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第6章 俺、力持ってる?
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「仁殿、続きを行ってよろしいですか?」
「えっ?まだ続けます?」
「次はこれを使います」
嫌そうな声を出す仁を無視して、鍔木は手に持っていた鉢植えを見せた。小さな葉っぱと長い蔓が特徴のシュガーバインと呼ばれる観葉植物である。鍔木は鉢植えを足元に置く。
「やることは先程と同じですが、今度は少し方向性を変えましょう」
鍔木がそう言うとシュガーバインは急成長した。伸びた蔓は仁の足首に巻きつき、足を動かそうとしても地面に張り付いたように動かない。蔓は何重にも巻かれることにより、その細さからは想像できないほど強い力になっている。
「周りもご覧下さい」
仁の足元だけでなく、地下を半分は覆い尽くすように蔓が伸びていた。
「主人を持たない私には本当ならこれだけの力を発揮する事は難しいのですが、水緒さんの力を借りると力を伸ばすことができます。これを五行相生の『水生木』といいます」
相生説は、五行が対立することなく、順次発生していく様を説明する理論として生み出されたもので、五行の循環を表している。
木は摩擦により火を生じ『木生火(もくしょうか)』
火は灰(土気)を生む『火生土(かしょうど)』
土は金属を埋蔵し『土生金(どしょうごん)』
金属は表面に水気を生じ『金生水(ごんしょうすい)』
水は木を育む『水生木(すいしょうもく)』
「先程仁殿があっさりと氷に包まれたボーリング球を灰にしたのに驚いたのは、火は水に弱かったからです。五行相剋として五行同士の関係を闘争にみるもので、これを『水剋火』といいます」
木は土中の滋養を奪い『木剋土(もっこくど)』
土は水流を封殺し『土剋水(どこくすい)』
水は火に勝り『水剋火(すいこくか)』
火は金属を溶かし『火剋金(かこくごん)』
斧は木を倒す『金剋木(ごんこくもく)』
「先程の現象を説明するには、更に『相侮』『相乗』という関係がありまして」
と、鍔木が続けようとしたが、仁が難しい顔をしているのをみて言葉を止めた。
「・・・・・・では、一つだけ。仁様の火行の力が強すぎたのです。これを『火侮水』といって『火が強すぎると、水の克制を受けず、逆に火が水を侮る』という考えです」
語られる知識に、仁は明らかに理解が追いついていない顔をしていた。目を白黒させている。そんな仁の様子に鍔木がこめかみをひくつかせる。
「この程度で・・・・・これらの知識は必ず必要になりますので、絶対に!覚えていただきますよ!」
鍔木は後ずさろうとしている仁を、逆に足に巻き付いたままの蔓で自分の方に引き寄せ、顔を近づけて強い口調で申し付ける。
「よろしいですね!!」
「は、はい!努力します」
……こ、こわ~
仁が少しでも鍔木と距離を取るために蔓を千切る為に足に力を入れようとすると、蔓はシュルシュルと音を立てて足首から離れていった。同時に周りあったシュガーバインは全て最初の鉢植えに戻っていく。
「まぁまぁ、仁君はその手の知識に触れるのは初めてなんだ。理解が難しくて当然じゃないか。というか、そんな小難しい言い方したら分かりにくいって」
取りなすように言葉を挟んできたのは所長だった。
「仁君よ『水行は木行と相性がいい、火行とは悪い』。しかし、でかい力があれば相性なんか関係ない。細かい理屈は抜きにして力技上等!そんで、仁君はその力技を可能にする馬鹿デカイ霊力を持っているって訳だ。今日のところはその程度の理解でOKよ」
「なるほど・・・・・・・分かり易いです」
仁は納得したように顔を輝かせた。しかし、鍔木はそんな仁の様子を面白くなさそうに見ている。
「流石は所長です・・・・・・・自分に兄がいたらこんな感じなのかなって思ってしまいました」
最初に飄鬼から助けてくれたのも所長だという。あまり覚えていないが。その後も何かと自分を庇ってくれたり、面倒を見てくれている所長。仁はすっかり所長に懐いてしまったようだ。所長の方も満更では無さそうに笑顔を見せている。
「おっ、そうか?じゃぁ、これからは俺の事を『兄貴』って呼んでいいぞ!」
「えっ?」
「俺も仁君の事を義弟と思うことにしよう!いやぁ、嬉しいなぁ」
所長は仁の肩に手を回して喜んでいる。しかし、仁は流石に展開に追いつけないのか、困惑気味だ。
「所長、仁様が困っておるぞ?そろそろ離さぬか」
仁の体を振り回して喜んでいる所長に、水緒が声をかけた。
「おぉ、スマン。それに、続きもあるんだったな。さぁ、頑張れ、義弟よ。兄が見守っているぞ!」
所長は仁を開放して後ろに下がった。しかし、先程のやり取りがよほど嬉しかったのか、腕組をしながらニコニコしている。
「まったく・・・・・先程は枝先による『点』の攻撃でしたが、今度は蔓と葉による『面』での攻撃じゃ。仁様には先程と同じように火行にてこの攻撃を防いで下され。こちらは蔓や葉で仁様の動きを止めようとします。仁様は体が動かなくなって十五秒間静止したら負け、十分間逃げ切れたら勝ち、という事で」
「ちょ、ちょっと待ってください。そんなの無理ですよ。さっきは燃やすものが限られていたから分かりやすかったですけど、あんなに広げられたら燃やしきれるわけないじゃないですか」
ルールの説明をする水緒に仁は食ってかかった。
「では、審判は所長にお願いしましょうかの・・・・・・・スタートは三分後です」
仁の苦情には耳を貸さず、水緒は笑顔のままでカウントを始めた。
「ど、どうしましょう!どうしましょう!?どうしましょう、鞘火さん!」
仁はどうしたものかとあたふたと地下をウロウロしながら、一定の距離を保って付いてきてくれる鞘火に泣きつく。
「知るか、自分で考えろ。これは少年の力を測るテストだろうが」
ニヤニヤしている鞘火は助けてくれる気はなさそうだ。仁は離れた所で様子を見ている所長に対して声を上げた。
「兄貴!助けてください!!」
「お~、早速兄貴と呼んでくれるのか。やっぱり嬉しいなぁ」
「喜んでないで、何か考えてくださいよ」
仁に兄貴と呼ばれた所長はその喜びに浸っている。
「何でもいいからお願いします!」
「ん~、何でもいいなら、取り敢えずは距離取った方がいいんじゃね?」
所長にそう言われて、仁は鍔木と水緒から距離を取ろうと全力で壁際に走り出した。しかし、いくら逃げようとあの蔓から逃げるのは難しそうだ。時間一杯逃げ切るにはどうしても迎撃が必要になる。その迎撃をどうするべきか。頭を働かせながら逃げる仁の背中に、所長から声がかかった。
「勝ち負けがあるなら、負けた方には罰が必要だよな。弟が負けたら減棒な?一ヶ月間、時給を五百円減らそう」
「な、なんですと!?」
……絶対に、負けられん・・・・・・・
仁が、本気になった。目の輝きが違う。気合を漲らせて水緒達の方にギラつく目を向けた。この窮地を乗り切るためにフル回転で頭を働かせ始める。
「おぉ、背中に炎を背負っているかの如き気合じゃ。ビリビリくるぞい」
「今後もこの手は使えそうですね。所長、珍しく素晴らしいご提案です」
水緒と鍔木は気合の入る仁を笑って見ている。しかし、所長はそんな二人にも声をかけた。
「何を呑気な事言ってんだ。義弟に罰ゲームがあるんだから、お前らも負けたら罰あるぞ?」
「「えっ?」」
「当たり前だろうが。どんな罰ゲームにすっかなぁ・・・・・・」
二人は息を呑んで考え込む所長の言葉を待った。たっぷり一分程考えていた所長は、ニヤリとして口を開いた。
「お前ら、仕事の時以外は一ヶ月間メイドな!事務所の中ではメイド服を着て、俺達兄弟には絶対服従」
「「はぁ!?」」
「言葉使いも改めてもらうぞ。俺達が帰ってきた時にはスカートをつまんで『おかえりなさいませ、ご主人様』と礼を尽くしてもらう。あぁ、心配するな。メイド喫茶に行ったことのある俺様が、ご主人様に無礼のないようメイドとしてしっかりとしつけてやる」
「「・・・・・・・・・・・・・」」
所長のあまりの思いつきに、二人は開いた口が塞がらなかった。文句を言うことさえも忘れている。
「アッハッハッハ、それは傑作だ。少年には頑張ってもらいたいな。是非とも二人のメイド姿を見てみたい」
鞘火は所長の提案を聞いて腹を抱えて笑いだした。しかし、そんな鞘火にも所長が声をかけた。
「オイオイ、お前も呑気に笑ってんなよ?義弟が負けたら連帯責任で罰ゲームだ」
「な、何だと!?」
自分にも火の粉が飛んでくるとは思っていなかった鞘火は、笑うのをやめて所長に食ってかかった。
「少年の勝ち負けは私には関係ないだろうが!今の私はただ力を変換しているだけだぞ」
「だって、義弟はお前のご主人様じゃん。自分でもさっきそう言ってたし」
「間違いなく言っていましたね」
「確かに言っておったぞ。私にそれで食ってかかったからな」
「ご主人様だけ罰を受けるのはおかしいだろ?むしろ、式神としての立場のお前の方がキツイ罰を受けなくちゃな」
「ぬぬぬぬ」
所長の言葉に悔しがる鞘火。自分たちだけ罰ゲームを課せられたくない鍔木と水緒は、所長の尻馬に乗った。
「という多数決の意見により・・・・・・・」
悔しがる鞘火に所長はビッと指を突きつける。
「義弟が負けたら、お前がメイドだ!」
所長の提案に、鞘火は即座に噛み付いた。
「嫌に決まっているだろうが!断固拒否する!!」
「フッ、残念ながら拒否権はない。何故なら、俺はお前の上司であり、この場では審判だからだ。審判の言う事は絶対なのだ!」
腕を組んでフフン、と鼻を鳴らしている所長。横の二人も口を出してくる気配もない今、これ以上文句を言っても無駄だろう。
「えっ?まだ続けます?」
「次はこれを使います」
嫌そうな声を出す仁を無視して、鍔木は手に持っていた鉢植えを見せた。小さな葉っぱと長い蔓が特徴のシュガーバインと呼ばれる観葉植物である。鍔木は鉢植えを足元に置く。
「やることは先程と同じですが、今度は少し方向性を変えましょう」
鍔木がそう言うとシュガーバインは急成長した。伸びた蔓は仁の足首に巻きつき、足を動かそうとしても地面に張り付いたように動かない。蔓は何重にも巻かれることにより、その細さからは想像できないほど強い力になっている。
「周りもご覧下さい」
仁の足元だけでなく、地下を半分は覆い尽くすように蔓が伸びていた。
「主人を持たない私には本当ならこれだけの力を発揮する事は難しいのですが、水緒さんの力を借りると力を伸ばすことができます。これを五行相生の『水生木』といいます」
相生説は、五行が対立することなく、順次発生していく様を説明する理論として生み出されたもので、五行の循環を表している。
木は摩擦により火を生じ『木生火(もくしょうか)』
火は灰(土気)を生む『火生土(かしょうど)』
土は金属を埋蔵し『土生金(どしょうごん)』
金属は表面に水気を生じ『金生水(ごんしょうすい)』
水は木を育む『水生木(すいしょうもく)』
「先程仁殿があっさりと氷に包まれたボーリング球を灰にしたのに驚いたのは、火は水に弱かったからです。五行相剋として五行同士の関係を闘争にみるもので、これを『水剋火』といいます」
木は土中の滋養を奪い『木剋土(もっこくど)』
土は水流を封殺し『土剋水(どこくすい)』
水は火に勝り『水剋火(すいこくか)』
火は金属を溶かし『火剋金(かこくごん)』
斧は木を倒す『金剋木(ごんこくもく)』
「先程の現象を説明するには、更に『相侮』『相乗』という関係がありまして」
と、鍔木が続けようとしたが、仁が難しい顔をしているのをみて言葉を止めた。
「・・・・・・では、一つだけ。仁様の火行の力が強すぎたのです。これを『火侮水』といって『火が強すぎると、水の克制を受けず、逆に火が水を侮る』という考えです」
語られる知識に、仁は明らかに理解が追いついていない顔をしていた。目を白黒させている。そんな仁の様子に鍔木がこめかみをひくつかせる。
「この程度で・・・・・これらの知識は必ず必要になりますので、絶対に!覚えていただきますよ!」
鍔木は後ずさろうとしている仁を、逆に足に巻き付いたままの蔓で自分の方に引き寄せ、顔を近づけて強い口調で申し付ける。
「よろしいですね!!」
「は、はい!努力します」
……こ、こわ~
仁が少しでも鍔木と距離を取るために蔓を千切る為に足に力を入れようとすると、蔓はシュルシュルと音を立てて足首から離れていった。同時に周りあったシュガーバインは全て最初の鉢植えに戻っていく。
「まぁまぁ、仁君はその手の知識に触れるのは初めてなんだ。理解が難しくて当然じゃないか。というか、そんな小難しい言い方したら分かりにくいって」
取りなすように言葉を挟んできたのは所長だった。
「仁君よ『水行は木行と相性がいい、火行とは悪い』。しかし、でかい力があれば相性なんか関係ない。細かい理屈は抜きにして力技上等!そんで、仁君はその力技を可能にする馬鹿デカイ霊力を持っているって訳だ。今日のところはその程度の理解でOKよ」
「なるほど・・・・・・・分かり易いです」
仁は納得したように顔を輝かせた。しかし、鍔木はそんな仁の様子を面白くなさそうに見ている。
「流石は所長です・・・・・・・自分に兄がいたらこんな感じなのかなって思ってしまいました」
最初に飄鬼から助けてくれたのも所長だという。あまり覚えていないが。その後も何かと自分を庇ってくれたり、面倒を見てくれている所長。仁はすっかり所長に懐いてしまったようだ。所長の方も満更では無さそうに笑顔を見せている。
「おっ、そうか?じゃぁ、これからは俺の事を『兄貴』って呼んでいいぞ!」
「えっ?」
「俺も仁君の事を義弟と思うことにしよう!いやぁ、嬉しいなぁ」
所長は仁の肩に手を回して喜んでいる。しかし、仁は流石に展開に追いつけないのか、困惑気味だ。
「所長、仁様が困っておるぞ?そろそろ離さぬか」
仁の体を振り回して喜んでいる所長に、水緒が声をかけた。
「おぉ、スマン。それに、続きもあるんだったな。さぁ、頑張れ、義弟よ。兄が見守っているぞ!」
所長は仁を開放して後ろに下がった。しかし、先程のやり取りがよほど嬉しかったのか、腕組をしながらニコニコしている。
「まったく・・・・・先程は枝先による『点』の攻撃でしたが、今度は蔓と葉による『面』での攻撃じゃ。仁様には先程と同じように火行にてこの攻撃を防いで下され。こちらは蔓や葉で仁様の動きを止めようとします。仁様は体が動かなくなって十五秒間静止したら負け、十分間逃げ切れたら勝ち、という事で」
「ちょ、ちょっと待ってください。そんなの無理ですよ。さっきは燃やすものが限られていたから分かりやすかったですけど、あんなに広げられたら燃やしきれるわけないじゃないですか」
ルールの説明をする水緒に仁は食ってかかった。
「では、審判は所長にお願いしましょうかの・・・・・・・スタートは三分後です」
仁の苦情には耳を貸さず、水緒は笑顔のままでカウントを始めた。
「ど、どうしましょう!どうしましょう!?どうしましょう、鞘火さん!」
仁はどうしたものかとあたふたと地下をウロウロしながら、一定の距離を保って付いてきてくれる鞘火に泣きつく。
「知るか、自分で考えろ。これは少年の力を測るテストだろうが」
ニヤニヤしている鞘火は助けてくれる気はなさそうだ。仁は離れた所で様子を見ている所長に対して声を上げた。
「兄貴!助けてください!!」
「お~、早速兄貴と呼んでくれるのか。やっぱり嬉しいなぁ」
「喜んでないで、何か考えてくださいよ」
仁に兄貴と呼ばれた所長はその喜びに浸っている。
「何でもいいからお願いします!」
「ん~、何でもいいなら、取り敢えずは距離取った方がいいんじゃね?」
所長にそう言われて、仁は鍔木と水緒から距離を取ろうと全力で壁際に走り出した。しかし、いくら逃げようとあの蔓から逃げるのは難しそうだ。時間一杯逃げ切るにはどうしても迎撃が必要になる。その迎撃をどうするべきか。頭を働かせながら逃げる仁の背中に、所長から声がかかった。
「勝ち負けがあるなら、負けた方には罰が必要だよな。弟が負けたら減棒な?一ヶ月間、時給を五百円減らそう」
「な、なんですと!?」
……絶対に、負けられん・・・・・・・
仁が、本気になった。目の輝きが違う。気合を漲らせて水緒達の方にギラつく目を向けた。この窮地を乗り切るためにフル回転で頭を働かせ始める。
「おぉ、背中に炎を背負っているかの如き気合じゃ。ビリビリくるぞい」
「今後もこの手は使えそうですね。所長、珍しく素晴らしいご提案です」
水緒と鍔木は気合の入る仁を笑って見ている。しかし、所長はそんな二人にも声をかけた。
「何を呑気な事言ってんだ。義弟に罰ゲームがあるんだから、お前らも負けたら罰あるぞ?」
「「えっ?」」
「当たり前だろうが。どんな罰ゲームにすっかなぁ・・・・・・」
二人は息を呑んで考え込む所長の言葉を待った。たっぷり一分程考えていた所長は、ニヤリとして口を開いた。
「お前ら、仕事の時以外は一ヶ月間メイドな!事務所の中ではメイド服を着て、俺達兄弟には絶対服従」
「「はぁ!?」」
「言葉使いも改めてもらうぞ。俺達が帰ってきた時にはスカートをつまんで『おかえりなさいませ、ご主人様』と礼を尽くしてもらう。あぁ、心配するな。メイド喫茶に行ったことのある俺様が、ご主人様に無礼のないようメイドとしてしっかりとしつけてやる」
「「・・・・・・・・・・・・・」」
所長のあまりの思いつきに、二人は開いた口が塞がらなかった。文句を言うことさえも忘れている。
「アッハッハッハ、それは傑作だ。少年には頑張ってもらいたいな。是非とも二人のメイド姿を見てみたい」
鞘火は所長の提案を聞いて腹を抱えて笑いだした。しかし、そんな鞘火にも所長が声をかけた。
「オイオイ、お前も呑気に笑ってんなよ?義弟が負けたら連帯責任で罰ゲームだ」
「な、何だと!?」
自分にも火の粉が飛んでくるとは思っていなかった鞘火は、笑うのをやめて所長に食ってかかった。
「少年の勝ち負けは私には関係ないだろうが!今の私はただ力を変換しているだけだぞ」
「だって、義弟はお前のご主人様じゃん。自分でもさっきそう言ってたし」
「間違いなく言っていましたね」
「確かに言っておったぞ。私にそれで食ってかかったからな」
「ご主人様だけ罰を受けるのはおかしいだろ?むしろ、式神としての立場のお前の方がキツイ罰を受けなくちゃな」
「ぬぬぬぬ」
所長の言葉に悔しがる鞘火。自分たちだけ罰ゲームを課せられたくない鍔木と水緒は、所長の尻馬に乗った。
「という多数決の意見により・・・・・・・」
悔しがる鞘火に所長はビッと指を突きつける。
「義弟が負けたら、お前がメイドだ!」
所長の提案に、鞘火は即座に噛み付いた。
「嫌に決まっているだろうが!断固拒否する!!」
「フッ、残念ながら拒否権はない。何故なら、俺はお前の上司であり、この場では審判だからだ。審判の言う事は絶対なのだ!」
腕を組んでフフン、と鼻を鳴らしている所長。横の二人も口を出してくる気配もない今、これ以上文句を言っても無駄だろう。
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