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第4章 NPC

第百十九話

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 うぅ…まだ頭がぐわんぐわんする…

 ルーネの調合した【酔い止め】を飲んだけど、まだ調子が悪い気がする。
 僕達はいま、惑いの林道にいた。

 ギルドクエスト【迷い子の捜索】

 依頼主の母親に事情を聞いたところ子供たち三人が誤って惑いの林道に入り込んでしまったらしい。
 エルフだけど三人とも幼い子供らしく精霊との交信がまだ上手くできないようだ。
 心配した母親が冒険者組合に緊急として依頼。
 冒険者組合はこれを緊急クエストとして張り出したところをゼルが手に取った。
 しかも依頼主に話を聞き終わった瞬間『残り時間2時間』と表示された。
 制限時間付きかよ!?と焦りつつも速やかに僕達は惑いの林道に向かった。
 そして現在………

「あと1人…!」
「おいゼル!最後の子はどこだ?」
「うるせーよカイ、ちょっと黙ってろ!」

 残り時間三十分。
 すでに二人の迷子を見つけ出した。
 ゼルの【索敵】で迷子の大まかな位置を特定、ルーネの案内でそこへ向かう。
 その途中、魔物とエンカウントし戦闘を何度か繰り返した。
 基本夜の魔物は昼間と違う魔物がポップする。
 ここも例に違わず夜に現れる魔物と出くわした。
 闇属性の中級魔法を使うピクシー。
 様々な中級魔法を使うリッチ。
 群れで襲いかかるホーンウルフ。
 そして昼間にも現れる惑いの林道最強と言われるラフレシア。
 
 難易度ランクFだけど、さすがギルド専用クエ。
 ソロじゃ確実に達成困難な依頼だ。
 でも、いまの僕達ならやれると確信している。
 まあ余裕とまではいかないけれど、それほど苦戦することもなく魔物を倒せてるし、順調に迷子を見つけ出している。
 
 カイとアルが加わったのが大きい。
 塀の中で散々ラスボスクラスの先生や召喚された魔物と戦ったおかげで、僕達の連携はバッチリだ。
 ルーネも加わったし僕達の役割も多少は変わったけど、基本僕達の戦い方はこんな感じだ。
 まずアルがタンクとして敵の攻撃を受け持ち、カイとゼルがアタッカーとして敵を切り崩す。
 ヴァイスとルーネがサポートに回り、僕はみんなに指示を下す。
 たったそれだけで以前苦戦したラフレシア相手に完勝できるくらいにはなっていた。
 ていうかカイの火力が強すぎるw
 せっかくアルがヘイトとったのにカイの一撃で大ダメージを喰らった魔物のヘイトがカイの方へ向いてしまう。
 それでもお構いなしに攻撃を続けるカイの援護に全員でまわることで事なきを得ているけど、これは今後の課題かな?
 油断は禁物だがもうこの辺りの魔物は僕達にとって格下に等しい。
 これが同等、若しくはそれ以上だと危ないと思う。

「カイ9時方向に敵だ!」
「任せろ!」
「援護するよ!」
「…お前らはもう死んでいる」

 ボコスカ斬!!!

『戦闘に勝利しました!』
 etc…

「………はは」

 圧倒的じゃないか…と笑うしかない僕なのであった。
 


「本当にありがとうございました」
「おにいちゃんあんとー!」
「あいがとー」
「ありました!」

 無事迷子を捜し出した僕達は依頼主の下へ戻ると母親と子供たちからお礼を言われた。
 これで依頼達成だ。
 早速冒険者組合に行って報酬ゲットだぜ!

「兄貴、いいもんですよね…」
「うん?なにが?」
「いや、その…感謝されるのって、気分がいいと言いますか、なんというか…」

 気恥ずかしそうに笑うゼル。

「うん、そうだね」

 なんとなく言いたいことが伝わった僕はゼルに頷いて同意した。
 
 もう夜が明けている。
 朝日が昇り街を照らし始めていた。

「次はルーネの依頼をこなそうか?」

 学者になれるクエストは一応もう受けている。
 ただ依頼主がアルフヘイムの東区にある学園の講師で、明るい時間帯にしか出会えない。
 依頼を受けたのが夜中だったので先に迷子のクエストを片付けたわけだけど………

「まだ時間あるし、とりあえず先に朝ご飯食べようか?」
「了解です兄貴」
「はーい!」
「そうだね」
「…k」
「メシだメシだ!」

 というわけで僕達は朝食を食べに最寄りの店へ向かった。


 ◇


 
 講師の依頼は授業で使う素材の納品だった。
 必要な素材は【魔樹の枝】×3。【麻痺蜂の針】×5個。
 トレントとキラーホーネットからドロップする素材だ。
 運良く手持ちにあったのでそのまま講師に手渡した。
 依頼達成。
 報酬の【学問の書】を手に入れた。
【学問の書】は読むと【学者】に転職できるアイテムだ。
 ていうか○○の書ってアイテムってある意味便利だよね。
 いちいち神殿に行かなくても読むだけで転職できるのがいい。

「頑張って読んでみます!」

 ルーネに渡すとやる気に満ちた声で答えてくれた。
 早速ページをパラパラとめくるルーネ。

「歩きながら読むと危ないよ?」
「あ、はい!ごめんなさいアルさん…」

 アルに優しく注意され、慌ててページを閉じるルーネ。
 
「この調子でどんどん依頼こなしていこうぜ!」

 カイが僕の肩を組んでそう言ってきた。

「うん」

 僕は頷くとみんなとともに冒険者組合に足を向けた。


 ぶっちゃけランクFクエストは僕達にとって楽な依頼が多かった。
 お使いクエストとか○○の採取とかはめんどくさかったけど、討伐クエストは余裕を持って対処できた。

 怖いくらい順調にサクサククエストを消化していき、二日ほどでランクアップクエストの資格を得ることになった。
 ちなみにランクアップクエストとは次のランクに上がる昇格試験的なクエストだ。
 FランクのアイアンからEランクのダマスカスランクに上がるクエストは………

【森の遺跡の調査】

 アルフヘイムから南に五十キロほど先にある森に古代の遺跡があるらしい。
 そこにある時から魔物が住み着いたらしい。
 その遺跡に赴き魔物を殲滅、若しくは追い払うという内容だった。

「ていうか、コレ調査じゃなくて討伐じゃん…」
「…np(問題ない)」
「大丈夫ですよ兄貴。俺たちならやれます」
「しゃああああ!腕がなるぜ!どんな魔物でも俺の刀の錆にしてやる!」
「カイ、油断は禁物だよ?」
「はわわ…あ、足手まといにならないように頑張ります!」

 やる気満々、ていうかる気満々のみんなを連れて僕達はその遺跡へ向かうことにした。
 って、その前に店に寄ってアイテムの補充とかしてから行こうっと。


 


 

 
 
 
 
 
 
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