない様子でマオリィネはしばらく身体をそわそわさせていたが、やがて少し冷めてきた珈琲を一気に煽って小さく息をつくと、改めてこちらに向き直った。
「正直……適当にあしらわれると思ってた。でも、意外と優しいのね」
「そうかい?」
マオリィネはようやく少し安心してくれたのだろう。先ほどまでの怯えるようなこわばりが取れて、自然な表情になっていたように思う。
しかし、優しいという表現はどうだろう。シューニャ達にも時々言われているが、その度に自分では疑問視してしまう言葉だ。
誰かの心の機微を読み取るのが苦手な自分としては、言葉を聞いた通りに解釈して自分の意見を言っているに過ぎない。むしろ他人のことをしっかりと考えているという意味で、本当に優しいのはダマルではないかと思う。
おかげで僕は、腕を組んで唸っていたのだが、それをマオリィネは口に手を当てながら貴族らしい上品さでクスクスと笑った。
「まさか頭を撫でられるなんて思わなかったけど」
「それはすまない! その、悪い癖だな――なんというか、ついつい……」
「ね、もう1回撫でてくれない?」
彼女の言葉に、僕は相当の阿呆面を晒したことだろう。
このところ、ファティマやアポロニアはよく撫でろと言ってくる。シューニャ曰くは種族的にスキンシップを好むとも聞いていたので、そういうものと理解して触れ合っているが、まさか貴族であるマオリィネがそんなことを言いだすとは思いもよらなかったのだ。
「あ、あぁ構わないけど……不快じゃないか?」
「不快だったらこんなこと言うわけないでしょ。それにね、味方で居るって言ってくれたこと、結構嬉しかったんだから」
面と向かって返されると恥ずかしい言葉だと改めて思う。表現の種類が貧弱なことが原因だろうが、もう少し言い方がなかったかと問いたい。
とはいえ、嬉しいと言ってくれることは満更でもない自分も居て、我ながらなんとも現金なものだと苦笑した。
少し照れながらマオリィネの頭に手を伸ばせば、彼女は僅かに身を捩りながらも素直に撫でられるままになる。サラサラとした彼女の髪をしばらく撫でながら、僕はちらと表情を伺い見ていた。
すると彼女はこちらの視線に気づいてか少しだけ動揺したように瞳を揺らし、それでも琥珀色のそれで僕を見返してくる。ダマルが最初に呼称したクールビューティのクール部分は既にどこかへ霧散しているものの、美人であることに変わりはなく、僅かに心臓が跳ねた。
「……たとえオブシディアン・ナイトが敵になっても、貴方は私を守ってくれる?」
「マオ自身が敵にならない限りは、約束しよう」
「そ、そう……ありがと」
感謝されるというのは違う気もしたが、敢えて反論するようなこともしなかった。
彼女の居場所が玉匣の中で作れたかどうかはわからない。しかし、少なくともマオリィネの表情から影が消えたような気がするので、ダマルに呆れられるようなことはないだろう。
自然と見えた彼女の笑みに対して微笑み返せば、なんとなく心が通った気がして嬉しくなったのも、勘違いではないと思いたい。
「ごっしゅじーん、今帰った――ッス……よ?」
ただ、まさか後部ハッチがいきなり開け放たれるとは、思いもよらなかったが。
20
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
蒼海の碧血録
三笠 陣
歴史・時代
一九四二年六月、ミッドウェー海戦において日本海軍は赤城、加賀、蒼龍を失うという大敗を喫した。
そして、その二ヶ月後の八月、アメリカ軍海兵隊が南太平洋ガダルカナル島へと上陸し、日米の新たな死闘の幕が切って落とされた。
熾烈なるガダルカナル攻防戦に、ついに日本海軍はある決断を下す。
戦艦大和。
日本海軍最強の戦艦が今、ガダルカナルへと向けて出撃する。
だが、対するアメリカ海軍もまたガダルカナルの日本軍飛行場を破壊すべく、最新鋭戦艦を出撃させていた。
ここに、ついに日米最強戦艦同士による砲撃戦の火蓋が切られることとなる。
(本作は「小説家になろう」様にて連載中の「蒼海決戦」シリーズを加筆修正したものです。予め、ご承知おき下さい。)
※表紙画像は、筆者が呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム)にて撮影したものです。
寝て起きたら世界がおかしくなっていた
兎屋亀吉
ファンタジー
引きこもり気味で不健康な中年システムエンジニアの山田善次郎38歳独身はある日、寝て起きたら半年経っているという意味不明な状況に直面する。乙姫とヤった記憶も無ければ玉手箱も開けてもいないのに。すぐさまネットで情報収集を始める善次郎。するととんでもないことがわかった。なんと世界中にダンジョンが出現し、モンスターが溢れ出したというのだ。そして人類にはスキルという力が備わったと。変わってしまった世界で、強スキルを手に入れたおっさんが生きていく話。※この作品はカクヨムにも投稿しています。
幻想遊撃隊ブレイド・ダンサーズ
黒陽 光
SF
その日、1973年のある日。空から降りてきたのは神の祝福などではなく、終わりのない戦いをもたらす招かれざる来訪者だった。
現れた地球外の不明生命体、"幻魔"と名付けられた異形の怪異たちは地球上の六ヶ所へ巣を落着させ、幻基巣と呼ばれるそこから無尽蔵に湧き出て地球人類に対しての侵略行動を開始した。コミュニケーションを取ることすら叶わぬ異形を相手に、人類は嘗てない絶滅戦争へと否応なく突入していくこととなる。
そんな中、人類は全高8mの人型機動兵器、T.A.M.S(タムス)の開発に成功。遂に人類は幻魔と対等に渡り合えるようにはなったものの、しかし戦いは膠着状態に陥り。四十年あまりの長きに渡り続く戦いは、しかし未だにその終わりが見えないでいた。
――――これは、絶望に抗う少年少女たちの物語。多くの犠牲を払い、それでも生きて。いなくなってしまった愛しい者たちの遺した想いを道標とし、抗い続ける少年少女たちの物語だ。
表紙は頂き物です、ありがとうございます。
※カクヨムさんでも重複掲載始めました。
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる