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プロローグ
3. 魔法石
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ガチャ、とドアが開く。レイシィが帰って来た。
「すまない、コウ。待たせたな」
そう言ってバンッ、と足で乱暴にドアを閉める。両手にはそれぞれ、焦げて煤だらけのランタンを持っている。レイシィはそのランタンをテーブルの上に置くと、
「オークが持っていたランタンに間違いないな?」
と聞いてきた。
「はい、そうです」
色こそ真っ黒だが、形はあの豚が持っていたものと同じだと思う。
「よし」
と言うとレイシィはガチャガチャとさせながら、ランタンの上のカサの部分を開けた。そして中に手を入れると、白っぽい透明の石を取り出した。ジュースの缶くらいの大きさか、表面は多面カットされておりキラキラと輝いている。
レイシィは両手でその石を持ち、くるくると回転させながら、何かを確認しているようだった。
「普通の魔法石……か……?」
と呟いたレイシィの手がピタリと止まった。グッと顔を近づけ石を凝視している。
「なんだ、これ……圧縮、解放、空間……転移……? バカな!」
そう言うと、しばし呆然と空を見つめる。そして深いため息と共に椅子の背にもたれ、右手で目頭を押さえた。
「そうか、君は巻き込まれたんだな……」
…………
俺は黙っていた。
巻き込まれた、というのがどういう意味なのかすでに想像がついている。しかしこのまま話を続けると、その想像が現実のことだと確定してしまう気がして嫌だった。
しばしの沈黙のあとトンッ、とレイシィは両手をテーブルに置いて俺を見た。
「どうだろう、今日はこの辺にしないか?」
「え?」
「まだまだ話したいこと、疑問も沢山あるだろう、私もだ。でも夜ももう遅い。階段を上ってすぐの部屋が客間になっている。今日はこのまま泊まっていってくれ。私も、少し頭を整理したいし……あ、もちろん君さえよければ、だが……」
いいも悪いも、俺には行く当てなんかない。
「それじゃあ、お言葉に甘えて……」
「遠慮はいらないぞ。ああ、でも申し訳ないが、さすがに男物の着替えまではないんだが……」
「いえ、大丈夫です、お構いなく。じゃあ、おやすみなさい」
そう言って、階段を上る。
「ああ、ゆっくり休んでくれ」
二階に上がってすぐの部屋を開ける。ここが客間。あまり使われていないのだろう、少し埃っぽい気がする。
窓から月明かりが射し込んでいて、部屋はぼんやりと明るい。俺はそのままベッドにもぐり込んだ。が、なかなか眠れない。
そりゃ、そうだろう。
とても信じられないようなことが、立て続けに起きたのだ。あれこれと考えるがまとまらない。その内考えることにも疲れてきた。
(どうなるんだ……)
いつの間にか眠っていた。
◇◇◇
んん……今、何時だ? ゴソゴソと枕元をまさぐる。スマホ……どこだ? いくら探しても見つからない。あぁ、そういや、バイト先に忘れて……
ハッとして飛び起きた。
すでに夜は明けている。見慣れない部屋。あぁ、レイシィの家だ。一気に現実に引き寄せられる。
部屋を出て階段を下りる。レイシィはすでに起きており、キッチンに立っていた。
「おはようございます」
「あぁ、おはよう、よく眠れたか?」
「はい」と言いつつ、体は重い。
「丁度よかった、すぐに朝食が出来るぞ。階段の奥に洗面台があるから、顔でも洗ってきてくれ」
顔を洗い、リビングに戻る。テーブルには料理が並べられていた。パンらしきものと、肉と野菜が入ったスープ。
「大したものではないが、食べてくれ」
「はい、いただきます」
スプーンを手に取りスープをすくおうとすると
「あぁっ、ちょっと待ってくれ!」
まさかのおあずけ。
「いや、さっき買い出しに町まで行ってきたんだが、朝早すぎたせいか店が開いてなくてな、かろうじてパンと市場で食材は手に入れたんだが、まぁ、何というか、普段料理なんてほとんどしないんだ。だから、その~……」
味に自信がないってことか。そんな気にしないでいいのに。しかし、どうしたものか? こういう時はなんて返せば……
「はい、あの~、お構いなく」
なんだお構いなくって! 合ってる? これで合ってるの?
「うん、そうか。では、あの……どうぞ」
一気に緊張感が出てきた。でもいい匂いしてるし、不味そうには見えないが……
改めて、スプーンでスープをすくい、口に運ぶ。
臭い……
あれ? なんだ、この変な臭みは? 生臭いというか、獣臭いというか……肉のせいか?
今度は肉を食べる。
うん、これだ。
これはあれだな、肉の臭みを消せてないんだな。臭みを消すためスパイスを多めに入れるとか、味自体をもっと濃くしちゃうとか? まぁ、食べられないほど不味いって訳じゃないが……
「あの、どうだろうか……?」
うん、当然感想は聞かれるよな。う~ん、なんて答えれば……
「はい、あの、うん、全然大丈夫です……よ?」
なんだ、大丈夫って!
こういう時はお世辞でも美味しいです、だろ! そういや昔、彼女に怒られたな。「あんたは誉めるのが下手だ」って……
「おぉ、そうか、大丈夫か。いやぁ、よかった。内心かなりドキドキしていたんだ」
ん? 普通に安心してるっぽいな。よかった、正解だったようだ。
◇◇◇
「さて、早速だが昨日の話の続きをしようか」
食後、出されたお茶を飲みながら昨日の続きが始まった。
「この石なんだが……」
ランタンに入っていた石だ。
「魔法石だ。まぁ、ごく普通の火の魔法石なんだが……」
「……魔法って、あるんですね」
「あ……そうか、君は魔法を知らないのか。この石が光るのも、昨日私がオークを燃やしたのも、今こうやって話が通じているのも、全て魔法のおかげだ」
魔法……
「魔法石とは、魔力と魔法の効果を閉じ込めたものだ。で、この石には発光させるために火の魔法が付与されている。ここを見てくれ」
指差された所には、文字が刻まれている。
「これが閉じ込める、これが起動、で、これが火で、最後が放出。魔力を閉じ込めて、任意に起動、火の効果を発動させ光らせる。ただ、このままだと熱を帯びてしまうので、最後に熱を放出する」
ほぅ。
「これが魔法石を灯りとして使う場合の一般的な術式だ。だが、ここなんだか……」
そう言って石を回転させ、違うところを指差す。さっきのものよりずっと小さく、薄く文字が刻まれている。
「圧縮、解放、空間、転移だ。これは私の推論だが、火の魔法の効果はダミー、こっちの効果が本命だ。魔力を圧縮して詰め込めるだけ詰め込み一気に解放。それだけ多くの力が必要なんだろう。そして空間を指定し転移。と、言葉にするのは簡単だが、これはとんでもなく高度な術式だ。ちなみに、もう一つのランタンにも同じ魔法石が入っていた」
…………
「この世には別の世界がある、なんて大昔から言われていてな。子供の絵本なんかにあるんだが、主人公が別の世界に行きそこで悪者を倒して人々を救う、とかな。
ただ当然そんなもの、昔話や信憑性のない民族伝承の類いだと、誰もが思っていた。でもそれは現実として起こり得る話だった。君がここにいるというのが、何よりの証拠だ。
昨日少しだけ聞いた君の話は、私にとって理解出来ないものだった。君もそうだろう? 私の話は理解出来なかった。そりゃそうだ、お互い違う世界の話をしていたんだからな。
ここではない違う世界で生きていた君は、この世界からやって来たオークが起動させた転移の魔法石の効果に巻き込まれ、この世界に来てしまった」
「……はい、俺もそんなようなことじゃないかと考えてました」
「うん。で、私は君に一つ、謝らなければいけないことがあるかも知れない」
「? 何ですか?」
「あのオークは魔力の干渉を受けている状態だったと、昨日話したな。そしてそれを利用して、操ることが可能かも知れないと。さらに私が過去に、その研究をしていたとも。」
そう言えば、そんな話をしていたような……
「理論上可能だ、という所までは突き止めた。だがその先の実証実験がどうしても成功しなかった。結局そのまま、その研究は諦めてしまったんだが……ただ昨日のオークは操られていたんじゃないか、と思う。何者かがその技術を確立させたんじゃないか、と」
「どうしてそう思うんですか?」
「あの魔法石にはかなり高度な術式が組み込まれている。それは同時に、かなり貴重な物だとも言えるだろう。そんな貴重な物をだ、なぜ魔力の干渉を受け自我を失くしたオークが、火の魔法石に偽装してまで持っていたんだ? しかも二つもだ。あまりに不自然すぎる。
恐らく他にいるんだ。干渉からの操作を成功させ、転移の魔法石を作り出した天才が。他の世界への移動、これを安全なものにするためオークを捕らえて実験をしたのではないか、と推測する」
なるほど……ん?
「あの、それで謝らなきゃいけないことって?」
「ああ……もし、オークの操作を可能にした技術が、過去の私の研究を発展させたものだったとしたら……今君がここにいる原因の一つ、と言えるだろう。なので……申し訳ない!」
と言って、彼女は深々と頭を下げた。
んん?
「あの、本当にそうなのか、ってのも分からないし、仮にそうだったとしても、レイシィさんがやった訳ではないですし……なので謝る必要なんてないんじゃないかと……」
「いや、そう言われればそうなんだが、でも全然関係ないとも言えない気がして……でも君の言葉で救われた気分だ、ありがとう」
正直な人なんだな、と思った。助けてくれたのが彼女でよかった。
「で、今後のことなんだが……」
そう、これが厄介な問題だ。これから俺はどうするのか? どうすればいいのか?
「君さえよければ、このままこの家に住まないか?」
んんん?
「すまない、コウ。待たせたな」
そう言ってバンッ、と足で乱暴にドアを閉める。両手にはそれぞれ、焦げて煤だらけのランタンを持っている。レイシィはそのランタンをテーブルの上に置くと、
「オークが持っていたランタンに間違いないな?」
と聞いてきた。
「はい、そうです」
色こそ真っ黒だが、形はあの豚が持っていたものと同じだと思う。
「よし」
と言うとレイシィはガチャガチャとさせながら、ランタンの上のカサの部分を開けた。そして中に手を入れると、白っぽい透明の石を取り出した。ジュースの缶くらいの大きさか、表面は多面カットされておりキラキラと輝いている。
レイシィは両手でその石を持ち、くるくると回転させながら、何かを確認しているようだった。
「普通の魔法石……か……?」
と呟いたレイシィの手がピタリと止まった。グッと顔を近づけ石を凝視している。
「なんだ、これ……圧縮、解放、空間……転移……? バカな!」
そう言うと、しばし呆然と空を見つめる。そして深いため息と共に椅子の背にもたれ、右手で目頭を押さえた。
「そうか、君は巻き込まれたんだな……」
…………
俺は黙っていた。
巻き込まれた、というのがどういう意味なのかすでに想像がついている。しかしこのまま話を続けると、その想像が現実のことだと確定してしまう気がして嫌だった。
しばしの沈黙のあとトンッ、とレイシィは両手をテーブルに置いて俺を見た。
「どうだろう、今日はこの辺にしないか?」
「え?」
「まだまだ話したいこと、疑問も沢山あるだろう、私もだ。でも夜ももう遅い。階段を上ってすぐの部屋が客間になっている。今日はこのまま泊まっていってくれ。私も、少し頭を整理したいし……あ、もちろん君さえよければ、だが……」
いいも悪いも、俺には行く当てなんかない。
「それじゃあ、お言葉に甘えて……」
「遠慮はいらないぞ。ああ、でも申し訳ないが、さすがに男物の着替えまではないんだが……」
「いえ、大丈夫です、お構いなく。じゃあ、おやすみなさい」
そう言って、階段を上る。
「ああ、ゆっくり休んでくれ」
二階に上がってすぐの部屋を開ける。ここが客間。あまり使われていないのだろう、少し埃っぽい気がする。
窓から月明かりが射し込んでいて、部屋はぼんやりと明るい。俺はそのままベッドにもぐり込んだ。が、なかなか眠れない。
そりゃ、そうだろう。
とても信じられないようなことが、立て続けに起きたのだ。あれこれと考えるがまとまらない。その内考えることにも疲れてきた。
(どうなるんだ……)
いつの間にか眠っていた。
◇◇◇
んん……今、何時だ? ゴソゴソと枕元をまさぐる。スマホ……どこだ? いくら探しても見つからない。あぁ、そういや、バイト先に忘れて……
ハッとして飛び起きた。
すでに夜は明けている。見慣れない部屋。あぁ、レイシィの家だ。一気に現実に引き寄せられる。
部屋を出て階段を下りる。レイシィはすでに起きており、キッチンに立っていた。
「おはようございます」
「あぁ、おはよう、よく眠れたか?」
「はい」と言いつつ、体は重い。
「丁度よかった、すぐに朝食が出来るぞ。階段の奥に洗面台があるから、顔でも洗ってきてくれ」
顔を洗い、リビングに戻る。テーブルには料理が並べられていた。パンらしきものと、肉と野菜が入ったスープ。
「大したものではないが、食べてくれ」
「はい、いただきます」
スプーンを手に取りスープをすくおうとすると
「あぁっ、ちょっと待ってくれ!」
まさかのおあずけ。
「いや、さっき買い出しに町まで行ってきたんだが、朝早すぎたせいか店が開いてなくてな、かろうじてパンと市場で食材は手に入れたんだが、まぁ、何というか、普段料理なんてほとんどしないんだ。だから、その~……」
味に自信がないってことか。そんな気にしないでいいのに。しかし、どうしたものか? こういう時はなんて返せば……
「はい、あの~、お構いなく」
なんだお構いなくって! 合ってる? これで合ってるの?
「うん、そうか。では、あの……どうぞ」
一気に緊張感が出てきた。でもいい匂いしてるし、不味そうには見えないが……
改めて、スプーンでスープをすくい、口に運ぶ。
臭い……
あれ? なんだ、この変な臭みは? 生臭いというか、獣臭いというか……肉のせいか?
今度は肉を食べる。
うん、これだ。
これはあれだな、肉の臭みを消せてないんだな。臭みを消すためスパイスを多めに入れるとか、味自体をもっと濃くしちゃうとか? まぁ、食べられないほど不味いって訳じゃないが……
「あの、どうだろうか……?」
うん、当然感想は聞かれるよな。う~ん、なんて答えれば……
「はい、あの、うん、全然大丈夫です……よ?」
なんだ、大丈夫って!
こういう時はお世辞でも美味しいです、だろ! そういや昔、彼女に怒られたな。「あんたは誉めるのが下手だ」って……
「おぉ、そうか、大丈夫か。いやぁ、よかった。内心かなりドキドキしていたんだ」
ん? 普通に安心してるっぽいな。よかった、正解だったようだ。
◇◇◇
「さて、早速だが昨日の話の続きをしようか」
食後、出されたお茶を飲みながら昨日の続きが始まった。
「この石なんだが……」
ランタンに入っていた石だ。
「魔法石だ。まぁ、ごく普通の火の魔法石なんだが……」
「……魔法って、あるんですね」
「あ……そうか、君は魔法を知らないのか。この石が光るのも、昨日私がオークを燃やしたのも、今こうやって話が通じているのも、全て魔法のおかげだ」
魔法……
「魔法石とは、魔力と魔法の効果を閉じ込めたものだ。で、この石には発光させるために火の魔法が付与されている。ここを見てくれ」
指差された所には、文字が刻まれている。
「これが閉じ込める、これが起動、で、これが火で、最後が放出。魔力を閉じ込めて、任意に起動、火の効果を発動させ光らせる。ただ、このままだと熱を帯びてしまうので、最後に熱を放出する」
ほぅ。
「これが魔法石を灯りとして使う場合の一般的な術式だ。だが、ここなんだか……」
そう言って石を回転させ、違うところを指差す。さっきのものよりずっと小さく、薄く文字が刻まれている。
「圧縮、解放、空間、転移だ。これは私の推論だが、火の魔法の効果はダミー、こっちの効果が本命だ。魔力を圧縮して詰め込めるだけ詰め込み一気に解放。それだけ多くの力が必要なんだろう。そして空間を指定し転移。と、言葉にするのは簡単だが、これはとんでもなく高度な術式だ。ちなみに、もう一つのランタンにも同じ魔法石が入っていた」
…………
「この世には別の世界がある、なんて大昔から言われていてな。子供の絵本なんかにあるんだが、主人公が別の世界に行きそこで悪者を倒して人々を救う、とかな。
ただ当然そんなもの、昔話や信憑性のない民族伝承の類いだと、誰もが思っていた。でもそれは現実として起こり得る話だった。君がここにいるというのが、何よりの証拠だ。
昨日少しだけ聞いた君の話は、私にとって理解出来ないものだった。君もそうだろう? 私の話は理解出来なかった。そりゃそうだ、お互い違う世界の話をしていたんだからな。
ここではない違う世界で生きていた君は、この世界からやって来たオークが起動させた転移の魔法石の効果に巻き込まれ、この世界に来てしまった」
「……はい、俺もそんなようなことじゃないかと考えてました」
「うん。で、私は君に一つ、謝らなければいけないことがあるかも知れない」
「? 何ですか?」
「あのオークは魔力の干渉を受けている状態だったと、昨日話したな。そしてそれを利用して、操ることが可能かも知れないと。さらに私が過去に、その研究をしていたとも。」
そう言えば、そんな話をしていたような……
「理論上可能だ、という所までは突き止めた。だがその先の実証実験がどうしても成功しなかった。結局そのまま、その研究は諦めてしまったんだが……ただ昨日のオークは操られていたんじゃないか、と思う。何者かがその技術を確立させたんじゃないか、と」
「どうしてそう思うんですか?」
「あの魔法石にはかなり高度な術式が組み込まれている。それは同時に、かなり貴重な物だとも言えるだろう。そんな貴重な物をだ、なぜ魔力の干渉を受け自我を失くしたオークが、火の魔法石に偽装してまで持っていたんだ? しかも二つもだ。あまりに不自然すぎる。
恐らく他にいるんだ。干渉からの操作を成功させ、転移の魔法石を作り出した天才が。他の世界への移動、これを安全なものにするためオークを捕らえて実験をしたのではないか、と推測する」
なるほど……ん?
「あの、それで謝らなきゃいけないことって?」
「ああ……もし、オークの操作を可能にした技術が、過去の私の研究を発展させたものだったとしたら……今君がここにいる原因の一つ、と言えるだろう。なので……申し訳ない!」
と言って、彼女は深々と頭を下げた。
んん?
「あの、本当にそうなのか、ってのも分からないし、仮にそうだったとしても、レイシィさんがやった訳ではないですし……なので謝る必要なんてないんじゃないかと……」
「いや、そう言われればそうなんだが、でも全然関係ないとも言えない気がして……でも君の言葉で救われた気分だ、ありがとう」
正直な人なんだな、と思った。助けてくれたのが彼女でよかった。
「で、今後のことなんだが……」
そう、これが厄介な問題だ。これから俺はどうするのか? どうすればいいのか?
「君さえよければ、このままこの家に住まないか?」
んんん?
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