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第2章 俺、死にかけてる?
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「おやおや、まだ諦めていないので?往生際が悪いですなぁ。しかし、そんな姿も食欲をそそる」
鬼は最初に見せた跳躍力で仁に襲いかかってきた。突然襲いかかってきた不幸に仁は諦めにも似た気持ちで目を閉じたが・・・・・・
ヒュンッ! ボグッ! ドガッ!
仁の耳に風を切る音と何か肉同士がぶつかる音、その後に激突音が聞こえてきた。
何が起こったのかと、仁はその音の正体を確かめようと目を開けた。
「ハッハッハッハ、最後まで諦めない心をもつ少年よ!中々立派だぞ!!」
「・・・・・・・・・・」
痛みに声の出ない仁の前にスーツ姿の男が立っていた。
先程の音は、鬼が高速で仁に襲いかかろうとした音。それを仁の前に立つ男が蹴りにて迎撃し、最後の音は男の蹴りによって鬼が吹き飛ばされて仁が飛ばされたのとは反対方向に並ぶ街路樹に叩きつけられた音だった。
「立ち上がるまではよかったが最後に目を瞑ってはいかんな。男子たるもの最後まで目を見開いておくべきだ」
男は歯を煌めかせながら仁に笑顔を向けた。
「こんな場所で人を襲うとは、大胆な妖だ。しかし、このような場所だから助けに来るのが間に合ったよ」
男は爽やかにサムズアップをして仁に言う。
……助けてくれる?誰?
男の言葉に不可解な点を覚えて、それを聞こうとした仁だったが、それまでなんとかつなぎ止めていた意識を失ってしまった。
「うむ、この場から逃れようと意識を保っていが、助けられた安堵で気持ちが切れてしまったかな?」
男は倒れている仁の息がある事を確認する。仁の体が叩きつけられ街路樹の下に横たえて自分の着ているスーツの上着をかけた。
「類まれな力を持つが、自覚を持たない少年か。鞘火に聞いていた通りだな・・・・・・さて、少年を巻き込みたくないので場所を移したいのだが?」
男は立ち上がりポケットに手を入れて振り向いた。
「寝ぼけた事を言う男だ・・・・・・・・・」
男に蹴り飛ばされた鬼が再度こちらを襲いかかろうと身構えていた。
「食事の邪魔をされる事が一番嫌いなのですよ、私は!」
鬼は怒りをあらわにしながら男に向かって駆け出した。凄まじい速さで迫る鬼の姿を男はつまらなそうに見ている。ポケットに突っ込んだ手をそのままに、爪先で軽く地面を叩いた。
「『土龍槍』」
男の言葉に呼応するように、駆ける鬼の足元から槍のような形をしたものが飛び出してくる。
「これは!?」
鬼は槍から逃げるように進行方向を変えるが、男が爪先で地面を叩くたびに槍が飛び出してくる。地面から飛び出してくる槍から逃げるように大きく飛び退いた。
鬼が目の前にある槍を手に取って折る。
「これは驚きました、あなたはどこぞの退魔師ですか?土行をうまく使うようだ」
地面から突き出したままの槍をよく見れば、槍の形をした土であった。只の土ではなく硬質化し黒くなっている。
「言霊も用いずにこれだけの術を用いるとはかなりの術者とお見受けしましたよ。これは油断できませんね」
「そういう貴様もよく避けられたものだ。今ので仕留めるつもりだったのだがな。かなりの力をもった鬼だ」
「お褒め頂き光栄です」
鬼は慇懃に頭を下げた。大きな体には不似合いな優美な動作で、逆にその異様さが際立っている。
「私は≪飄鬼≫と名乗っております。身の軽さが身上でしてね。お名前をお聞きしても?」
「俺は自分の名前が好きではない。名乗る時は『探偵事務所の所長』と名乗っている」
名乗りとは言えない男の言葉を聞いて≪飄鬼≫は更に問いかけた。
「最近、ここらで私達の食事の邪魔をする者がいると聞いています。その者達は『探偵』を名乗っているそうなのですが、もしかして貴方がその首魁ですか?」
「私達、か。誰からそんな噂を?鬼というのは単独行動が基本と思っていたが」
「・・・・・・・・・・・・・」
男に逆に問いかけられ、あれだけ動いていた口が動かなくなった。顔からは幾分『シマッタ』という表情が読み取れる。
「ほう、マズイとダンマリか?言葉も流暢だし、頭もいいようだ。かなりの長い時間を生きているな?」
「二百年を過ぎた辺りから年齢を数えるのは止めました」
「それだけ生きているという事は、それだけ人間に仇をなしてきたということだな?」
「さて、どうでしょうか?私は生きる為に食事をしているだけですから」
「ムカツク言い方だ。人間は餌に過ぎんという事か」
≪飄鬼≫は所長の言葉に口の端をあげてニンマリと笑った。大きく裂けている口が笑っている表情はかなりの凄味がある。その表情のまま≪飄鬼≫はまたも身構えた。
「先程も言いましたが、私は食事の邪魔をされるのが一番嫌いです。今度は本気で行かせてもらいますよ!」
言葉と同時に≪飄鬼≫が一気に距離を詰めてきた。鬼の動きは先の攻防よりも更に速い!正に疾風。その名前は伊達ではないという事か。普通の人間では目で追えないほどの速度で男に迫る。
男は先程と同じように爪先で地面を叩いて土の槍を地面から生み出して≪飄鬼≫を迎撃する。
「同じ技が通用するとでも」
男が≪飄鬼≫の動きに合わせて土槍を生み出すより前に大きく横にステップを踏んだ。そのまま前後左右とデタラメなステップで男を翻弄する。≪飄鬼≫の動きが読めないせいで土槍は≪飄鬼≫のいない場所への出現を繰り返した。
「チッ、早いな」
トリッキーな動きで狙いを外しつつ≪飄鬼≫は男に近づいてきた。このままでは遅からず≪飄鬼≫の手が男に届くだろう。それを察したのか、男は間に合わない土槍の出現を止めた。
「おや、諦めが早いですね。覚悟ができたのですかな?」
土槍が出てこなくなったが、≪飄鬼≫は警戒を解かずにステップを続けながら男に近づいてくる。
「こいつ、本当に頭がいいな。戦い慣れていやがる」
≪飄鬼≫が油断して直線的な動きになった所を迎撃しようと考えていた男は、次の手を考えていた。
「力が完全に使えればいくらでもやりようがあるのだ・・・・・もどかしいな」
横目で倒れている仁を見て、男が小さな声でこぼした時。視線を≪飄鬼≫から離した隙に鬼が目の前に迫る。
「よそ見が過ぎるのでは?」
目の前に迫っていた≪飄鬼≫の姿が消えて、男の背中から声が聞こえた。≪飄鬼≫の手が体にかかろうとした時、男の周囲に土槍が一気に出現した。動きは読めなくとも、攻撃の対象は決まっている。その攻撃のタイミングに合わせて四方に土槍を出現させてどこから襲い掛かられても≪飄鬼≫を迎撃できるようにしたのだ。
「最終的な狙いは俺だろう?動きが読めれば迎撃できる」
「し、しまった・・・・・・・」
男の体を引き裂こうと勢いをつけていた≪飄鬼≫の動きは止まれない。鬼の巨躯を土槍が貫く!
「なんてねぇ・・・・・狙いがミエミエなのですよ」
そのまま≪飄鬼≫の巨躯を貫くように見えた土槍は狙いを外した。≪飄鬼≫が急に失速したのだ。狙いを外した土槍は男の周囲に壁のようになっている。
「私の狙いは最初からこちらです!」
目の前にある土槍を蹴って、≪飄鬼≫が仁の方に飛んだ。
「マズイ!」
今度は男の方が声を上げる。まさか、鬼が闘争ではなく食事を優先するとは思わなかったからだ。男が今まで知る鬼は闘争本能をなによりも優先していた。その先入観がこの事態を招く。未だ意識を失ったままの仁では鬼から逃げようがない。
助けに行こうにも男の周囲は自分が生み出した土槍で四方を囲まれており、すぐに動けないばかりか、土槍で視界を阻まれて鬼の姿を見ることもできない。自分で自分を閉じ込めたようなものだ。
「クックック、場所を変えてゆっくりと味あわせて頂きますよ」
鬼は狡猾だった。その場で仁に危害を加えるつもりはなく、助けに来た男の身動きが制限されている間に仁を攫ってしまうつもりなのだ。そして、誰にも邪魔をされない場所でゆっくりと悦に浸ろうというのだ。
……コイツ、マジで何なんだ・・・・・・・
この鬼は特殊だ。人から変じた鬼は何よりも本能を優先する。それは闘争であり、食人であり、鬼に変じる前に生じた恨みを晴らす等だ。この鬼はそれだけでは事を為すことの難しさを知っており、本能を抑えて目的遂行のための手段を選んでいる。男が今まで闘ってきた鬼とは一線を画す知能を持っていた。
「さて、これで目的が果たせます。私は闘うのはあまり好きではありませんのでね」
木の下で横たわる仁に≪飄鬼≫の手が伸びた。
「その少年は私達の目的でもあります。そう簡単には渡せません」
そんな声と同時に木の枝が蠢いて、≪飄鬼≫の体へ向かってきた。
「今度は何なのですか!」
またも邪魔をされた≪飄鬼≫は苛立った声を上げて、向ってきた木の枝を叩き落とす。しかし、木からは何本もの枝が生えている。打ち落とされた先から新しい枝が≪飄鬼≫に向ってくる。
「鬱陶しい!」
何本かは打ち払った≪飄鬼≫だったが、払っても払っても向ってくる枝に業を煮やして後ろへ飛んだ。≪飄鬼≫が距離をとった後にも、木の枝は仁を守るように≪飄鬼≫に対して枝先を向けている。
「そこに隠れている奴!出てきなさい」
≪飄鬼≫が木に向って声を荒げた。
鬼は最初に見せた跳躍力で仁に襲いかかってきた。突然襲いかかってきた不幸に仁は諦めにも似た気持ちで目を閉じたが・・・・・・
ヒュンッ! ボグッ! ドガッ!
仁の耳に風を切る音と何か肉同士がぶつかる音、その後に激突音が聞こえてきた。
何が起こったのかと、仁はその音の正体を確かめようと目を開けた。
「ハッハッハッハ、最後まで諦めない心をもつ少年よ!中々立派だぞ!!」
「・・・・・・・・・・」
痛みに声の出ない仁の前にスーツ姿の男が立っていた。
先程の音は、鬼が高速で仁に襲いかかろうとした音。それを仁の前に立つ男が蹴りにて迎撃し、最後の音は男の蹴りによって鬼が吹き飛ばされて仁が飛ばされたのとは反対方向に並ぶ街路樹に叩きつけられた音だった。
「立ち上がるまではよかったが最後に目を瞑ってはいかんな。男子たるもの最後まで目を見開いておくべきだ」
男は歯を煌めかせながら仁に笑顔を向けた。
「こんな場所で人を襲うとは、大胆な妖だ。しかし、このような場所だから助けに来るのが間に合ったよ」
男は爽やかにサムズアップをして仁に言う。
……助けてくれる?誰?
男の言葉に不可解な点を覚えて、それを聞こうとした仁だったが、それまでなんとかつなぎ止めていた意識を失ってしまった。
「うむ、この場から逃れようと意識を保っていが、助けられた安堵で気持ちが切れてしまったかな?」
男は倒れている仁の息がある事を確認する。仁の体が叩きつけられ街路樹の下に横たえて自分の着ているスーツの上着をかけた。
「類まれな力を持つが、自覚を持たない少年か。鞘火に聞いていた通りだな・・・・・・さて、少年を巻き込みたくないので場所を移したいのだが?」
男は立ち上がりポケットに手を入れて振り向いた。
「寝ぼけた事を言う男だ・・・・・・・・・」
男に蹴り飛ばされた鬼が再度こちらを襲いかかろうと身構えていた。
「食事の邪魔をされる事が一番嫌いなのですよ、私は!」
鬼は怒りをあらわにしながら男に向かって駆け出した。凄まじい速さで迫る鬼の姿を男はつまらなそうに見ている。ポケットに突っ込んだ手をそのままに、爪先で軽く地面を叩いた。
「『土龍槍』」
男の言葉に呼応するように、駆ける鬼の足元から槍のような形をしたものが飛び出してくる。
「これは!?」
鬼は槍から逃げるように進行方向を変えるが、男が爪先で地面を叩くたびに槍が飛び出してくる。地面から飛び出してくる槍から逃げるように大きく飛び退いた。
鬼が目の前にある槍を手に取って折る。
「これは驚きました、あなたはどこぞの退魔師ですか?土行をうまく使うようだ」
地面から突き出したままの槍をよく見れば、槍の形をした土であった。只の土ではなく硬質化し黒くなっている。
「言霊も用いずにこれだけの術を用いるとはかなりの術者とお見受けしましたよ。これは油断できませんね」
「そういう貴様もよく避けられたものだ。今ので仕留めるつもりだったのだがな。かなりの力をもった鬼だ」
「お褒め頂き光栄です」
鬼は慇懃に頭を下げた。大きな体には不似合いな優美な動作で、逆にその異様さが際立っている。
「私は≪飄鬼≫と名乗っております。身の軽さが身上でしてね。お名前をお聞きしても?」
「俺は自分の名前が好きではない。名乗る時は『探偵事務所の所長』と名乗っている」
名乗りとは言えない男の言葉を聞いて≪飄鬼≫は更に問いかけた。
「最近、ここらで私達の食事の邪魔をする者がいると聞いています。その者達は『探偵』を名乗っているそうなのですが、もしかして貴方がその首魁ですか?」
「私達、か。誰からそんな噂を?鬼というのは単独行動が基本と思っていたが」
「・・・・・・・・・・・・・」
男に逆に問いかけられ、あれだけ動いていた口が動かなくなった。顔からは幾分『シマッタ』という表情が読み取れる。
「ほう、マズイとダンマリか?言葉も流暢だし、頭もいいようだ。かなりの長い時間を生きているな?」
「二百年を過ぎた辺りから年齢を数えるのは止めました」
「それだけ生きているという事は、それだけ人間に仇をなしてきたということだな?」
「さて、どうでしょうか?私は生きる為に食事をしているだけですから」
「ムカツク言い方だ。人間は餌に過ぎんという事か」
≪飄鬼≫は所長の言葉に口の端をあげてニンマリと笑った。大きく裂けている口が笑っている表情はかなりの凄味がある。その表情のまま≪飄鬼≫はまたも身構えた。
「先程も言いましたが、私は食事の邪魔をされるのが一番嫌いです。今度は本気で行かせてもらいますよ!」
言葉と同時に≪飄鬼≫が一気に距離を詰めてきた。鬼の動きは先の攻防よりも更に速い!正に疾風。その名前は伊達ではないという事か。普通の人間では目で追えないほどの速度で男に迫る。
男は先程と同じように爪先で地面を叩いて土の槍を地面から生み出して≪飄鬼≫を迎撃する。
「同じ技が通用するとでも」
男が≪飄鬼≫の動きに合わせて土槍を生み出すより前に大きく横にステップを踏んだ。そのまま前後左右とデタラメなステップで男を翻弄する。≪飄鬼≫の動きが読めないせいで土槍は≪飄鬼≫のいない場所への出現を繰り返した。
「チッ、早いな」
トリッキーな動きで狙いを外しつつ≪飄鬼≫は男に近づいてきた。このままでは遅からず≪飄鬼≫の手が男に届くだろう。それを察したのか、男は間に合わない土槍の出現を止めた。
「おや、諦めが早いですね。覚悟ができたのですかな?」
土槍が出てこなくなったが、≪飄鬼≫は警戒を解かずにステップを続けながら男に近づいてくる。
「こいつ、本当に頭がいいな。戦い慣れていやがる」
≪飄鬼≫が油断して直線的な動きになった所を迎撃しようと考えていた男は、次の手を考えていた。
「力が完全に使えればいくらでもやりようがあるのだ・・・・・もどかしいな」
横目で倒れている仁を見て、男が小さな声でこぼした時。視線を≪飄鬼≫から離した隙に鬼が目の前に迫る。
「よそ見が過ぎるのでは?」
目の前に迫っていた≪飄鬼≫の姿が消えて、男の背中から声が聞こえた。≪飄鬼≫の手が体にかかろうとした時、男の周囲に土槍が一気に出現した。動きは読めなくとも、攻撃の対象は決まっている。その攻撃のタイミングに合わせて四方に土槍を出現させてどこから襲い掛かられても≪飄鬼≫を迎撃できるようにしたのだ。
「最終的な狙いは俺だろう?動きが読めれば迎撃できる」
「し、しまった・・・・・・・」
男の体を引き裂こうと勢いをつけていた≪飄鬼≫の動きは止まれない。鬼の巨躯を土槍が貫く!
「なんてねぇ・・・・・狙いがミエミエなのですよ」
そのまま≪飄鬼≫の巨躯を貫くように見えた土槍は狙いを外した。≪飄鬼≫が急に失速したのだ。狙いを外した土槍は男の周囲に壁のようになっている。
「私の狙いは最初からこちらです!」
目の前にある土槍を蹴って、≪飄鬼≫が仁の方に飛んだ。
「マズイ!」
今度は男の方が声を上げる。まさか、鬼が闘争ではなく食事を優先するとは思わなかったからだ。男が今まで知る鬼は闘争本能をなによりも優先していた。その先入観がこの事態を招く。未だ意識を失ったままの仁では鬼から逃げようがない。
助けに行こうにも男の周囲は自分が生み出した土槍で四方を囲まれており、すぐに動けないばかりか、土槍で視界を阻まれて鬼の姿を見ることもできない。自分で自分を閉じ込めたようなものだ。
「クックック、場所を変えてゆっくりと味あわせて頂きますよ」
鬼は狡猾だった。その場で仁に危害を加えるつもりはなく、助けに来た男の身動きが制限されている間に仁を攫ってしまうつもりなのだ。そして、誰にも邪魔をされない場所でゆっくりと悦に浸ろうというのだ。
……コイツ、マジで何なんだ・・・・・・・
この鬼は特殊だ。人から変じた鬼は何よりも本能を優先する。それは闘争であり、食人であり、鬼に変じる前に生じた恨みを晴らす等だ。この鬼はそれだけでは事を為すことの難しさを知っており、本能を抑えて目的遂行のための手段を選んでいる。男が今まで闘ってきた鬼とは一線を画す知能を持っていた。
「さて、これで目的が果たせます。私は闘うのはあまり好きではありませんのでね」
木の下で横たわる仁に≪飄鬼≫の手が伸びた。
「その少年は私達の目的でもあります。そう簡単には渡せません」
そんな声と同時に木の枝が蠢いて、≪飄鬼≫の体へ向かってきた。
「今度は何なのですか!」
またも邪魔をされた≪飄鬼≫は苛立った声を上げて、向ってきた木の枝を叩き落とす。しかし、木からは何本もの枝が生えている。打ち落とされた先から新しい枝が≪飄鬼≫に向ってくる。
「鬱陶しい!」
何本かは打ち払った≪飄鬼≫だったが、払っても払っても向ってくる枝に業を煮やして後ろへ飛んだ。≪飄鬼≫が距離をとった後にも、木の枝は仁を守るように≪飄鬼≫に対して枝先を向けている。
「そこに隠れている奴!出てきなさい」
≪飄鬼≫が木に向って声を荒げた。
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