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第5章 抗争

第百四十六話

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 カイウスさんの案内のもと、僕達はゼルを助けるべくアルフヘイムの転移門から、パライーソの街へ転移した。

「ここから海沿いへ東に進むと、うちで使ってる砦があります。そこにゼルの親分たちが籠城しているはずです」
「なあカイウス、敵の数はどんくらいなんだ?」

 カイがカイウスさんに訊ねた。
 そういえば敵はどれくらいいるんだろう?
 敵のことについても詳しく聞いてなかった。
 ゼル達は100くらいいて多勢に無勢で退いたって言ってたし、敵の数は数百くらいかな?
 勢いで来たけど、どうやって助けよう?
 まともに戦ったら普通にやられるかもしれないし………

「コロパチーノはコローネファミリーのを引き連れてきました。目算ですが万はくだらないでしょう」

 万!?

「ちょっと待って!ゼルのほうは何人いるの?」
「…ツーハンドも加わったので、200いるかいないかくらいです」

 10000vs200…:-()

 絶対勝ち目ないじゃん。無理ゲーじゃん!それは負けるわ。
 ていうかそんなに戦力差があるとは思わなかったんですけど………

「ゼルの親分とツーハンドが千以上倒していましたが、向こうは高位の神官職がいるので今頃はとっくに大体が戦線に復帰してると思います」

 二人で千以上って…=)
 どこの無双ゲームだよ…w
 ていうか蘇生魔法使える人が向こうにいるの!?
 …まずはその人から倒したほうがよさそうだな。

「…一騎当千ゼル無双」
「チッ!ゼルのくせに生意気だな。なら俺は一騎当してやるぜ!」
「カイ…変なところで張り合わない(苦笑)」
「アーチェさん、どうしたのですか?」
「え!?べ、別に?なんでもないわよ…(ヤバい!ワンコをだっこしてるルーネが可愛すぎる!///)」

 …なんか、みんな余裕な感じがするけど、敵は10000はいるんだよ?
 ちょっと緊張感なくない?

「ただ、問題は数じゃなく、コローネファミリーの幹部連中です」
「え、そうなの?」

 僕が訊ねるとカイウスさんは重々しく頷いた。

「ほとんどの構成員はレベル10以下の三下ですが、コロパチーノをはじめとした幹部は全員レベル30以上の使い手なんです」
「ふーん………」

 今の僕達ならレベル10以下の相手なら余裕で無双できるな。
 多分ほぼ一撃で倒せるだろうし。
 そうなると問題は幹部か。
 
「幹部は何人いるの?」
「………すみません。正確な数はわかりませんが100人以上はいるかと」

 100人…=)

 NPCとはいえレベル30以上が100人。
 どんな職業やスキルをもってるかわからないけど、まともにやりあったら骨も残らないかも…(><)
 
「奇襲かなんかして幹部を削ってからゼルと合流するか…?いや、ゼルと連絡取り合って、仕掛けるなら合わせてやったほうがいいかも…」
「それなら、自分が先行して砦に行きましょうか?」

 独り言のように呟く僕の考えを聞いていたカイウスさんがそう進言してきた。

「大丈夫?」
「はい」

 まあカイウスさんのステータスを見る限り、レベル25の盗賊で隠蔽スキルがCSしてるから大丈夫か………?
 このまま僕達も砦とやらに入るより別行動とって連携したほうがいいかもしれないな。

「じゃあ近くまで来たら先行してゼルに伝えてください」
「承知しました」
「その前に僕達はどう動くかだよね」
「斬り込むか?」
「カイはそれしか言えないの?」

 カイの提案にアルが苦笑した。
 僕も苦笑まじりに首を横に振る。

「さすがにそれは却下かな」
「でもこっちの打つ手は奇襲くらいしかないんじゃないの?」

 とアーチェさんさんが言った。
 確かにアーチェさんの言う通り数の少ない僕達は奇襲しか手がない気がする。
 でも、現場を見てみないことにはどう判断をくだしていいのかわからないし………

「ていうか敵の配置はどうなっているんだろうね?」
「自分が抜け出した時は砦を囲むような陣形でした」
「つうかよく抜け出せたな」
「近くの森に抜ける隠し通路を通って来たんですが、出て来たところを見つかってしまいまして…なんとか強行突破してきたんですよ」
「ちょっと待って。じゃあその隠し通路から敵が攻めてきたりしてないかな?」
「それは大丈夫だと思います。ゼルの親分なら通路を埋めて敵を生き埋めにすると思いますので」

 さすがゼル。やることがエグいw
 う~ん………そうなるとどうやってゼルと合流するんだろう?と疑問に思った僕は、カイウスさんに訊ねてみると、他にも隠し通路があるらしい。
 ならとりあえず状況を確認しつつそこまで行ってみてみようとまとまったところで、PCらしき人達が僕達の前に立ち塞がった。

「脱獄囚ファントム見つけたぞ!」

『【賞金稼ぎ】クエストを受けているプレイヤーに発見されました!』

 って、嘘でしょ!?こんな時に………

「ああ?邪魔だ」

 カイの抜き打ちが一番前にいたPCの胴を斬り裂いた。
 相手のHPが大きく削れたけど、先制攻撃早っ!
 
 ヒュン!

 一条の矢がカイの攻撃を喰らったPCの額に突き刺さった。
 今のはアーチェさんか!?
 ヘッドショットが即死判定になったのか、相手のHPが全損して死亡マーカーと化した。
 ていうかアーチェさんも対応早すぎ………
 敵、即、殺ですか?

「くそッ!」

 他のPC達が慌てた様子でそれぞれの武器を身構えるけど、カイの太刀が、アルの小太刀が、アーチェさんの矢が、ルーネのハンマーが、そしてカイウスさんのダガーがいち早くPC達に襲いかかった。

『戦闘に勝利しました!』

 あっという間に勝利。
 ていうか、僕の出番がなかったんですけど…(苦笑)

「フッ、口ほどにもねえ」
「おいいたぞ!」

 カイが刀を納めたその時、僕らの方に指差しながら何人もの人がこちらへ向かってきた。
 頭上のHPゲージを見る限りPCとNPCが入り混じっている。
 冒険者っぽいPCに、黒スーツ姿のNPC、そして銀色に輝く鎧を纏った騎士達。
 なんかいろんな人達がいるなあ。
 あれってもしかしなくても僕を狙いにきた刺客?

「あいつらは…コローネファミリー!?」

 えっ!?
 カイウスさんの呟きに僕は驚いた。
 ていうか誰がコローネファミリーの人!?

「カイウスゥ、捜したぜぇおい」

 黒スーツのNPCの一人がカイウスさんに向かって言うと、他の黒スーツが僕達を囲むように広がっていった。
 追手か………
 数は…何十人いるんだろう?
 冒険者っぽいPCを押し退けて完全に囲まれてしまった。
 僕達は背中を預けあうように円を作って警戒する。

「どいてください!【破道撃滅斬】!」

 ドゴンッ!!!

「「「ぎゃああああああ!!!」」」

 聞き覚えのある声とともに黒スーツの一角が派手に吹き飛んだ。

「なんだあ!?」

 カイウスさんに話しかけていた黒スーツが驚きの声をあげる。
 吹き飛んだ爆煙の中から悠然と歩いてくるのは、大剣を肩に担いだマリアさんだった。
 銀色に輝く鎧を纏い、真っ直ぐ一直線に僕を見つめていた。

 うわぁ…ここでマリアさんの登場ですか………!?

 マリアさんの後ろには仲間というか部下の騎士達が続いている。

「…厄介なのがきた」
「どうするファントム。あの子もやっちゃっていいのか?いいよな?」

 苦笑するヴァイスと、マリアさんと戦う気満々のカイ。

 あはは………もうどうしたらいいのこの状況………:-()

 僕の思考は完全に停止してしまった…


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