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テクニカとの邂逅
第130話 神代の英知
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「おう妖精さんよ。言われた門を開けてきたんだが、これでいいのか?」
「……はい?」
白い部屋の中央でソファに桃色の長髪を垂らす物憂げな美女は、こちらのあまりにも早い再訪と、鎧の隙間から流れ出た骸骨の声に、微笑みを湛えたまま首をカックンと傾けた。ついでに彼女を囲んでいた護衛らしきクシュと、小間使いに見えるアステリオンの男も、その口――クシュは色鮮やかで巨大な嘴だったが――をぽっかりとあけて間抜け面を晒している。
「えぇっと……それはどこの?」
「おいおい、記憶障害はこっちの相棒だけで腹いっぱいだぜ? 依頼内容に決まってんだろうが。それとも何か、俺たちがこの施設のドアを開け閉めする度に、アンタへ報告しに来るような暇人にでも見えんのかよ?」
カッカッカと鎧の中身が笑う。その様子は小馬鹿にしたものなので、内容如何によっては引っ叩かれそうなものだが、フェアリーは混乱の方が余程大きかったらしい。言葉の真偽を確かめるべく、糸目をゆっくりと僕の方へ向けた。
「アマミさん?」
「ダマルの言うように、依頼されていたゲートの封印は解除しました。これは確かです」
「……わ、私が人生をかけて挑んできた封印を、1日も経たないで? 嘘ではないのですね?」
彼女の年齢はわからないが、相当長い間、封印に関する研究をしていたのではないかと思う。それがどこまで成果を出していたかはさておき、突如現れたどこの馬の骨とも知れない男が、半日も経たない内に突破したというのはそう簡単に信じられなかっただろう。
だが、適当な嘘をついたところで、結果は地下に降りればわかる単純なものである。それを僕が動じた様子もなく肯定すれば、フェアリーは花の咲いたように顔を綻ばせた。
「タルゴ、急ぎ皆に報せなさい! 忙しくなりますよ!」
タルゴと呼ばれたのは、彼女の隣で己が頭よりも巨大な嘴をぱっかりと開けていたキメラリア・クシュだ。ほぼ全身が羽毛に包まれていて、直立した様子と人の形をした手の他には人間らしさを感じられない彼、あるいは彼女は、未だに呆けていたらしい。フェアリーの言葉に慌てて嘴を閉じると、承知とやや吃りながら頭を下げた。ビビッドかつスマートな見た目に反して、酒焼けしたように掠れた低い声だったので、彼でいいのだろう。
だが、動き出そうとする大嘴を僕は手を挙げて制した。
「少々お待ちいただきたい」
フェアリーという絶対者の命令に対して口を挟む行為に、タルゴはぐるりと頭を右に倒す。その顔からは一切の感情が感じられないが、これはそもそも鳥の顔を見慣れていないので表情変化を理解できていないだけなのだろう。決してこのトロピカルフルーツのような鳥男が無表情なわけではない、と思う。
彼が静止したことを確認してから、僕は再びフェアリーへと視線を向ける。現段階ではテクニカ全体へ、これを歴史的椿事だと広めるには、あまりにも早すぎるのだから。
「興奮に水を差すようで申し訳ないのですが、封印を解除したことで浮上した別の問題があります。少々厄介な事態ですので、無用な混乱を避けるために人払いをお願いできますか?」
「――なるほど。タルゴ」
「ハッ」
太古の封印であることを彼女は理解していたのだろう。興奮した表情を一気に引き締めると、タルゴとアステリオンに目配せをし、彼らを部屋から離れさせた。
権力者でありながら護衛すら追い出したのは、心の奥にある興奮からだろうか。しかし、害意があるわけでもない僕は、フェアリーからの信用に小さく頭を下げた。
「感謝いたします。それで、我々はあの封印を解放したのですが――その奥よりリビングメイルが出現しました」
「野良が住み着いていた、と?」
彼女が僅かに顔を引き攣らせたのも無理はない。床下を開いてみたら怪獣が出てきましたと言われているようなものなのだから。
だがそうじゃないと、兜をガチャガチャ鳴らしながらダマルは首を振った。
「その辺ふらついて迷い込んだ訳じゃねぇよ。ありゃ太古の昔から今まで、愚直にこの地下を守り続けてきたガーディアンだ」
「守護者《ガーディアン》……? それと刃を交えたと言うことは、遺跡に敵だと判断されたと言うことですか」
「そうなります。そのリビングメイルは撃破しましたが、内部にあとどれだけの敵が待っているかわかりませんので、現在門には再封印を施してあります。ですから――」
「んっんー、ちょっとちょっと待ってくださいます?」
調査は簡単ではない、と続けようとしたところでを額を押さえたフェアリーに止められた。まるで苦い薬を飲み下そうとしているような、実に渋い表情をしている。権力者の顔芸に吹き出すわけにも行かず、僕はそっと視線をやや左へと逸らした。
「いきなり情報を増やさないでください。えっと……リビングメイルを撃破? 予期しない戦いでいきなり勝ったと?」
またそういう話か、と喉から溢れかけて抑えこむ。
ここ数か月で事情説明を繰り返しすぎてそろそろウンザリしてきた。勿論これはフェアリーの所為ではなく現代の常識そのものが原因なので、彼女に対してあからさまな態度をとるのは間違っている。
だが、説明をするのも億劫だという心中が顔に出ていたらしい。僕に代わってシューニャが口を開いた。
「報告は上がっているものと思うけれど、キョウイチは過去に群体ミクスチャを単身で撃破している。そういう規格外の存在と会話していると考えてもらいたい。証拠が必要ならば、あの封印の間にリビングメイルの亡骸が転がっている」
「それで英雄アマミですか。あのリロイストン支配人がボケ――耄碌《もうろく》されたわけではなかったと」
「いや、オブラートに包むの下手糞か」
顔は柔和な笑顔に固定したままで声色も変わらないまま、彼女の僅かに開かれた口から悪意が滲みだしていた。これにはすかさずダマルがツッコミを入れる。
フェアリーとグランマという権力者同士の間に何があったのか、少しも気にならないと言えば嘘になるが、地面に露出している地雷を進んで踏みに行こうとは思えず聞き流す。一方、フェアリーは悪びれた様子もなかったが。
「あらあらごめんなさい。つい本音が」
「包む気がねぇだけかよ。とんでもねぇ毒妖精もあったもんだ」
「お褒めに預かり光栄ですわ。話が逸れましたが、それで――内部にはまだその、守護者が居る、と?」
褒めてねぇよ、というダマルの呟きを咳払い1つでスルーしつつ、僕は話題の脱線復旧に努めた。
「現時点では不明です。その予想を立てるためにも、貴女がお持ちの情報を開示して頂きたい」
ピクリと、彼女の細い眉が跳ねる。
今までとはやや異なるその反応に、僕は1つ確信を深めた。
「随分不思議なことを仰るのですね。封印の内側を私が知っていると?」
「全て知っているとは思っていませんよ。ですが、貴女はあの場所に何かを求めている。それこそ人生を賭けるほどの価値を見出して――それは一体なんです?」
「あらまぁ、私としたことが失言でしたわ。うふふ」
言葉は柔和なままだったが、明らかに緊張が漂っている。
こちらの投げる条件が彼女の交渉ラインを超えない場合、つまり一切決裂した場合はどうなるかわからないという緊張感だ。腹の探り合いは苦手だが、これだけ条件が揃っていては明らかにこちらが有利だった。
僕は膝の上で指を組んだまま、できる限り表情に笑顔を貼り付ける。
「貴女は成功報酬に望む全てと仰った。これが虚偽でないならば、貴女にとっての価値は自らの持ちうる全てと交換しても手に入れたい物だということでしょう? そんなこと、中身にそれなりの確証がないと言えないじゃないですか」
「まさかこんなに簡単に開けられるとは思いませんでしたもの。人を試したと思えば不思議ではないでしょう?」
ふぅと物憂げに彼女はソファの肘置きに身体を傾げた。その豊満な肢体も相まった色っぽい構図に、ダマルがおっほほと気持ち悪い声を上げる。おかげで反対側からは翠玉の視線が鋭さを増したように思え、間に挟まれる僕の背には僅かに冷や汗が流れた。
「眼福って奴だなぁオイ。是非、酒でも飲みながら楽しいひと時を過ごしたいところだが……今はそういう話をする時間じゃねぇんでな」
あらつまらない、と流し目を送るフェアリーに対して、また今度な、と応じるものの、骸骨の口調は真剣そのものである。いつぞや、あのカニバル女を追いかけていた際と似ている気がして、仲間であるはずなのに僕の背にも僅かに冷や汗が伝う。
「アンタは失敗前提の依頼を投げかけて、残念ながら俺たちゃ予想に反してアレを開けちまった。そして、俺たちとの契約はあくまで扉を開けること。こっから先は契約の外だが――アンタはどうしてほしい?」
一応、必要な遺物の譲渡だけならば、自分たちが地下に踏み込む必要はない。ただ、これはただの建前だ。
スノウライト・テクニカはただの倉庫であり、いくら遺物が集められているとはいっても、ここで手に入れられる軍事物資は限られる。しかし、地下施設からは黒鋼が出現したこともあり、手つかずの警備隊格納庫などが存在する可能性は高い。
ここで引き返すようなブラフを打ってまで、骸骨がフェアリーから引き出したかったもの。それは地下施設内にある物資の権利放棄だっただろう。これにフェアリーは小さくため息をつき、だらりと身体をソファに横たえると、息をするように言い放った。
「私は全てを捧げてよいと申し上げたはずですわ。必要なら情報でもなんでも、ダマルさんには身体でも差し上げましょう。あの場所にあるはずの物はアマミさんの言う通り、私自身を含めた私の持ちうる全てよりも価値のあるもの、いえ、そもそも私が生きる意味と言うべきなのですから」
「生きる意味?」
部下たちが居る前では柔和な女性だったフェアリーだが、今はまるで精巧な硝子細工のようで儚げに見える。
彼女は達観したような表情から、僅かに頬を緩めて微笑を浮かべた。
「少し神代のお話をしましょう。御伽噺のような伝説のお話です」
白い指が天井を指し示す。
僕とダマルはその姿勢が理解できなかったが、シューニャがぽつりと、神代の英知、と呟いたため、何か意味のある姿勢だったらしい。
「人は空を飛べません。何時間も何日も水の中では過ごせはしない。民草は日照りや大風だけで家を失い飢えて死に、火炎に炙られれば全身鎧の騎士は焦げた肉となり、病が流行れば王族貴族も死神に連れて行かれてしまう。これは疑いようのない常識です」
当たり前だ。人には翼もエラもなく、簡単に命を落とす。天災、飢餓、戦争、疫病と並べられた言葉は現代においてミクスチャ以上に身近な脅威なのだろう。
「しかし、神代では違った。人は空も海も支配し、日照りも干ばつもない畑を持ち、嵐にも地揺れにも壊れない家に住み、灼熱の炎を跳ね返す鎧を着こみ、様々な病が持つ死の鎌を打ち払う力を持っていたのです。ウフフ、夢物語のようでしょう?」
「あぁ、いや……そう、ですね」
当時を知る者としては少々耳が痛い。
確かに現代の人々からすれば、空も海も、加えて宇宙空間にさえも人類の手は伸びていただろう。だが、支配できていたかと言われればそうでもないのだ。
全天候型ドーム農業、防災住宅や環境遮断天蓋、マキナ、先進的な医療、現代との違いは上げればキリがないが、どれも夢物語のように万能ではない。
おかげで歯切れの悪い返事をしたのだが、それがフェアリーにはただの困惑に見えたのだろう。彼女はクスリと小さく笑い、言葉を続ける。
「これは例え話ですが……そんな世界が求める更なる高みとはなんでしょう?」
そんなもの山ほどあっただろう、とは流石に言えなかった。
人間の飽くなき欲望は現状に満足しない。そうして技術は進化を続けてきて、現代とはかけ離れた状態でもなお先を求め続けていた。
だが、彼女の言う高みとはなんだ。途轍もない誇張表現による万能な世界で、人々が求めそうな物とは。
「不老不死」
その答えを口にしたのはシューニャだった。
「流石はブレインワーカーですね。その通り、神代の人々は禁忌の進化を求めたのですよ」
ちらとシューニャがこちらを見てくるが、僕としては首を横に振るしかない。
確かに人類、いや生物が抱える永遠の課題と言える。命として生まれ出でた以上は死が付きまとい、それを超克することは何千年と続いてきた人類史の中で、あらゆる方法を持って見出そうとされてきた。
800年前でも抗老化医学という物は発達していたが、それでも得られた寿命は120年そこらが限界とされている。しかも、自然の寿命に任せて死ねた方が幸せなのではないかとさえ感じるような方法をとって、ようやくのことでだ。
それでも、不老不死の研究について自分が無知なだけかもしれない、とダマルに視線を流したものの、残念ながら最も不老不死っぽいボディを持つ骸骨騎士にも、緩く頭を振られてしまった。
そんな僕らに対し、理解できる人の方がおかしいとフェアリーは笑う。
「あらゆる方法が試されていたと思います。ですが、神代の世界が今に残らないということは、彼らは失敗したのでしょう。しかし、実験は確かに行われていました」
「確信されているようですが、その実験とは何です?」
フェアリーが自分たちと同じ時間軸から生きていた、あるいは同じく保管されていたのでなければ断言などできはしない。
だからだろうか、彼女の返事は質問だった。
「皆さんは人間を作り出せると思いますか?」
「作り出す……?」
子を成すという意味ならば、それこそ生物として成立した遥か昔より続けられてきた行為だろう。しかし、それに対して作り出すと言う言葉を敢えて選択するとは思えず、僕が首を捻ればダマルが何かを思い出したように口走る。
「あーそりゃあれか? 半複製体とか、人造人間って奴」
「……本当にダマルさんは博識ですね。私としては貴方達のほうが不思議に思えてきました」
「聞きかじっただけさ」
疑わしい目を向けられたダマルが慌てて逃げる。
これに関しては僕としても不思議に感じる。どちらの名前に聞き覚えはなく、ダマルは一体どこに情報源を持っているのかがさっぱりわからない。ただのオカルトかもしれないが。
しかし、フェアリーの訝し気な視線に対し、髑髏が堪えようとせずにだんまりを貫くと、彼女もやがて小さなため息1つで諦めたらしい。
「まぁいいでしょう……どのようにしてかはわかりませんが、親子でない人間を作り出す技術が神代にはありました。それこそ不老不死実験の1つ、新たな器に魂魄を移す奇跡、と私は考えています」
800年前の自分ならば何を馬鹿なと笑い飛ばせた内容である。
しかし、生命保管装置なるマッドな機械に突っ込まれていた我が身が、魂を移動させるなどという行為を非現実的だと笑うには無理があった。それでも、あまりにも現実離れした話であることも否定はできないため、変わってダマルは大きく首を捻る。
「なんでアンタはそこまで確信してる? それこそ常識的な人間が聞けば、頭が狂ってるとしか言えねぇような迷信だぜ?」
「神代の話はその多くが創作と考えられている。証拠がなければ、それこそただの与太話」
シューニャは今まで、自分やダマルと関わる中で古代技術に触れている。それは現代において非常識でも、実際に動作することで技術を証明していた。だからこそ、言葉だけのフェアリーの話が疑わしかったのだろう。
だが、妖精はやはり悩まし気に息を吐いた。
「与太話ならば、私は苦しまなかったのでしょうね」
「苦しむ? 貴女が?」
僅かに開かれたオッドアイがこちらを捉える。
そこにあるのは悲しみで、彼女が儚げである理由そのものが見えた気がして息を呑んだ。
「同族が居ないというのは、想像する以上に寂しいものなのですよ。英雄様」
「……はい?」
白い部屋の中央でソファに桃色の長髪を垂らす物憂げな美女は、こちらのあまりにも早い再訪と、鎧の隙間から流れ出た骸骨の声に、微笑みを湛えたまま首をカックンと傾けた。ついでに彼女を囲んでいた護衛らしきクシュと、小間使いに見えるアステリオンの男も、その口――クシュは色鮮やかで巨大な嘴だったが――をぽっかりとあけて間抜け面を晒している。
「えぇっと……それはどこの?」
「おいおい、記憶障害はこっちの相棒だけで腹いっぱいだぜ? 依頼内容に決まってんだろうが。それとも何か、俺たちがこの施設のドアを開け閉めする度に、アンタへ報告しに来るような暇人にでも見えんのかよ?」
カッカッカと鎧の中身が笑う。その様子は小馬鹿にしたものなので、内容如何によっては引っ叩かれそうなものだが、フェアリーは混乱の方が余程大きかったらしい。言葉の真偽を確かめるべく、糸目をゆっくりと僕の方へ向けた。
「アマミさん?」
「ダマルの言うように、依頼されていたゲートの封印は解除しました。これは確かです」
「……わ、私が人生をかけて挑んできた封印を、1日も経たないで? 嘘ではないのですね?」
彼女の年齢はわからないが、相当長い間、封印に関する研究をしていたのではないかと思う。それがどこまで成果を出していたかはさておき、突如現れたどこの馬の骨とも知れない男が、半日も経たない内に突破したというのはそう簡単に信じられなかっただろう。
だが、適当な嘘をついたところで、結果は地下に降りればわかる単純なものである。それを僕が動じた様子もなく肯定すれば、フェアリーは花の咲いたように顔を綻ばせた。
「タルゴ、急ぎ皆に報せなさい! 忙しくなりますよ!」
タルゴと呼ばれたのは、彼女の隣で己が頭よりも巨大な嘴をぱっかりと開けていたキメラリア・クシュだ。ほぼ全身が羽毛に包まれていて、直立した様子と人の形をした手の他には人間らしさを感じられない彼、あるいは彼女は、未だに呆けていたらしい。フェアリーの言葉に慌てて嘴を閉じると、承知とやや吃りながら頭を下げた。ビビッドかつスマートな見た目に反して、酒焼けしたように掠れた低い声だったので、彼でいいのだろう。
だが、動き出そうとする大嘴を僕は手を挙げて制した。
「少々お待ちいただきたい」
フェアリーという絶対者の命令に対して口を挟む行為に、タルゴはぐるりと頭を右に倒す。その顔からは一切の感情が感じられないが、これはそもそも鳥の顔を見慣れていないので表情変化を理解できていないだけなのだろう。決してこのトロピカルフルーツのような鳥男が無表情なわけではない、と思う。
彼が静止したことを確認してから、僕は再びフェアリーへと視線を向ける。現段階ではテクニカ全体へ、これを歴史的椿事だと広めるには、あまりにも早すぎるのだから。
「興奮に水を差すようで申し訳ないのですが、封印を解除したことで浮上した別の問題があります。少々厄介な事態ですので、無用な混乱を避けるために人払いをお願いできますか?」
「――なるほど。タルゴ」
「ハッ」
太古の封印であることを彼女は理解していたのだろう。興奮した表情を一気に引き締めると、タルゴとアステリオンに目配せをし、彼らを部屋から離れさせた。
権力者でありながら護衛すら追い出したのは、心の奥にある興奮からだろうか。しかし、害意があるわけでもない僕は、フェアリーからの信用に小さく頭を下げた。
「感謝いたします。それで、我々はあの封印を解放したのですが――その奥よりリビングメイルが出現しました」
「野良が住み着いていた、と?」
彼女が僅かに顔を引き攣らせたのも無理はない。床下を開いてみたら怪獣が出てきましたと言われているようなものなのだから。
だがそうじゃないと、兜をガチャガチャ鳴らしながらダマルは首を振った。
「その辺ふらついて迷い込んだ訳じゃねぇよ。ありゃ太古の昔から今まで、愚直にこの地下を守り続けてきたガーディアンだ」
「守護者《ガーディアン》……? それと刃を交えたと言うことは、遺跡に敵だと判断されたと言うことですか」
「そうなります。そのリビングメイルは撃破しましたが、内部にあとどれだけの敵が待っているかわかりませんので、現在門には再封印を施してあります。ですから――」
「んっんー、ちょっとちょっと待ってくださいます?」
調査は簡単ではない、と続けようとしたところでを額を押さえたフェアリーに止められた。まるで苦い薬を飲み下そうとしているような、実に渋い表情をしている。権力者の顔芸に吹き出すわけにも行かず、僕はそっと視線をやや左へと逸らした。
「いきなり情報を増やさないでください。えっと……リビングメイルを撃破? 予期しない戦いでいきなり勝ったと?」
またそういう話か、と喉から溢れかけて抑えこむ。
ここ数か月で事情説明を繰り返しすぎてそろそろウンザリしてきた。勿論これはフェアリーの所為ではなく現代の常識そのものが原因なので、彼女に対してあからさまな態度をとるのは間違っている。
だが、説明をするのも億劫だという心中が顔に出ていたらしい。僕に代わってシューニャが口を開いた。
「報告は上がっているものと思うけれど、キョウイチは過去に群体ミクスチャを単身で撃破している。そういう規格外の存在と会話していると考えてもらいたい。証拠が必要ならば、あの封印の間にリビングメイルの亡骸が転がっている」
「それで英雄アマミですか。あのリロイストン支配人がボケ――耄碌《もうろく》されたわけではなかったと」
「いや、オブラートに包むの下手糞か」
顔は柔和な笑顔に固定したままで声色も変わらないまま、彼女の僅かに開かれた口から悪意が滲みだしていた。これにはすかさずダマルがツッコミを入れる。
フェアリーとグランマという権力者同士の間に何があったのか、少しも気にならないと言えば嘘になるが、地面に露出している地雷を進んで踏みに行こうとは思えず聞き流す。一方、フェアリーは悪びれた様子もなかったが。
「あらあらごめんなさい。つい本音が」
「包む気がねぇだけかよ。とんでもねぇ毒妖精もあったもんだ」
「お褒めに預かり光栄ですわ。話が逸れましたが、それで――内部にはまだその、守護者が居る、と?」
褒めてねぇよ、というダマルの呟きを咳払い1つでスルーしつつ、僕は話題の脱線復旧に努めた。
「現時点では不明です。その予想を立てるためにも、貴女がお持ちの情報を開示して頂きたい」
ピクリと、彼女の細い眉が跳ねる。
今までとはやや異なるその反応に、僕は1つ確信を深めた。
「随分不思議なことを仰るのですね。封印の内側を私が知っていると?」
「全て知っているとは思っていませんよ。ですが、貴女はあの場所に何かを求めている。それこそ人生を賭けるほどの価値を見出して――それは一体なんです?」
「あらまぁ、私としたことが失言でしたわ。うふふ」
言葉は柔和なままだったが、明らかに緊張が漂っている。
こちらの投げる条件が彼女の交渉ラインを超えない場合、つまり一切決裂した場合はどうなるかわからないという緊張感だ。腹の探り合いは苦手だが、これだけ条件が揃っていては明らかにこちらが有利だった。
僕は膝の上で指を組んだまま、できる限り表情に笑顔を貼り付ける。
「貴女は成功報酬に望む全てと仰った。これが虚偽でないならば、貴女にとっての価値は自らの持ちうる全てと交換しても手に入れたい物だということでしょう? そんなこと、中身にそれなりの確証がないと言えないじゃないですか」
「まさかこんなに簡単に開けられるとは思いませんでしたもの。人を試したと思えば不思議ではないでしょう?」
ふぅと物憂げに彼女はソファの肘置きに身体を傾げた。その豊満な肢体も相まった色っぽい構図に、ダマルがおっほほと気持ち悪い声を上げる。おかげで反対側からは翠玉の視線が鋭さを増したように思え、間に挟まれる僕の背には僅かに冷や汗が流れた。
「眼福って奴だなぁオイ。是非、酒でも飲みながら楽しいひと時を過ごしたいところだが……今はそういう話をする時間じゃねぇんでな」
あらつまらない、と流し目を送るフェアリーに対して、また今度な、と応じるものの、骸骨の口調は真剣そのものである。いつぞや、あのカニバル女を追いかけていた際と似ている気がして、仲間であるはずなのに僕の背にも僅かに冷や汗が伝う。
「アンタは失敗前提の依頼を投げかけて、残念ながら俺たちゃ予想に反してアレを開けちまった。そして、俺たちとの契約はあくまで扉を開けること。こっから先は契約の外だが――アンタはどうしてほしい?」
一応、必要な遺物の譲渡だけならば、自分たちが地下に踏み込む必要はない。ただ、これはただの建前だ。
スノウライト・テクニカはただの倉庫であり、いくら遺物が集められているとはいっても、ここで手に入れられる軍事物資は限られる。しかし、地下施設からは黒鋼が出現したこともあり、手つかずの警備隊格納庫などが存在する可能性は高い。
ここで引き返すようなブラフを打ってまで、骸骨がフェアリーから引き出したかったもの。それは地下施設内にある物資の権利放棄だっただろう。これにフェアリーは小さくため息をつき、だらりと身体をソファに横たえると、息をするように言い放った。
「私は全てを捧げてよいと申し上げたはずですわ。必要なら情報でもなんでも、ダマルさんには身体でも差し上げましょう。あの場所にあるはずの物はアマミさんの言う通り、私自身を含めた私の持ちうる全てよりも価値のあるもの、いえ、そもそも私が生きる意味と言うべきなのですから」
「生きる意味?」
部下たちが居る前では柔和な女性だったフェアリーだが、今はまるで精巧な硝子細工のようで儚げに見える。
彼女は達観したような表情から、僅かに頬を緩めて微笑を浮かべた。
「少し神代のお話をしましょう。御伽噺のような伝説のお話です」
白い指が天井を指し示す。
僕とダマルはその姿勢が理解できなかったが、シューニャがぽつりと、神代の英知、と呟いたため、何か意味のある姿勢だったらしい。
「人は空を飛べません。何時間も何日も水の中では過ごせはしない。民草は日照りや大風だけで家を失い飢えて死に、火炎に炙られれば全身鎧の騎士は焦げた肉となり、病が流行れば王族貴族も死神に連れて行かれてしまう。これは疑いようのない常識です」
当たり前だ。人には翼もエラもなく、簡単に命を落とす。天災、飢餓、戦争、疫病と並べられた言葉は現代においてミクスチャ以上に身近な脅威なのだろう。
「しかし、神代では違った。人は空も海も支配し、日照りも干ばつもない畑を持ち、嵐にも地揺れにも壊れない家に住み、灼熱の炎を跳ね返す鎧を着こみ、様々な病が持つ死の鎌を打ち払う力を持っていたのです。ウフフ、夢物語のようでしょう?」
「あぁ、いや……そう、ですね」
当時を知る者としては少々耳が痛い。
確かに現代の人々からすれば、空も海も、加えて宇宙空間にさえも人類の手は伸びていただろう。だが、支配できていたかと言われればそうでもないのだ。
全天候型ドーム農業、防災住宅や環境遮断天蓋、マキナ、先進的な医療、現代との違いは上げればキリがないが、どれも夢物語のように万能ではない。
おかげで歯切れの悪い返事をしたのだが、それがフェアリーにはただの困惑に見えたのだろう。彼女はクスリと小さく笑い、言葉を続ける。
「これは例え話ですが……そんな世界が求める更なる高みとはなんでしょう?」
そんなもの山ほどあっただろう、とは流石に言えなかった。
人間の飽くなき欲望は現状に満足しない。そうして技術は進化を続けてきて、現代とはかけ離れた状態でもなお先を求め続けていた。
だが、彼女の言う高みとはなんだ。途轍もない誇張表現による万能な世界で、人々が求めそうな物とは。
「不老不死」
その答えを口にしたのはシューニャだった。
「流石はブレインワーカーですね。その通り、神代の人々は禁忌の進化を求めたのですよ」
ちらとシューニャがこちらを見てくるが、僕としては首を横に振るしかない。
確かに人類、いや生物が抱える永遠の課題と言える。命として生まれ出でた以上は死が付きまとい、それを超克することは何千年と続いてきた人類史の中で、あらゆる方法を持って見出そうとされてきた。
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それでも、不老不死の研究について自分が無知なだけかもしれない、とダマルに視線を流したものの、残念ながら最も不老不死っぽいボディを持つ骸骨騎士にも、緩く頭を振られてしまった。
そんな僕らに対し、理解できる人の方がおかしいとフェアリーは笑う。
「あらゆる方法が試されていたと思います。ですが、神代の世界が今に残らないということは、彼らは失敗したのでしょう。しかし、実験は確かに行われていました」
「確信されているようですが、その実験とは何です?」
フェアリーが自分たちと同じ時間軸から生きていた、あるいは同じく保管されていたのでなければ断言などできはしない。
だからだろうか、彼女の返事は質問だった。
「皆さんは人間を作り出せると思いますか?」
「作り出す……?」
子を成すという意味ならば、それこそ生物として成立した遥か昔より続けられてきた行為だろう。しかし、それに対して作り出すと言う言葉を敢えて選択するとは思えず、僕が首を捻ればダマルが何かを思い出したように口走る。
「あーそりゃあれか? 半複製体とか、人造人間って奴」
「……本当にダマルさんは博識ですね。私としては貴方達のほうが不思議に思えてきました」
「聞きかじっただけさ」
疑わしい目を向けられたダマルが慌てて逃げる。
これに関しては僕としても不思議に感じる。どちらの名前に聞き覚えはなく、ダマルは一体どこに情報源を持っているのかがさっぱりわからない。ただのオカルトかもしれないが。
しかし、フェアリーの訝し気な視線に対し、髑髏が堪えようとせずにだんまりを貫くと、彼女もやがて小さなため息1つで諦めたらしい。
「まぁいいでしょう……どのようにしてかはわかりませんが、親子でない人間を作り出す技術が神代にはありました。それこそ不老不死実験の1つ、新たな器に魂魄を移す奇跡、と私は考えています」
800年前の自分ならば何を馬鹿なと笑い飛ばせた内容である。
しかし、生命保管装置なるマッドな機械に突っ込まれていた我が身が、魂を移動させるなどという行為を非現実的だと笑うには無理があった。それでも、あまりにも現実離れした話であることも否定はできないため、変わってダマルは大きく首を捻る。
「なんでアンタはそこまで確信してる? それこそ常識的な人間が聞けば、頭が狂ってるとしか言えねぇような迷信だぜ?」
「神代の話はその多くが創作と考えられている。証拠がなければ、それこそただの与太話」
シューニャは今まで、自分やダマルと関わる中で古代技術に触れている。それは現代において非常識でも、実際に動作することで技術を証明していた。だからこそ、言葉だけのフェアリーの話が疑わしかったのだろう。
だが、妖精はやはり悩まし気に息を吐いた。
「与太話ならば、私は苦しまなかったのでしょうね」
「苦しむ? 貴女が?」
僅かに開かれたオッドアイがこちらを捉える。
そこにあるのは悲しみで、彼女が儚げである理由そのものが見えた気がして息を呑んだ。
「同族が居ないというのは、想像する以上に寂しいものなのですよ。英雄様」
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気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
蒼海の碧血録
三笠 陣
歴史・時代
一九四二年六月、ミッドウェー海戦において日本海軍は赤城、加賀、蒼龍を失うという大敗を喫した。
そして、その二ヶ月後の八月、アメリカ軍海兵隊が南太平洋ガダルカナル島へと上陸し、日米の新たな死闘の幕が切って落とされた。
熾烈なるガダルカナル攻防戦に、ついに日本海軍はある決断を下す。
戦艦大和。
日本海軍最強の戦艦が今、ガダルカナルへと向けて出撃する。
だが、対するアメリカ海軍もまたガダルカナルの日本軍飛行場を破壊すべく、最新鋭戦艦を出撃させていた。
ここに、ついに日米最強戦艦同士による砲撃戦の火蓋が切られることとなる。
(本作は「小説家になろう」様にて連載中の「蒼海決戦」シリーズを加筆修正したものです。予め、ご承知おき下さい。)
※表紙画像は、筆者が呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム)にて撮影したものです。
寝て起きたら世界がおかしくなっていた
兎屋亀吉
ファンタジー
引きこもり気味で不健康な中年システムエンジニアの山田善次郎38歳独身はある日、寝て起きたら半年経っているという意味不明な状況に直面する。乙姫とヤった記憶も無ければ玉手箱も開けてもいないのに。すぐさまネットで情報収集を始める善次郎。するととんでもないことがわかった。なんと世界中にダンジョンが出現し、モンスターが溢れ出したというのだ。そして人類にはスキルという力が備わったと。変わってしまった世界で、強スキルを手に入れたおっさんが生きていく話。※この作品はカクヨムにも投稿しています。
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
幻想遊撃隊ブレイド・ダンサーズ
黒陽 光
SF
その日、1973年のある日。空から降りてきたのは神の祝福などではなく、終わりのない戦いをもたらす招かれざる来訪者だった。
現れた地球外の不明生命体、"幻魔"と名付けられた異形の怪異たちは地球上の六ヶ所へ巣を落着させ、幻基巣と呼ばれるそこから無尽蔵に湧き出て地球人類に対しての侵略行動を開始した。コミュニケーションを取ることすら叶わぬ異形を相手に、人類は嘗てない絶滅戦争へと否応なく突入していくこととなる。
そんな中、人類は全高8mの人型機動兵器、T.A.M.S(タムス)の開発に成功。遂に人類は幻魔と対等に渡り合えるようにはなったものの、しかし戦いは膠着状態に陥り。四十年あまりの長きに渡り続く戦いは、しかし未だにその終わりが見えないでいた。
――――これは、絶望に抗う少年少女たちの物語。多くの犠牲を払い、それでも生きて。いなくなってしまった愛しい者たちの遺した想いを道標とし、抗い続ける少年少女たちの物語だ。
表紙は頂き物です、ありがとうございます。
※カクヨムさんでも重複掲載始めました。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
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【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
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異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
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異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
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