スウィ〜トな神様ご降臨! 〜おいしい甘味はいかが?〜

未来乃 みぃ

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第11ピース

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「俺、が……す……る」

 そう言って手を挙げたのは、ラルグさんだった。

「オッケー! 軽く練習してみてくれる?」

 そうライアスさんが言い、ラルグさんと練習を始める。

「こぶしは……早く出す……感じ……。……出す、というか……しまう? 感覚…………」
「なるほど! やってみますね!」

 なんとなく理解したぞ! まずは精神統一! そして、こぶしを早く、しまい込む感覚で……突き出す!!!

「すごい……! ……今の……説明……だけで……! もう完璧……やっぱり…………フェリア……天才」

 私が天才? ふっ、何を当ったり前のことを言っているのでしょう? ……まぁ、創造神フラン様のおかげですけどね~!

「ねぇ、やっぱりさ、ラルグ、フェリアと話している間ずっと和やかだし、いつもより話してるよね?」
「そうだねぇ。すごい饒舌じょうぜつだよねぇ」

 ラルグさんのいつもとの違いに気づいたライアスさんとマルシュアさんが、ヒソヒソと話している。
 ただし、丸聞こえです。お二人さん。ていうかっ! 饒舌じょうぜつなんて言葉この世界にあるんだ! それとも、翻訳されてそうなっただけかな?

 あと、多分だけど、話が聞こえてるのは私だけだけなんだよね。実はですね、今、現在進行形……というか、常時発動で、【敵視】、【気配察知】、【感覚強化】をしてるんだよね! 耳が良くなるのは、【感覚強化】だよ!
 ふっ、私TUEEE!
 ……使うべき時を間違えたかな?

「じゃあ……次は……間合いについて……詳しく……知ろう」
「間合いですか? 私、わかりますよ!」
「……ん、え……? フェリア、まだ五歳……だよね……? ……もう……できるの……?」

 ~~っ! そうだった! 私、まだ五歳! つくづく思うけど、私って転生者だって事とかその他諸々を隠すつもりあるよね!? ありますかーーーー!!! ありまーーーーす!!! ダメだ一旦落ち着こう。自問自答し始めちゃったわ。

「あ、え~と?」

 私、前世で護身術として体術を習ってたんだよね~。知識ももちろんあるし、技術もフランのおかげか、体に備わってるんだよね~。でも、この世界の間合いの取り方は、違うかもしれないし、聞く価値はあるよね! よし! 誤魔化そう! 元から誤魔化すしかなかったけど!

「間違えました! え~と、そうだな~。……あっ! いいこと思い付いた! 本を何回も読んで、知っているだけです! 教えてください!」
「……ん? ……いいこと、思い付いた……?」

 焦りすぎだよばか! 心の声出すなよ! 今に限って!

「ラルグぅ、そういうことにしといてあげなよぉ。フェリアにはきっと、僕達には言えない、深ぁ~い、深ぁ~~い事情があるんだよぉ」
「そうっ! 事情があるんです!」
「…………分かった。……そういうことに……しとくね」
「ありがとうございます」

 ラルグさんに向けて深々と頭を下げた。
 ふぅ、マルシュアさんのおかげでなんとか助かった!

「んふふ、フェリア、隠し事は、無いにかぎるよぉ?」
「は、はいぃ!」
 
 前言撤回。助かってなかったです。やばいわ、これ。会って初日で信頼がないのもあるけど、マルシュアさんに疑われ始めた。なんか、マルシュアさん、キャラがよく変わるけど、この怖いのが本当のマルシュアさんなの? ど、どれが本物? いや、どれも本物なんだろうけど!

「ラ、ラルグさん! 早く教えて下さい!」

 マルシュアさんの前からそそくさと逃げ、ラルグさんに教えを請うと、「いいよ」といって始めてくれた。

「腰前面に……脇を締めて……置いてある手を……相手に対して…………一歩踏み出して……真っ直ぐ伸ばしたとき……眉間に当たる……位置に立つ」
「……うーん。どれくらいの距離かイマイチなので、その位置に立ってくれませんか?」

 ラルグさんに一応、間合いの基本位置をたずねる。
 わからないことは聞く! わかるまでやる! これ、大切!

「うん……!」

 快く承諾し、私を相手と見て、間合いの位置に立つラルグさん。

「……これくらい……。うん、なら、……手合わせ……してみよう……」

 はい、地球の体術と間合い、同じでした! ……復習ということで!!

「はい!」

 元気よく返事! これも大切!

「ライアス……。お願い……」

 ラルグさんは、ライアスさんに模擬戦の開始の合図をお願いする。

「わかった! ルールは、相手より先に自分のこぶしが、当たった方の勝ちってことで!……じゃあ、開始!!」

 【無属性魔法 初級 身体強化】

 パァァァ!

 自身に身体強化の魔法をかける。

 バッ!!!

 私もラルグさんも、自分の間合いを見定め、距離を詰める。

「俺は……体格差……とか……色々……あるから…………身体強化……なしでいく……ね……」
「ありがとうございます!」

 そう言って直後、ほぼ同時に二人共こぶしを繰り出す。

 バッ! シュッ!

 腕の長さで負ける私に、ラルグさんのこぶしが届く。それを、私は頭を下にしてかわす。かわしてすぐ、右手でパンチを繰り出す。これを、ラルグさんは、後ろに二歩下がって避ける。
 ……二歩。二歩かぁ~! 二歩だけだと、すぐ詰め寄られちゃうな~! どうしようか? うーん……。
 考え込みながら、ラルグさんのパンチを避ける。

「考え込むの……良くない。危ないから……やめよう」
「はいっ! すみません!」

 ラルグさんに注意され、ハッと我に返る。
 そうだ! これならどうかな?

 バッ!

「また、消えるの? ……そんなの……気配を探れ……ば…………?」

 ラルグはそう言って、気配を探りながら辺りを見渡す。

「…………? いない……?」

 気配もない、姿も見えない。この状況に困惑したラルグさんは、思考が停止しているようだった。
 今だ! ラルグさんの影から飛び出す!

「……!! そこか……!」
「いきます! はぁぁぁぁっ!」

 同時にこぶしを出し、先に相手に当たったのは……。

 コツンッ!

「勝負あり! 勝者、ラルグ!」

 ライアスさんが、模擬戦の勝敗を告げる。

「ギリギリ……勝てた……!」

 ラルグさんは喜び、グッと手を握る。

「ん~! 腕がもっと長ければ~! いえ、これは言い訳ですね! もっともっと強くならなければ! ラルグさんっ! とても、楽しかったです!」

 大の字に寝転がると、自然と笑顔がこぼれる。

「……フェリア……! すごく……強かった……! それと……楽しい試合だった……! ありがとう……!」
「はい! こちらこそ! ありがとうございました!」

 こうしてラルグさんとの模擬戦を終え、それぞれ聞きたいことがあるとのことで、質問タイムになった。

「じゃあ、私からね。ラルグさん、今さっきの休憩で、寝転がって小さな声で言っていたことってなに?」
「あれは……“もっと……がんばるよ……みんな…………見ててね”……だよ」

 ラルグさんは空を見上げながら答えてくれた。

「“みんな”というのは、このパーティーメンバーのことですか?」

 また質問すると、ラルグさんはフルフルと首を横に振る。

「いや……俺は……元々孤児で……ライアス達とは……孤児院で育ったんだけど……その孤児院に……お金を寄付してて……そこにいる小さい子に向けて……言ってた」

 ラルグさんは、昔の話も混ぜて説明する。

「へぇ! 優しいんですね!」

 そう言うと、ラルグさんは顔を空から私の方に向けた。

「…………そうかな?」

 ラルグさんは、しばらく顔をこちらに向けていたが、今度は地面に顔を向けた。
 これは、照れてる?
 口しか見えないから、多分だけど。

「そろそろいいかな? フェリア、さっき、ラルグの影から出てきたよね? どうやったの?」

 今度はライアスさんに質問される。

「あれは、闇属性魔法で影に身を潜めたんです。影の中なので、気配は完全に遮断できるんです!」
「す、ごい……。闇属性魔法……は、適性……がある人……が……少ない……から貴、重。羨ま……しい……」

 サティアさんが、じ~っと見つめてくる。

「へぇ……。すごいねぇ! フェリアはたくさんの魔法の適性があるんだねぇ?」

 マルシュアさんが褒めてくれる。
 それなのに、なぜだろう。怖い。

「ありがとうごさいます! では、少し休憩して、次の模擬戦をしましょうか! 次は誰ですか?」

 マルシュアさんにお礼を言って、次の人を募る。

「次、僕としてくれないかなぁ?」

 マルシュアさんが手を挙げる。

「オッケー! 次は、マルシュアね! 僕が準備しておくよ」

 ライアスさんが準備をしてくれるそうなので、私は休憩して疲れを癒す。
 うぅ、マルシュアさんに警戒されてるから、気をつけよう……。

「そろそろ、特訓しようか!」

 準備が終わったのか、ライアスさんが全員に呼びかける。

「フェリア、弓、持ってねぇ。矢を射る方法を教えるよぉ!」

 こうして、マルシュアさんによる弓の練習が始まった。
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