4 / 27
第3ピース
しおりを挟む
……え、えぇぇぇ~!!? 何このステータス~!!?
多すぎるスキルに、高すぎる能力値。意外すぎたフランからの好待遇に、陽幸は驚きを隠せなかった。生まれたばかりの赤ちゃんなので思い通りに声を発せず、心のなかで叫んだ。一人で盛り上がっていると、お母様がお父様と一緒に、天にお祈りをするようなポーズをする。
「では、あなたのお名前は何でしょう」
お母様がそう言うと、光が集まり陽幸の体を包み込む。
あったかい……。優しい光……。
──フェリア────
この言葉が、頭に優しく響いた。
「そうなのね……。あなたの名前は、フェリア、フェリアなのね……!」
お母様が嬉しそうにお父様に話す。どうやら名前は聞こえてきた声からしてフランが決めるようだ。
「そうか! フェリアか! 良い名だな!!」
そしてお父様も嬉しそうに顔を輝かせる。
「「フェリア!」」
「「フェリア!」」
「「フェリア!」」
するとお父様とお母様は私の名前を何度も呼びながら飛び跳ね出した。
う~……なんか気恥ずかしい! やめて! というかお母様は安静にしてなよ! 子供産んですぐ飛び跳ねるんじゃない!!
「あぅ~!」
もうやめてと言いたいがやはりうまく喋れない。
「うふふっ! フェリアも喜んでいるわ!」
違う! これは喜んでいるのではない! ……こともないけど! とにかく違ぁ~~~う!
◇ ◇ ◇
そして次の日。
あぁ、昨日は大変だった。結局あの後三時間ぐらいあのままだった……。私の両親、どれだけ親バカなんだ?
そんなふうに昨日の事を思い出してうんざりしていると、部屋の扉がたたかれた。
「フェリア様! 本をお持ちしましたよ~!」
部屋に入って来たのはメイド服を着たレイヤーボブの女性。
そうだったそうだった!
昨日から私のお世話係──いわゆる専属メイドさんがいるんだよ! 確か名前はリリア! もうすんごい優しいの!
昨日のお父様とお母様を止めてくれたのもリリアなんだよね~! リリアが止めてくれなかったら今の今まで飛び跳ねてたかも! あのお二人さん!
「では、読みますね?」
そう言ってリリアは私の近くまで来て本を開いた。
気のせいだったらいいんだけど、その本厚くない?
「えっと、この国にはエルフやドワーフ、獣人などの人族以外の種族もたくさん暮らしています。そうなると、多種族での争いが頻繁に発生します。争わないようにするためにも、各種族について詳しく知ることはとても重要です」
へぇ~! エルフもいるのか! さすが異世界! というかその本、0歳児に聞かせるものではなくないですか? リリアさん?
「まずは、エルフについて知りましょう」
スラスラと読み進めていくリリア。
うん、まぁいいや。私の心の声が伝わる訳ないし! それにこれから役に立つかもしれないし! 聞いておくことにしよう!
「エルフは森の奥深くに結界を張り、ひっそりと暮らしているそうです。(確かな情報ではありません)そのため、エルフの発見情報の最新のものは、何百年と前になります。その情報でさえ、正しくないとまで言われるほど、エルフは希少な種族です」
リリアは()の中まで丁寧に読んでいく。
確かな情報ではないのか。信じていいのかな? この本。
「そしてたまに町でエルフを見かけたと言って自慢してくる人がいます。そういう人には騙されず、正しい情報と誤った情報を見分けられるようにして下さい。……ふふっ」
読みながら笑うリリア。
うん。なんかさぁ、確かな情報を載せてない本にそんな事言われたらね。面白いよね。余計に信じていい本なのかわからなくなるわ。
「んふふっ! すみません、フェリア様。続き読みますね~」
そう言ってリリアは真剣な表情で音読を再開する。
「エルフが使っているのはエルフ語です。エルフと同じくエルフ語も希少です。あまり見かけられないため、正しくはわかりませんが、うふふっ!」
リリアの真剣そうな顔はまたくずれた。
この本、信じたくなくなってきたわ。
「ごほんっ! ……正しくはわかりませんが、エルフ語にも種類があると考えられます。主に北側の一番深いところに住むエルフが使うのがエルフノース語。南側はエルフサウス語。東側はエルフイースト語。西側はエルフウェスト語です。……ぐっ!」
咳払いをしてスイッチを入れ、頑張って笑いを堪えていたリリアだが、結局笑ってしまっていた。
まぁ、安直な名前のせいでしょうね。今更だけど言語理解で日本語にならずに英語が入ってくることがあるのか。そのおかげでマシになってた気がする。今の訳すの難しいけどエルフはそのままで日本語にしたらエルフ北語、エルフ南語、エルフ東語、エルフ西語だもんね。笑うしかないよ! もうちょっと頑張って名前決めてほしかった! というかリリアの笑いのツボ浅すぎない!?
「……そしてエルフの寿命はどの種族よりも長く、2000年~3600年程生きるとされています。さらに……」
コンコンッ!
急に扉がたたかれた。
「ギルアスだ」
そして扉の向こうから聞こえてきたのは、お父様の声。
「陛下でしたか! どうぞお入り下さいませ!」
リリアは素早く本を閉じ、シャキッと立ち上がり、小声で「すみません、フェリア様。続きはまた今度にしましょう」と言った。
その後扉を開き、そこからお父様が入ってきた。
「やぁフェリア~、お父さんだぞぉ~!」
真っ先に私の所へやって来る。だが、それはお父様だけではなかった。後ろから小さな人影が見える。
これはまさか!?
多すぎるスキルに、高すぎる能力値。意外すぎたフランからの好待遇に、陽幸は驚きを隠せなかった。生まれたばかりの赤ちゃんなので思い通りに声を発せず、心のなかで叫んだ。一人で盛り上がっていると、お母様がお父様と一緒に、天にお祈りをするようなポーズをする。
「では、あなたのお名前は何でしょう」
お母様がそう言うと、光が集まり陽幸の体を包み込む。
あったかい……。優しい光……。
──フェリア────
この言葉が、頭に優しく響いた。
「そうなのね……。あなたの名前は、フェリア、フェリアなのね……!」
お母様が嬉しそうにお父様に話す。どうやら名前は聞こえてきた声からしてフランが決めるようだ。
「そうか! フェリアか! 良い名だな!!」
そしてお父様も嬉しそうに顔を輝かせる。
「「フェリア!」」
「「フェリア!」」
「「フェリア!」」
するとお父様とお母様は私の名前を何度も呼びながら飛び跳ね出した。
う~……なんか気恥ずかしい! やめて! というかお母様は安静にしてなよ! 子供産んですぐ飛び跳ねるんじゃない!!
「あぅ~!」
もうやめてと言いたいがやはりうまく喋れない。
「うふふっ! フェリアも喜んでいるわ!」
違う! これは喜んでいるのではない! ……こともないけど! とにかく違ぁ~~~う!
◇ ◇ ◇
そして次の日。
あぁ、昨日は大変だった。結局あの後三時間ぐらいあのままだった……。私の両親、どれだけ親バカなんだ?
そんなふうに昨日の事を思い出してうんざりしていると、部屋の扉がたたかれた。
「フェリア様! 本をお持ちしましたよ~!」
部屋に入って来たのはメイド服を着たレイヤーボブの女性。
そうだったそうだった!
昨日から私のお世話係──いわゆる専属メイドさんがいるんだよ! 確か名前はリリア! もうすんごい優しいの!
昨日のお父様とお母様を止めてくれたのもリリアなんだよね~! リリアが止めてくれなかったら今の今まで飛び跳ねてたかも! あのお二人さん!
「では、読みますね?」
そう言ってリリアは私の近くまで来て本を開いた。
気のせいだったらいいんだけど、その本厚くない?
「えっと、この国にはエルフやドワーフ、獣人などの人族以外の種族もたくさん暮らしています。そうなると、多種族での争いが頻繁に発生します。争わないようにするためにも、各種族について詳しく知ることはとても重要です」
へぇ~! エルフもいるのか! さすが異世界! というかその本、0歳児に聞かせるものではなくないですか? リリアさん?
「まずは、エルフについて知りましょう」
スラスラと読み進めていくリリア。
うん、まぁいいや。私の心の声が伝わる訳ないし! それにこれから役に立つかもしれないし! 聞いておくことにしよう!
「エルフは森の奥深くに結界を張り、ひっそりと暮らしているそうです。(確かな情報ではありません)そのため、エルフの発見情報の最新のものは、何百年と前になります。その情報でさえ、正しくないとまで言われるほど、エルフは希少な種族です」
リリアは()の中まで丁寧に読んでいく。
確かな情報ではないのか。信じていいのかな? この本。
「そしてたまに町でエルフを見かけたと言って自慢してくる人がいます。そういう人には騙されず、正しい情報と誤った情報を見分けられるようにして下さい。……ふふっ」
読みながら笑うリリア。
うん。なんかさぁ、確かな情報を載せてない本にそんな事言われたらね。面白いよね。余計に信じていい本なのかわからなくなるわ。
「んふふっ! すみません、フェリア様。続き読みますね~」
そう言ってリリアは真剣な表情で音読を再開する。
「エルフが使っているのはエルフ語です。エルフと同じくエルフ語も希少です。あまり見かけられないため、正しくはわかりませんが、うふふっ!」
リリアの真剣そうな顔はまたくずれた。
この本、信じたくなくなってきたわ。
「ごほんっ! ……正しくはわかりませんが、エルフ語にも種類があると考えられます。主に北側の一番深いところに住むエルフが使うのがエルフノース語。南側はエルフサウス語。東側はエルフイースト語。西側はエルフウェスト語です。……ぐっ!」
咳払いをしてスイッチを入れ、頑張って笑いを堪えていたリリアだが、結局笑ってしまっていた。
まぁ、安直な名前のせいでしょうね。今更だけど言語理解で日本語にならずに英語が入ってくることがあるのか。そのおかげでマシになってた気がする。今の訳すの難しいけどエルフはそのままで日本語にしたらエルフ北語、エルフ南語、エルフ東語、エルフ西語だもんね。笑うしかないよ! もうちょっと頑張って名前決めてほしかった! というかリリアの笑いのツボ浅すぎない!?
「……そしてエルフの寿命はどの種族よりも長く、2000年~3600年程生きるとされています。さらに……」
コンコンッ!
急に扉がたたかれた。
「ギルアスだ」
そして扉の向こうから聞こえてきたのは、お父様の声。
「陛下でしたか! どうぞお入り下さいませ!」
リリアは素早く本を閉じ、シャキッと立ち上がり、小声で「すみません、フェリア様。続きはまた今度にしましょう」と言った。
その後扉を開き、そこからお父様が入ってきた。
「やぁフェリア~、お父さんだぞぉ~!」
真っ先に私の所へやって来る。だが、それはお父様だけではなかった。後ろから小さな人影が見える。
これはまさか!?
1
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました
紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。
国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です
更新は1週間に1度くらいのペースになります。
何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。
自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m
異世界に来たようですが何も分かりません ~【買い物履歴】スキルでぼちぼち生活しています~
ぱつきんすきー
ファンタジー
突然「神」により異世界転移させられたワタシ
以前の記憶と知識をなくし、右も左も分からないワタシ
唯一の武器【買い物履歴】スキルを利用して異世界でぼちぼち生活
かつてオッサンだった少女による、異世界生活のおはなし

薬屋の少女と迷子の精霊〜私にだけ見える精霊は最強のパートナーです〜
蒼井美紗
ファンタジー
孤児院で代わり映えのない毎日を過ごしていたレイラの下に、突如飛び込んできたのが精霊であるフェリスだった。人間は精霊を見ることも話すこともできないのに、レイラには何故かフェリスのことが見え、二人はすぐに意気投合して仲良くなる。
レイラが働く薬屋の店主、ヴァレリアにもフェリスのことは秘密にしていたが、レイラの危機にフェリスが力を行使したことでその存在がバレてしまい……
精霊が見えるという特殊能力を持った少女と、そんなレイラのことが大好きなちょっと訳あり迷子の精霊が送る、薬屋での異世界お仕事ファンタジーです。
※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。

【完結】召喚されて聖力がないと追い出された私のスキルは家具職人でした。
井上 佳
ファンタジー
結城依子は、この度異世界のとある国に召喚されました。
呼ばれた先で鑑定を受けると、聖女として呼ばれたのに聖力がありませんでした。
そうと知ったその国の王子は、依子を城から追い出します。
異世界で街に放り出された依子は、優しい人たちと出会い、そこで生活することになります。
パン屋で働き、家具職人スキルを使って恩返し計画!
異世界でも頑張って前向きに過ごす依子だったが、ひょんなことから実は聖力があるのではないかということになり……。
※他サイトにも掲載中。
※基本は異世界ファンタジーです。
※恋愛要素もガッツリ入ります。
※シリアスとは無縁です。
※第二章構想中!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる