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第4ピース

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「とぉしゃま! こちりゃでしゅかぁ?」

 近づいてくる元気な声。まだ幼く舌がまわっていない。

「こらジーク。フェリアが怖がるだろ? 大きい声は出しちゃ駄目だぞ?」
「はぁいとぉしゃま。ごめんにゃしゃい……」

 注意されて小さな声にする男の子。
 ちょっとしょんぼりしてた!
 やばい、可愛い! 
 そしてお父様! 私が産まれた時にものすごい勢いで扉を開けた貴方が注意出来ることではありません!

「ほぅらフェリア! お前のお兄ちゃんだ!」 

 思った通り! お兄様の登場でしたか!
 そしてジークと呼ばれた男の子……お兄様を持ち上げて、私の近くに寄せるお父様。
 あ~! 可愛い! 今三歳ぐらいかな?

「かぁいいねぇ~」

 満面の笑みのお兄様。
 ぐはあっ! 可愛すぎるぅ!

「あぁう~」

 くぅ! 喋れないのがつらい!
 あぁもう! 誰か私を投げ飛ばして!

「みてっ! とぉしゃま! おててにぎってくえたよ!」

 お、おててっ! おててって! なによぉもぉ! 
 死ぬ、ほんとにキュン死する! こうなったら最終手段!

「うぎゃあああああ~!」

 大声で泣く! ごめんねお兄様!

「わぁ!? ごめんねふぇりあ!」

 驚きながらも申し訳無さそうにするお兄様。
 嘘泣きなんだよ!? ほんとにごめんよ!

「フェリア様っ!」
「ジーク!」

 リリアが私を抱いて、お父様がお兄様を抱く。
 引き離してくれてありがとう、二人共……。

「ジーク。フェリアとはそろそろバイバイだ」
「……ばいばぁい…………」

 寂しそうな顔で出ていくお兄様。
 あぁ、可愛すぎる!
 できれば別れたくなかった! けど! 
 私にはやりたいことがある! 
 そのためには一人にならなくては!
 う~ん……正直リリアを部屋から出すのが一番難しいなぁ。ずっと居るし。
 寝た後ぐらいなんだよなぁ、リリアがいなくなるの。
 ……そういえば、フランからの加護で“一日一回願いが叶う”っていうのがあったよね?
 よし、願ってみよう!
 フラン! 少しの間でいいから私が一人になるようにして! お願いします!
 コンコンコンッ!
 願った直後、扉からメイド服を着た女性が入ってきた。

「失礼します、フェリア様。リリア! 少し話があるの。来てくれるかしら?」
「メイド長!? わかりました! すぐ行きます!」

 どうやら入ってきたのはメイド長らしい。
 
「すみませんフェリア様。少しの間待っていて下さい」

 そういって部屋を出ていくリリア。
 部屋には私一人になった。
 おぉ! さすが創造神! なんでもできるな! ありがとう! フラン!
 ……どんな理由があれ0歳の王女を一人にしておくのは駄目な気しかしないけど……ま、いっか!
 で、やりたかったこと! それは!
 魔法の練習! 
 さすがに赤ちゃんのまま人前で魔法は使えないからね~。そんな事したら大パニックになってしまう。特に両親は。
 
 ……よし、始め!
 そして私は魔法の練習をした。
 この日は三十分程しか練習できなかったが、誰もいない夜やフランにお願いしてつくった時間で何日も何日も練習した。
 どうやらスキルの【状態異常無効】のおかげで眠くならない体になっているらしく、寝ていなくても全く疲れていない。
 気付けば指一本に各魔法一つずつ出せるようになっていた。
 ついでに体を鍛えるためにも寝返りや四つん這いの練習もした。
 一ヶ月もかからず成功。
 たまに動きながら魔法を発動させたりもする。

 そして、四つん這いができるようになっていることに気付いたリリアは、ベッドの外にも出してくれるようになった。
 リリア、ナイス!
 そこで本を読む事に成功! 
 それでわかったこともいくつかある。
 
 まず、この世界の地理について。 
 この世界は、ムーンシー大陸、サンスター大陸、スカイスノー大陸の三つにわけられている。
 ここはムーンシー大陸のクルサンタ王国。
 クルサンタ王国はこの世界で一番大きい国らしい。周りには、ムース帝国やベーリー国、ラムイ聖神国、ディーキャン商業国がある。クルサンタ王国との関係性はわからなかったが、特産物や大体の特徴はわかった。
 
 そしてもう一つ。なんと魔導書があった!
 その魔導書はかなり上級の魔法もあるみたいで、必死に読み漁りました! でも部屋の中だと使えそうにないのが残念! 次からお願いは上級魔法を練習する機会をくださいに変えようかな!
 うん、やっぱり異世界って、サイコー!!
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