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第5章 俺、頭悪い・・・・
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「応仁の乱の際には多数の戦死者が出たんですじゃ。それに一般人からも被害が相次ぎましてな」
「嫌ですね、戦争って」
「世の中が乱れる時、邪鬼妖仙の動きが活発になります。戦場となった京都では怪異現象が頻発しておりました。それに対応するために陰陽師や僧兵等が戦争の裏で怪異相手に闘いに明け暮れていたのです。勿論、神道の者たちも神の力を借りて闘っておりましたよ」
水緒は視線を天井に向けて、思い出すように続ける。
「吉田神社は京都にありましたのでな、神道系の中では矢面に立つ機会も多く、幾多もの人に仇なすものを鎮めました。そんな中、吉田神道を震撼させる事件が起きます」
「えっ、何かあったんですか?」
「戦果が大きい故に、目をつけられましてな。吉田神社が焼かれたのです。史実上は西軍の仕業とされておりますが、真相は妖怪共に大挙しておしかけられ、抗しきれずに本拠地である神社を焼かれたのですよ・・・・・」
水緒は天井に向けていた視線を、再度仁に向ける。
「妖怪相手に戦果が大きいということはいい事だと思いますか?」
「飄鬼みたいな奴らをたくさん退治されたんでしょう?いい事だと思いますけど・・・・・」
「戦果が大きいということは、それだけ被害も大きかったという事です。闘う事に長けた人間が少なかったという事も一つの原因ですが。元々、神道には修行という言葉ありません。仏教のように僧兵等はおりませんでな」
「山にこもって修行するイメージがあったんですが・・・・・・」
「修験道ですな。あれは神仏習合によって生まれた独自のものです。神道の一種ではありますが、仏教色の強いもので、古神道と呼ばれています」
「すいません、違いがよく分からないです・・・・・とにかく、その吉田神道とは違うものだと認識しておきます。でも、どうやって妖怪を倒していたんですか?」
「神道とは神祇道。あくまで怪異を祓う事で抗しておりました。八百万の神々の力を借りて、封印もしくは鎮めておったのです。中には戦神としても祀られる須佐之男尊や剣神・雷神と祀られる建御雷之男神等の力を借りて直接調伏をしている者もおりましたが、少数派ですな」
「その神様なら俺も知っていますよ」
「神道の中でも超メジャークラスの神ですからな。さすがの仁様も知っていたという事ですな」
「馬鹿にしてます?」
「ホホホ」
仁のジト目に笑って誤魔化す水緒。仁の視線から目を逸らして言葉を続けた。
「吉田兼倶は神社を焼かれた時に直接闘う力が必要だと思ったのです。誰にでも使える強い力を手早く身につけられないか、と」
「そんな事が実現するようなら、誰も苦労はしませんよね?」
「まぁ、普通はそうですな」
水緒は机の上に置かれたままだった小太刀を掴み、仁の目の前に掲げる。
「試しに抜いてみませんかな?」
水緒が仁に小太刀を握らせようとした。しかし、本能的に刃物に恐れを抱いた仁は丁重にお断りする。
断られた水緒は、若干不満そうに続きを話始めた。
「少し脱線しますが、吉田兼倶のお話をさせていただきましょう。刀の説明にもつながりますので。ちなみに、仁様は伊勢神宮には行かれ事はありますかな?現在の日本ではお伊勢様が神道のトップなのですが」
「いえ、有名な神社ですので名前は聞いたことはありますけど、行ったことはありません」
「そうですか。ちなみに吉田兼倶は伊勢神宮からは『神敵』と言われていたのですよ」
「・・・・・・同じ神道なのに敵扱いされていたんですか?吉田兼倶って」
「ホッホッホ、中々に革新的な人物でしてな」
笑いながら、水緒は吉田兼倶の人物評を続けた。
「嫌ですね、戦争って」
「世の中が乱れる時、邪鬼妖仙の動きが活発になります。戦場となった京都では怪異現象が頻発しておりました。それに対応するために陰陽師や僧兵等が戦争の裏で怪異相手に闘いに明け暮れていたのです。勿論、神道の者たちも神の力を借りて闘っておりましたよ」
水緒は視線を天井に向けて、思い出すように続ける。
「吉田神社は京都にありましたのでな、神道系の中では矢面に立つ機会も多く、幾多もの人に仇なすものを鎮めました。そんな中、吉田神道を震撼させる事件が起きます」
「えっ、何かあったんですか?」
「戦果が大きい故に、目をつけられましてな。吉田神社が焼かれたのです。史実上は西軍の仕業とされておりますが、真相は妖怪共に大挙しておしかけられ、抗しきれずに本拠地である神社を焼かれたのですよ・・・・・」
水緒は天井に向けていた視線を、再度仁に向ける。
「妖怪相手に戦果が大きいということはいい事だと思いますか?」
「飄鬼みたいな奴らをたくさん退治されたんでしょう?いい事だと思いますけど・・・・・」
「戦果が大きいということは、それだけ被害も大きかったという事です。闘う事に長けた人間が少なかったという事も一つの原因ですが。元々、神道には修行という言葉ありません。仏教のように僧兵等はおりませんでな」
「山にこもって修行するイメージがあったんですが・・・・・・」
「修験道ですな。あれは神仏習合によって生まれた独自のものです。神道の一種ではありますが、仏教色の強いもので、古神道と呼ばれています」
「すいません、違いがよく分からないです・・・・・とにかく、その吉田神道とは違うものだと認識しておきます。でも、どうやって妖怪を倒していたんですか?」
「神道とは神祇道。あくまで怪異を祓う事で抗しておりました。八百万の神々の力を借りて、封印もしくは鎮めておったのです。中には戦神としても祀られる須佐之男尊や剣神・雷神と祀られる建御雷之男神等の力を借りて直接調伏をしている者もおりましたが、少数派ですな」
「その神様なら俺も知っていますよ」
「神道の中でも超メジャークラスの神ですからな。さすがの仁様も知っていたという事ですな」
「馬鹿にしてます?」
「ホホホ」
仁のジト目に笑って誤魔化す水緒。仁の視線から目を逸らして言葉を続けた。
「吉田兼倶は神社を焼かれた時に直接闘う力が必要だと思ったのです。誰にでも使える強い力を手早く身につけられないか、と」
「そんな事が実現するようなら、誰も苦労はしませんよね?」
「まぁ、普通はそうですな」
水緒は机の上に置かれたままだった小太刀を掴み、仁の目の前に掲げる。
「試しに抜いてみませんかな?」
水緒が仁に小太刀を握らせようとした。しかし、本能的に刃物に恐れを抱いた仁は丁重にお断りする。
断られた水緒は、若干不満そうに続きを話始めた。
「少し脱線しますが、吉田兼倶のお話をさせていただきましょう。刀の説明にもつながりますので。ちなみに、仁様は伊勢神宮には行かれ事はありますかな?現在の日本ではお伊勢様が神道のトップなのですが」
「いえ、有名な神社ですので名前は聞いたことはありますけど、行ったことはありません」
「そうですか。ちなみに吉田兼倶は伊勢神宮からは『神敵』と言われていたのですよ」
「・・・・・・同じ神道なのに敵扱いされていたんですか?吉田兼倶って」
「ホッホッホ、中々に革新的な人物でしてな」
笑いながら、水緒は吉田兼倶の人物評を続けた。
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