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7.神様は泊まる 前編
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「……で、なんでこうなるの?」
オルフォさん達の家に泊まることになったが、まさかのルアルと同じ部屋だった。
しかも、ベッドは一つ。床で寝ようとしたらルアルに止められるし、だからといってルアルを床に寝かせるわけにもいかない。そうなると、二人で寝るしかなくなった。
「我と寝るのはそんなに嫌か?」
心底悲しそうな顔をするルアル。
「……狼の姿ならまだ良いんだけどね」
「……」
ルアルはクルリと寝返って背中を向けた。
「ごめんって。冗談だから。そこまで嫌じゃないよ」
「リンの冗談は冗談に聞こえぬ。せめて真顔で言うのはやめてくれぬか」
「……なんか、ね? 元はもっと明るかったんだけどね。ほら、昨日とか数時間前はもっと笑ってたでしょ? こっちの世界に来て時間が経ってくると、性格が変わってきたというか……。今は狭間みたいな所で、行き来してる感じかな。根本的な所は変わってないんだけど、“鈴”と“私”はちょっと違うんだよ。私はこうなの。予想だけど、これからどんどん表情の変化は無くなってくると思う。だから、……ごめんね」
「……すまぬ」
「そういうとこで謝るのは逆に失礼だよ」
「……」
なんとなく空気が重くなる。
そのまま少しの時間が経った。まだ寝れなくて、なんとなく思い付いた事を口にした。
「ねぇ、ルアルが私を明るくしてよ。いっぱい笑わせてさ。十年あるんだから、何回も何回も心から笑わせてよ。いいよね? ルアル」
目の前の大きな背中に声をかけるが、返事はなかった。
「寝ちゃったか……。結構、大事な話だったんだけどな」
仕方ないなぁ、と思いながら私も背を向けて、ゆっくりと目を閉じた。
夢か現実かはわからないけど、ルアルがボソッと「何を申すか……」と言っていたような気がした。
まあ、夢だろうな。
◇ ◇ ◇
ピーチチチ、と何かしらの鳥の鳴き声が聞こえる。
薄っすらと目を開けると、明るい日差しが部屋全体を照らしていた。
「朝……か」
まだ重い瞼をこすって、重い体を無理矢理起こす。
この幼い体でこれだけ疲れるのは、ちょっとおかしい気がする。
「ルアル、起きて、朝」
「ううむ……あと十秒……」
「十秒じゃ何も変わらないでしょ。早く起きて」
「ううん……」
「……四、五、六、七、八、九、十」
一応十数えてみると、ムクッと起き上がるルアル。
「っはぁー!!! いい朝だな! リンよ!」
「ずるい」
「何がだ?」
「十秒あればスッキリできるの」
「すごいだろう?」
自慢気な顔でそう言うルアルに少し腹が立って、近くの枕をルアルの顔面にギュムッと押し付けた。
どうせ、「何をするのだ!?」と言って軽く仕返しでもしてくるかなと思っていたら、ルアルは意外にもニマニマと笑っていた。
「……え? あ、ルアルって、そういう……いや、否定するつもりはないよ?」
「は? ちょっ、は? リン? 何か勘違いをしておらぬか?」
ルアルの性癖を察した私は取り敢えず逃げた。
まあ、ルアルが笑った本当の理由は違うんだろうけど。
だから私は、勘違いはしてないよ。ルアル。
そう心の中でルアルに言ったけど、本人には聞こえないから、意味はないんだろうな。
「ルアル、おはよう」
誤解を解こうと追いかけてくるルアルに、立ち止まって朝の挨拶をする。
「ん? ああ、おはよう、リン」
不思議そうにしながらもしっかり笑って返してくれるルアル。
……挨拶を交わせるのって、こんなに嬉しいのか。
顔には出ないだろうけど、心はとてもあたたかくなった。
「さて、ルアル。オルフォさんにも挨拶しに行こうか」
「そうだな」
そしてオルフォさんに挨拶して、三人でいっぱい話をしながら朝ご飯を食べた。
昼になった頃、ようやくオルフォさん以外の玲瓏のメンバーである二人が目を覚ました。
オルフォさん達の家に泊まることになったが、まさかのルアルと同じ部屋だった。
しかも、ベッドは一つ。床で寝ようとしたらルアルに止められるし、だからといってルアルを床に寝かせるわけにもいかない。そうなると、二人で寝るしかなくなった。
「我と寝るのはそんなに嫌か?」
心底悲しそうな顔をするルアル。
「……狼の姿ならまだ良いんだけどね」
「……」
ルアルはクルリと寝返って背中を向けた。
「ごめんって。冗談だから。そこまで嫌じゃないよ」
「リンの冗談は冗談に聞こえぬ。せめて真顔で言うのはやめてくれぬか」
「……なんか、ね? 元はもっと明るかったんだけどね。ほら、昨日とか数時間前はもっと笑ってたでしょ? こっちの世界に来て時間が経ってくると、性格が変わってきたというか……。今は狭間みたいな所で、行き来してる感じかな。根本的な所は変わってないんだけど、“鈴”と“私”はちょっと違うんだよ。私はこうなの。予想だけど、これからどんどん表情の変化は無くなってくると思う。だから、……ごめんね」
「……すまぬ」
「そういうとこで謝るのは逆に失礼だよ」
「……」
なんとなく空気が重くなる。
そのまま少しの時間が経った。まだ寝れなくて、なんとなく思い付いた事を口にした。
「ねぇ、ルアルが私を明るくしてよ。いっぱい笑わせてさ。十年あるんだから、何回も何回も心から笑わせてよ。いいよね? ルアル」
目の前の大きな背中に声をかけるが、返事はなかった。
「寝ちゃったか……。結構、大事な話だったんだけどな」
仕方ないなぁ、と思いながら私も背を向けて、ゆっくりと目を閉じた。
夢か現実かはわからないけど、ルアルがボソッと「何を申すか……」と言っていたような気がした。
まあ、夢だろうな。
◇ ◇ ◇
ピーチチチ、と何かしらの鳥の鳴き声が聞こえる。
薄っすらと目を開けると、明るい日差しが部屋全体を照らしていた。
「朝……か」
まだ重い瞼をこすって、重い体を無理矢理起こす。
この幼い体でこれだけ疲れるのは、ちょっとおかしい気がする。
「ルアル、起きて、朝」
「ううむ……あと十秒……」
「十秒じゃ何も変わらないでしょ。早く起きて」
「ううん……」
「……四、五、六、七、八、九、十」
一応十数えてみると、ムクッと起き上がるルアル。
「っはぁー!!! いい朝だな! リンよ!」
「ずるい」
「何がだ?」
「十秒あればスッキリできるの」
「すごいだろう?」
自慢気な顔でそう言うルアルに少し腹が立って、近くの枕をルアルの顔面にギュムッと押し付けた。
どうせ、「何をするのだ!?」と言って軽く仕返しでもしてくるかなと思っていたら、ルアルは意外にもニマニマと笑っていた。
「……え? あ、ルアルって、そういう……いや、否定するつもりはないよ?」
「は? ちょっ、は? リン? 何か勘違いをしておらぬか?」
ルアルの性癖を察した私は取り敢えず逃げた。
まあ、ルアルが笑った本当の理由は違うんだろうけど。
だから私は、勘違いはしてないよ。ルアル。
そう心の中でルアルに言ったけど、本人には聞こえないから、意味はないんだろうな。
「ルアル、おはよう」
誤解を解こうと追いかけてくるルアルに、立ち止まって朝の挨拶をする。
「ん? ああ、おはよう、リン」
不思議そうにしながらもしっかり笑って返してくれるルアル。
……挨拶を交わせるのって、こんなに嬉しいのか。
顔には出ないだろうけど、心はとてもあたたかくなった。
「さて、ルアル。オルフォさんにも挨拶しに行こうか」
「そうだな」
そしてオルフォさんに挨拶して、三人でいっぱい話をしながら朝ご飯を食べた。
昼になった頃、ようやくオルフォさん以外の玲瓏のメンバーである二人が目を覚ました。
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