流浪の魔導師

麺見

文字の大きさ
上 下
165 / 296
3章 裏切りのジョーカー編 第3部 傭兵の王

165. 貴族の悲願

しおりを挟む
「メルク! 百を率いて周辺の街に触れ回ってこい! ジャラットで合流だ!」

「はっ!」

「ダレン! 三百預ける! 南のリバーツを押さえろ! あそこは中継地として使える!」

「はっ!」

 どんよりとした曇り空。いつ降り出してもおかしくはない空模様だが、一向に雨が降る気配はない。いっそザザァーと降ってくれれば、雨音に紛れる事でかえって安全に行軍出来るというものだ。
 一路西を目指し突き進む三千の軍。その先頭で馬にまたがるのはジノン王国北部、ティモン領を治めるプラウル・フィンテック辺境伯だ。彼はそのかたわらに馬を並べる恰幅かっぷくの良い白髪の老将に声を掛ける。

「父上! この分では日暮れにはジャラット攻めに入れそうですな!」

「うむ。ジャラットを制圧せばあとは防衛網を構築するのみ。王都からの援軍も迎え入れられようぞ」

 老将はどっしりと構えながらゆったりと馬を操る。手馴れたその様子からは、彼が歴戦の将である事がうかがい知れる。リディック・フィンテック。ティモン領前当主であり、プラウルの父である。リディックは軽く後ろを振り返りながら呟いた。

「しかし……あれ程分厚かった国境の警備がこれ程までに薄くなっていようとは……ずいぶんと舐められたものだ」



 ◇◇◇


 その日の深夜、プラウル率いる四千の軍がリザーブル国境を越えた。彼らは瞬く間に周辺に点在していた砦群を制圧する。
 そしてその翌日の夜、プラウル軍は攻略目標の一つである国境近くの街トリバルに到着。国境を睨む城塞都市であるトリバルは、本来強固な防衛力を有しているはずだった。しかしいざ攻略を開始すると、何とわずか二時間という早さでトリバルは陥落する。トリバルのスピード攻略の理由は後述こうじゅつするとして、プラウル軍はその後明け方まで束の間の休息を取ると、一千の歩兵部隊を守備の為にトリバルに残し、残る三千で再び進軍を開始。
 そしてトリバルを出発して二日。今遠征のもう一つの目標、この地方最大の商業都市ジャラットまであとわずかという距離まで来ていた。ジャラットにはこの地方を治める執政官がいる。即ちすなわジャラットを押さえれば、この地方を制したと言っても過言ではない。


 ◇◇◇


「国境だけではありませぬ。追手もなく各所で迎え撃つ敵軍もまばら……やはりこの地方からごっそりと兵が抜かれている様子。我が事ながら恥ずかしい限りです、これ程までになっていながら全く気付かぬとは……」

 奥歯を噛み締めながらプラウルは己を恥じた。そんなプラウルにリディックは軽く笑いながら声を掛ける。

「別にお主だけの落ち度ではない。運良くではあるがそれに気付き、こうして対応が出来ている。今後は締めて掛からねばならんがな、一先ひとまずはあまり気にするな。しかし……トリバルのあの様子を考えると、未だこの地方には我らフィンテック家の統治を望む者が多く存在すると見える。ともすればジャラットも……まぁ過度の期待は出来ぬがな」

「彼らがそう望むのも無理からぬ事。敵地の住民として明確とも言える様な差別を受け続けてきた彼らです、リザーブルに対する忠義などありますまい」

 プラウルらが侵攻しているここ、リザーブル王国東の辺境アイジス地方は、かつて西ライディアルと呼ばれていた地。かつて、とは四十年以上前。まだこの地方がフィンテック家が治めるティモン領の一部だった頃だ


 ◇◇◇


 風が吹くたび波打つ様に揺れるその様子は、さながら黄金色に輝く海の様だ。見渡す限り広がる広大な小麦畑、小首をかしげる様に右に左に揺れている小麦達の穂先には、鈴なりの金の粒がひしめいている。彼ら農民にしてみればまさに宝、なのだろう。
 その年、西ライディアル地方は豊作に沸いていた。この地方で獲れる小麦は良質で、ティモン領内のみならずジノン国内にも広く流通している。多くの領民が畑作業に精を出していたまさにその時、突如リザーブル軍が越境、西ライディアル地方へ侵攻した。予期せぬリザーブル軍の動きにフィンテック家とジノン国王は大いに驚き、つ大いにいきどおった。
 実はその前年、両国はそれぞれの軍、並びに国境警備隊の過剰な国境への接近を禁止する旨の約定を交わしていた。切っ掛けはその更に前年のとある事件。偶発的な事故により両国の国境警備隊が衝突、交戦状態となり双方に犠牲者が出た、という事件に起因する。当時は今程両国の関係がこじれてはいなかった。ゆえに両国は今後の為に、双方の責任においてこの約定を守り行こうと調印したばかりだったのだ。しかしリザーブルにはその気はなかった様だ。

 騙し討ちとも言えるリザーブル軍の侵攻。西ライディアルの街や村はまるで成す術なく制圧された。その後この地はアイジスと変名されリザーブル王国の直轄地として運営される事が決まった。しかしそれがこの地の旧ティモン領民達を苦しめる事となる。

 リザーブル国王に指名され派遣された執政官は手始めに、あらゆる難癖を付け旧ティモン領民の財産のことごとくを没収した。更に移民させた自国民達をあからさまに優遇し、旧ティモン領民をていの良い労働力として扱う様指示を出した。つまりは明確な差別、支配する者とされる者の図式を作り上げたのだ。何故なぜそんな政策を行ったのか、そこにはリザーブル国王の野心が絡んでいた。彼は隣国のことごとくを制圧し支配下に収め、この地方に一大帝国を築き上げたいという大それた野心を持っていたのだ。全てを力でねじ伏せる。優秀で精強なるリザーブル国民こそが唯一それを実行出来るのだという、自尊心にまみれた的外れの歪んだ思想。その第一歩をここアイジスから始めようというのだ。当初は戸惑いを隠せなかった移民者達も、時間の経過と共に徐々にそれを受け入れ始める。奴らは敵国のたみ、気を遣ってやる必要などない、と。


 ◇◇◇


 これこそがトリバルがスピード陥落した要因だった。夜半に突然の騒乱、街が攻撃を受けているとの情報が街中を駆け巡った。そして攻撃を仕掛けているのがフィンテック家の軍だと知ると、トリバルの旧ティモン領民達は歓喜の雄叫びを上げる。実に四十年もの長きに渡りしいたげげられてきた彼らは、なかば諦めながらもそれでも解放者が現れるのをただひたすらに待っていた。搾取さくしゅされる為だけに存在している自分達の事を解放してくれる、そんな存在を。絶対に表に出す事は出来ないリザーブル王国に対する激しい恨みや憎しみ。彼らは苦々しいそれらの感情を、屈辱にまみれた身の内に秘めたまま煌々こうこうと燃やし続けてきたのだ。そしてその業火ごうかは子や孫の代にまで引き継がれ、今尚消える事なく燃え盛っている。

 そんな彼らの取るべき行動は一つしかない。反乱だ。街の至る所で旧ティモン領民達は次々と蜂起ほうきする。彼らは城門を襲撃し巨大な鉄門を開け放つと、プラウル達フィンテック軍を街の中へと引き入れた。同時にこの城塞都市の城主が住まうトリバル城を包囲。プラウルらが城へ辿り着くと城主は早々に降伏、速やかにトリバル城は開城したのだ。

「ユーノルゥ! そなたはどう考える! そなたはわしらより余程多くの戦場を、いくさを知っておる。ジョーカーの所見しょけんを聞かせよ!」

 リディックは斜め後ろを向き、彼らのあとに馬を操るジョーカー諜報部コーディネーター、ユーノルに問い掛ける。ユーノルはゼルから今作戦の取次とりつぎ役としてティモン領に滞在する事を指示され、そのままこの遠征にも参加していた。リディックに問われたユーノルは静かに答える。

「はい、リディック様のお考え通りかと。恨みやつらみ、かような負の感情はそう簡単には消えぬもの。リザーブルの行ってきた圧政は糾弾すべき非道、それにより長く苦しんできた彼らティモン領民・・・・・・の事を思うと言葉になりませぬ。しかし何より重要なのは、フィンテック家の方々が代々この地にて善政を敷いてきたという事実。トリバルの住民達は選んだのです、リザーブルではなく皆様方を」

「ぬふふ、ぬははは、ぬぁっはっはぁ! 分かっておる、分かっておるではないか、ユーノルよ!」

 ユーノルの返答に込み上げてくる笑いを抑えられないリディック。やれやれ、といった表情のプラウル。

「は、恐縮に。それにしてもリディック様のご判断の早さには大変驚きました。よもや私がゼルからの書簡をお届けに上がったその日の内に、王都へ向けて出発なさるとは思いませんでした。先ずは我々が持ち込んだ情報の精査を行うと思っておりましたゆえ……」

「うむ。これはリザーブルのアルマド侵攻の間隙かんげきを突く作戦、リザーブルが動き出す前に全てを万端整えねばならん。ならば陛下にいくさ許諾きょだくを頂くという、一番手間と時間の掛かる仕事を先に潰しておくのが道理であろう。どう考えても王都迄の往復が一番時間が掛かるからな」

 遠征のおよそ一ヶ月前。ティモン領の領都メビウシールを訪れたユーノルは昼過ぎにプラウルの屋敷を訪問、ゼルがしたためたプラウルとリディック宛の書簡を二人に手渡した。プラウルと共に書簡を確認し、その内容を把握したリディックはすぐさま王都行きを決断する。そして使用人らに急ぎ準備をさせ、その日の夕刻前には供を連れてメビウシールを発った。即決即断である。

「情報の裏付けや戦の準備などはわしが王都へ行っている間に行えば良い。西ライディアルの奪還はわしらフィンテック家の悲願だからな。父上……先々代当主、つまりプラウルのじい様も、息を引き取る寸前まで西ライディアルの事を気に掛けとった。敵の侵攻を許し、子にも等しき領地を奪われ、ついぞ奪い返す事叶わぬまま逝ってしまわれた。その無念、如何いかばかりか……わしも二度程兵を挙げたが、力及ばず撤退を余儀なくされ……とにかく、時間を無駄にする事なく準備を進める必要があった。リザーブルの動きに合わせられず間に合いませんでした、などと……笑い話にもならん」

 過去の屈辱を思い出したリディック。先程までのにこやかな表情が消えた。そんなリディックを思いやってか、プラウルはさりげなく話題を変える。

「南のローラル伯爵にお声を掛けられたのはさすがですな。北のティモン、南のレンドース、二方向から同時侵攻を受けては、さしものリザーブルも混乱するでしょう」

 リディックは王都ブレザリーへ向かう途中、急遽その進路を南へ変えた。南にはレンドース領を治めるミグ・ローラル伯爵がいる。リディックはリスク軽減の為にティモン領単独の作戦ではなく、レンドース領も巻き込んだ大規模作戦の実行を考えたのだ。屋敷を訪れたリディックの話を聞いたローラル伯爵は、その場で作戦参加を確約。更にはリディックに同行し王都にてジノン国王との謁見を果たしている。

「うむ。今頃ローラル殿も南で暴れておろう。お、そうであった。ユーノルよ、その事でお主に詫びねばならん。わしの思い付きでレンドースを巻き込んだ。その為にお主には要らぬ負担を掛けてしまったな。済まなかった、ユーノルよ」

 予期せぬリディックの謝罪に、ユーノルは少しばかり驚き戸惑った。しかしすぐにその表情を戻す。

「何を仰いますか、負担など何もありませぬ。私はただレンドース領の担当取次とりつぎを寄越してくれと、始まりの家へ連絡をしたまで。何もしてはおりませぬ故、詫びなど無用に……」

「ぬぁっはっはぁ! ユーノルよ、お主は控え目であるな。だがそこが好感が持てる所だ。四十年前の戦で、レンドースはわしら以上に大きくリザーブルに領土を削り取られておる。声を掛ければ乗ってきよると思うてな。さすればわしらはより安全に進軍出来よう」

「さすがは長く他国と国境を接する辺境を守ってきたお方です、感服致しました」

 若干あからさまか、とも思えるユーノルの世辞。ご満悦の様子のリディック。そんな二人のやり取りをぼんやりと聞いていたプラウル。彼の頭の中には気になっていた一つの疑問が浮かんでいた。

「しかし、あれだけ強く外征を禁じられていた陛下が、こうも簡単に戦を容認されたのが未だに不思議な心地です。父上、一体何とご説得されたのですか?」

「なぁに、簡単な話よ。お主も存じておろうが、陛下が戦を禁じておったのは費用対効果が悪いという理由だ。戦はとかく金が掛かる。軍備品に糧抹りょうまつ、犠牲になった兵の遺族への補償諸々もろもろ。仮に戦に勝ち領土を奪ったとしてもだ、その土地から必要な分の利益が出る迄一体どれ程時が掛かるのか……だったらそんなリスクを負うよりも、国内を整えた方がはるかに楽だ。上手い事やれば儲かるというのは、わしらがティモン領の発展という形で見せた訳だしな。だが目の前にすぐに奪い取れる土地があるというなら話は変わってくる。金も手間も掛からずリスクも小さい、ならば攻めるだろう? それがかつて奪われた土地ならば尚更なおさらだ。陛下もな、兵を挙げるのがわしらだから許可するのだと、そう仰せになってな」

「それは結構ですが、しかし戦を容認頂くにも根拠というものが必要でしょう。父上は何の用意もなく出立しゅったつされた、故に不可思議だと。陛下とどんなお話をされたのです?」

 真剣な顔で問い掛けるプラウル。リディックは呆れた様子で答えた。

「どんなも何も、ユーノルから受け取った書簡があろう。それを書き写し陛下にお見せした」



「「 はぁ!? 」」



 思わず声を上げるプラウルとユーノル。「何だぁ?」とポカンとするリディック。

「ちょっと待って下さい……では、何の精査もしていない情報をお伝えしたと……?」

 驚いた様子のプラウル。「そうだが?」とリディックは涼しい顔だ。するとユーノルも「いや……それはさすがに……」と困惑する。間違った情報は渡してはいない。しかしだからと言ってこれはどうだ? 他人から貰った情報を何の確認もしないまま、しかもその情報を元に立てられた作戦を事もあろうか国王陛下に具申ぐしんしたのだ。それがどれだけ危険な行為か、よもやリディックは理解していないとでも言うのか? しかしリディックは益々呆れた様子でユーノルを問い詰める。

「何を困る事がある? 何だ? ゼルはわしらをたぶらかそうとでもしとったのか?」

「い、いえ、滅相めっそうもございません!」

 慌てて否定するユーノル。しかしあまりに無防備であまりに大胆なリディックの行動に合点がゆかない。だがリディックにはとある確信があった。

「これはゼルがこさえた策であろう? ならば何の問題もない。昔、賊狩りの依頼をジョーカーに出した。そしたらあやつが来おった。適当で口も軽く、こやつどうしてくれようか、などと考えておったのだが、いざ蓋を開けてみれば実に手際の良い仕事振りだった。中々どうして、わしは感心したもんだ。腕が良い、頭も回れば気も回せる。あやつが段取った作戦なら信頼出来るというもんだ。仮に間違った情報が混じっとったとしてもだ、その時は派兵を見送れば良いだけの話。我らの見積もりが甘かったと、陛下に謝罪申し上げればそれで終いだ。そんな事で叱責なさる様な器の小さきお方でもないしな」

(は、はは……人をたらし込むのが上手いと思ってはいたが、これ程とは……)

 ユーノルはなかば呆れながらも、しかし笑うしかなかった。一見無謀なリディックの行動の裏には、ゼルに対する信頼があったのだ。出会った人の心を虜にする不思議な魅力。それはエクスウェルにも通ずる所がある。ただしエクスウェルのそれは言わば陰。情を挟まぬ合理性を求め、時に非道も行うがその分大きな成果を上げる陰の魅力。対してゼルは陽だ。人を信頼し、人に信頼される。多少の無駄があったとしても、それも含めて丸ごと飲み込む。何より人との繋がりを重んじている陽の魅力。ゼルの側にいると、力を貸してやりたいと何故なぜだかそう思ってしまうのだ。様々な者達がゼルを担ぎ上げようとする気持ちも良く分かる。そして何の事はない、リディックもまたゼルに丸ごと飲み込まれた一人だったのだ。

「おう、見えてきおったぞ! ジャラットだ!」

 声を上げたリディックの視線の先には、目標である商業都市ジャラットの姿。が、何やら様子がおかしい。

「ん? 何だぁ?」と目を細め街の様子をうかがうリディック。街のあちこちから煙が立ち上っている。「あれは……煙ですな……火事か?」とプラウルが呟くとユーノルはすかさず答えた。

「ひょっとしたら、トリバルと同じ事が起きているのやも……」

「反乱か?」と聞き返すプラウルに無言で頷くユーノル。「むぅ……わしらの行軍より早く、わしらが来たという情報が伝わった……なくはないな」とリディックは唸りながら呟いた。

「これも皆様方のご威光によるものです。この地のあるじの帰還を祝っているのですよ」

「ぬぁっはっはぁ!」

 ユーノルの言葉に大声で笑うリディック。その顔はすでに戦の最中さなかに見せる顔になっている。

「ユーノルよ! お主は本当にわしの心をくすぐるのが上手いな! そんな言われ方をしたら……たぎるではないかぁ!!」

 そう叫ぶとリディックは腰の剣を抜く。そしてその剣を頭上に高く振りかざすと「一揉みで終わらせる! 行くぞぉぉぉ!!」と号令一下いっか、自身直属の部隊五百を引き連れ馬の脚を速めた。

「父上!! まだ街まで大分距離が……父上ぇ!!」

 叫ぶプラウルには目もくれず、リディック隊はジャラットへ向け突撃して行く。

「やれやれ……行ってしまわれた」

 ぽつりと呟くプラウルに笑いながらユーノルは声を掛ける。

「頼もしい限りではありませぬか」

「勘弁してくれ……もう少しお歳を考えてもらいたいものだ。大体この遠征に参加するのだって直近まで知らなかったのだぞ? 張り切っておられるのは結構だが、何かあっては一大事だ」

 ため息混じりのプラウル。ユーノルは苦笑いするしかない。するとプラウルは思い出したかの様にユーノルに謝罪した。

「おぉ、そうだ。ユーノル殿、此度こたびはまことに済まなかったな。貴殿は取次役としてティモンにおっただけだというのに、遠征にまで付き合わせてしまって……父上は余程貴殿を気に入られた様だ」

 当初ユーノルはティモンに残る予定だった。戦後のフォローを始まりの家と連携して行う必要があった為だ。しかし「ユーノルよ、付き合え」とのリディックの一言で遠征への参加が決まったのだ。

「いえいえ、そこまで信を置いて下さっているのです、光栄にございます。それにゼルからは、プラウル様のお役に立つのなら何でもしてこいと、そう指示されておりますので」

「しかしなぁ、嫌な事は断っても良いのだぞ? 聞けば夜な夜な父上に連れ出され、あちこちの酒場を巡っているとか。無理に付き合う事はないぞ」

「とんでもございません、非常に興味深いお話を色々と伺っておりますれば。楽しくご一緒させて頂いております」

 そう語るユーノルの顔が一瞬だけ変わったのをプラウルは見逃さなかった。ユーノルが一瞬見せたその顔は、間違いなく諜報員の顔だったのだ。

「やれやれ、やはり父上にはもう少し自重してもらう様に申し伝えねばならんな。このまま放っておけば、ジノンの情報を丸ごとジョーカーに握られかねん」

「ご安心を。情報の取り扱いに関しては充分に留意しております故……」

「フハハハハ! さすがゼルが寄越した取次役だ、一筋縄ではいかんな!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった

さくらはい
ファンタジー
 主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ―― 【不定期更新】 1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。 性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。 良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

処理中です...