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第5章 抗争

第百四十九話

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「…それは依頼?」
「あ、はい、依頼です」
「…内容は?」
「えっと、実は仲間がコローネファミリーと揉めてまして、助けたいんです」

 僕はゼルがコローネファミリーと戦争していて、今ここから東にある砦に籠城していることを伝えた。

「というわけで、仲間達の救出を手伝って欲しいんですけど………」
「…報酬は?」
「すみません…ぶっちゃけ手持ちが少ないんで、僕の持ってるアイテムを報酬に…」

 そう言って僕はマジックバックを開けて、フィールさんに見えるように差し出した。

「お気に召したモノがあればいくつでもいいので持っていってください」

 と言いながら、僕は内心これは失敗したかな?と思った。
 そんな希少レアなアイテムないし、フィールさんのお眼鏡に叶うアイテムなんてないだろうな…
 出世払いとか、分割払いとかダメかな?

 フィールさんが僕のマジックバックを漁っているのを見ながらそんなことを考えていると、ごそごそと漁っていたフィールさんの手が止まった。

 おや?まさか気に入ったのがあったのかな?

「…これは」

 と呟き取り出したのは、ぷよ○よの攻略本だった…:-()

「…私の聖典バイブル!貴方、ぷ○ぷよやるの?」
「え?ええ、まあ…」

 僕が頷くとフィールさんは嬉しそうに微笑んだ。
 まるで同好の士を見つけたかのように?

「私も一緒!私もぷよ○よで生き方を学んだ!」
「はい?」

 いきなりなに言ってるんだろうこの人?
 ゲームでなにを学んでるの???
 ていうか僕は別にぷ○ぷよで学んだことなんてないよ?
 いや、魔法は覚えたか。

「私はこれのおかげでどんな逆境にも負けない精神を、諦めない心を学んだ…!」
「えっと、それはピンチはチャンスってヤツですか?」
「そう!それ!ぷよ○よは画面の大半が埋まっても諦めずに頑張れば逆に大連鎖で逆転することがある。それは人生でも同じ。自分より強い魔物と戦ってる時とか標的ターゲットの護衛に囲まれた時とか、どんな危機的状況に陥っても諦めずにもがき続ければちょっとしたことで流れが変わる。それが逆転の一手を生むことがある。そもそも…」

 な、なんかテンション上がってるな…(汗)
 口調というかキャラが変わってる気が………
 なんかよくわからないというか、理解できないぷよぷよと自身の人生(武勇伝)を一気にまくしたてたフィールさんは、ひとしきり語り終えると最後にこう告げた。

「…決めた。一緒にぷよ○よやろう」
「はい?」
「…報酬。ぷよ○よの対戦100番勝負」

 ひゃ、100番勝負ですか…
 面倒くさいけど、そんなのが報酬になるんなら安いモノかな?

「まあ、それでいいなら」
「…本当?じゃあ、契約成立」

 フィールさんが右手を差し出してきた。
 えっと………これは握手かな?
 違ってたら恥ずかしいなと思う僕は中々手を出すことができずにもじもじしていると、フィールさんが僕の手を握ってきた!

「…よろしく依頼人」
「よ、よろしくお願いします…」

「ちょっと待ったああああああ!!!」

 黒スーツのリーダー格がこちらにやってきた。

「姐さん!そんな奴らにつくくらいならこっちについてくださいよ!」
「そうだぜ!礼ならいくらでも払いますよ!」

 黒スーツ達がフィールさんを引き抜こうとしている。

「…先にこちらと契約を交わした。反故にすることはできない。だから…」

 フィールさんは黒スーツ達に冷たい視線を送った。
 背筋が凍りつくような殺気とともに!

「依頼人に害なす気なら、容赦しない…!」

 こ、怖ああああああ!!!
 こちらがドン引きするくらいの恐ろしい雰囲気を醸し出しているフィールさんに、黒スーツ達は表情を青ざめさせながら数歩後ずさった。

「あの、そろそろ行きましょうか?」

 僕は恐る恐るフィールさんに声をかけると、フィールさんは殺気を消してコクリと頷いてくれた。
 ここにいても仕方ないし、早くゼルのところに向かわないと。
 カイ達にも声をかけて僕らは街を出ることにした。




 街の出入口。

「………」

 チラリと振り返ると少し距離をとって黒スーツ達が後をついてきていた。

 どうしよう…?

 このままあの人達もついてくる気かな?
 そうだとしたら面倒だな。

「ファントム、外出たらるけどいいな?」

 前を歩くカイが僕にそう訊ねてきた。
 僕の隣を歩いていたマリアさんがカイに同意するように頷く。

「そうですね。フィールさん、問題ないのでしょう?」
「…(こくり)」

 マリアさんの問いにフィールさんは頷いた。
 瞬間、一部のPTメンバーから不穏な雰囲気を感じはじめた。
 殺気、歓喜などが入り混じった好戦的な空気になる。
 ていうか、どんだけ戦闘狂なんだよ…(苦笑)
 誰がとは言わないけどねwww

「…出て少し進んだところに林がある」
「そこでるか」
「そうですね。一気に片付けてしまいましょう」

 はあ…

 物騒な話を耳にしながら僕はそっとため息をついたのであった………



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