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第9ピース

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「……よし! 休憩終わり! フェリア、次はあたしと模擬戦しよう!!」

 テーナさんが意気揚々と槍を持ってくる。

「テーナ、フェリアが槍を使えるかわからないでしょ?」

 マルシュアさんが、テーナさんを注意する。

「あ、すまないフェリア! 気が早まった! フェリア、槍を振ってみてくれ!」

 そう言って、テーナさんは私に槍を渡してきた。

「わっ! ……はい! わかりました!」

 ライアスさんのときと同じように、精神統一する。

 ブンッ!! シュッ!!

 これも、武術のスキルの恩恵で、鋭く、速く、力強く槍を動かすことができる。

「すごいじゃないか! これなら模擬戦できるな!!」

 テーナさんが、「早く!」と急かす。

「分かった。じゃあ、始め!!」

 ライアスさんは、試合開始の合図をした。

 【無属性魔法 初級 身体強化】

 ふたりともほぼ同時に、魔法を発動する。

 バッ!

 発動し終わると、一気に距離を詰める。
 槍の届く範囲で、近すぎず、遠すぎず。

 シュッ!
 カキンッ!

 二つの槍先がぶつかり合い、離れ、またぶつかる。
 これを何度か続ける。
 ん……これは、やばい。

「……っ! はっ! はっ! はっ!」

 いっ、息が続かない!
 ……テーナさんは、どこにいたら、どれくらいの距離だったら、攻撃が当たらず、自分だけ攻撃できるか熟知しているから、距離感が掴めないっ! 
 それに、体力の差! このままじゃ、体力切れで試合終了だよ! どうしよう? 
 ……あっ! そうだ! この方法なら! やってみる価値はあるよね!

「はっ……! はっ、はっ……」
「もう終わりなのか? はぁ、ライアスとの試合を観たときはもっと出来ると思っていたのに、あたしはがっかり……だ───!?」

 テーナさんは、私からほんの少し目を離したときに、私が消えたことに気がつけず一瞬動揺した。
 その一瞬の隙に、私に勝機ができる……!

 ぱっ!

 テーナさんの後ろに現れて、死角を狙う! つもりだったんだけど……。

 バッ!

 急にこちらの方を向き、槍を突き出すテーナさん。
 私がテーナさんに向けた槍は、テーナさんの槍でいなされ弾かれる。
 そのまま、テーナさんの槍先は、私の首筋へと突きつけられた。

「……勝負あり! 勝者は、テーナ!!」

 ライアスさんは、試合の勝敗を告げる。

「とーぜんの結果だな!!」

 当然の、と言っている割には飛び上がって喜ぶテーナさん。

「フェリ……ア……一瞬……消え……た。ど、うし……て?」

 突然のサティアさんの一言で、先程の試合を思い出す。

「たしかに。フェリア、消えたよね? あれは、魔法なのかな?」
「はい、魔法です! 光学迷彩というのですが……」
「コウ……ガ……ク……メイ……サイ……?」

 サティアさんは、聞いたことのない単語に困惑しているようだった。

「そうです。 光属性魔法の応用で、視覚的に対象を透明化する魔法です」
「そ……う……な、んだ……こ、今度……お……しえて」

 サティアさんが、めっちゃ話す! 嬉しい!

「はい! もちろんいいですよ!」

 そうして、魔法をサティアさんに教える予定ができた。

「なぁなぁ~! そんな難しい話より、もっと、体を動かしたい~!!」

 テーナさんは、子どものように駄々をこねる。

「え? もう、ちょっと……、休憩しませんか?」

 フェリアは、試合が終わって、やっと息切れが収まってきたところだった。
 そんなときに、この発言は正直……キツい。

「テーナぁ? ここは王宮の武道場だよぉ? 最新型の戦闘マシンとかあるかもねぇ? フェリア、使ってもいいかなぁ?」

 マルシュアさんは、テーナさんにそう提案して、他のことに気を向けさせようとする。
 だが、ここは王宮。
 勝手に使っては駄目だと、私をチラッと見て、許可を求める。

「……! いいですよ! どうぞ!」

 この合図に気が付き、提案にOKする。

「いいのか!? 行ってくるな!」

 ふぅ……!! とりあえず再戦の申込みは、気づかれずにやんわりと断れたかな? ナイスっ! マルシュアさん!

「じゃあ、一旦、ティータイムにしましょうか!」

 パンッ! と手を叩いて、リリアたちメイドを呼ぶ。

「はいっ! フェリア様っ! ご用意はできております!」

 おお、さすが要注意人物リリア
 ……こういう言い方は駄目だよね。ごめんね、リリア。
 ただ、転生やらなんやらがバレたくない私にとって、貴女は要注意人物なのです。

「そういうことだから、ごめんね、リリア」
「さすがの私でも、今のフェリア様のお言葉の意味は全く分かりません」

 そう言いながらも、リリアはティーセットとスイーツを机に置いて、ライアスさん達(テーナさんを除く)と私を椅子に座らせる。

「では! いただきましょう!!」

 こうして、ティータイムが始まったのだった。
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