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約束 ジスター
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『じすたー。おーけってなに?』
『王様の家族だよ』
アクマと出会い一ヶ月が経った。
会いに行く回数は片手で数えられる程だが、アクマと一緒に本を読み、分からない所があったら懇切丁寧に教える仲になっていた。
『じすたー』
『あ?何だ、何処が分からないんだ?』
アクマは少し悲しそうな表情をする。
『………』
『どうした?何か言われたのか?』
虐待をされている自覚がないアクマは今日も傷だらけだ。
ジスターはその姿を見る度に男爵の爵位を憎んだ。
大公 公爵 侯爵 伯爵 子爵 男爵 と上から順番に偉い地位を持つ。
男爵の子息が伯爵の人間に逆らえば、被害は身内だけですまされない。
『じすたー…』
『だから何だよ』
アクマは本とジスターを何度も見て本を差し出した。
『あげる』
『は?何で?』
『わからない。でも、あげる』
アクマはジスターに本を押し付けた。
ジスターは不思議に思いながらも本を受け取った。
もしかしたら家の誰かに本を捨てられる事を避けたかったのかも知れない、と思ったからだ。
『じすたー。じすたーはおーけのけらい?』
『…あぁ。…まぁ将来はそうだな』
ジスターは冒険者になろうと思っていたので、言葉を濁した。
『……ほんと?』
『?今日は何か変だぞ、お前』
ジスターはアクマの額を触り熱を測るが、平熱だった。
『じすたー。おーけのけらい?』
『しつこいな。そうだよ!』
『わかった。またね』
アクマは首を傾げていたジスターを放置して家の中へ歩を進めた。
ジスターはその姿に何となく悲しい気持ちになった。
『アクマ!また今度会いに行くからな、約束だ!』
アクマは一瞬足を止め、振り返り笑った。
『まってる』
次の月、伯爵家にアクマはいなかった。
男爵も伯爵の人間も、アクマを知らないと言っていた。
ジスターは何時もアクマが居た物陰やその周辺を探した。
『アクマ!出てこい!俺だ、ジスターだ!』
男爵が止めに入るまでジスターは伯爵家を探し回ったのだった。
『アクマ!アクマ!』
叫ぶジスターを男爵は馬車に入れ、家へ帰らせた。
ガタゴト揺れる馬車の中でジスターは本を見た。
虐待されていたアクマが唯一手放さなかった、アクマの所持品。
それはアクマが存在した唯一の証拠。
『父さんも伯爵の連中も、何でアクマを隠したんだ…?』
ジスターは考えたが、子供では限界があった。
『そう言えば、あの時珍しくしつこかった…な…』
最後に会った日の話を思い出して、ジスターは顔色を変えた。
王家の事を聞いたアクマ。
そして家来になるか聞いたアクマ。
『王妃様の色は確か…』
灰色
それを思い出しジスターは真っ青になった。
『王城にいるのか?アクマ』
ジスターは窓から見える王城を見た。
ジスターは知っていた。
貴族の私生児は、身内により大抵殺害される。
『なら、王家は?』
震える手で口元を押さえた。
『いや、まだ生きてる。大丈夫だ。大丈夫…』
ジスターは僅かな可能性にすがる。
そして、祈った。
『今度こそ助ける。だから、生きていてくれ』
『王様の家族だよ』
アクマと出会い一ヶ月が経った。
会いに行く回数は片手で数えられる程だが、アクマと一緒に本を読み、分からない所があったら懇切丁寧に教える仲になっていた。
『じすたー』
『あ?何だ、何処が分からないんだ?』
アクマは少し悲しそうな表情をする。
『………』
『どうした?何か言われたのか?』
虐待をされている自覚がないアクマは今日も傷だらけだ。
ジスターはその姿を見る度に男爵の爵位を憎んだ。
大公 公爵 侯爵 伯爵 子爵 男爵 と上から順番に偉い地位を持つ。
男爵の子息が伯爵の人間に逆らえば、被害は身内だけですまされない。
『じすたー…』
『だから何だよ』
アクマは本とジスターを何度も見て本を差し出した。
『あげる』
『は?何で?』
『わからない。でも、あげる』
アクマはジスターに本を押し付けた。
ジスターは不思議に思いながらも本を受け取った。
もしかしたら家の誰かに本を捨てられる事を避けたかったのかも知れない、と思ったからだ。
『じすたー。じすたーはおーけのけらい?』
『…あぁ。…まぁ将来はそうだな』
ジスターは冒険者になろうと思っていたので、言葉を濁した。
『……ほんと?』
『?今日は何か変だぞ、お前』
ジスターはアクマの額を触り熱を測るが、平熱だった。
『じすたー。おーけのけらい?』
『しつこいな。そうだよ!』
『わかった。またね』
アクマは首を傾げていたジスターを放置して家の中へ歩を進めた。
ジスターはその姿に何となく悲しい気持ちになった。
『アクマ!また今度会いに行くからな、約束だ!』
アクマは一瞬足を止め、振り返り笑った。
『まってる』
次の月、伯爵家にアクマはいなかった。
男爵も伯爵の人間も、アクマを知らないと言っていた。
ジスターは何時もアクマが居た物陰やその周辺を探した。
『アクマ!出てこい!俺だ、ジスターだ!』
男爵が止めに入るまでジスターは伯爵家を探し回ったのだった。
『アクマ!アクマ!』
叫ぶジスターを男爵は馬車に入れ、家へ帰らせた。
ガタゴト揺れる馬車の中でジスターは本を見た。
虐待されていたアクマが唯一手放さなかった、アクマの所持品。
それはアクマが存在した唯一の証拠。
『父さんも伯爵の連中も、何でアクマを隠したんだ…?』
ジスターは考えたが、子供では限界があった。
『そう言えば、あの時珍しくしつこかった…な…』
最後に会った日の話を思い出して、ジスターは顔色を変えた。
王家の事を聞いたアクマ。
そして家来になるか聞いたアクマ。
『王妃様の色は確か…』
灰色
それを思い出しジスターは真っ青になった。
『王城にいるのか?アクマ』
ジスターは窓から見える王城を見た。
ジスターは知っていた。
貴族の私生児は、身内により大抵殺害される。
『なら、王家は?』
震える手で口元を押さえた。
『いや、まだ生きてる。大丈夫だ。大丈夫…』
ジスターは僅かな可能性にすがる。
そして、祈った。
『今度こそ助ける。だから、生きていてくれ』
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